もふもふ大好き家族が聖女召喚に巻き込まれる~時空神様からの気まぐれギフト・スキル『ルーム』で家族と愛犬守ります~

鐘ケ江 しのぶ

文字の大きさ
348 / 867
連載

マーファの日常⑧

しおりを挟む
 朝から、なんか様子がおかしかった。
 いつもなら足りない足りないと、おかわりのおねだりするのに、半分以上も残していたから、嫌な予感はした。
「珍しかね、元気がご飯残すなんて」
 母も異常を感じたようだ。
『元気の様子がおかしいのです』
『そうね、いつもと違うわ』
 ビアンカとルージュも気が付いたようだ。当の元気は、朝から従魔の部屋から出ずに丸くなっていた。いつもなら男の子全開で寝てるのに。そして朝起きたら、尻尾ぷりぷりしながら寄ってくるのに、まったく起きない。まだ、寝てるのかなって思ったが、朝御飯を持っていった時点で、様子を見たが、食べるは食べるが、いつもの勢いがない。
 やっぱりおかしい。ビアンカとルージュが心配そうに伏せる元気に鼻先をよせてる。
 あの正に『元気』を現している元気がご飯食べないなんて、絶対におかしい。呼吸も浅くて、速いようだし。勘違いではないと思う。
「お父さん、元気ば見て」
 出勤前の父に声をかけると、やおら元気がのそっと立ち上がる。
『どうしたのです元気? 苦しいのですか?』
『かなり調子が悪いようね』
 父が従魔の部屋に入った瞬間。頼りない足取りの元気が、えづきだす。あ、いかんっ。
「……………おえぇぇ……………」
 やっぱりっ、朝御飯、全部リバース。
 今まで一度もリバースしたことない元気がっ。魔物本来の離乳食でも、唯一平気だった元気が。
 慌てて、背中を擦るが、今後は別の態勢に。あ、これはっ、あーっ、お腹がゆるかーっ。かなり、ゆるかーっ。
 こりゃいかんっ。
 元気は力なくまた丸くなる。まるで、いろんなものから拒絶するように。私は液晶の清掃タップ。だけど、今見たリバース物と、モザイク物の性状チェック。血は混じっていないようや。リバース物には、胃液っぽいのが混じっているかな。よし、タップ。
 ビアンカが丸くなった元気に、すかさず守るように寄り添い、母が慌てて元気に駆け寄り、父が鑑定する。
「あー、腹に来る風邪みたいや。熱も平常よか高かな。41℃もある」
 父の鑑定結果は風邪とな。ビアンカが優しく元気を舐めている。
『元気、苦しいのですか? 今は動かない方がいいのですよ』
「風邪って。元々ビアンカ達の平均体温はなんぼなん?」
 犬って確か37℃くらいかな? これはあくまで犬ね。
「37℃や」
 父が答える。
「立派な発熱やん」
 どうしよう。まさか、人間の治療院に連れていけないし。どうしよう。あの元気がこれだけ弱々しいなんて。どうしよう、呼吸が浅くて速いのは、このせいやろうけど、どうしよう。とりあえず、私の下級エリクサーを飲ませようとしたが、元気は顔を振り嫌がり飲まない。
「ねえ、ビアンカ、こう言った場合はどうすると?」
 頼みの綱のエリクサーを飲まない。だけど、何もしないわけにはいかないし。私はどうしたらいい分からない不安を押さえて聞くしかない。
『休ませるしかないのです』
 元々魔物の場合、風邪なんて引いたら、手段はないそうだ。成体になれば、抵抗力があって風邪とか引かない。だが、身体は大きくても、元気は幼体。
『元気、私が付いているのです、しっかりするのです』
 ビアンカが元気を抱きよせる。ビアンカの声、震えとらんね? なんか、かなり、不味くない? 私は不安が溢れてきた。
 私はそっとルージュを呼ぶ。父は鑑定を続けている。
「ねえ、かなり元気、危なくない? 本当に手段はないと?」
『…………………手段はないのは本当よ。私達上位魔物は成体になるまでの生存確率は半分だから………………』
 視線を落とすルージュ。
 半年のボーダーを越えたあとの、死亡原因の最たるものだと。つまり、成体になるまでに、こういった体調不良や風邪なんてかかると、一気に状態が悪化。そして、至る。

