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閑話 ある職員
レディ・ロストーク。
白い体躯、たなびく茶色の鬣、長い睫毛。
いままで多くの魔法馬を見てきたが、レディ・ロストークは格段に美しい魔法馬だ。
どうも、騎士団の魔法馬を飼育する牧場で、飼育員やってます。
幼い頃から気性が荒く、ベテランのじいさん職員以外は決して触らせない。主人であるパーヴェル様でも中々懐かない。それでもパーヴェル様は暇があれば、レディ・ロストークの元に通っていた。それのお陰か、もう少ししたら、パーヴェル様を乗せるかなって、皆で話していた。それなのに、じいさんがぽっくり亡くなった。いつも朝早いじいさんがいないから起こしにいったら、ベッドで眠るように亡くなっていた。
さあ、それから大変だ。
葬儀や、じいさんの仕事、世話していた魔法馬の引き継ぎ。そう、レディ・ロストークだ。
じいさん以外触らせないから、せっかくの美しい体躯や鬣が汚れていく。絶対に、このままじゃ、よくない。だけど、牧場の飼育員は全滅。パーヴェル様も心配しているが、どうしようもない。藁をもすがる思いで、外部からの調教師にもすがったが、散々な結果に。
諦めていた時にやって来たのが、ギルドで依頼を受けた冒険者の男だ。
ホークと名乗った男は、接するとすぐに真面目な男だと分かった。
みんながさじを投げたレディ・ロストークと向き合い数日後。
「半年ください」
そう、告げた。
それからホークはレディ・ロストークと向き合い、ひやひやしながら皆で見守った。
パーヴェル様も暇を見つけては訪れていて、よくホークと話していた。
みるみる内に、レディ・ロストークが輝きを取り戻していった。鬣を靡かせて、闊歩するレディ・ロストーク。かつて、じいさんが世話してた頃のようだ。
3ヶ月程して、牧場の飼育員全員がぽかんとしてしまった。
あのレディ・ロストークが、人を乗せて走ってる。
見事な手綱裁きで、ホークが乗りこなしている。乗りこなして、わわわっ、ロディオが始まる。
レディ・ロストーク、人を乗せてるのも驚きだけど。だけど、速い速いっ。どんな体幹してんだよっ。なんで乗れてるんだよ、あの人っ。
それからホークに対する飼育員の目が変わる。
週の半分は泊まり込み、残りは宿に戻る生活を送るホーク。レディ・ロストークを見に来るパーヴェル様に、時折食事を誘われている。他の騎士達とも親しくなって、なんだか誘われて、それには丁寧に断っていた。どうやら、娼館へのお誘いみたいだが、ホークは匂いが苦手だし、レディ・ロストークを世話するならそんな匂いをつけられないと。
「レディ・ロストークは繊細です。だから、こちらも身だしなみを整えないと」
そこで、俺達はレディ・ロストークとの対応を考えさせられた。そういえば、じいさん、いっつも身綺麗にしていた。深酒はしない、匂いのきつい食事はしない、女は買わない、毎日風呂は無理でも必ず体を拭いていた。なるほどなあ。
「それに、宿に残した姪や甥がいますから、そんな所いけません」
「姪、あ、あの可愛い女の子なー」
彼氏いる? なんて冗談で聞いたら、ホークの目が冷えまくってた。あ、やばい、ははは、と冗談冗談と言う。
あの子、赤毛の小柄な女の子、似たような赤毛の少年とホークを訪ねて来た。赤毛の少年は、よく見たら目元がホークにそっくりだ。
「リーダー、宿のおかみさんとお菓子焼いたのっ」
「わざわざ持ってきてくれたのか。ありがとうエマ」
少し立ち話して、帰って言った。なかなか可愛いな、なんて思った。
それから1ヶ月して、レディ・ロストークはパーヴェル様を乗せた。ホークが手綱を持ち、ゆっくりと。同時進行で、俺達飼育員に対してのレディ・ロストークの世話の仕方だ。
ホークの言うことは、繊細な女性を扱うようにと、繰り返す。身だしなみに気をつけて、と。
「なあ、ホーク。ここの専属にならないか?」
「専属ですか」
パーヴェル様がホークにそう言ってた。
「レディ・ロストークがここまで心を開いてくれた。お前のお陰だ」
「光栄です。お言葉だけ、頂きます」
ホークは次の依頼を受けていたようだし、なにより見習いを受けているし、他のパーティーメンバーもいるからと、断っていた。
半年の期間が過ぎて、ホークは去っていった。
レディ・ロストークの世話はなんとか出来たし、パーヴェル様とも関係は良好だし。で、次の問題が発生した。
出産適齢期のレディ・ロストーク。美しいし、優秀な魔法馬だ。次に繋げたい。だけど、他の雄馬を近付けさせない。あ、散り散りに逃げてるー。
どうしたものか、と悩んでいると、パーヴェル様はレディ・ロストークと共に騎士団の遠征に向かった。
ぼちぼち大討伐の時期だしなあ。
そんなパーヴェル様達がオルク達に襲われながらも無事に帰って来た。犠牲になったのは、魔法馬一頭。俺が世話した魔法馬だ。涙が止まらなかった。
涙に暮れた数日後、ホークが一頭の魔法馬を連れて帰って来た。涙が止まった。今まで見た中で最高にデカイ黒毛の魔法馬。
「え、ホーク、どうしたんだ?」
首に奴隷紋がある。一体どうしたんだろう?
