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確保と依頼⑨
ダワーさんとの面会したその日、パーティーハウスに来客があった。
御用聞きの冒険者さんと一緒に来たのは、オダリスさんだった。なんだろう?
後ろにいたホークさんが、晃太に何か言ってる。すると、何故か晃太は私に支援魔法発動した。
「おそらくあの襲撃犯達の件ですよ」
うっ。あの時のね。
一瞬、あの場面が浮かんだが、グロい映画のワンシーンにしか思えないのは、支援魔法のおかげや。
「ミズサワ殿。何の先触れもなく伺い申し訳ありません。お知らせしたいことがありまして」
と、丁寧にオダリスさんが言う。ビアンカもルージュも特に何も言わないので、御用聞きの冒険者さんにはお帰り頂き、オダリスさんをパーティーハウスにご案内した。
久しぶりのオダリスさんに、元気がぷりぷりとご挨拶に向かう。ただ、人見知りの花は相変わらずけたたましく吠える。私は台所の奥でルームを開けて、チュアンさんに花を託す。元気は食パンでエマちゃんとテオ君が、ルームの中庭まで誘導。他の仔達も見てもらう為に、マデリーンさんとミゲル君にも向かってもらう。晃太に間を繋げてもらい、私は異世界のメニューをタップ。さくら庵の日本産紅茶を選ぶ。お盆に載せて慎重に運ぶ。
居間には、ソファーにオダリスさんと両親と晃太。その後ろにはホークさんが立ち、ビアンカとルージュはごろり、としている。
「オダリスさん、どうぞ」
「ああ、ありがとうございます」
私はオダリスさんに紅茶を出して、ソファーに座る。
「で、何か分かりました」
「はい」
襲撃犯達から得た情報は、肝心な黒幕の名前が出てこなかった。ただ、密入国する時に加担した役人達は分かり、アルティーナとユリアレーナでも厳罰が下された。数人は拘留中に自決してしまったと。
「おそらくですが、そう訓練されたか、そうしないといけない程追い詰められたか」
「追い詰められたか? 理由は?」
「家族を人質にされている可能性があります。自決した役人のうち、家族の誰かが行方不明の者がおりましたから。今、全力で捜索し安否確認をしています」
なんて事になっているんだろう。それが本当なら、その自決した役人が気の毒過ぎない? 密入国に手を染めて、家族を守ろうとしたその役人。確かに、やってはいけないことだけど、当人にしてみたら、生きた心地がしなかったはず。
人質にされていないことだけを祈るしかないのか。神様に祈ろう。
アルティーナの反応は、やはりすべての責任を役人に押し付けるような形になりそうだ。
オダリスさんの説明は続くが、これから先は他言無用と言われた。
役人に責任を押し付けて、密入国の件を終わらせようとしたが、それに待ったをかけたのはマクレデーナ皇太后だ。未遂とはいえ、当時ユリアレーナ王国第一王位継承権を持つ、フェリアレーナ王女殿下の輿入れ行列の襲撃、それはアルティーナから密入国した闇ギルドにより行われたこと。変わり果てた姿で帰ってきた娘、ガーガリア元妃が薬物中毒になりながらも手放さなかった物を手にして、実の息子であるディーン皇帝を追い詰めた。
ディーン皇帝が皇太子時代から、ガーガリア元妃に送り続けた手紙を、薬物中毒で正常な判断ができない中、彼女は手放さなかった。それが父親の指示とは知らなくても、自分を支えてくれた手紙を、ガーガリア元妃が捨てるなんてことは出来なかった。実の兄が、思ってくれている。だから、カムル王子を喪ったガーガリア元妃はわがまま王妃を演じ続けることができた。そして侍女達が長年綴り続けた業務日誌。何より大きかったのはこの業務日誌だ。手紙と共に送られてきた果実のシロップに含まれる薬物濃度や、どれくらいの割合で割るかなど細かい指示の手紙がすべて保管されていたからだ。侍女達は、もしフェリアレーナ様を誘拐出来なかった時に、自分達が抹消対象になることを恐れ、破棄を指示されていたその指示書を隠し持ち続けた。
マクレデーナ皇太后が何より許せなかったのは、カムル王子を喪い、失望の底にいた実の妹に、本来の物静かな性格を失わせる程の薬物を送り続けたディーン皇帝だ。元々は父親のクレイ3世の指示であったとしても、実の母であるマクレデーナ皇太后に告白できるチャンスはいくらでもあったはずなのに、沈黙を続けて、指示に盲目に従った。理由は、自分がガーガリア元妃のような仕打ちを受けるのが嫌だったからだ。
