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マーファの日常⑧
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朝から、なんか様子がおかしかった。
いつもなら足りない足りないと、おかわりのおねだりするのに、半分以上も残していたから、嫌な予感はした。
「珍しかね、元気がご飯残すなんて」
母も異常を感じたようだ。
『元気の様子がおかしいのです』
『そうね、いつもと違うわ』
ビアンカとルージュも気が付いたようだ。当の元気は、朝から従魔の部屋から出ずに丸くなっていた。いつもなら男の子全開で寝てるのに。そして朝起きたら、尻尾ぷりぷりしながら寄ってくるのに、まったく起きない。まだ、寝てるのかなって思ったが、朝御飯を持っていった時点で、様子を見たが、食べるは食べるが、いつもの勢いがない。
やっぱりおかしい。ビアンカとルージュが心配そうに伏せる元気に鼻先をよせてる。
あの正に『元気』を現している元気がご飯食べないなんて、絶対におかしい。呼吸も浅くて、速いようだし。勘違いではないと思う。
「お父さん、元気ば見て」
出勤前の父に声をかけると、やおら元気がのそっと立ち上がる。
『どうしたのです元気? 苦しいのですか?』
『かなり調子が悪いようね』
父が従魔の部屋に入った瞬間。頼りない足取りの元気が、えづきだす。あ、いかんっ。
「……………おえぇぇ……………」
やっぱりっ、朝御飯、全部リバース。
今まで一度もリバースしたことない元気がっ。魔物本来の離乳食でも、唯一平気だった元気が。
慌てて、背中を擦るが、今後は別の態勢に。あ、これはっ、あーっ、お腹がゆるかーっ。かなり、ゆるかーっ。
こりゃいかんっ。
元気は力なくまた丸くなる。まるで、いろんなものから拒絶するように。私は液晶の清掃タップ。だけど、今見たリバース物と、モザイク物の性状チェック。血は混じっていないようや。リバース物には、胃液っぽいのが混じっているかな。よし、タップ。
ビアンカが丸くなった元気に、すかさず守るように寄り添い、母が慌てて元気に駆け寄り、父が鑑定する。
「あー、腹に来る風邪みたいや。熱も平常よか高かな。41℃もある」
父の鑑定結果は風邪とな。ビアンカが優しく元気を舐めている。
『元気、苦しいのですか? 今は動かない方がいいのですよ』
「風邪って。元々ビアンカ達の平均体温はなんぼなん?」
犬って確か37℃くらいかな? これはあくまで犬ね。
「37℃や」
父が答える。
「立派な発熱やん」
どうしよう。まさか、人間の治療院に連れていけないし。どうしよう。あの元気がこれだけ弱々しいなんて。どうしよう、呼吸が浅くて速いのは、このせいやろうけど、どうしよう。とりあえず、私の下級エリクサーを飲ませようとしたが、元気は顔を振り嫌がり飲まない。
「ねえ、ビアンカ、こう言った場合はどうすると?」
頼みの綱のエリクサーを飲まない。だけど、何もしないわけにはいかないし。私はどうしたらいい分からない不安を押さえて聞くしかない。
『休ませるしかないのです』
元々魔物の場合、風邪なんて引いたら、手段はないそうだ。成体になれば、抵抗力があって風邪とか引かない。だが、身体は大きくても、元気は幼体。
『元気、私が付いているのです、しっかりするのです』
ビアンカが元気を抱きよせる。ビアンカの声、震えとらんね? なんか、かなり、不味くない? 私は不安が溢れてきた。
私はそっとルージュを呼ぶ。父は鑑定を続けている。
「ねえ、かなり元気、危なくない? 本当に手段はないと?」
『…………………手段はないのは本当よ。私達上位魔物は成体になるまでの生存確率は半分だから………………』
視線を落とすルージュ。
半年のボーダーを越えたあとの、死亡原因の最たるものだと。つまり、成体になるまでに、こういった体調不良や風邪なんてかかると、一気に状態が悪化。そして、至る。
死に。
絶対にいやや。
絶対にいやや。
絶対にいやや。
絶対に。
「足掻くよ」
私は決断する。
