文字の大きさ
大
中
小
362 / 878
連載
カルーラへ①
カルーラへの出発の日。
私は朝早めに起きて、バシャバシャと顔を洗った。いつもは泡でぽわっとしながらするけど、今日は気持ちを切り替える為にバシャバシャ。冷たい水ですっきり。よし、オッケー。
パーティーハウス内に忘れ物がないか確認して、鍵を冒険者ギルドに返却。リティアさんはいないので、わざわざストヴィエさんが受け取ってくれた。
「道中お気をつけて」
「ありがとうございます。リティアさんによろしくお伝えください」
「必ず。カルーラの冒険者ギルドにはパーティーハウスの件は伝えています」
「ありがとうございます」
挨拶してギルドを出る時、タージェルさんが見送りに来てくれた。
「ミズサワ様、どうぞお気をつけて」
「はい、ありがとうございます」
城門前には、ダイアナちゃんを連れて、パーカーさんとフィナさんが。
「お姉ちゃんっ」
ぱーっと走って来るダイアナちゃん。きゅうと抱き付いて来たので、きゅうと抱き締める。かわいか。
「ミズサワさん、お気をつけてください」
「こらダイアナ。ミズサワさん、どうかお気をつけて」
「お姉ちゃん、早く帰って来てね」
わざわざここまでダイアナちゃんを連れて、夫婦で見送りに来てくれた。ありがたい。嬉しか。話をしている間に、ホークさんとチュアンさんがノワールと馬車を繋ぐ。うちの両親もパーカーさん夫婦と挨拶を済ませる。ダイアナちゃんは私に抱き付いて、いつ帰って来るの? 早く帰って来てねと繰り返す。かわいか。本当にかわいか。名残惜しいが出発だ。
馭者台には私とホークさんが座る。仔達は並走だ。その内、馬車内でルームを開けて、入れよう。
「お姉ちゃんっ、早く帰って来てねっ」
ダイアナちゃんが手を振る。うっ、昨日に続いて目頭がっ。
「来年には帰って来るようにするからね」
出来るだけスムーズに『彼女さん』に会えるようにしたいなあ。
ノワールが進む寸前、す、と警備の人達が並び私達に一礼する。既に馭者台に座っていたので、慌ててそのままで頭を下げる。
初めてマーファに来たときに対応してくれた、警備の人が一歩前に。
「テイマー殿、ハルスフォン伯爵様より言付かっております。お見送りに行けず申し訳ない、どうかお気をつけて、と」
わあ、ありがたい。
ハルスフォン様、きっとお忙しいだろうに、わざわざ伝言を頂いた。
「ありがとうございます」
色んな人に見送られて、いざ、私達はマーファを出発した。
アルブレンまでは問題なく1週間で到着した。
「お帰りなさい、テイマーさん」
お元気そうなバラダーさんが迎えてくれた。お帰りなさいか、嬉しか。アルブレンの住民の皆さんも、何度も来ているので騒ぎにならず。あのウサギ肉の屋台に、ビアンカとルージュと仔達がきゅるんと並ぶので、出来るだけの大量発注。
冒険者ギルドに到着報告。ウルススさんが対応してくれた。晃太は搬送物の提出の為に別室に。ルージュとチュアンさん、マデリーンさんが付き添う。その間に宿の案内所に向かう。あのおばあちゃんが座っていた。ヒスイを見てまあ美人さんになってと、鼻がぐいっと伸びる。運良く、あのログハウスが空いていた。3泊することになる。ノワールを休ませたいし、ビアンカとルージュから散歩ビームが来たので、滞在が決まった。
晃太達と合流し、ログハウスに移動しながら、屋台により、大量にあちこちで購入する。
「今日はいまから森には行かんよ。暗くなるけんね。明日よ」
『『ぶーぶー』』
「わうーん」
「がうぅ」
『ぷー』
『ぷー』
『ぷー』
くっ、かわいかっ。しかし、今日はだめ。
ブーイングが飛ぶが、ダメよ。
ログハウスに移動して、その日は屋台飯で済ませた。
次の日。
ビアンカとルージュは朝早くから仔達を引き連れて、森に向かって出発した。ビアンカとルージュにはSサイズのマジックバッグ、元気とコハクにはAサイズのマジックバッグをぶら下げる。
