文字の大きさ
大
中
小
370 / 878
連載
カルーラへ⑨
その後、後片付けして、馬車内で小さくルームに入り、交代でお風呂を済ませる。朝ごはんの準備も済ませた。ディレックスは夜遅くまで空いているから便利。
念のため、馬車内で休む事に。久しぶりに花と寝るかね。もふもふ。お尻もふもふ。しかし、花は母の布団に潜り込む。あはははん、花ちゃーん。
「お母さんがよかね、そうよね、ブラッシングやご飯は全部お母さんよね~」
布団に潜り込み、枕に当たり前のように頭を乗せる花に頬擦りする母。くっ、正論っ。
仕方なか諦めて寝るか。ちょっと前まで仔達も布団に入って来たのに、今じゃ一番小さかったヒスイも無理なサイズや。シングルは無理や、せめてダブルくらいやなあ。なんて思いながら、布団をかぶりなおした。
明日、やっとカルーラだ。
次の日。
「おはようございます」
「おはようございますユイさん」
ホークさんがハートマークを飛ばすレディ・ロストークを撫でてる。本当に懐いているのね。
ビアンカとルージュ、仔達はまだ寝てる。元気は変わらず男の子全開。
「ユイさん、おはようございますっ」
「おはようございますっ」
エマちゃんとテオ君が駆けてくる。
「おはよう」
元気やね。よしよし。
さ、朝ごはんの準備するかね。眠そうな晃太が、簡易テーブルを出して、鍋やパンを出している。私はまずはパメラさんのチェックを父と行う。悪化ないようや、良かった。カルーラまで私達の馬車に乗ってもらう。
次はパーヴェルさんと話すことになる。昨日使用したポーション代だ。何を何本使用したか覚えてない。
「そんな訳にはいかない。部下や魔法馬を救ってくれた、タダとはいきません。食事も随分いただきましたし」
「と、言われても何本使ったかなあ? 上級と中級それぞれ、だいたい30本位です。あ、そうだ。全部それをカルーラの孤児院に寄付してください」
パーヴェルさんは、首を傾げる。
「それだけでいいんですか?」
「はい。あ、それから街に入るの待つのが…………」
「それでしたら、我らが同行しますからご心配なく。ギルドまでお付き合いしますよ。貴女は恩人だ、いずれカルーラ領主である父から謝礼があると思います」
なんとパーヴェルさん、カルーラ領主イコスティ辺境伯の息子さん。長男さんだって。
「ありがとうございます」
「それから」
パーヴェルさんはポリポリとほほをかく。
「個人的にお願いがありまして、カルーラで落ち着かれてから、お伺いしても?」
「構いませんが」
なんやろ? は、まさかホークさんの引き抜き? 非常に困る。断固拒否せんと。レディ・ロストークはホークさんに変わらずすり寄ってる。
「はい、数日間しか私達はいませんが」
「それでも」
食い下がるパーヴェルさん。ピシャッと断らんとね。
さ、朝ごはん。
ディレックスのパックのコーンポタージュ。いそいそと皆さん並んでる。私はパメラさんにコーンポタージュとディレックスのライ麦パンを搬送。しきりに恐縮していたけど、しっかり栄養取らんとね。
私達も交代で軽く朝ごはんにする。
母特製サラダモーニングをビアンカとルージュ、仔達も起きてきてもりもりと食べている。
『ねえ、ユイ、今日は何が食べれるのです?』
『エビがいいわ』
「はいはい。でも昨日のオルク変やったね。ビアンカとルージュ見て引かんのは」
『ああ、それならあいつらハイになっていたと思うのです』
「ハイ?」
ペロリ、と口を舐めるビアンカ。
たまに魔の森に住む魔物が混乱して、溢れ出す事があると。俗に言う魔物の氾濫(スタンピード)ね。
「原因は分からないん?」
『知らないのです』
『そうね、分からないわ。私達はハイにはならないもの』
ハイ、つまり混乱する魔物は下級や中級の魔物。ハイになっている時は、まったく食事を取らず、ひたすら破壊行動して大概は餓死するか、寸前で目が覚める。ほとんどが魔の森を出る前に力尽きるが、昨日の様に相手が騎馬隊でも襲いかかる。
ビアンカが念のために、森に逃げ帰ったオルクを始末した後周囲を魔法で調べて巣はあったそうだが、もぬけの殻。本来、知恵の魔物であるオルクは、絶対に巣を無人にしない。
『それに腹を裂いてみたのですが、空っぽだったのです。それも1匹だけではなかったのです』
『完全にハイになっていたのね。道理で引かない訳だわ』
う、ご飯後で良かった。