 死に。

 絶対にいやや。
 絶対にいやや。
 絶対にいやや。
 絶対に。
「足掻くよ」
 私は決断する。
「お母さん、元気のバンダナに冷却の付与して、まずは冷やさんと」
 私は指示を出す。母は元気の側で動揺している。
「晃太、お母さんのフォローばして」
「あ、ああ、分かった」
 晃太もややおろおろしているが、私に言われて、元気のバンダナを取り出しに行く。
 ここが日本なら点滴とかして、補水出きるが、そんな技術はここにはない。なら、経口から行くしかない。
 少しずつ、口に運んでいくしかない。吐き気や下痢の具合を見ながらだけど。後は、ダイアナちゃんの時のように、作るしかない。
「お父さん、薬、出来る?」
「ん」
 鑑定していた父は立ち上がる。そしてダイニングキッチンで、メモ用紙になにかを書き出していく。やっぱり、ずっと鑑定しているから、元気に合う薬を模索しているんやないかって思っていたが、当たっていたみたい。
『ユイ、どうしたの? 私達には手段はないのよ?』
 ルージュは私が指示を出し、父が書き出しているのに戸惑いの声をあげる。
「ルージュ、手段はね、ないなら、作ればよかと」
 私達は完璧ではない。そう、だから、私達人間は考えて、知恵を絞り、いろんな人たちと試行錯誤する。人間は考える葦や。始めから、ないなんて言われて、はいそうですかって、かわいい元気を諦めたくない。
 足掻こう。精一杯足掻こう。もしかしたら、他から見たら悪足掻きかもしれん。でも、何もしないで、諦めたくない。
「絶対に諦めんよ。なにもせんで、元気を見守るだけなんて、私はせん。何か手段を探し出すよ、私は諦めん、私は元気の主人やからな」
 私の言葉に、ルージュの赤い目が見開かれる。
「優衣、これが、今の手持ちで作れる元気が飲める解熱剤や。抗生剤の効果も少し含まれとる」
 そう言って父が私にメモ用紙を渡す。
「効果はいまいちかもしれんけど、ないよりましや。それとこれにはフレアタートルの肝が必要や」
「分かった、ありがとうお父さん」
「なるべく仕事を早く切り上げて帰ってくるけん」
 そう言って、父はコートを着て出勤していく。
「さあ、今から役割分担するよ」
 まずはビアンカは元気のそばに付き添い。
「お母さんは薬の作製、晃太はフォローに入って」
 それから。
「ルージュ」
『任せて』
 ギラギラと赤い目を滾らせて、答えるルージュ。現状で確実に冷蔵庫ダンジョンの最上階にスキップして、フレアタートルを倒せるのはルージュだけ。
 鷹の目の皆さんにも協力を仰ぐ。
「ユイさん、俺達に出来ることがあれば、言ってください」
「ありがとうございますホークさん。では、まず」
 ルーム内で作業する母の代わりに、パーティーハウスにマデリーンさんとミゲル君に残ってもらう。誰か訪ねてきたら誤魔化さないと。ルーム内にはチュアンさんに残ってもらい、ルリ、クリス、コハク、ヒスイを見てもらう。ノワールもお留守番だ。28階までスキップするには、最高体重のノワールがいると、さすがのルージュでも無理だと。なので、行くのは私とホークさん、エマちゃんとテオ君だ。
 申し訳ないが、従魔の部屋から出された、ルリとクリスが不安そうだ。バタバタしていて、異常を感じた花が右往左往し、私の足にすがり付いてくる。私は花を抱えて、チュアンさんに託す。
『かぁか~』
『かーか~』
 従魔の部屋から出されたルリとクリスがビアンカを呼ぶが、ぐったりとした元気を抱えたビアンカはどうしてやれるわけでもなく。
『ルリ、クリス、しばらくは我慢してなのです』
 そうしている間にも、元気が再びリバース。慌てて清掃をタップし、元気の毛並みについた汚れを取る。
 ふぅふぅ、と短い呼吸をする元気。私はそっと撫でて立ち上がる。
「元気、ちょっと待っとってね。すぐに帰って来るけんね」
『ユイ、元気はどうなるのですか?』
 今まで聞いたことのないほど震えたビアンカの声に、あの時のフィナさんを思い出させる。私は腹に活を入れる。
「とにかく今は熱を下げてやらんと。その為に、うちらは使える全てを使って頭を使うよ。ビアンカ、最善を尽くすけんね。待っとってね」
『……………私は、ユイを信じるのです』
 そう言ってビアンカは、ぐったりとした元気を抱き抱えるようにして丸くなる。
「行くよっ」
 元気、絶対によくなるけんね。
 私はもへじ生活のダッフルコートを着て、ルージュとホークさん、エマちゃんとテオ君でパーティーハウスを出て、冷蔵庫ダンジョンに向かった。
しおりを挟む
感想 829

あなたにおすすめの小説

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

【完結】留学先から戻って来た婚約者に存在を忘れられていました

山葵
恋愛
国王陛下の命により帝国に留学していた王太子に付いて行っていた婚約者のレイモンド様が帰国された。 王家主催で王太子達の帰国パーティーが執り行われる事が決まる。 レイモンド様の婚約者の私も勿論、従兄にエスコートされ出席させて頂きますわ。 3年ぶりに見るレイモンド様は、幼さもすっかり消え、美丈夫になっておりました。 将来の宰相の座も約束されており、婚約者の私も鼻高々ですわ! 「レイモンド様、お帰りなさいませ。留学中は、1度もお戻りにならず、便りも来ずで心配しておりましたのよ。元気そうで何よりで御座います」 ん?誰だっけ?みたいな顔をレイモンド様がされている? 婚約し顔を合わせでしか会っていませんけれど、まさか私を忘れているとかでは無いですよね!?