驚いたが、さらに驚いた事に、あのレディ・ロストークが、ホークに連れられた黒毛の魔法馬に自ら体を寄せていた。
ええー、あれだけ雄馬蹴散らしてたのにー。
ラブラブのレディ・ロストークとノワールと言う魔法馬を眺めながらホークと話をした。
どうやら酷い依頼に当たったようで、借金としてパーティーごと奴隷になった。酷いケガもしていたが、いい主人に買われたようだ。なんとあの噂のテイマーにその騎乗能力を買われて購入されたと。待遇もいいみたいだ。
たった3日間だけど、ラブラブのレディ・ロストークとノワールを見せつけられる。ホークと積もる話もしたかったけど、一緒に食事となると嫌がる飼育員が出た。そしてホーク自身が拒んだ、理由は奴隷だからだ。俺は気にしないけどなあ。
3ヶ月、細心の注意を払いレディ・ロストークを世話するが、残念だったが、妊娠していなかった。
パーヴェル様はがっくりしてた、俺も密かに楽しみにしてたんだけどなあ。
で、再びノワールを連れてホークがやって来た。今度は上手くいくかな。
勝手にラブラブになるレディ・ロストークとノワール。はあっ、羨ましいなあ。
そんな中、ホークは他の魔法馬の世話までしてくれた。相変わらず、見事な手捌きで世話して、次々に懐いていく魔法馬達。俺達の立場が。
魔法馬の餌を確認していたら、牧羊犬が慌てて走ってきた。で、見たことない、真っ白な大型犬。うはあっ、スッゴいもふもふだっ。茶色の魔法馬に騎乗していたホークがびっくりしている。
「元気君? どうしたんだい?」
「わんわんっ」
「あ、ユイさんか」
「わんっ」
真っ白な大型犬に先導されてホークが向かい、俺は興味が湧いて遠くから見た。
え、なんか、でっかい犬と猫がいっぱい。いや、犬? 猫? 違うよね? あれが噂のドラゴン一撃ウルフとジャガー? うわあ。でっけー。はわあ、ジャガー触りてえ。
あ、あの赤毛の2人、確か、ホークの甥と姪だよな。それから、あの黒髪の女性は? なにやら渡してる。差し入れかな? 楽しそうに話しているけど、あのウルフやジャガーを除いてみたら、女房が子供を連れて旦那に差し入れ持って来た。そんな感じだけど。その黒髪女性から俺は謝罪を受けた、ウルフ、ゲンキと呼ばれたウルフが勝手に入って魔法馬達を驚かせてしまったと。俺はぶんぶんと首を横に振る。全然大丈夫ですよ、だって当の魔法馬達、全く気にせずのんびりしてるし。
この黒髪女性が、噂のテイマーかあ。普通の主婦みたいだけど。ホークの女房って言われても納得しそうだよ。赤毛の女の子も少年も奴隷と思えない程身綺麗だし、少年の方は背が伸びていた。ますますホークに似てきてる。そして、黒髪の女性を慕っているのは、遠目からでも分かった。
黒髪女性達を見送って、ふと、ホークに聞く。
「なあ、ホーク」
「はい」
「あのテイマーさん、お前の女房か?」
いつも礼儀正しく、冷静なホークが狼狽える。
「ち、違いますよっ」
「本当にい?」
疑いの眼差しを向けたが、ホークは必死に否定していた。だけど、その腕に抱えたハンカチに包まれた箱。絶対差し入れだよな? 普通、主人が奴隷にそんなハンカチに包んでわざわざ差し入れするう? 本当に、ただの主人と奴隷の関係かあ?