「あんまり遅くならんよ」
『分かったのです』
『行くわよ、皆』
「わんわんっ」
「がるぅ」
「わんわんっ」
「わうーん」
「がうぅ」
………………………………………
爆走していくかわいかお尻を見送り、私は停止。
ヒスイがっ、ヒスイがっ、がうぅって言ったーっ。
にゃんにゃん言ってたヒスイがーっ。
いや、成長に伴うものやろうけどさっ、仕方ないことやけどさっ。にゃんにゃんヒスイがーっ。あああぁぁぁぁ、がうぅって、がうぅって、言ってたーっ。
いつまでも小さいままやないけど、ちょっとなあ、にゃんにゃん言ってたヒスイが。最近、ルージュの顔立ちに近くなってきている。いつかルージュみたいな猛獣特有の声になるだろうけどさ、なんだか、寂しかあ。
お尻、もう見えないや。足も早くなったなあ。成長したけど、ほっとしなくてはいけないのは分かっているけど、やっぱり寂しかあ。
私は勝手に寂しくなりながらも、見送った後、あちこち訪問する。
まずは無料教室だ。
伺うと、なんと建て直し最中だ。
近くに仮の教室があり、あの女性教師が来てくれた。
「まあ、テイマー様っ。お久し振りです」
嬉しそうに駆け寄ってきて、あれからの事を説明してくれた。
元々5つあった教室のうち3つが統合されることになり、少し大きな教室を作ることになったと。それで遠くから通わなくてはならない子達には、スクールバスならぬスクール馬車が出ることになったと。そして給食センターを併設していると。給食センター、それの原型はマーファでもうじき完成する給食センターを参考にして建設されることになったと。思ったより大掛かりになってる。お金、足りたかな? 女性教師の話だと、教室と給食センターの建立後、周囲を区画整理するそうだ。前々から、ちょっと不便だったので、話が進んでいると。
「完成には時間はかかりますが、今から子供達が楽しみにしています。給食の試験運用は始まり、通ってくる子供が増えているんです」
やはり1食だけでも、しっかり食べられるのは大きいようだ。現在はパンは幾つかのパンやさんが持ち回りで担当し、仮の調理場でスープを作って出していると。今は週2回通ううち、後半の日に給食があり、授業後食べて帰るスタイルだと。もちろん前半の授業を受けた子が対象だ。ウルススさんとバーズさんが頑張ってくれているようだ。
「まだまだ問題点はありますが、みな一丸となって対応しています」
女性教師の顔は輝いている。
思いつきで行った寄付がいいほうに向かっているようや、良かった。後で、お菓子かなんか、差し入れようかな。
私は挨拶して、無料教室を後にして、教会の孤児院に向かう。
屋根がすっかり新しくなった孤児院。ただ、子供達はビアンカとルージュ達がいないので、ちょっと不服そう。かわいかね。
対応してくれたシスターさんがしきりに感謝してくれた。あれから、元は私が稼いだお金でないが、ビアンカとルージュに寄付の事は話している。
マーファの春祭りで購入した小銭入れに、大金貨30枚。服や靴、下着に靴下、シーツにタオル、文具類や食器類に調理器具、生活に必要だと思えるものを寄付。
シスターさんは最初は感謝が極まるって感じだったけど、晃太のアイテムボックスから際限なく出てくる品々に、固まっていたけどね。
私は朝早めに起きて、バシャバシャと顔を洗った。いつもは泡でぽわっとしながらするけど、今日は気持ちを切り替える為にバシャバシャ。冷たい水ですっきり。よし、オッケー。
パーティーハウス内に忘れ物がないか確認して、鍵を冒険者ギルドに返却。リティアさんはいないので、わざわざストヴィエさんが受け取ってくれた。
「道中お気をつけて」
「ありがとうございます。リティアさんによろしくお伝えください」
