文字の大きさ
大
中
小
405 / 878
連載
合流①
ジリリリィィィィィィッ
「いっ」
ノワールが帰って来て15日ほど経過した日。まだ時々ハートマーク飛ばしているけどね。定期的に魔境の魔物を卸すためにギルドに通っていた。この日は、布や蜂蜜の買い取りをしてもらえるか話をして、サンプルを出して商人ギルドの方に見てもらっていた。商人ギルドの方はシャンレさんと言う中高年女性だ。丁寧に布を見てくれている最中に、この警報音だ。
いきなりだからびっくりしたし、思わず頭を抱えてしまった。
「ユイさん、どうされましたっ?」
「姉ちゃんっ」
『ユイ、どうしたのですっ』
手にした陶器のカップを落として割ってしまった。
「あ、あ、大丈夫。ちょっと。頭痛がして…………今日、もう失礼してもいいですか? サンプルを見てもらったのにすみません。カップを割ってしまって」
多分、この音、イシスが警報器を押したんだ。合流せんと。
「いえ、構いませんよ。ミズサワ様、どうかお大事にしてください」
シャンレさんは頭を抱えた私にびっくりして、許してくれる。音は止んで、落ち着いたけど、ここで説明できないし。
心配したホークさんがわざわざ手を貸してくれる。もう大丈夫なんだけど、ご好意だし、甘えよう。
「姉ちゃん、どうな?」
「うん、大丈夫よ」
ビアンカも心配そうにぴったり寄り添ってくれる。最後にもう一度シャンレさんに挨拶してギルドを後にする。急いでパーティーハウスに戻る。
ルームを開けて、皆で入る。ドア、閉まったね。
「ユイさん、大丈夫ですか」
ホークさんが心配そうに私の顔を覗き込む。
「はい、大丈夫ですよ。さっきですね。警報器の音が鳴ったのに、びっくりしちゃっただけです」
私は心配してくれている面々に振り返る。
「イシスから合図が鳴った。さあ、合流するよ。神様からの依頼を始めますよ」
さあ、気を引き締めんと。
早速サブ・ドアを開けると、イシスとオシリスが鎮座して待っていた。鼻水君もだ。ビアンカの姿を見て、そわそわと近づく。途端にアレスが前に出て唸り声を上げて、鼻水君が受けてたつ。後ろで補佐役のウルフ達が、おー、みたいな顔だ。
「イシス、無事に引き継ぎ終わったん?」
『アア、全テナ。ヌシヨ、世話ニナル』
「クゥッ」
唸り合うアレスと鼻水君はおいといて。
「イシス、合流の手筈はね」
まずはもう一つのサブ・ドアで、魔の森の中に登録している方ね、そちらからイシスとオシリスを誘導する。そのまま近くで待機してもらい、私達が合流。カルーラに戻る。従魔登録もせんとね。
「ほら、アレス、もう唸らんよ。鼻水君、何かあったら警報器押してね」
アレスと鼻水君は、ふんっ、とそっぽ向く。
「ほら、ビアンカ。鼻水君に頑張りって言ってやらんね」
『仕方ないのですね』
ビアンカが鼻水君に寄り添う。わぁ、鼻水君の尻尾が煙を上げてバタバタしてる。先日無事にドラゴンステーキ食べてもらった。鼻水君は、よだれを我慢しながらも、鼻先でステーキ皿をビアンカに押し出していた。なかなか一途やね。まだあるから大丈夫よと言ったらばくばく食べてた。
『しっかり役目を果たすのですよ』
「わふんっ」
『近付き過ぎだ、バカ者っ』
『大人しくしてなさい』
割って入ろうとするアレスに、ルージュが真っ黒な触手で拘束するが、ギリギリと千切れそうやけど。もう、賑やかやな。止めるのに、とうとう魔法使ったよ。補佐役のウルフ達におやつ。うろうろしていたお父さんウルフには晃太がお肉を放出。父が暖房器具を設置する場所も確認。何度も来てるし、イシスの説得もあり、お母さんウルフ達は警戒しているが、襲って来ない。赤ちゃん確認、かわいかっ。わぁ、ちっちゃいウルフがわちゃわちゃして一杯。栄養満点の冷蔵庫ダンジョンの牛乳を、出すと、わーっと来てくれた。あはははん、かわいかっ。くさかっ。小さいウルフが弾かれているので、別の皿に牛乳を入れてゆっくり飲んでもらう。よしよし。なんとなくだけど、赤ちゃんウルフの生存率の一因が分かった。体が小さかったり、力が弱かったりしたらこうやって弾かれる。結局栄養不足とかなって悪循環して、弱っていくんやな。全てを救えるとは思えないけど、私達が出きることしよう。
