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隠れて護衛②
ノワールの馬車は順調に進む。
トッパにしばらく逗留するから、どんな理由で留まるか皆で考えた。
単純に温泉を楽しむのもいいけど、フェリアレーナ様の輿入れ行列に、うまい具合に合流する理由がいる。
結局、馬車を牽くノワールの足の調子が悪くて、療養して、合流時点では治っていました、という三文芝居をすることに。トッパに入る前に、馬車をビアンカに繋ぎ替えて、それっぽくすることに。
だ、大丈夫かな?
「ノワール、わかった? 大丈夫ね?」
「ブヒヒンッ」
『分かっているから大丈夫と、言っているのですよ』
『ノワールは賢いわ、心配ないわよ』
「そうね」
ビアンカとルージュが、太鼓判を押すから大丈夫だね。
それで決定することに。
私はホークさんと馭者台に座る。トッパの街並みがやっと見える頃に、そろそろノワールを止めようかと思っていたら、ビアンカとルージュの注意が飛ぶ。街道と、森が一番接近している場所だ。
『こちらを伺う気配があるのです』
『森に隠れて気配を消しているようだけど、私達の気配感知から逃れられないわ』
『どうするのです?』
『消しましょうか?』
それはなに? 息の根?
「ちょっと待ってん。ホークさん」
私は隣のホークさんにそっと耳打ち。
「潜んで、見られているそうです」
「気がつかないフリをしましょう。それだけで、立証出来ませんから」
ホークさんも小声で指示をしてくれる。
確かにそうかな。森にいました、くらいでは犯罪立証なんて出来やしない。やはり、ここがフェリアレーナ様襲撃場所なんや。サエキ様が言ってた場所や。こんなに早くから潜むって、どんだけやねん。盗賊の可能性もなきにしもあらずだが、フェリアレーナ様の輿入れの為に、街道周辺は手入れが入っているし、盗賊なら騎馬を相手にケンカを売らないそうだ。
私達の会話は、ビアンカとルージュには聞こえている。
『分かったのです。今は、無視なのですね』
『そうね。ノワール、手筈通りに』
「ブヒヒンッ、ブヒヒーンッ」
ルージュが合図を出すと、パカパカ歩いていたノワールが体勢を崩す。演技ですよ。演技だけど、馬車も大きく揺れる。ノワール、迫真過ぎやしないかい? あわわわっ、ベルトしているからいいけど、してなかったら落ちてるわっ。
「ブヒヒンッ、ブヒヒンッ、ブヒヒーンッ」
ノワールは右足を庇うように、傾きながら歩き出す。
「ノワール、ストップ、ストップ」
「ブヒヒン…………」
おうおう、哀愁漂う目で、ノワールが止まる。右の前足を地面に着けないようにして、達者な演技やね。
止まって、馬車から晃太達も降りてくる。
「ドーシタネー」
大根役者やね。
「ちょっとノワールがね」
「ダイジョーブネー」
もうちょいどうにかならんね?
ホークさんはてきぱきノワールと馬車を繋いでいる装具を外している。私は晃太に小さく見られてると言うと、晃太の眉がぴくり。
「ユイさん」
「あ、はい」
装具をすべて外したホークさんが、私に声をかけてくる。
「右足の様子が悪いようです、馬車を牽くのは厳しいかと」
自然に言ってくる。流石、リーダーさん、落ち着いてる。
「そうですね。ビアンカ、お願い出来るね?」
『任せるのです』
私はノワールの手綱を預かる。その間に走り回る仔達を、チュアンさん達が見てくれる。ただ、元気は森に向かって吠える。危ない危ない。
『元気、お止めなさい。コハクもよ。こちらにいらっしゃい』
コハクは少し低音の唸り声を上げている。森に誰かが潜んでいるのを、分かっているんだ。しぶしぶ、戻ってくる元気とコハク。
『ねえね?』
不安そうなヒスイが、私にすり寄ってくる。よしよし大丈夫よ。
ビアンカに馬車の装具を、ホークさんとチュアンさんが繋ぐ。
「ビアンカ、よか?」
『大丈夫なのですよ』
ホークさんがノワールの手綱を持ち、歩いて続くので、ビアンカにスピードを合わせてもらう。元気とコハクは、並走することに、いや、完全に遊びながら付いてきている。じゃれて、かわいかね。
馭者台には、私とチュアンさんが座る。
右足を庇うように歩くノワール。
ほ、本当に右足、大丈夫よね?