今まさに、混乱を起こす時期なんかね? だけど、ビアンカもルージュも発生条件は分からないって。ちら、とパーヴェルさんにその事を伝えると、物凄い形相になったが、原因不明と伝えると、まさにがっくりしていた。
さ、片付けて、と。
私は馭者台にホークさんと並ぶ。
「では、参りましょう」
レディ・ロストークに跨がったパーヴェルさんを先頭に出発した。
カルーラに問題なく到着、並んでいるのに申し訳ないが追い越す。門番の人達が慌てて動いている。私達の全員の身分証をチェック。
「パーヴェル様、よくぞご無事で」
「帰還した。領主に連絡を」
パーヴェルさんは数人に指示を出して、半数以上は騎士団の詰所に戻る。パメラさんともお別れ。深々と頭を下げていった。結局、チュアンさんはパメラさんにかけた治療魔法の代金を要求しなかった。もし支払うのであれば、主人の私に、と。本来、所属している奴隷が治療魔法を使ったら主人の私が受け取り、そのうち何割か渡すものなんだって。私はチュアンさんが全額受け取るべきだと思うけど、1割でも首を縦に振らない。仕方ない、孤児院の寄付に上乗せしてもらい、チュアンさんには何か甘いものでもチョイスするかね。何人かは領主に報告に走り、残りのパーヴェルさん含む5人ほど私達に付き添いギルドに向かう。
カルーラはマーファクラスに大きいし、行き交う人がたくさんいる。街も活気づいているし、建物もレンガ造りで、まるでヨーロッパの町並みや。行ったことないけど。あちこち露店があり、野菜やパンが並んでいる。
ビアンカとルージュ、仔達にざわざわされたけど、やはりパーヴェルさん達の存在が大きく騒ぎにならなかった。
ギルドに無事到着。ふう。良かった。
パーヴェルさんはわざわざ中まで着いてきてくれた。
カルーラのギルドは大きい。ノワールは付いてきてくれた騎士に預ける。
『ねえね、ねえね、ひすい、眠い~』
いつもなら、朝ごはんのあとの一眠りがなかったもんね。ルリとクリスも眠そう。花は母の抱っこひもの中だ。元気とコハクは探検したそうだが、しっかりリードしています。
ずらりと並ぶ冒険者の皆さん。閉まっていたカウンターが1つ開いて、パーヴェルさんが誘導してくれる。いいのかな? 並んでいる冒険者にペコリペコリ。
「テイマーのミズサワ様。マーファのギルドより連絡を受けております。どうぞ此方へ」
どうやら別室に案内されるようや。
晃太のみ搬送物の為に別行動。チュアンさんとミゲル君がついてくれる。流石に残り皆で行けないので、ギルドのホールで両親と花、マデリーンさん、エマちゃんとテオ君、ルージュと元気、コハク、ヒスイが残る。ビアンカとルリとクリス、ホークさんが着いてきてくれる。
パーヴェルさんはここでお別れかと思ったが、どうやら最後まで付き添ってくれるようや。ホールではあの若い騎士グラメさんと、赤毛の騎士、此方はスタンさんが待ってくれると。
私達は案内されて応接室に案内される。
勧められて、ソファーに腰かける。ホークさんは定位置で立つ。パーヴェルさんは別のソファーに座る。ビアンカはごろり、ルリとクリスはしばらくクンクンして、丸くなる。
直ぐに来たのは、いかにも事務官と言う感じの男性。
「お待たせしましたミズサワ様。事務局長のラソンと申します」
丁寧にご挨拶してくれる。私もご挨拶。
「マーファの冒険者ギルドより連絡を受けております。まずはパーティーハウスの件からで宜しいですか?」
「はい」
「ご希望されているパーティーハウスは庭が広めとお聞きしました。現在2軒ございます」
内容を聞くと、庭と共に建物も大きな物件と、その半分くらいの物件。両方とも倉庫もあれば、魔道具も揃っている。対応もマーファと変わらない。私は後者を選ぶ。聞いたら半分くらいの物件とはいえ、一家4人でも十分な広さのようだしね。
長期使用も出きるから、念のために半年契約する。書類にサインと魔力でよし。
次は、オルクがカルーラの騎士団を襲い、私達が助力したこと。
私はビアンカから聞いた、ハイになっていたこと、巣はもぬけの殻だったこと、全滅させたことを説明。そのハイになる原因が分からない事に、ラソンさんはがっかりしている。
「しかし、ミズサワ様が大討伐に参加していただければ、これ程心強い事はありません」
ラソンさんとパーヴェルさんがうんうんと頷いている。
ん?