ぼっちな幼女は異世界で愛し愛され幸せになりたい

珂里
ファンタジー
ある日、仲の良かった友達が突然いなくなってしまった。 本当に、急に、目の前から消えてしまった友達には、二度と会えなかった。 …………私も消えることができるかな。 私が消えても、きっと、誰も何とも思わない。 私は、邪魔な子だから。 私は、いらない子だから。 だからきっと、誰も悲しまない。 どこかに、私を必要としてくれる人がいないかな。 そんな人がいたら、絶対に側を離れないのに……。 異世界に迷い込んだ少女と、孤独な獣人の少年が徐々に心を通わせ成長していく物語。 ☆「神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです」と同じ世界です。 彩菜が神隠しに遭う時に、公園で一緒に遊んでいた「ゆうちゃん」こと優香の、もう一つの神隠し物語です。

お前は家から追放する?構いませんが、この家の全権力を持っているのは私ですよ?

水垣するめ
恋愛
「アリス、お前をこのアトキンソン伯爵家から追放する」 「はぁ?」 静かな食堂の間。 主人公アリス・アトキンソンの父アランはアリスに向かって突然追放すると告げた。 同じく席に座っている母や兄、そして妹も父に同意したように頷いている。 いきなり食堂に集められたかと思えば、思いも寄らない追放宣言にアリスは戸惑いよりも心底呆れた。 「はぁ、何を言っているんですか、この領地を経営しているのは私ですよ?」 「ああ、その経営も最近軌道に乗ってきたのでな、お前はもう用済みになったから追放する」 父のあまりに無茶苦茶な言い分にアリスは辟易する。 「いいでしょう。そんなに出ていって欲しいなら出ていってあげます」 アリスは家から一度出る決心をする。 それを聞いて両親や兄弟は大喜びした。 アリスはそれを哀れみの目で見ながら家を出る。 彼らがこれから地獄を見ることを知っていたからだ。 「大方、私が今まで稼いだお金や開発した資源を全て自分のものにしたかったんでしょうね。……でもそんなことがまかり通るわけないじゃないですか」 アリスはため息をつく。 「──だって、この家の全権力を持っているのは私なのに」 後悔したところでもう遅い。

【完結】「神様、辞めました〜竜神の愛し子に冤罪を着せ投獄するような人間なんてもう知らない」

まほりろ
恋愛
王太子アビー・シュトースと聖女カーラ・ノルデン公爵令嬢の結婚式当日。二人が教会での誓いの儀式を終え、教会の扉を開け外に一歩踏み出したとき、国中の壁や窓に不吉な文字が浮かび上がった。 【本日付けで神を辞めることにした】 フラワーシャワーを巻き王太子と王太子妃の結婚を祝おうとしていた参列者は、突然現れた文字に驚きを隠せず固まっている。 国境に壁を築きモンスターの侵入を防ぎ、結界を張り国内にいるモンスターは弱体化させ、雨を降らせ大地を潤し、土地を豊かにし豊作をもたらし、人間の体を強化し、生活が便利になるように魔法の力を授けた、竜神ウィルペアトが消えた。 人々は三カ月前に冤罪を着せ、|罵詈雑言《ばりぞうごん》を浴びせ、石を投げつけ投獄した少女が、本物の【竜の愛し子】だと分かり|戦慄《せんりつ》した。 「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」 アルファポリスに先行投稿しています。 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 2021/12/13、HOTランキング3位、12/14総合ランキング4位、恋愛3位に入りました! ありがとうございます!

母は何処? 父はだぁれ?

穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。 産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。 妹も、実妹なのか不明だ。 そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。 父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。 母は、どこへ行ってしまったんだろう! というところからスタートする、 さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。 変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、 家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。 意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。 前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。 もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。 単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。 また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。 「小説家になろう」で連載していたものです。

【完結】私は聖女の代用品だったらしい

雨雲レーダー
恋愛
異世界に聖女として召喚された紗月。 元の世界に帰る方法を探してくれるというリュミナス王国の王であるアレクの言葉を信じて、聖女として頑張ろうと決意するが、ある日大学の後輩でもあった天音が真の聖女として召喚されてから全てが変わりはじめ、ついには身に覚えのない罪で荒野に置き去りにされてしまう。 絶望の中で手を差し伸べたのは、隣国グランツ帝国の冷酷な皇帝マティアスだった。 「俺のものになれ」 突然の言葉に唖然とするものの、行く場所も帰る場所もない紗月はしぶしぶ着いて行くことに。 だけど帝国での生活は意外と楽しくて、マティアスもそんなにイヤなやつじゃないのかも? 捨てられた聖女と孤高の皇帝が絆を深めていく一方で、リュミナス王国では次々と異変がおこっていた。 ・完結まで予約投稿済みです。 ・1日3回更新(7時・12時・18時)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。