「ノワール、本当にケガしとらんよね」
『大丈夫よ、ふりをしているだけよ』
『ノリノリなのです』
「そうね」
なら、よか。
2時間近くかかって、やっとトッパに。ビアンカが馬車を牽いててびっくりされた。右足を庇うノワールを見て、納得してくれた。
宿の案内所で、しばらく逗留できる宿を聞く。
「魔法馬が足を痛めたんですね、それは大変でしたね」
以前トッパに泊まった時に対応してくれた男性が同情的だ。
「1週間程泊まれる宿を」
「はい。少々お待ちを…………はい、少し街中から離れますが、広さが十分あり、露天風呂付き、コテージ、魔道具もあり、厩舎がわりの倉庫付きがございます。庭もありますので、従魔様にもよろしいかと。値は張りますが」
「お願いします。1週間で」
「はい、ではご案内しますね」
そのまま男性が、コテージを管理している宿まで案内してくれた。元気が尻尾ぷりぷりご挨拶して、デレデレしながら撫でてくれた。宿の従業員にバトンタッチ。お年の男性だった。ビアンカとルージュにびくり。だけど元気とコハクがすり寄っていくと、私に確認してから、破顔して撫でてくれた。
お年の男性に案内されたのは、大きな一軒家だ、庭も広い。首都のゲストハウス程ではないけど。
「室内をご案内しますね」
「はい、お願いします」
お年の男性が一軒家をご案内してくれる。その間にノワールを厩舎がわりの倉庫に、ホークさんが誘導。ビアンカと馬車を繋いでいた装具をチュアンさんとミゲル君が外す。仔達は早速庭を走り回る、ルージュとエマちゃんとテオ君が見てくれる。
広めの居間に、奥には台所がある。マデリーンさんがお茶を淹れてくれる、ノータでもらったベリーの紅茶だ。台所の奥には二段ベッドのある小部屋が2つ。家具も食器も十分だ。一階の奥には露天風呂が、大人5、6人くらいならゆっくり入れる。シャワーブースもひとつある。
「お風呂と脱衣場の清掃は毎日午前中に伺います。タオルもその際に交換します。こちらの籠に入れてください」
「はい」
「食事は付きませんが」
「あ、こちらで準備しますから大丈夫です」
それから2階を案内される。全部で4つ。大きな部屋には化粧室があり、中くらいの部屋、小部屋が2つ。2階にもトイレがちゃんとある。シーツ交換と掃除は隔日で来てくれると。
すごい宿やね。一泊17万。連泊の値段だ。
「ここってどういった方が泊まるんですか?」
「そうですね。貴族の方が湯治に来られたりしますね」
なるほど。
「何かあればフロントまでお越しください」
「はい、ありがとうございます」
お年の男性は丁寧に挨拶して帰っていった。
「ユイさん、お茶入りました」
マデリーンさんが台所から声をかけてくれる。
ちょっと休憩しようかね。
私はまずノワールをルームの厩舎に誘導して、一軒家の居間に移動する。居間は広いが、流石にビアンカとルージュ、仔達が入ると手狭かな。仔達は晃太が準備した牛乳に群がってる。ビアンカとルージュにもお茶を出して、と。
ソファーに腰かけて、マデリーンさんからお茶を受け取り、ふーふー。全員に紅茶が行き渡る。
『ねえ、ユイ、今日、あの木の箱牽いて、疲れたのです』
そうなあ? ドラゴンやら熊やら一撃して、Gの巣もものの数分で壊滅させるのに。ボス部屋も復活したらすぐにちゅどん、どかんしてるのに。しかも、ビアンカの目、あれはおねだりビームの目だよ。
「疲れたね?」
『そうなのです。甘いの食べたいのです』
きゅるん。
『私も食べたいわ』
きゅるん。
きゅるん。きゅるん。きゅるーん。
はあ、仕方なかね。
「晃太、バザーのお菓子、まだあったよね」
「あるよ」
「お茶受けにしよう」
「ん」
トッパにしばらく逗留するから、どんな理由で留まるか皆で考えた。
単純に温泉を楽しむのもいいけど、フェリアレーナ様の輿入れ行列に、うまい具合に合流する理由がいる。
結局、馬車を牽くノワールの足の調子が悪くて、療養して、合流時点では治っていました、という三文芝居をすることに。トッパに入る前に、馬車をビアンカに繋ぎ替えて、それっぽくすることに。
だ、大丈夫かな?