「必ず。カルーラの冒険者ギルドにはパーティーハウスの件は伝えています」
「ありがとうございます」
挨拶してギルドを出る時、タージェルさんが見送りに来てくれた。
「ミズサワ様、どうぞお気をつけて」
「はい、ありがとうございます」
城門前には、ダイアナちゃんを連れて、パーカーさんとフィナさんが。
「お姉ちゃんっ」
ぱーっと走って来るダイアナちゃん。きゅうと抱き付いて来たので、きゅうと抱き締める。かわいか。
「ミズサワさん、お気をつけてください」
「こらダイアナ。ミズサワさん、どうかお気をつけて」
「お姉ちゃん、早く帰って来てね」
わざわざここまでダイアナちゃんを連れて、夫婦で見送りに来てくれた。ありがたい。嬉しか。話をしている間に、ホークさんとチュアンさんがノワールと馬車を繋ぐ。うちの両親もパーカーさん夫婦と挨拶を済ませる。ダイアナちゃんは私に抱き付いて、いつ帰って来るの? 早く帰って来てねと繰り返す。かわいか。本当にかわいか。名残惜しいが出発だ。
馭者台には私とホークさんが座る。仔達は並走だ。その内、馬車内でルームを開けて、入れよう。
「お姉ちゃんっ、早く帰って来てねっ」
ダイアナちゃんが手を振る。うっ、昨日に続いて目頭がっ。
「来年には帰って来るようにするからね」
出来るだけスムーズに『彼女さん』に会えるようにしたいなあ。
ノワールが進む寸前、す、と警備の人達が並び私達に一礼する。既に馭者台に座っていたので、慌ててそのままで頭を下げる。
初めてマーファに来たときに対応してくれた、警備の人が一歩前に。
「テイマー殿、ハルスフォン伯爵様より言付かっております。お見送りに行けず申し訳ない、どうかお気をつけて、と」
わあ、ありがたい。
ハルスフォン様、きっとお忙しいだろうに、わざわざ伝言を頂いた。
「ありがとうございます」
色んな人に見送られて、いざ、私達はマーファを出発した。
アルブレンまでは問題なく1週間で到着した。
「お帰りなさい、テイマーさん」
お元気そうなバラダーさんが迎えてくれた。お帰りなさいか、嬉しか。アルブレンの住民の皆さんも、何度も来ているので騒ぎにならず。あのウサギ肉の屋台に、ビアンカとルージュと仔達がきゅるんと並ぶので、出来るだけの大量発注。
冒険者ギルドに到着報告。ウルススさんが対応してくれた。晃太は搬送物の提出の為に別室に。ルージュとチュアンさん、マデリーンさんが付き添う。その間に宿の案内所に向かう。あのおばあちゃんが座っていた。ヒスイを見てまあ美人さんになってと、鼻がぐいっと伸びる。運良く、あのログハウスが空いていた。3泊することになる。ノワールを休ませたいし、ビアンカとルージュから散歩ビームが来たので、滞在が決まった。
晃太達と合流し、ログハウスに移動しながら、屋台により、大量にあちこちで購入する。
「今日はいまから森には行かんよ。暗くなるけんね。明日よ」
『『ぶーぶー』』
「わうーん」
「がうぅ」
『ぷー』
『ぷー』
『ぷー』
くっ、かわいかっ。しかし、今日はだめ。
ブーイングが飛ぶが、ダメよ。
ログハウスに移動して、その日は屋台飯で済ませた。
次の日。
ビアンカとルージュは朝早くから仔達を引き連れて、森に向かって出発した。ビアンカとルージュにはSサイズのマジックバッグ、元気とコハクにはAサイズのマジックバッグをぶら下げる。
「あんまり遅くならんよ」
『分かったのです』
『行くわよ、皆』
「わんわんっ」
「がるぅ」
「わんわんっ」
「わうーん」
「がうぅ」
………………………………………
爆走していくかわいかお尻を見送り、私は停止。
ヒスイがっ、ヒスイがっ、がうぅって言ったーっ。
にゃんにゃん言ってたヒスイがーっ。
いや、成長に伴うものやろうけどさっ、仕方ないことやけどさっ。にゃんにゃんヒスイがーっ。あああぁぁぁぁ、がうぅって、がうぅって、言ってたーっ。