怪しくねえ?
白い体躯、たなびく茶色の鬣、長い睫毛。
いままで多くの魔法馬を見てきたが、レディ・ロストークは格段に美しい魔法馬だ。
どうも、騎士団の魔法馬を飼育する牧場で、飼育員やってます。
幼い頃から気性が荒く、ベテランのじいさん職員以外は決して触らせない。主人であるパーヴェル様でも中々懐かない。それでもパーヴェル様は暇があれば、レディ・ロストークの元に通っていた。それのお陰か、もう少ししたら、パーヴェル様を乗せるかなって、皆で話していた。それなのに、じいさんがぽっくり亡くなった。いつも朝早いじいさんがいないから起こしにいったら、ベッドで眠るように亡くなっていた。
さあ、それから大変だ。
葬儀や、じいさんの仕事、世話していた魔法馬の引き継ぎ。そう、レディ・ロストークだ。
じいさん以外触らせないから、せっかくの美しい体躯や鬣が汚れていく。絶対に、このままじゃ、よくない。だけど、牧場の飼育員は全滅。パーヴェル様も心配しているが、どうしようもない。藁をもすがる思いで、外部からの調教師にもすがったが、散々な結果に。
諦めていた時にやって来たのが、ギルドで依頼を受けた冒険者の男だ。
ホークと名乗った男は、接するとすぐに真面目な男だと分かった。
みんながさじを投げたレディ・ロストークと向き合い数日後。
「半年ください」
そう、告げた。
それからホークはレディ・ロストークと向き合い、ひやひやしながら皆で見守った。
パーヴェル様も暇を見つけては訪れていて、よくホークと話していた。
みるみる内に、レディ・ロストークが輝きを取り戻していった。鬣を靡かせて、闊歩するレディ・ロストーク。かつて、じいさんが世話してた頃のようだ。
3ヶ月程して、牧場の飼育員全員がぽかんとしてしまった。
あのレディ・ロストークが、人を乗せて走ってる。
見事な手綱裁きで、ホークが乗りこなしている。乗りこなして、わわわっ、ロディオが始まる。
レディ・ロストーク、人を乗せてるのも驚きだけど。だけど、速い速いっ。どんな体幹してんだよっ。なんで乗れてるんだよ、あの人っ。
それからホークに対する飼育員の目が変わる。
週の半分は泊まり込み、残りは宿に戻る生活を送るホーク。レディ・ロストークを見に来るパーヴェル様に、時折食事を誘われている。他の騎士達とも親しくなって、なんだか誘われて、それには丁寧に断っていた。どうやら、娼館へのお誘いみたいだが、ホークは匂いが苦手だし、レディ・ロストークを世話するならそんな匂いをつけられないと。
「レディ・ロストークは繊細です。だから、こちらも身だしなみを整えないと」
そこで、俺達はレディ・ロストークとの対応を考えさせられた。そういえば、じいさん、いっつも身綺麗にしていた。深酒はしない、匂いのきつい食事はしない、女は買わない、毎日風呂は無理でも必ず体を拭いていた。なるほどなあ。
「それに、宿に残した姪や甥がいますから、そんな所いけません」
「姪、あ、あの可愛い女の子なー」
彼氏いる? なんて冗談で聞いたら、ホークの目が冷えまくってた。あ、やばい、ははは、と冗談冗談と言う。
あの子、赤毛の小柄な女の子、似たような赤毛の少年とホークを訪ねて来た。赤毛の少年は、よく見たら目元がホークにそっくりだ。
「リーダー、宿のおかみさんとお菓子焼いたのっ」
「わざわざ持ってきてくれたのか。ありがとうエマ」
少し立ち話して、帰って言った。なかなか可愛いな、なんて思った。
それから1ヶ月して、レディ・ロストークはパーヴェル様を乗せた。ホークが手綱を持ち、ゆっくりと。同時進行で、俺達飼育員に対してのレディ・ロストークの世話の仕方だ。
ホークの言うことは、繊細な女性を扱うようにと、繰り返す。身だしなみに気をつけて、と。
「なあ、ホーク。ここの専属にならないか?」
「専属ですか」
パーヴェル様がホークにそう言ってた。
「レディ・ロストークがここまで心を開いてくれた。お前のお陰だ」
「光栄です。お言葉だけ、頂きます」
ホークは次の依頼を受けていたようだし、なにより見習いを受けているし、他のパーティーメンバーもいるからと、断っていた。
半年の期間が過ぎて、ホークは去っていった。
レディ・ロストークの世話はなんとか出来たし、パーヴェル様とも関係は良好だし。で、次の問題が発生した。
出産適齢期のレディ・ロストーク。美しいし、優秀な魔法馬だ。次に繋げたい。だけど、他の雄馬を近付けさせない。あ、散り散りに逃げてるー。
どうしたものか、と悩んでいると、パーヴェル様はレディ・ロストークと共に騎士団の遠征に向かった。
ぼちぼち大討伐の時期だしなあ。
そんなパーヴェル様達がオルク達に襲われながらも無事に帰って来た。犠牲になったのは、魔法馬一頭。俺が世話した魔法馬だ。涙が止まらなかった。
涙に暮れた数日後、ホークが一頭の魔法馬を連れて帰って来た。涙が止まった。今まで見た中で最高にデカイ黒毛の魔法馬。
「え、ホーク、どうしたんだ?」
首に奴隷紋がある。一体どうしたんだろう?