「あの、私達は大討伐には参加しませんよ」
「「はい?」」
声が重なる。
「あのミズサワ様、この時期に此方にいらっしゃったのは、大討伐ではないのですか?」
「何の目的でカルーラに? しかも長期間こちらに滞在されますよね?」
なんだろう、必死のようだけど。
『敵意はないのですが、ひどく焦っているのです』
理由は分からないけど、そうなんだろう。魔物の間引き作業ね。大々的にするらしいけど。
「ちょっと知り合いに会いに」
まさか魔境にビアンカとルージュの知り合い『彼女さん』に会いに行きますとは言えない。言えないけど、お二人の形相が凄いことになってて、納得してくれなさそう。
なんとかごまかそう。
「あー、大討伐には参加しませんが、しばらくは魔の森には籠りますよ」
嘘でない。
それを聞くと、納得したような、してないような。
『ユイ、元気達の鍛練とでも言ったら納得するかもなのです』
ナイスアイディアッ。
「実は元気達、従魔の仔達の鍛練もありまして、はい」
誤魔化し誤魔化し。
「成る程そうでしたか」
ラソンさんは納得。
「それで長期に?」
パーヴェルさんは、ふーん、みたいな。
「はい、4~5カ月予定です。私達は付き添いですね」
ふーんなパーヴェルさんは、なんとか納得してくれた。
「その鍛練期間で出来れば間引きをしていただけませんか? 今回のオルクの件があります。スタンピードの可能性を少しでも排除したいのです」
確かに、あんなハイになったオルクや魔物が出てきたら大惨事や。
「ビアンカ、どう?」
『ハイになっているやつの排除なのですね。いいのですよ』
「分かりました」
私の答えに、ラソンさんは安心した様子。
それから今回の助力した件で、後日、領主より謝礼が出るそうだ。オルクには魔石を有しているものは、買取してくれる。
明後日には査定が出るそうだ。
時間を確認して、しばらくして晃太が合流したので、パーティーハウスに向かうことになった。
念のため、馬車内で休む事に。久しぶりに花と寝るかね。もふもふ。お尻もふもふ。しかし、花は母の布団に潜り込む。あはははん、花ちゃーん。
「お母さんがよかね、そうよね、ブラッシングやご飯は全部お母さんよね~」
布団に潜り込み、枕に当たり前のように頭を乗せる花に頬擦りする母。くっ、正論っ。
仕方なか諦めて寝るか。ちょっと前まで仔達も布団に入って来たのに、今じゃ一番小さかったヒスイも無理なサイズや。シングルは無理や、せめてダブルくらいやなあ。なんて思いながら、布団をかぶりなおした。
明日、やっとカルーラだ。
次の日。
「おはようございます」
「おはようございますユイさん」
ホークさんがハートマークを飛ばすレディ・ロストークを撫でてる。本当に懐いているのね。
ビアンカとルージュ、仔達はまだ寝てる。元気は変わらず男の子全開。
「ユイさん、おはようございますっ」
「おはようございますっ」
エマちゃんとテオ君が駆けてくる。
「おはよう」
元気やね。よしよし。
さ、朝ごはんの準備するかね。眠そうな晃太が、簡易テーブルを出して、鍋やパンを出している。私はまずはパメラさんのチェックを父と行う。悪化ないようや、良かった。カルーラまで私達の馬車に乗ってもらう。
次はパーヴェルさんと話すことになる。昨日使用したポーション代だ。何を何本使用したか覚えてない。
「そんな訳にはいかない。部下や魔法馬を救ってくれた、タダとはいきません。食事も随分いただきましたし」