「ノワール、わかった? 大丈夫ね?」
「ブヒヒンッ」
『分かっているから大丈夫と、言っているのですよ』
『ノワールは賢いわ、心配ないわよ』
「そうね」
ビアンカとルージュが、太鼓判を押すから大丈夫だね。
それで決定することに。
私はホークさんと馭者台に座る。トッパの街並みがやっと見える頃に、そろそろノワールを止めようかと思っていたら、ビアンカとルージュの注意が飛ぶ。街道と、森が一番接近している場所だ。
『こちらを伺う気配があるのです』
『森に隠れて気配を消しているようだけど、私達の気配感知から逃れられないわ』
『どうするのです?』
『消しましょうか?』
それはなに? 息の根?
「ちょっと待ってん。ホークさん」
私は隣のホークさんにそっと耳打ち。
「潜んで、見られているそうです」
「気がつかないフリをしましょう。それだけで、立証出来ませんから」
ホークさんも小声で指示をしてくれる。
確かにそうかな。森にいました、くらいでは犯罪立証なんて出来やしない。やはり、ここがフェリアレーナ様襲撃場所なんや。サエキ様が言ってた場所や。こんなに早くから潜むって、どんだけやねん。盗賊の可能性もなきにしもあらずだが、フェリアレーナ様の輿入れの為に、街道周辺は手入れが入っているし、盗賊なら騎馬を相手にケンカを売らないそうだ。
私達の会話は、ビアンカとルージュには聞こえている。
『分かったのです。今は、無視なのですね』
『そうね。ノワール、手筈通りに』
「ブヒヒンッ、ブヒヒーンッ」
ルージュが合図を出すと、パカパカ歩いていたノワールが体勢を崩す。演技ですよ。演技だけど、馬車も大きく揺れる。ノワール、迫真過ぎやしないかい? あわわわっ、ベルトしているからいいけど、してなかったら落ちてるわっ。
「ブヒヒンッ、ブヒヒンッ、ブヒヒーンッ」
ノワールは右足を庇うように、傾きながら歩き出す。
「ノワール、ストップ、ストップ」
「ブヒヒン…………」
おうおう、哀愁漂う目で、ノワールが止まる。右の前足を地面に着けないようにして、達者な演技やね。
止まって、馬車から晃太達も降りてくる。
「ドーシタネー」
大根役者やね。
「ちょっとノワールがね」
「ダイジョーブネー」
もうちょいどうにかならんね?
ホークさんはてきぱきノワールと馬車を繋いでいる装具を外している。私は晃太に小さく見られてると言うと、晃太の眉がぴくり。
「ユイさん」
「あ、はい」
装具をすべて外したホークさんが、私に声をかけてくる。
「右足の様子が悪いようです、馬車を牽くのは厳しいかと」
自然に言ってくる。流石、リーダーさん、落ち着いてる。
「そうですね。ビアンカ、お願い出来るね?」
『任せるのです』
私はノワールの手綱を預かる。その間に走り回る仔達を、チュアンさん達が見てくれる。ただ、元気は森に向かって吠える。危ない危ない。
『元気、お止めなさい。コハクもよ。こちらにいらっしゃい』
コハクは少し低音の唸り声を上げている。森に誰かが潜んでいるのを、分かっているんだ。しぶしぶ、戻ってくる元気とコハク。
『ねえね?』
不安そうなヒスイが、私にすり寄ってくる。よしよし大丈夫よ。
ビアンカに馬車の装具を、ホークさんとチュアンさんが繋ぐ。
「ビアンカ、よか?」
『大丈夫なのですよ』
ホークさんがノワールの手綱を持ち、歩いて続くので、ビアンカにスピードを合わせてもらう。元気とコハクは、並走することに、いや、完全に遊びながら付いてきている。じゃれて、かわいかね。
馭者台には、私とチュアンさんが座る。
右足を庇うように歩くノワール。
ほ、本当に右足、大丈夫よね?