「お母さん、元気のバンダナに冷却の付与して、まずは冷やさんと」
私は指示を出す。母は元気の側で動揺している。
「晃太、お母さんのフォローばして」
「あ、ああ、分かった」
晃太もややおろおろしているが、私に言われて、元気のバンダナを取り出しに行く。
ここが日本なら点滴とかして、補水出きるが、そんな技術はここにはない。なら、経口から行くしかない。
少しずつ、口に運んでいくしかない。吐き気や下痢の具合を見ながらだけど。後は、ダイアナちゃんの時のように、作るしかない。
「お父さん、薬、出来る?」
「ん」
鑑定していた父は立ち上がる。そしてダイニングキッチンで、メモ用紙になにかを書き出していく。やっぱり、ずっと鑑定しているから、元気に合う薬を模索しているんやないかって思っていたが、当たっていたみたい。
『ユイ、どうしたの? 私達には手段はないのよ?』
ルージュは私が指示を出し、父が書き出しているのに戸惑いの声をあげる。
「ルージュ、手段はね、ないなら、作ればよかと」
私達は完璧ではない。そう、だから、私達人間は考えて、知恵を絞り、いろんな人たちと試行錯誤する。人間は考える葦や。始めから、ないなんて言われて、はいそうですかって、かわいい元気を諦めたくない。
足掻こう。精一杯足掻こう。もしかしたら、他から見たら悪足掻きかもしれん。でも、何もしないで、諦めたくない。
「絶対に諦めんよ。なにもせんで、元気を見守るだけなんて、私はせん。何か手段を探し出すよ、私は諦めん、私は元気の主人やからな」
私の言葉に、ルージュの赤い目が見開かれる。
「優衣、これが、今の手持ちで作れる元気が飲める解熱剤や。抗生剤の効果も少し含まれとる」
そう言って父が私にメモ用紙を渡す。
「効果はいまいちかもしれんけど、ないよりましや。それとこれにはフレアタートルの肝が必要や」
「分かった、ありがとうお父さん」
「なるべく仕事を早く切り上げて帰ってくるけん」
そう言って、父はコートを着て出勤していく。
「さあ、今から役割分担するよ」
まずはビアンカは元気のそばに付き添い。
「お母さんは薬の作製、晃太はフォローに入って」
それから。
「ルージュ」
『任せて』
ギラギラと赤い目を滾らせて、答えるルージュ。現状で確実に冷蔵庫ダンジョンの最上階にスキップして、フレアタートルを倒せるのはルージュだけ。
鷹の目の皆さんにも協力を仰ぐ。
「ユイさん、俺達に出来ることがあれば、言ってください」
「ありがとうございますホークさん。では、まず」
ルーム内で作業する母の代わりに、パーティーハウスにマデリーンさんとミゲル君に残ってもらう。誰か訪ねてきたら誤魔化さないと。ルーム内にはチュアンさんに残ってもらい、ルリ、クリス、コハク、ヒスイを見てもらう。ノワールもお留守番だ。28階までスキップするには、最高体重のノワールがいると、さすがのルージュでも無理だと。なので、行くのは私とホークさん、エマちゃんとテオ君だ。
申し訳ないが、従魔の部屋から出された、ルリとクリスが不安そうだ。バタバタしていて、異常を感じた花が右往左往し、私の足にすがり付いてくる。私は花を抱えて、チュアンさんに託す。
『かぁか~』
『かーか~』
従魔の部屋から出されたルリとクリスがビアンカを呼ぶが、ぐったりとした元気を抱えたビアンカはどうしてやれるわけでもなく。
『ルリ、クリス、しばらくは我慢してなのです』
そうしている間にも、元気が再びリバース。慌てて清掃をタップし、元気の毛並みについた汚れを取る。
ふぅふぅ、と短い呼吸をする元気。私はそっと撫でて立ち上がる。
「元気、ちょっと待っとってね。すぐに帰って来るけんね」
『ユイ、元気はどうなるのですか?』
今まで聞いたことのないほど震えたビアンカの声に、あの時のフィナさんを思い出させる。私は腹に活を入れる。
「とにかく今は熱を下げてやらんと。その為に、うちらは使える全てを使って頭を使うよ。ビアンカ、最善を尽くすけんね。待っとってね」
『……………私は、ユイを信じるのです』
そう言ってビアンカは、ぐったりとした元気を抱き抱えるようにして丸くなる。
「行くよっ」