「と、言われても何本使ったかなあ? 上級と中級それぞれ、だいたい30本位です。あ、そうだ。全部それをカルーラの孤児院に寄付してください」
パーヴェルさんは、首を傾げる。
「それだけでいいんですか?」
「はい。あ、それから街に入るの待つのが…………」
「それでしたら、我らが同行しますからご心配なく。ギルドまでお付き合いしますよ。貴女は恩人だ、いずれカルーラ領主である父から謝礼があると思います」
なんとパーヴェルさん、カルーラ領主イコスティ辺境伯の息子さん。長男さんだって。
「ありがとうございます」
「それから」
パーヴェルさんはポリポリとほほをかく。
「個人的にお願いがありまして、カルーラで落ち着かれてから、お伺いしても?」
「構いませんが」
なんやろ? は、まさかホークさんの引き抜き? 非常に困る。断固拒否せんと。レディ・ロストークはホークさんに変わらずすり寄ってる。
「はい、数日間しか私達はいませんが」
「それでも」
食い下がるパーヴェルさん。ピシャッと断らんとね。
さ、朝ごはん。
ディレックスのパックのコーンポタージュ。いそいそと皆さん並んでる。私はパメラさんにコーンポタージュとディレックスのライ麦パンを搬送。しきりに恐縮していたけど、しっかり栄養取らんとね。
私達も交代で軽く朝ごはんにする。
母特製サラダモーニングをビアンカとルージュ、仔達も起きてきてもりもりと食べている。
『ねえ、ユイ、今日は何が食べれるのです?』
『エビがいいわ』
「はいはい。でも昨日のオルク変やったね。ビアンカとルージュ見て引かんのは」
『ああ、それならあいつらハイになっていたと思うのです』
「ハイ?」
ペロリ、と口を舐めるビアンカ。
たまに魔の森に住む魔物が混乱して、溢れ出す事があると。俗に言う魔物の氾濫(スタンピード)ね。
「原因は分からないん?」
『知らないのです』
『そうね、分からないわ。私達はハイにはならないもの』
ハイ、つまり混乱する魔物は下級や中級の魔物。ハイになっている時は、まったく食事を取らず、ひたすら破壊行動して大概は餓死するか、寸前で目が覚める。ほとんどが魔の森を出る前に力尽きるが、昨日の様に相手が騎馬隊でも襲いかかる。
ビアンカが念のために、森に逃げ帰ったオルクを始末した後周囲を魔法で調べて巣はあったそうだが、もぬけの殻。本来、知恵の魔物であるオルクは、絶対に巣を無人にしない。
『それに腹を裂いてみたのですが、空っぽだったのです。それも1匹だけではなかったのです』
『完全にハイになっていたのね。道理で引かない訳だわ』
う、ご飯後で良かった。
今まさに、混乱を起こす時期なんかね? だけど、ビアンカもルージュも発生条件は分からないって。ちら、とパーヴェルさんにその事を伝えると、物凄い形相になったが、原因不明と伝えると、まさにがっくりしていた。
さ、片付けて、と。
私は馭者台にホークさんと並ぶ。
「では、参りましょう」
レディ・ロストークに跨がったパーヴェルさんを先頭に出発した。
カルーラに問題なく到着、並んでいるのに申し訳ないが追い越す。門番の人達が慌てて動いている。私達の全員の身分証をチェック。
「パーヴェル様、よくぞご無事で」
「帰還した。領主に連絡を」