いつまでも小さいままやないけど、ちょっとなあ、にゃんにゃん言ってたヒスイが。最近、ルージュの顔立ちに近くなってきている。いつかルージュみたいな猛獣特有の声になるだろうけどさ、なんだか、寂しかあ。
お尻、もう見えないや。足も早くなったなあ。成長したけど、ほっとしなくてはいけないのは分かっているけど、やっぱり寂しかあ。
私は勝手に寂しくなりながらも、見送った後、あちこち訪問する。
まずは無料教室だ。
伺うと、なんと建て直し最中だ。
近くに仮の教室があり、あの女性教師が来てくれた。
「まあ、テイマー様っ。お久し振りです」
嬉しそうに駆け寄ってきて、あれからの事を説明してくれた。
元々5つあった教室のうち3つが統合されることになり、少し大きな教室を作ることになったと。それで遠くから通わなくてはならない子達には、スクールバスならぬスクール馬車が出ることになったと。そして給食センターを併設していると。給食センター、それの原型はマーファでもうじき完成する給食センターを参考にして建設されることになったと。思ったより大掛かりになってる。お金、足りたかな? 女性教師の話だと、教室と給食センターの建立後、周囲を区画整理するそうだ。前々から、ちょっと不便だったので、話が進んでいると。
「完成には時間はかかりますが、今から子供達が楽しみにしています。給食の試験運用は始まり、通ってくる子供が増えているんです」
やはり1食だけでも、しっかり食べられるのは大きいようだ。現在はパンは幾つかのパンやさんが持ち回りで担当し、仮の調理場でスープを作って出していると。今は週2回通ううち、後半の日に給食があり、授業後食べて帰るスタイルだと。もちろん前半の授業を受けた子が対象だ。ウルススさんとバーズさんが頑張ってくれているようだ。
「まだまだ問題点はありますが、みな一丸となって対応しています」
女性教師の顔は輝いている。
思いつきで行った寄付がいいほうに向かっているようや、良かった。後で、お菓子かなんか、差し入れようかな。
私は挨拶して、無料教室を後にして、教会の孤児院に向かう。
屋根がすっかり新しくなった孤児院。ただ、子供達はビアンカとルージュ達がいないので、ちょっと不服そう。かわいかね。
対応してくれたシスターさんがしきりに感謝してくれた。あれから、元は私が稼いだお金でないが、ビアンカとルージュに寄付の事は話している。
マーファの春祭りで購入した小銭入れに、大金貨30枚。服や靴、下着に靴下、シーツにタオル、文具類や食器類に調理器具、生活に必要だと思えるものを寄付。
シスターさんは最初は感謝が極まるって感じだったけど、晃太のアイテムボックスから際限なく出てくる品々に、固まっていたけどね。
感想 867
あなたにおすすめの小説
「今日限りで君を解雇する」――20年仕えた地味なメイドですが、料理も手紙も暗殺者対策も私がやっていました
「エナメル。今日限りで君を解雇する」
20年仕えた屋敷をクビになった、地味なエルフのメイド・エナメル。
だが、晩餐会の料理も、侯爵への手紙も、調度品の手配も、屋敷を狙う暗殺者の処理も――すべて彼女が陰で支えていたものだった。
エナメルが去ったあと、屋敷は少しずつ綻び始める。
一方の本人は、そんなことも知らず。
「さて。次はどこで雇っていただきましょう」
地味で目立たないベテランメイド・エナメルの、新しい奉公先探しが始まる。
※本作は『メイドのエナメルは今日も静かにお仕えします』シリーズの第1作です。本作単体でもお楽しみいただけます。
異世界転移した僕と彼のスキルは「貯金箱」と「犬」だったので即追放。でもこれが意外と強かった
高校の英語の授業中、勇者召喚で僕たちクラスメイト7名は異世界にやって来た。
目的は魔王討伐では無くて、高難易度ダンジョンの封印?!