元気、絶対によくなるけんね。
私はもへじ生活のダッフルコートを着て、ルージュとホークさん、エマちゃんとテオ君でパーティーハウスを出て、冷蔵庫ダンジョンに向かった。
いつもなら足りない足りないと、おかわりのおねだりするのに、半分以上も残していたから、嫌な予感はした。
「珍しかね、元気がご飯残すなんて」
母も異常を感じたようだ。
『元気の様子がおかしいのです』
『そうね、いつもと違うわ』
ビアンカとルージュも気が付いたようだ。当の元気は、朝から従魔の部屋から出ずに丸くなっていた。いつもなら男の子全開で寝てるのに。そして朝起きたら、尻尾ぷりぷりしながら寄ってくるのに、まったく起きない。まだ、寝てるのかなって思ったが、朝御飯を持っていった時点で、様子を見たが、食べるは食べるが、いつもの勢いがない。
やっぱりおかしい。ビアンカとルージュが心配そうに伏せる元気に鼻先をよせてる。
あの正に『元気』を現している元気がご飯食べないなんて、絶対におかしい。呼吸も浅くて、速いようだし。勘違いではないと思う。
「お父さん、元気ば見て」
出勤前の父に声をかけると、やおら元気がのそっと立ち上がる。
『どうしたのです元気? 苦しいのですか?』
『かなり調子が悪いようね』
父が従魔の部屋に入った瞬間。頼りない足取りの元気が、えづきだす。あ、いかんっ。
「……………おえぇぇ……………」
やっぱりっ、朝御飯、全部リバース。
今まで一度もリバースしたことない元気がっ。魔物本来の離乳食でも、唯一平気だった元気が。
慌てて、背中を擦るが、今後は別の態勢に。あ、これはっ、あーっ、お腹がゆるかーっ。かなり、ゆるかーっ。
こりゃいかんっ。
元気は力なくまた丸くなる。まるで、いろんなものから拒絶するように。私は液晶の清掃タップ。だけど、今見たリバース物と、モザイク物の性状チェック。血は混じっていないようや。リバース物には、胃液っぽいのが混じっているかな。よし、タップ。
ビアンカが丸くなった元気に、すかさず守るように寄り添い、母が慌てて元気に駆け寄り、父が鑑定する。
「あー、腹に来る風邪みたいや。熱も平常よか高かな。41℃もある」
父の鑑定結果は風邪とな。ビアンカが優しく元気を舐めている。
『元気、苦しいのですか? 今は動かない方がいいのですよ』
「風邪って。元々ビアンカ達の平均体温はなんぼなん?」
犬って確か37℃くらいかな? これはあくまで犬ね。
「37℃や」
父が答える。
「立派な発熱やん」
どうしよう。まさか、人間の治療院に連れていけないし。どうしよう。あの元気がこれだけ弱々しいなんて。どうしよう、呼吸が浅くて速いのは、このせいやろうけど、どうしよう。とりあえず、私の下級エリクサーを飲ませようとしたが、元気は顔を振り嫌がり飲まない。
「ねえ、ビアンカ、こう言った場合はどうすると?」
頼みの綱のエリクサーを飲まない。だけど、何もしないわけにはいかないし。私はどうしたらいい分からない不安を押さえて聞くしかない。
『休ませるしかないのです』
元々魔物の場合、風邪なんて引いたら、手段はないそうだ。成体になれば、抵抗力があって風邪とか引かない。だが、身体は大きくても、元気は幼体。
『元気、私が付いているのです、しっかりするのです』
ビアンカが元気を抱きよせる。ビアンカの声、震えとらんね? なんか、かなり、不味くない? 私は不安が溢れてきた。
私はそっとルージュを呼ぶ。父は鑑定を続けている。
「ねえ、かなり元気、危なくない? 本当に手段はないと?」
『…………………手段はないのは本当よ。私達上位魔物は成体になるまでの生存確率は半分だから………………』
視線を落とすルージュ。
半年のボーダーを越えたあとの、死亡原因の最たるものだと。つまり、成体になるまでに、こういった体調不良や風邪なんてかかると、一気に状態が悪化。そして、至る。
死に。
絶対にいやや。
絶対にいやや。
絶対にいやや。
絶対に。
「足掻くよ」
私は決断する。
「お母さん、元気のバンダナに冷却の付与して、まずは冷やさんと」
私は指示を出す。母は元気の側で動揺している。