パーヴェルさんは数人に指示を出して、半数以上は騎士団の詰所に戻る。パメラさんともお別れ。深々と頭を下げていった。結局、チュアンさんはパメラさんにかけた治療魔法の代金を要求しなかった。もし支払うのであれば、主人の私に、と。本来、所属している奴隷が治療魔法を使ったら主人の私が受け取り、そのうち何割か渡すものなんだって。私はチュアンさんが全額受け取るべきだと思うけど、1割でも首を縦に振らない。仕方ない、孤児院の寄付に上乗せしてもらい、チュアンさんには何か甘いものでもチョイスするかね。何人かは領主に報告に走り、残りのパーヴェルさん含む5人ほど私達に付き添いギルドに向かう。
カルーラはマーファクラスに大きいし、行き交う人がたくさんいる。街も活気づいているし、建物もレンガ造りで、まるでヨーロッパの町並みや。行ったことないけど。あちこち露店があり、野菜やパンが並んでいる。
ビアンカとルージュ、仔達にざわざわされたけど、やはりパーヴェルさん達の存在が大きく騒ぎにならなかった。
ギルドに無事到着。ふう。良かった。
パーヴェルさんはわざわざ中まで着いてきてくれた。
カルーラのギルドは大きい。ノワールは付いてきてくれた騎士に預ける。
『ねえね、ねえね、ひすい、眠い~』
いつもなら、朝ごはんのあとの一眠りがなかったもんね。ルリとクリスも眠そう。花は母の抱っこひもの中だ。元気とコハクは探検したそうだが、しっかりリードしています。
ずらりと並ぶ冒険者の皆さん。閉まっていたカウンターが1つ開いて、パーヴェルさんが誘導してくれる。いいのかな? 並んでいる冒険者にペコリペコリ。
「テイマーのミズサワ様。マーファのギルドより連絡を受けております。どうぞ此方へ」
どうやら別室に案内されるようや。
晃太のみ搬送物の為に別行動。チュアンさんとミゲル君がついてくれる。流石に残り皆で行けないので、ギルドのホールで両親と花、マデリーンさん、エマちゃんとテオ君、ルージュと元気、コハク、ヒスイが残る。ビアンカとルリとクリス、ホークさんが着いてきてくれる。
パーヴェルさんはここでお別れかと思ったが、どうやら最後まで付き添ってくれるようや。ホールではあの若い騎士グラメさんと、赤毛の騎士、此方はスタンさんが待ってくれると。
私達は案内されて応接室に案内される。
勧められて、ソファーに腰かける。ホークさんは定位置で立つ。パーヴェルさんは別のソファーに座る。ビアンカはごろり、ルリとクリスはしばらくクンクンして、丸くなる。
直ぐに来たのは、いかにも事務官と言う感じの男性。
「お待たせしましたミズサワ様。事務局長のラソンと申します」
丁寧にご挨拶してくれる。私もご挨拶。
「マーファの冒険者ギルドより連絡を受けております。まずはパーティーハウスの件からで宜しいですか?」
「はい」
「ご希望されているパーティーハウスは庭が広めとお聞きしました。現在2軒ございます」
内容を聞くと、庭と共に建物も大きな物件と、その半分くらいの物件。両方とも倉庫もあれば、魔道具も揃っている。対応もマーファと変わらない。私は後者を選ぶ。聞いたら半分くらいの物件とはいえ、一家4人でも十分な広さのようだしね。
長期使用も出きるから、念のために半年契約する。書類にサインと魔力でよし。
次は、オルクがカルーラの騎士団を襲い、私達が助力したこと。
私はビアンカから聞いた、ハイになっていたこと、巣はもぬけの殻だったこと、全滅させたことを説明。そのハイになる原因が分からない事に、ラソンさんはがっかりしている。
「しかし、ミズサワ様が大討伐に参加していただければ、これ程心強い事はありません」
ラソンさんとパーヴェルさんがうんうんと頷いている。
ん?