やっと落ち着いて、もう一つのサブ・ドアにイシスとオシリスを誘導する。魔の森の洞穴に繋がっているので、洞穴を抜ける。
「しばらく、ここら付近におってね」
『分カッタ』
私は作りおきのおにぎりを出す。
「これ食べとって。数日かかるけど、毎日ご飯は持って来るけんね」
ルームを使えば、直ぐに迎えに行けるけど、厄災クラスの魔物が近くにいると思われると、あれだしね。数日の期間をおかんとね。
『分カッタ』
サブ・ドアを閉める。
さ、出発準備。
「お母さん、何日かおらんけど、よか? 醤油とか」
「ちょっと待ってね」
母が冷蔵庫をチェック。
「卵と、豆腐と、魚と」
結局、母とディレックスで買い物をした。
色々準備して、装備品の確認。その日の夕方、カルーラを出た。城門の人達が、
「今からお出掛けですか? 暗くなりますよ」
と、心配してくれた。
「ありがとうございます。大丈夫ですので」
ほほほ。ビアンカとルージュ、アレスとアリスもいる。シルフィ達も馬車内にいる。アリスもそろそろ身体を動かしたいそうだ。仔達も並走する。馭者台には私とホークさん。
勢揃いしたメンツを見て、無言で納得してくれた。
「さ、ノワール。お願いね」
「ブヒヒヒンッ」
久しぶりの馬車、ノワールは快調に出発した。
「いっ」
ノワールが帰って来て15日ほど経過した日。まだ時々ハートマーク飛ばしているけどね。定期的に魔境の魔物を卸すためにギルドに通っていた。この日は、布や蜂蜜の買い取りをしてもらえるか話をして、サンプルを出して商人ギルドの方に見てもらっていた。商人ギルドの方はシャンレさんと言う中高年女性だ。丁寧に布を見てくれている最中に、この警報音だ。
いきなりだからびっくりしたし、思わず頭を抱えてしまった。
「ユイさん、どうされましたっ?」
「姉ちゃんっ」
『ユイ、どうしたのですっ』
手にした陶器のカップを落として割ってしまった。
「あ、あ、大丈夫。ちょっと。頭痛がして…………今日、もう失礼してもいいですか? サンプルを見てもらったのにすみません。カップを割ってしまって」
多分、この音、イシスが警報器を押したんだ。合流せんと。
「いえ、構いませんよ。ミズサワ様、どうかお大事にしてください」
シャンレさんは頭を抱えた私にびっくりして、許してくれる。音は止んで、落ち着いたけど、ここで説明できないし。
心配したホークさんがわざわざ手を貸してくれる。もう大丈夫なんだけど、ご好意だし、甘えよう。
「姉ちゃん、どうな?」
「うん、大丈夫よ」
ビアンカも心配そうにぴったり寄り添ってくれる。最後にもう一度シャンレさんに挨拶してギルドを後にする。急いでパーティーハウスに戻る。
ルームを開けて、皆で入る。ドア、閉まったね。
「ユイさん、大丈夫ですか」
ホークさんが心配そうに私の顔を覗き込む。
「はい、大丈夫ですよ。さっきですね。警報器の音が鳴ったのに、びっくりしちゃっただけです」
私は心配してくれている面々に振り返る。
「イシスから合図が鳴った。さあ、合流するよ。神様からの依頼を始めますよ」
さあ、気を引き締めんと。
早速サブ・ドアを開けると、イシスとオシリスが鎮座して待っていた。鼻水君もだ。ビアンカの姿を見て、そわそわと近づく。途端にアレスが前に出て唸り声を上げて、鼻水君が受けてたつ。後ろで補佐役のウルフ達が、おー、みたいな顔だ。
「イシス、無事に引き継ぎ終わったん?」
『アア、全テナ。ヌシヨ、世話ニナル』
「クゥッ」
唸り合うアレスと鼻水君はおいといて。
「イシス、合流の手筈はね」
まずはもう一つのサブ・ドアで、魔の森の中に登録している方ね、そちらからイシスとオシリスを誘導する。そのまま近くで待機してもらい、私達が合流。カルーラに戻る。従魔登録もせんとね。