「晃太、お母さんのフォローばして」
「あ、ああ、分かった」
晃太もややおろおろしているが、私に言われて、元気のバンダナを取り出しに行く。
ここが日本なら点滴とかして、補水出きるが、そんな技術はここにはない。なら、経口から行くしかない。
少しずつ、口に運んでいくしかない。吐き気や下痢の具合を見ながらだけど。後は、ダイアナちゃんの時のように、作るしかない。
「お父さん、薬、出来る?」
「ん」
鑑定していた父は立ち上がる。そしてダイニングキッチンで、メモ用紙になにかを書き出していく。やっぱり、ずっと鑑定しているから、元気に合う薬を模索しているんやないかって思っていたが、当たっていたみたい。
『ユイ、どうしたの? 私達には手段はないのよ?』
ルージュは私が指示を出し、父が書き出しているのに戸惑いの声をあげる。
「ルージュ、手段はね、ないなら、作ればよかと」
私達は完璧ではない。そう、だから、私達人間は考えて、知恵を絞り、いろんな人たちと試行錯誤する。人間は考える葦や。始めから、ないなんて言われて、はいそうですかって、かわいい元気を諦めたくない。
足掻こう。精一杯足掻こう。もしかしたら、他から見たら悪足掻きかもしれん。でも、何もしないで、諦めたくない。
「絶対に諦めんよ。なにもせんで、元気を見守るだけなんて、私はせん。何か手段を探し出すよ、私は諦めん、私は元気の主人やからな」
私の言葉に、ルージュの赤い目が見開かれる。
「優衣、これが、今の手持ちで作れる元気が飲める解熱剤や。抗生剤の効果も少し含まれとる」
そう言って父が私にメモ用紙を渡す。
「効果はいまいちかもしれんけど、ないよりましや。それとこれにはフレアタートルの肝が必要や」
「分かった、ありがとうお父さん」
「なるべく仕事を早く切り上げて帰ってくるけん」
そう言って、父はコートを着て出勤していく。
「さあ、今から役割分担するよ」
まずはビアンカは元気のそばに付き添い。
「お母さんは薬の作製、晃太はフォローに入って」
それから。
「ルージュ」
『任せて』
ギラギラと赤い目を滾らせて、答えるルージュ。現状で確実に冷蔵庫ダンジョンの最上階にスキップして、フレアタートルを倒せるのはルージュだけ。
鷹の目の皆さんにも協力を仰ぐ。
「ユイさん、俺達に出来ることがあれば、言ってください」
「ありがとうございますホークさん。では、まず」
ルーム内で作業する母の代わりに、パーティーハウスにマデリーンさんとミゲル君に残ってもらう。誰か訪ねてきたら誤魔化さないと。ルーム内にはチュアンさんに残ってもらい、ルリ、クリス、コハク、ヒスイを見てもらう。ノワールもお留守番だ。28階までスキップするには、最高体重のノワールがいると、さすがのルージュでも無理だと。なので、行くのは私とホークさん、エマちゃんとテオ君だ。
申し訳ないが、従魔の部屋から出された、ルリとクリスが不安そうだ。バタバタしていて、異常を感じた花が右往左往し、私の足にすがり付いてくる。私は花を抱えて、チュアンさんに託す。
『かぁか~』
『かーか~』
従魔の部屋から出されたルリとクリスがビアンカを呼ぶが、ぐったりとした元気を抱えたビアンカはどうしてやれるわけでもなく。
『ルリ、クリス、しばらくは我慢してなのです』
そうしている間にも、元気が再びリバース。慌てて清掃をタップし、元気の毛並みについた汚れを取る。
ふぅふぅ、と短い呼吸をする元気。私はそっと撫でて立ち上がる。
「元気、ちょっと待っとってね。すぐに帰って来るけんね」
『ユイ、元気はどうなるのですか?』
今まで聞いたことのないほど震えたビアンカの声に、あの時のフィナさんを思い出させる。私は腹に活を入れる。
「とにかく今は熱を下げてやらんと。その為に、うちらは使える全てを使って頭を使うよ。ビアンカ、最善を尽くすけんね。待っとってね」
『……………私は、ユイを信じるのです』
そう言ってビアンカは、ぐったりとした元気を抱き抱えるようにして丸くなる。
「行くよっ」
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