「ノワール、本当にケガしとらんよね」
『大丈夫よ、ふりをしているだけよ』
『ノリノリなのです』
「そうね」
なら、よか。
2時間近くかかって、やっとトッパに。ビアンカが馬車を牽いててびっくりされた。右足を庇うノワールを見て、納得してくれた。
宿の案内所で、しばらく逗留できる宿を聞く。
「魔法馬が足を痛めたんですね、それは大変でしたね」
以前トッパに泊まった時に対応してくれた男性が同情的だ。
「1週間程泊まれる宿を」
「はい。少々お待ちを…………はい、少し街中から離れますが、広さが十分あり、露天風呂付き、コテージ、魔道具もあり、厩舎がわりの倉庫付きがございます。庭もありますので、従魔様にもよろしいかと。値は張りますが」
「お願いします。1週間で」
「はい、ではご案内しますね」
そのまま男性が、コテージを管理している宿まで案内してくれた。元気が尻尾ぷりぷりご挨拶して、デレデレしながら撫でてくれた。宿の従業員にバトンタッチ。お年の男性だった。ビアンカとルージュにびくり。だけど元気とコハクがすり寄っていくと、私に確認してから、破顔して撫でてくれた。
お年の男性に案内されたのは、大きな一軒家だ、庭も広い。首都のゲストハウス程ではないけど。
「室内をご案内しますね」
「はい、お願いします」
お年の男性が一軒家をご案内してくれる。その間にノワールを厩舎がわりの倉庫に、ホークさんが誘導。ビアンカと馬車を繋いでいた装具をチュアンさんとミゲル君が外す。仔達は早速庭を走り回る、ルージュとエマちゃんとテオ君が見てくれる。
広めの居間に、奥には台所がある。マデリーンさんがお茶を淹れてくれる、ノータでもらったベリーの紅茶だ。台所の奥には二段ベッドのある小部屋が2つ。家具も食器も十分だ。一階の奥には露天風呂が、大人5、6人くらいならゆっくり入れる。シャワーブースもひとつある。
「お風呂と脱衣場の清掃は毎日午前中に伺います。タオルもその際に交換します。こちらの籠に入れてください」
「はい」
「食事は付きませんが」
「あ、こちらで準備しますから大丈夫です」
それから2階を案内される。全部で4つ。大きな部屋には化粧室があり、中くらいの部屋、小部屋が2つ。2階にもトイレがちゃんとある。シーツ交換と掃除は隔日で来てくれると。
すごい宿やね。一泊17万。連泊の値段だ。
「ここってどういった方が泊まるんですか?」
「そうですね。貴族の方が湯治に来られたりしますね」
なるほど。
「何かあればフロントまでお越しください」
「はい、ありがとうございます」
お年の男性は丁寧に挨拶して帰っていった。
「ユイさん、お茶入りました」
マデリーンさんが台所から声をかけてくれる。
ちょっと休憩しようかね。
私はまずノワールをルームの厩舎に誘導して、一軒家の居間に移動する。居間は広いが、流石にビアンカとルージュ、仔達が入ると手狭かな。仔達は晃太が準備した牛乳に群がってる。ビアンカとルージュにもお茶を出して、と。
ソファーに腰かけて、マデリーンさんからお茶を受け取り、ふーふー。全員に紅茶が行き渡る。
『ねえ、ユイ、今日、あの木の箱牽いて、疲れたのです』
そうなあ? ドラゴンやら熊やら一撃して、Gの巣もものの数分で壊滅させるのに。ボス部屋も復活したらすぐにちゅどん、どかんしてるのに。しかも、ビアンカの目、あれはおねだりビームの目だよ。
「疲れたね?」
『そうなのです。甘いの食べたいのです』
きゅるん。
『私も食べたいわ』
きゅるん。
きゅるん。きゅるん。きゅるーん。
はあ、仕方なかね。
「晃太、バザーのお菓子、まだあったよね」
「あるよ」
「お茶受けにしよう」
「ん」
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