「あの、私達は大討伐には参加しませんよ」
「「はい?」」
声が重なる。
「あのミズサワ様、この時期に此方にいらっしゃったのは、大討伐ではないのですか?」
「何の目的でカルーラに? しかも長期間こちらに滞在されますよね?」
なんだろう、必死のようだけど。
『敵意はないのですが、ひどく焦っているのです』
理由は分からないけど、そうなんだろう。魔物の間引き作業ね。大々的にするらしいけど。
「ちょっと知り合いに会いに」
まさか魔境にビアンカとルージュの知り合い『彼女さん』に会いに行きますとは言えない。言えないけど、お二人の形相が凄いことになってて、納得してくれなさそう。
なんとかごまかそう。
「あー、大討伐には参加しませんが、しばらくは魔の森には籠りますよ」
嘘でない。
それを聞くと、納得したような、してないような。
『ユイ、元気達の鍛練とでも言ったら納得するかもなのです』
ナイスアイディアッ。
「実は元気達、従魔の仔達の鍛練もありまして、はい」
誤魔化し誤魔化し。
「成る程そうでしたか」
ラソンさんは納得。
「それで長期に?」
パーヴェルさんは、ふーん、みたいな。
「はい、4~5カ月予定です。私達は付き添いですね」
ふーんなパーヴェルさんは、なんとか納得してくれた。
「その鍛練期間で出来れば間引きをしていただけませんか? 今回のオルクの件があります。スタンピードの可能性を少しでも排除したいのです」
確かに、あんなハイになったオルクや魔物が出てきたら大惨事や。
「ビアンカ、どう?」
『ハイになっているやつの排除なのですね。いいのですよ』
「分かりました」
私の答えに、ラソンさんは安心した様子。
それから今回の助力した件で、後日、領主より謝礼が出るそうだ。オルクには魔石を有しているものは、買取してくれる。
明後日には査定が出るそうだ。
時間を確認して、しばらくして晃太が合流したので、パーティーハウスに向かうことになった。
感想 867
あなたにおすすめの小説
「今日限りで君を解雇する」――20年仕えた地味なメイドですが、料理も手紙も暗殺者対策も私がやっていました
「エナメル。今日限りで君を解雇する」
20年仕えた屋敷をクビになった、地味なエルフのメイド・エナメル。
だが、晩餐会の料理も、侯爵への手紙も、調度品の手配も、屋敷を狙う暗殺者の処理も――すべて彼女が陰で支えていたものだった。
エナメルが去ったあと、屋敷は少しずつ綻び始める。
一方の本人は、そんなことも知らず。
「さて。次はどこで雇っていただきましょう」
地味で目立たないベテランメイド・エナメルの、新しい奉公先探しが始まる。
※本作は『メイドのエナメルは今日も静かにお仕えします』シリーズの第1作です。本作単体でもお楽しみいただけます。
異世界転移した僕と彼のスキルは「貯金箱」と「犬」だったので即追放。でもこれが意外と強かった
高校の英語の授業中、勇者召喚で僕たちクラスメイト7名は異世界にやって来た。
目的は魔王討伐では無くて、高難易度ダンジョンの封印?!
でも僕ユイトのスキルは「貯金箱」、エイジは「犬」。
役立たず認定で、二人とも城を追放されてしまった。
のんびり暮らそうとしたけどそうもいかなくなって。
僕たちは奇妙なスキルを駆使して異世界で生き延びる。
緩~いファンタージ物語です。のんびりと書いていきます。
本文はなるべく簡潔に、サクサク進むようにしています。
暇つぶしに読んでいただいて、楽しんでくださると嬉しいです。
なろう様にも投稿。
捨てられた幼女ですが、公爵家に拾われたら家族みんなの愛が重すぎました
幼い頃に母親に捨てられ、孤児院で暮らしていた少女リリア。
「役に立たなければ、また捨てられる」
そう思い、いつも“いい子”でいようとしていた彼女は、ある日、公爵家の馬車を助けたことをきっかけに屋敷へ招かれる。
そこで待っていたのは、娘に甘すぎる公爵夫妻に、妹を構いたがるレオン、そしてリリアを甘やかしたい使用人たち。
戸惑いながらも、少しずつ公爵家に居場所を見つけていくリリア。やがて夫妻から「私たちの娘になってほしい」と告げられて――。