驚いたが、さらに驚いた事に、あのレディ・ロストークが、ホークに連れられた黒毛の魔法馬に自ら体を寄せていた。
ええー、あれだけ雄馬蹴散らしてたのにー。
ラブラブのレディ・ロストークとノワールと言う魔法馬を眺めながらホークと話をした。
どうやら酷い依頼に当たったようで、借金としてパーティーごと奴隷になった。酷いケガもしていたが、いい主人に買われたようだ。なんとあの噂のテイマーにその騎乗能力を買われて購入されたと。待遇もいいみたいだ。
たった3日間だけど、ラブラブのレディ・ロストークとノワールを見せつけられる。ホークと積もる話もしたかったけど、一緒に食事となると嫌がる飼育員が出た。そしてホーク自身が拒んだ、理由は奴隷だからだ。俺は気にしないけどなあ。
3ヶ月、細心の注意を払いレディ・ロストークを世話するが、残念だったが、妊娠していなかった。
パーヴェル様はがっくりしてた、俺も密かに楽しみにしてたんだけどなあ。
で、再びノワールを連れてホークがやって来た。今度は上手くいくかな。
勝手にラブラブになるレディ・ロストークとノワール。はあっ、羨ましいなあ。
そんな中、ホークは他の魔法馬の世話までしてくれた。相変わらず、見事な手捌きで世話して、次々に懐いていく魔法馬達。俺達の立場が。
魔法馬の餌を確認していたら、牧羊犬が慌てて走ってきた。で、見たことない、真っ白な大型犬。うはあっ、スッゴいもふもふだっ。茶色の魔法馬に騎乗していたホークがびっくりしている。
「元気君? どうしたんだい?」
「わんわんっ」
「あ、ユイさんか」
「わんっ」
真っ白な大型犬に先導されてホークが向かい、俺は興味が湧いて遠くから見た。
え、なんか、でっかい犬と猫がいっぱい。いや、犬? 猫? 違うよね? あれが噂のドラゴン一撃ウルフとジャガー? うわあ。でっけー。はわあ、ジャガー触りてえ。
あ、あの赤毛の2人、確か、ホークの甥と姪だよな。それから、あの黒髪の女性は? なにやら渡してる。差し入れかな? 楽しそうに話しているけど、あのウルフやジャガーを除いてみたら、女房が子供を連れて旦那に差し入れ持って来た。そんな感じだけど。その黒髪女性から俺は謝罪を受けた、ウルフ、ゲンキと呼ばれたウルフが勝手に入って魔法馬達を驚かせてしまったと。俺はぶんぶんと首を横に振る。全然大丈夫ですよ、だって当の魔法馬達、全く気にせずのんびりしてるし。
この黒髪女性が、噂のテイマーかあ。普通の主婦みたいだけど。ホークの女房って言われても納得しそうだよ。赤毛の女の子も少年も奴隷と思えない程身綺麗だし、少年の方は背が伸びていた。ますますホークに似てきてる。そして、黒髪の女性を慕っているのは、遠目からでも分かった。
黒髪女性達を見送って、ふと、ホークに聞く。
「なあ、ホーク」
「はい」
「あのテイマーさん、お前の女房か?」
いつも礼儀正しく、冷静なホークが狼狽える。
「ち、違いますよっ」
「本当にい?」
疑いの眼差しを向けたが、ホークは必死に否定していた。だけど、その腕に抱えたハンカチに包まれた箱。絶対差し入れだよな? 普通、主人が奴隷にそんなハンカチに包んでわざわざ差し入れするう? 本当に、ただの主人と奴隷の関係かあ?
怪しくねえ?
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