そしてクレイ3世崩御後、自分の欲望の為にガーガリア元妃を利用した。だが、結果はあれだ。その薬物入りのシロップを飲み続けさせて、変わり果てて帰国したガーガリア元妃に対して、ディーン皇帝は人目がある場所では大事にする仕草をしていた。だが、プライベート空間で、誰もいない場所で、自分の足でまっすぐ立てないガーガリア元妃を蹴り飛ばし、激しい罵声を浴びせたそうだ。ガーガリア元妃は薬物中毒の為、そのシロップ以外受け付けなくなり、ガリガリに痩せてしまい、倒れたまま自力で起き上がれなくなっていた。
罵声を浴びせるのに夢中で、マクレデーナ皇太后がいたのに気がつかず。もちろん見て、聞いていたのは、他にもいた。ディーン皇帝の正室、側室達。そして、その子供達だ。
ぞろぞろと姿を現してくるのに、流石のディーン皇帝も驚いていたが、いつもの皇帝面をした。したが、マクレデーナ皇太后に勝てるわけない。様々な証拠を叩きつけ、口を挟む間もなく、ディーン皇帝が何をやらかしたか、正室、側室達、子供達にすべてばれてしまった。
「ディーン皇帝はそのうち健康上の理由で退位し、皇太子ルーブ殿下が即位。ディーン皇帝は隠居と言う形になりますが、専用監獄で残りの人生を過ごすでしょう」
マクレデーナ皇太后の怒りもそうだが、正室も側室達も呆れ返り、誰も味方に付かなかったそうだ。彼女達はディーン皇帝の妻だが、嫁いだのはアルティーナ帝国だ。何百年も友好関係を築いてきたユリアレーナと、下手をしたら開戦理由にすらなり得る状況を作ったディーン皇帝に、誰も寄り添わなかった。彼女達が守るのは皇族の血であり、アルティーナ帝国に住まう民である。
「それからディーン皇帝の名前で色々やらかしている貴族達もずいぶん粛清されます。今回の件を末端の役人だけに責任を負わせず、ディーン皇帝の今回まで指示に従った者、自ら望んで加担した者にも責を負わせるでしょう。密入国した闇ギルドはユリアレーナだけではなく、近隣諸国にも被害は及びます。加えてフェリアレーナ王女殿下の誘拐未遂です。こちらは襲撃未遂として発表されますが、当然国家反逆罪として、近々いくつかの貴族が取り潰しになるでしょう。すべてが、とはなりませんが、大なり小なり罰は受けるでしょう。ただ、皇帝の指示ゆえに断れなかった者に対しては、事情を知らずにいたその家族のみ、救済処置は行われるそうです」
「そうですか」
アルティーナ帝国の貴族って、首都であったあのギラギラスーツ。あまりイメージがよくないんだけどなあ。
これで、アルティーナ帝国は変わるのかな。
ガーガリア元妃は、静かに、お母さんの元で暮らせるかな。
「現在ガーガリア元妃はマクレデーナ皇太后の元で、静養されています。側室の1人がガーガリア元妃の幼なじみらしく、マクレデーナ皇太后に自らを世話役にと嘆願したそうです」
「そうですか」
そっか、色々悲しい目に合ったガーガリア元妃は、やっと静かに暮らせるんだ。良かった。本当に良かった。
「いずれアルティーナ帝国で発表され、こちらにも情報は流れてくるでしょうが、それまではご内密に」
「はい」
オダリスさんは紅茶を飲んで、ソファーから立ち上がる。あ、お帰りかな。
私達は玄関までお見送り。
まさに騎士といった一礼をして、オダリスさんは帰っていった。
私はオダリスさんを見送って、すぐにルームに向かう。
ダイニングキッチンのお地蔵さんの前でお祈り。
神様、もし、人質の家族がいるのなら、どうか助けて下さい。
すると、ごっそりと魔力を引き抜かれる。
あ、このペースはヤバい。私は自分のアイテムボックスから魔力回復ポーションを取り出し、一気飲み。まずう。
「どうしましたユイさんっ」
いつも私の後ろでお祈りしているチュアンさんが慌てている。
ポーション中毒になったことがあり、2本目を迷っていると、枯渇寸前で引き抜かれていたのが止まる。ああ、良かった。
だが、これは『神への祈り』が発動したんや。人質にされていた人達がいたんや。今ので、なんとかなったのだろうか?