でも僕ユイトのスキルは「貯金箱」、エイジは「犬」。
役立たず認定で、二人とも城を追放されてしまった。
のんびり暮らそうとしたけどそうもいかなくなって。
僕たちは奇妙なスキルを駆使して異世界で生き延びる。
緩~いファンタージ物語です。のんびりと書いていきます。
本文はなるべく簡潔に、サクサク進むようにしています。
暇つぶしに読んでいただいて、楽しんでくださると嬉しいです。
なろう様にも投稿。
捨てられた幼女ですが、公爵家に拾われたら家族みんなの愛が重すぎました
幼い頃に母親に捨てられ、孤児院で暮らしていた少女リリア。
「役に立たなければ、また捨てられる」
そう思い、いつも“いい子”でいようとしていた彼女は、ある日、公爵家の馬車を助けたことをきっかけに屋敷へ招かれる。
そこで待っていたのは、娘に甘すぎる公爵夫妻に、妹を構いたがるレオン、そしてリリアを甘やかしたい使用人たち。
戸惑いながらも、少しずつ公爵家に居場所を見つけていくリリア。やがて夫妻から「私たちの娘になってほしい」と告げられて――。
これは、捨てられないために“いい子”でいようとしていた少女が、重すぎるほどの愛情に包まれ、本当の家族を見つけていく物語。
初夜のあとに愛する人がいると言われたので祝福で身体の時間を一日戻しました
夫婦となって初めて迎えた夜、セレンティアは夫リオールから「俺には、愛する人がいる」と告げられる。
彼が初夜を済ませた理由は、三年後に白い結婚として婚姻無効を申し立てられないようにするためだった。
けれどリオールは知らなかった。セレンティアの祝福《一日回帰》が、自分自身の身体にも使えることを。
セレンティアは自分の身体の時間を一日前へ戻し、三年間、侯爵家の妻として務めを果たすことを決める。
夫に愛されるためではない。三年後、白い結婚としてこの家を出ていくために。
番の証が出ないと捨てられたので、神様に確かめてもらいます
「番の証が出ぬからだ」
和平のために獣人国へ嫁いで四年。獣王ガイウス様との儀式は三度、三度とも証は出ませんでした。「人間の娘では神は認めぬ」——そう言われて、離宮へ。
雨漏りの下で眠り、井戸をさらい、畑を耕して。泣かなかったのは強いからではありません。獣人には、匂いでわかってしまうから。
嫁ぐ前に三年かけて読み込んだ婚姻法典。その第四章に、こうありました。
『既に誓いを結びたる者が、重ねて他者と誓いを立てんとする時、神は後の誓いを認めず』
——証が出なかったのは、わたしが人間だからではない。
長老会に申し立てたのは、解釈の確認だけ。わたしは悪くない、とは一言も書きませんでした。
遡誓の儀で神殿に浮かんだのは、六年前の秋の「成立」と、わたしの三度の「不成立(重複)」でした。
飛べないと捨てられたので、竜ごと出て行きます
「お前は竜に乗れもしない、ただの妻だろう」
竜騎士団長の夫はそう言って、飛べる従騎士の娘を選びましたわ。
ええ、わたくしは飛べません。十二年、地上におりました。
夜明け前に三十一頭の寝息を数え、歯を磨き、爪の砂を取り、冬に毛布を掛け、契約を編んで。——この国でただひとりの「調律者」として。
竜は、人を乗せない生き物ですのよ。竜自身が「乗せてもいい」と決めない限り。そして竜が誰の言葉で頷いてきたか、あの方は十二年、一度もお考えにならなかった。
離縁されて、わたくしは竜舎を出ました。
三日後から、竜は一頭も飛ばなくなりましたの。
怒っているのではありませんのよ。竜は報復をしませんもの。ただ——寂しいのです。
そして来月は、三年に一度の、契約更新日ですわ。
土下座する王妃の座などいらないので、冒険者に転職します。
「私が愛しているのはエルナ。君だけだ」
エルナは自分の夫でありハーメルン王国の国王であるカメルを愛していた。
彼がどれほど自分より隣国の聖女を優先しようとも。
結婚して二年が経っても初夜を迎えたことがなかろうとも。
しかし。
「エルナ。君に失望した。聖女を陥れていじめるとはな。罪を認め、ひざまずいて謝罪するように」
一年に一度の建国記念宴会であり結婚記念日に、カメルはすべての貴族や外国の使節団が見ている前で、エルナに身に覚えのない罪を認めろと断罪した。
愛が壊れるのは一瞬。
だからこそ、エルナはその場でひざまずいた。頭を地面にこすりつけて謝罪した。
「聖女を陰謀にかけた大罪人エルナは、この時間をもって王妃の座から退き、平民となりますことをお許しください。聖女様とどうかお幸せに」
*ゆるい設定です。不快に思われる方はブラウザバックをお願いします。
婚約破棄を受け入れた瞬間、王太子殿下が青ざめました
王都でもっとも華やかな春の夜会。その中央で、王太子エドワードは冷ややかな目を婚約者へ向けていた。
「リリアーナ・フォン・アルベルト公爵令嬢。君との婚約を、ここで破棄する」
会場が一瞬で静まり返る。
リリアーナは淡い金髪を揺らし、静かに王太子を見つめ返した。
「理由を、お聞きしてもよろしいでしょうか」
「理由など明白だ。君は嫉妬深く、心が狭い。それに比べ、私は真実の愛を見つけた」
そう言ってエドワードが隣へ引き寄せたのは、男爵令嬢のセシリアだった。