「ほら、アレス、もう唸らんよ。鼻水君、何かあったら警報器押してね」
アレスと鼻水君は、ふんっ、とそっぽ向く。
「ほら、ビアンカ。鼻水君に頑張りって言ってやらんね」
『仕方ないのですね』
ビアンカが鼻水君に寄り添う。わぁ、鼻水君の尻尾が煙を上げてバタバタしてる。先日無事にドラゴンステーキ食べてもらった。鼻水君は、よだれを我慢しながらも、鼻先でステーキ皿をビアンカに押し出していた。なかなか一途やね。まだあるから大丈夫よと言ったらばくばく食べてた。
『しっかり役目を果たすのですよ』
「わふんっ」
『近付き過ぎだ、バカ者っ』
『大人しくしてなさい』
割って入ろうとするアレスに、ルージュが真っ黒な触手で拘束するが、ギリギリと千切れそうやけど。もう、賑やかやな。止めるのに、とうとう魔法使ったよ。補佐役のウルフ達におやつ。うろうろしていたお父さんウルフには晃太がお肉を放出。父が暖房器具を設置する場所も確認。何度も来てるし、イシスの説得もあり、お母さんウルフ達は警戒しているが、襲って来ない。赤ちゃん確認、かわいかっ。わぁ、ちっちゃいウルフがわちゃわちゃして一杯。栄養満点の冷蔵庫ダンジョンの牛乳を、出すと、わーっと来てくれた。あはははん、かわいかっ。くさかっ。小さいウルフが弾かれているので、別の皿に牛乳を入れてゆっくり飲んでもらう。よしよし。なんとなくだけど、赤ちゃんウルフの生存率の一因が分かった。体が小さかったり、力が弱かったりしたらこうやって弾かれる。結局栄養不足とかなって悪循環して、弱っていくんやな。全てを救えるとは思えないけど、私達が出きることしよう。
やっと落ち着いて、もう一つのサブ・ドアにイシスとオシリスを誘導する。魔の森の洞穴に繋がっているので、洞穴を抜ける。
「しばらく、ここら付近におってね」
『分カッタ』
私は作りおきのおにぎりを出す。
「これ食べとって。数日かかるけど、毎日ご飯は持って来るけんね」
ルームを使えば、直ぐに迎えに行けるけど、厄災クラスの魔物が近くにいると思われると、あれだしね。数日の期間をおかんとね。
『分カッタ』
サブ・ドアを閉める。
さ、出発準備。
「お母さん、何日かおらんけど、よか? 醤油とか」
「ちょっと待ってね」
母が冷蔵庫をチェック。
「卵と、豆腐と、魚と」
結局、母とディレックスで買い物をした。
色々準備して、装備品の確認。その日の夕方、カルーラを出た。城門の人達が、
「今からお出掛けですか? 暗くなりますよ」
と、心配してくれた。
「ありがとうございます。大丈夫ですので」
ほほほ。ビアンカとルージュ、アレスとアリスもいる。シルフィ達も馬車内にいる。アリスもそろそろ身体を動かしたいそうだ。仔達も並走する。馭者台には私とホークさん。
勢揃いしたメンツを見て、無言で納得してくれた。
「さ、ノワール。お願いね」
「ブヒヒヒンッ」
久しぶりの馬車、ノワールは快調に出発した。
感想 867
あなたにおすすめの小説
「今日限りで君を解雇する」――20年仕えた地味なメイドですが、料理も手紙も暗殺者対策も私がやっていました
「エナメル。今日限りで君を解雇する」
20年仕えた屋敷をクビになった、地味なエルフのメイド・エナメル。
だが、晩餐会の料理も、侯爵への手紙も、調度品の手配も、屋敷を狙う暗殺者の処理も――すべて彼女が陰で支えていたものだった。
エナメルが去ったあと、屋敷は少しずつ綻び始める。
一方の本人は、そんなことも知らず。
「さて。次はどこで雇っていただきましょう」
地味で目立たないベテランメイド・エナメルの、新しい奉公先探しが始まる。
※本作は『メイドのエナメルは今日も静かにお仕えします』シリーズの第1作です。本作単体でもお楽しみいただけます。
異世界転移した僕と彼のスキルは「貯金箱」と「犬」だったので即追放。でもこれが意外と強かった
高校の英語の授業中、勇者召喚で僕たちクラスメイト7名は異世界にやって来た。
目的は魔王討伐では無くて、高難易度ダンジョンの封印?!