「優衣、どうしたんね?」
母まで心配してきた。
「あのね、人質って話があったやん」
「うん」
「そんな人達がいたら、助けてくださいって祈ったんよ。そしたら、魔力が抜けたんよ」
「それは、つまり」
「人質にされている人達がいるってことや。やけど、『神への祈り』が発動したんや。きっと神様が助けてくれる」
私はもう一度、お祈り。
大丈夫じゃよ、彼らには、救助の手が差しのべられるよ
始祖神様の声が響く。
ああ、ありがとうございます。良かった、これで、今回の件は、私の中ですべてが終わった気がした。
同時刻、アルティーナ帝国内。ある田舎の町外れ廃墟となった屋敷内。
ふらりと冒険者パーティーが雨宿りのために入り込んだ所、地下から子供の泣き声に気がついて、恐る恐る覗き込んだ。
地下には、牢があり、中には、やせて汚れて弱りきった人達が、鎖に繋がれていた。
お互いに悲鳴を上げたが、牢に繋がれた人達は同じ言葉を吐き出した。
助けて、と。
冒険者パーティーはただ事ではないと悟り、廃墟から飛び出すと、雨は止んでいた。近くの町に救助要請に走り、無事に全員保護された。
鎖に繋がれていた人達は、自決した役人の家族と分かるとすぐに動いたのは、マクレデーナ皇太后だ。
いくら家族を人質にされていたとはいえ、闇ギルドの密入国に加担した役人の家族と後ろ指を指される彼らを、すべて自分が経営する保護院に引き取ったと。
そして、ディーン皇帝の退位、ルーブ皇太子の即位。ユリアレーナで暗躍していた闇ギルドに関わった貴族達の粛清。地位が低く従わざるを得なかった役人達の家族の救済処置…………………
すべて指揮をしたのは、マクレデーナ皇太后。
人々は、この顛末を聞いて、こう言う。
アルティーナ帝国女傑マクレデーナ皇太后、ここにあり、と。
御用聞きの冒険者さんと一緒に来たのは、オダリスさんだった。なんだろう?
後ろにいたホークさんが、晃太に何か言ってる。すると、何故か晃太は私に支援魔法発動した。
「おそらくあの襲撃犯達の件ですよ」
うっ。あの時のね。
一瞬、あの場面が浮かんだが、グロい映画のワンシーンにしか思えないのは、支援魔法のおかげや。
「ミズサワ殿。何の先触れもなく伺い申し訳ありません。お知らせしたいことがありまして」
と、丁寧にオダリスさんが言う。ビアンカもルージュも特に何も言わないので、御用聞きの冒険者さんにはお帰り頂き、オダリスさんをパーティーハウスにご案内した。
久しぶりのオダリスさんに、元気がぷりぷりとご挨拶に向かう。ただ、人見知りの花は相変わらずけたたましく吠える。私は台所の奥でルームを開けて、チュアンさんに花を託す。元気は食パンでエマちゃんとテオ君が、ルームの中庭まで誘導。他の仔達も見てもらう為に、マデリーンさんとミゲル君にも向かってもらう。晃太に間を繋げてもらい、私は異世界のメニューをタップ。さくら庵の日本産紅茶を選ぶ。お盆に載せて慎重に運ぶ。
居間には、ソファーにオダリスさんと両親と晃太。その後ろにはホークさんが立ち、ビアンカとルージュはごろり、としている。
「オダリスさん、どうぞ」
「ああ、ありがとうございます」
私はオダリスさんに紅茶を出して、ソファーに座る。
「で、何か分かりました」
「はい」
襲撃犯達から得た情報は、肝心な黒幕の名前が出てこなかった。ただ、密入国する時に加担した役人達は分かり、アルティーナとユリアレーナでも厳罰が下された。数人は拘留中に自決してしまったと。
「おそらくですが、そう訓練されたか、そうしないといけない程追い詰められたか」
「追い詰められたか? 理由は?」
「家族を人質にされている可能性があります。自決した役人のうち、家族の誰かが行方不明の者がおりましたから。今、全力で捜索し安否確認をしています」
なんて事になっているんだろう。それが本当なら、その自決した役人が気の毒過ぎない? 密入国に手を染めて、家族を守ろうとしたその役人。確かに、やってはいけないことだけど、当人にしてみたら、生きた心地がしなかったはず。