これは、捨てられないために“いい子”でいようとしていた少女が、重すぎるほどの愛情に包まれ、本当の家族を見つけていく物語。
初夜のあとに愛する人がいると言われたので祝福で身体の時間を一日戻しました
夫婦となって初めて迎えた夜、セレンティアは夫リオールから「俺には、愛する人がいる」と告げられる。
彼が初夜を済ませた理由は、三年後に白い結婚として婚姻無効を申し立てられないようにするためだった。
けれどリオールは知らなかった。セレンティアの祝福《一日回帰》が、自分自身の身体にも使えることを。
セレンティアは自分の身体の時間を一日前へ戻し、三年間、侯爵家の妻として務めを果たすことを決める。
夫に愛されるためではない。三年後、白い結婚としてこの家を出ていくために。
番の証が出ないと捨てられたので、神様に確かめてもらいます
「番の証が出ぬからだ」
和平のために獣人国へ嫁いで四年。獣王ガイウス様との儀式は三度、三度とも証は出ませんでした。「人間の娘では神は認めぬ」——そう言われて、離宮へ。
雨漏りの下で眠り、井戸をさらい、畑を耕して。泣かなかったのは強いからではありません。獣人には、匂いでわかってしまうから。
嫁ぐ前に三年かけて読み込んだ婚姻法典。その第四章に、こうありました。
『既に誓いを結びたる者が、重ねて他者と誓いを立てんとする時、神は後の誓いを認めず』
——証が出なかったのは、わたしが人間だからではない。
長老会に申し立てたのは、解釈の確認だけ。わたしは悪くない、とは一言も書きませんでした。
遡誓の儀で神殿に浮かんだのは、六年前の秋の「成立」と、わたしの三度の「不成立(重複)」でした。
飛べないと捨てられたので、竜ごと出て行きます
「お前は竜に乗れもしない、ただの妻だろう」
竜騎士団長の夫はそう言って、飛べる従騎士の娘を選びましたわ。
ええ、わたくしは飛べません。十二年、地上におりました。
夜明け前に三十一頭の寝息を数え、歯を磨き、爪の砂を取り、冬に毛布を掛け、契約を編んで。——この国でただひとりの「調律者」として。
竜は、人を乗せない生き物ですのよ。竜自身が「乗せてもいい」と決めない限り。そして竜が誰の言葉で頷いてきたか、あの方は十二年、一度もお考えにならなかった。
離縁されて、わたくしは竜舎を出ました。
三日後から、竜は一頭も飛ばなくなりましたの。
怒っているのではありませんのよ。竜は報復をしませんもの。ただ——寂しいのです。
そして来月は、三年に一度の、契約更新日ですわ。
土下座する王妃の座などいらないので、冒険者に転職します。
「私が愛しているのはエルナ。君だけだ」
エルナは自分の夫でありハーメルン王国の国王であるカメルを愛していた。
彼がどれほど自分より隣国の聖女を優先しようとも。
結婚して二年が経っても初夜を迎えたことがなかろうとも。
しかし。
「エルナ。君に失望した。聖女を陥れていじめるとはな。罪を認め、ひざまずいて謝罪するように」
一年に一度の建国記念宴会であり結婚記念日に、カメルはすべての貴族や外国の使節団が見ている前で、エルナに身に覚えのない罪を認めろと断罪した。
愛が壊れるのは一瞬。
だからこそ、エルナはその場でひざまずいた。頭を地面にこすりつけて謝罪した。
「聖女を陰謀にかけた大罪人エルナは、この時間をもって王妃の座から退き、平民となりますことをお許しください。聖女様とどうかお幸せに」
*ゆるい設定です。不快に思われる方はブラウザバックをお願いします。
婚約破棄を受け入れた瞬間、王太子殿下が青ざめました
王都でもっとも華やかな春の夜会。その中央で、王太子エドワードは冷ややかな目を婚約者へ向けていた。
「リリアーナ・フォン・アルベルト公爵令嬢。君との婚約を、ここで破棄する」
会場が一瞬で静まり返る。
リリアーナは淡い金髪を揺らし、静かに王太子を見つめ返した。
「理由を、お聞きしてもよろしいでしょうか」
「理由など明白だ。君は嫉妬深く、心が狭い。それに比べ、私は真実の愛を見つけた」
そう言ってエドワードが隣へ引き寄せたのは、男爵令嬢のセシリアだった。