でも僕ユイトのスキルは「貯金箱」、エイジは「犬」。
役立たず認定で、二人とも城を追放されてしまった。
のんびり暮らそうとしたけどそうもいかなくなって。
僕たちは奇妙なスキルを駆使して異世界で生き延びる。
緩~いファンタージ物語です。のんびりと書いていきます。
本文はなるべく簡潔に、サクサク進むようにしています。
暇つぶしに読んでいただいて、楽しんでくださると嬉しいです。
なろう様にも投稿。
捨てられた幼女ですが、公爵家に拾われたら家族みんなの愛が重すぎました
幼い頃に母親に捨てられ、孤児院で暮らしていた少女リリア。
「役に立たなければ、また捨てられる」
そう思い、いつも“いい子”でいようとしていた彼女は、ある日、公爵家の馬車を助けたことをきっかけに屋敷へ招かれる。
そこで待っていたのは、娘に甘すぎる公爵夫妻に、妹を構いたがるレオン、そしてリリアを甘やかしたい使用人たち。
戸惑いながらも、少しずつ公爵家に居場所を見つけていくリリア。やがて夫妻から「私たちの娘になってほしい」と告げられて――。
これは、捨てられないために“いい子”でいようとしていた少女が、重すぎるほどの愛情に包まれ、本当の家族を見つけていく物語。
初夜のあとに愛する人がいると言われたので祝福で身体の時間を一日戻しました
夫婦となって初めて迎えた夜、セレンティアは夫リオールから「俺には、愛する人がいる」と告げられる。
彼が初夜を済ませた理由は、三年後に白い結婚として婚姻無効を申し立てられないようにするためだった。
けれどリオールは知らなかった。セレンティアの祝福《一日回帰》が、自分自身の身体にも使えることを。
セレンティアは自分の身体の時間を一日前へ戻し、三年間、侯爵家の妻として務めを果たすことを決める。
夫に愛されるためではない。三年後、白い結婚としてこの家を出ていくために。
番の証が出ないと捨てられたので、神様に確かめてもらいます
「番の証が出ぬからだ」
和平のために獣人国へ嫁いで四年。獣王ガイウス様との儀式は三度、三度とも証は出ませんでした。「人間の娘では神は認めぬ」——そう言われて、離宮へ。
雨漏りの下で眠り、井戸をさらい、畑を耕して。泣かなかったのは強いからではありません。獣人には、匂いでわかってしまうから。
嫁ぐ前に三年かけて読み込んだ婚姻法典。その第四章に、こうありました。
『既に誓いを結びたる者が、重ねて他者と誓いを立てんとする時、神は後の誓いを認めず』
——証が出なかったのは、わたしが人間だからではない。
長老会に申し立てたのは、解釈の確認だけ。わたしは悪くない、とは一言も書きませんでした。
遡誓の儀で神殿に浮かんだのは、六年前の秋の「成立」と、わたしの三度の「不成立(重複)」でした。
飛べないと捨てられたので、竜ごと出て行きます
「お前は竜に乗れもしない、ただの妻だろう」
竜騎士団長の夫はそう言って、飛べる従騎士の娘を選びましたわ。
ええ、わたくしは飛べません。十二年、地上におりました。
夜明け前に三十一頭の寝息を数え、歯を磨き、爪の砂を取り、冬に毛布を掛け、契約を編んで。——この国でただひとりの「調律者」として。
竜は、人を乗せない生き物ですのよ。竜自身が「乗せてもいい」と決めない限り。そして竜が誰の言葉で頷いてきたか、あの方は十二年、一度もお考えにならなかった。
離縁されて、わたくしは竜舎を出ました。
三日後から、竜は一頭も飛ばなくなりましたの。
怒っているのではありませんのよ。竜は報復をしませんもの。ただ——寂しいのです。
そして来月は、三年に一度の、契約更新日ですわ。
土下座する王妃の座などいらないので、冒険者に転職します。
「私が愛しているのはエルナ。君だけだ」
エルナは自分の夫でありハーメルン王国の国王であるカメルを愛していた。
彼がどれほど自分より隣国の聖女を優先しようとも。
結婚して二年が経っても初夜を迎えたことがなかろうとも。
しかし。
「エルナ。君に失望した。聖女を陥れていじめるとはな。罪を認め、ひざまずいて謝罪するように」
一年に一度の建国記念宴会であり結婚記念日に、カメルはすべての貴族や外国の使節団が見ている前で、エルナに身に覚えのない罪を認めろと断罪した。
愛が壊れるのは一瞬。
だからこそ、エルナはその場でひざまずいた。頭を地面にこすりつけて謝罪した。
「聖女を陰謀にかけた大罪人エルナは、この時間をもって王妃の座から退き、平民となりますことをお許しください。聖女様とどうかお幸せに」
*ゆるい設定です。不快に思われる方はブラウザバックをお願いします。
婚約破棄を受け入れた瞬間、王太子殿下が青ざめました
王都でもっとも華やかな春の夜会。その中央で、王太子エドワードは冷ややかな目を婚約者へ向けていた。
「リリアーナ・フォン・アルベルト公爵令嬢。君との婚約を、ここで破棄する」
会場が一瞬で静まり返る。
リリアーナは淡い金髪を揺らし、静かに王太子を見つめ返した。
「理由を、お聞きしてもよろしいでしょうか」
「理由など明白だ。君は嫉妬深く、心が狭い。それに比べ、私は真実の愛を見つけた」
そう言ってエドワードが隣へ引き寄せたのは、男爵令嬢のセシリアだった。