人質にされていないことだけを祈るしかないのか。神様に祈ろう。
アルティーナの反応は、やはりすべての責任を役人に押し付けるような形になりそうだ。
オダリスさんの説明は続くが、これから先は他言無用と言われた。
役人に責任を押し付けて、密入国の件を終わらせようとしたが、それに待ったをかけたのはマクレデーナ皇太后だ。未遂とはいえ、当時ユリアレーナ王国第一王位継承権を持つ、フェリアレーナ王女殿下の輿入れ行列の襲撃、それはアルティーナから密入国した闇ギルドにより行われたこと。変わり果てた姿で帰ってきた娘、ガーガリア元妃が薬物中毒になりながらも手放さなかった物を手にして、実の息子であるディーン皇帝を追い詰めた。
ディーン皇帝が皇太子時代から、ガーガリア元妃に送り続けた手紙を、薬物中毒で正常な判断ができない中、彼女は手放さなかった。それが父親の指示とは知らなくても、自分を支えてくれた手紙を、ガーガリア元妃が捨てるなんてことは出来なかった。実の兄が、思ってくれている。だから、カムル王子を喪ったガーガリア元妃はわがまま王妃を演じ続けることができた。そして侍女達が長年綴り続けた業務日誌。何より大きかったのはこの業務日誌だ。手紙と共に送られてきた果実のシロップに含まれる薬物濃度や、どれくらいの割合で割るかなど細かい指示の手紙がすべて保管されていたからだ。侍女達は、もしフェリアレーナ様を誘拐出来なかった時に、自分達が抹消対象になることを恐れ、破棄を指示されていたその指示書を隠し持ち続けた。
マクレデーナ皇太后が何より許せなかったのは、カムル王子を喪い、失望の底にいた実の妹に、本来の物静かな性格を失わせる程の薬物を送り続けたディーン皇帝だ。元々は父親のクレイ3世の指示であったとしても、実の母であるマクレデーナ皇太后に告白できるチャンスはいくらでもあったはずなのに、沈黙を続けて、指示に盲目に従った。理由は、自分がガーガリア元妃のような仕打ちを受けるのが嫌だったからだ。
そしてクレイ3世崩御後、自分の欲望の為にガーガリア元妃を利用した。だが、結果はあれだ。その薬物入りのシロップを飲み続けさせて、変わり果てて帰国したガーガリア元妃に対して、ディーン皇帝は人目がある場所では大事にする仕草をしていた。だが、プライベート空間で、誰もいない場所で、自分の足でまっすぐ立てないガーガリア元妃を蹴り飛ばし、激しい罵声を浴びせたそうだ。ガーガリア元妃は薬物中毒の為、そのシロップ以外受け付けなくなり、ガリガリに痩せてしまい、倒れたまま自力で起き上がれなくなっていた。
罵声を浴びせるのに夢中で、マクレデーナ皇太后がいたのに気がつかず。もちろん見て、聞いていたのは、他にもいた。ディーン皇帝の正室、側室達。そして、その子供達だ。
ぞろぞろと姿を現してくるのに、流石のディーン皇帝も驚いていたが、いつもの皇帝面をした。したが、マクレデーナ皇太后に勝てるわけない。様々な証拠を叩きつけ、口を挟む間もなく、ディーン皇帝が何をやらかしたか、正室、側室達、子供達にすべてばれてしまった。
「ディーン皇帝はそのうち健康上の理由で退位し、皇太子ルーブ殿下が即位。ディーン皇帝は隠居と言う形になりますが、専用監獄で残りの人生を過ごすでしょう」
マクレデーナ皇太后の怒りもそうだが、正室も側室達も呆れ返り、誰も味方に付かなかったそうだ。彼女達はディーン皇帝の妻だが、嫁いだのはアルティーナ帝国だ。何百年も友好関係を築いてきたユリアレーナと、下手をしたら開戦理由にすらなり得る状況を作ったディーン皇帝に、誰も寄り添わなかった。彼女達が守るのは皇族の血であり、アルティーナ帝国に住まう民である。
「それからディーン皇帝の名前で色々やらかしている貴族達もずいぶん粛清されます。今回の件を末端の役人だけに責任を負わせず、ディーン皇帝の今回まで指示に従った者、自ら望んで加担した者にも責を負わせるでしょう。密入国した闇ギルドはユリアレーナだけではなく、近隣諸国にも被害は及びます。加えてフェリアレーナ王女殿下の誘拐未遂です。こちらは襲撃未遂として発表されますが、当然国家反逆罪として、近々いくつかの貴族が取り潰しになるでしょう。すべてが、とはなりませんが、大なり小なり罰は受けるでしょう。ただ、皇帝の指示ゆえに断れなかった者に対しては、事情を知らずにいたその家族のみ、救済処置は行われるそうです」
「そうですか」
アルティーナ帝国の貴族って、首都であったあのギラギラスーツ。あまりイメージがよくないんだけどなあ。
これで、アルティーナ帝国は変わるのかな。
ガーガリア元妃は、静かに、お母さんの元で暮らせるかな。
「現在ガーガリア元妃はマクレデーナ皇太后の元で、静養されています。側室の1人がガーガリア元妃の幼なじみらしく、マクレデーナ皇太后に自らを世話役にと嘆願したそうです」
「そうですか」
そっか、色々悲しい目に合ったガーガリア元妃は、やっと静かに暮らせるんだ。良かった。本当に良かった。
「いずれアルティーナ帝国で発表され、こちらにも情報は流れてくるでしょうが、それまではご内密に」
「はい」
オダリスさんは紅茶を飲んで、ソファーから立ち上がる。あ、お帰りかな。
私達は玄関までお見送り。
まさに騎士といった一礼をして、オダリスさんは帰っていった。
私はオダリスさんを見送って、すぐにルームに向かう。
ダイニングキッチンのお地蔵さんの前でお祈り。
神様、もし、人質の家族がいるのなら、どうか助けて下さい。
すると、ごっそりと魔力を引き抜かれる。
あ、このペースはヤバい。私は自分のアイテムボックスから魔力回復ポーションを取り出し、一気飲み。まずう。
「どうしましたユイさんっ」
いつも私の後ろでお祈りしているチュアンさんが慌てている。
ポーション中毒になったことがあり、2本目を迷っていると、枯渇寸前で引き抜かれていたのが止まる。ああ、良かった。
だが、これは『神への祈り』が発動したんや。人質にされていた人達がいたんや。今ので、なんとかなったのだろうか?
「優衣、どうしたんね?」
母まで心配してきた。
「あのね、人質って話があったやん」
「うん」
「そんな人達がいたら、助けてくださいって祈ったんよ。そしたら、魔力が抜けたんよ」
「それは、つまり」
「人質にされている人達がいるってことや。やけど、『神への祈り』が発動したんや。きっと神様が助けてくれる」
私はもう一度、お祈り。
大丈夫じゃよ、彼らには、救助の手が差しのべられるよ
始祖神様の声が響く。
ああ、ありがとうございます。良かった、これで、今回の件は、私の中ですべてが終わった気がした。
同時刻、アルティーナ帝国内。ある田舎の町外れ廃墟となった屋敷内。
ふらりと冒険者パーティーが雨宿りのために入り込んだ所、地下から子供の泣き声に気がついて、恐る恐る覗き込んだ。
地下には、牢があり、中には、やせて汚れて弱りきった人達が、鎖に繋がれていた。
お互いに悲鳴を上げたが、牢に繋がれた人達は同じ言葉を吐き出した。
助けて、と。
冒険者パーティーはただ事ではないと悟り、廃墟から飛び出すと、雨は止んでいた。近くの町に救助要請に走り、無事に全員保護された。
鎖に繋がれていた人達は、自決した役人の家族と分かるとすぐに動いたのは、マクレデーナ皇太后だ。
いくら家族を人質にされていたとはいえ、闇ギルドの密入国に加担した役人の家族と後ろ指を指される彼らを、すべて自分が経営する保護院に引き取ったと。
そして、ディーン皇帝の退位、ルーブ皇太子の即位。ユリアレーナで暗躍していた闇ギルドに関わった貴族達の粛清。地位が低く従わざるを得なかった役人達の家族の救済処置…………………
すべて指揮をしたのは、マクレデーナ皇太后。
人々は、この顛末を聞いて、こう言う。
アルティーナ帝国女傑マクレデーナ皇太后、ここにあり、と。
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