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連載
一旦は②
なんとなく気まずい気がするけど。私はシュタインさんと向き合う。シュタインさんもそうなのが、視線が一瞬さ迷った。
だけど、すぐに私と向き合う。
「ユイさん」
「はい」
「俺は、貴女に」
シュタインさんの灰色の目が、切なげに揺れている。
「貴女に、好意以上の、いや、違う」
マーファと同じ台詞が出てきそうになるが、途中で止まる。
「貴女が好きです、ユイさん」
直球できた言葉は、シュタインさんの切なげな目と共に私を貫く。
不覚にもドキッとする。イケメンのシュタインさんの言葉の威力が凄か。凄かけど、はっきりと自覚する。変に言い訳がましくしてはならないと。
「俺は、貴女が好きです」
「あ、ありがとうございます」
咄嗟に出た私の言葉に、シュタインさんの顔が、ふわっと歓喜に色が浮かぶ。
「お気持ちは、本当に嬉しいんですが。私には、シュタインさんの気持ちには答えられません。申し訳ありません」
私の心には、ホークさんがいる。
シュタインさんの表情に、さーっ、と色がなくなる。
私は、頭を下げる。
「…………………あの、戦闘奴隷のリーダーですか?」
ドキイィィッ
何でっ? え、嘘やろ? 両親や晃太にもばれてないのにっ。ちゃんと隠しているつもりなのにっ。
私は動揺してしまう。
「な、なんで……………」
「やっぱり」
ふぅー、と息を吐き出すシュタインさん。
「戦闘奴隷、ホークでしたっけ。あいつが称号があるって言った時」
あ、あの時。ホークさんに『天馬騎士(ペガサスナイト)』の称号があるって分かった時。
「手を、握って、見つめ合ってましたよね」
「あ、はい。はい?」
私が半端に出した手を、ホークさんが包んでくれた。見つめあって言われても、ほんのちょっとよ。確かに、あの時、いろんな人にみられていたかも知れないけど、本当にちょっとよ。
「あいつの目が、ユイさんに対してどう思っているか、直感したんです。ユイさんも受け入れていたように思えて」
だけど、と続けるシュタインさん。
「どうしても、俺は諦めたくなかった。勘違いかもしれないかもって思いたかった。だから、知りたかった」
ため息を吐くシュタインさん。
「やっぱり、俺は相手にされなかったですね」
自嘲するようなシュタインさん。
「あの、シュタインさん、そうやないんですよっ」
そんな姿に私は慌ててしまう。なんや、さっきまで言い訳しないっていう気持ちが逃げていく。
「座りませんか?」
そんな慌てる私に、シュタインさんはベンチを指差す。ホークさんとあの日話したベンチ。中庭にはベンチはこれしかないけど。
「あ、はい」
私はおずおずと座る。なんやろ、ドキドキする。なんか変な汗が出てきた。
なんだか、憑き物でも落ちたようなシュタインさん。
「聞いてもいいですか?」
「はい、何でしょう」
私は緊張して答える。何を聞かれるんやろ?
「マーファでは迷惑でしたか?」
あ、あの時?
「迷惑って、そんなことはなかですよ。そりゃ驚きましたけど」
手の甲に、ちゅ、だもん。鬘だったら吹っ飛ぶ衝撃だったし。
「嬉しかったですよ。あんな風に言われたのは生まれて初めてで、舞い上がるようでしたけど」
1人になって考えて、考え付いたのは吊り橋効果だった。
そして、私は女としての自信がないことを思い出した。それはシュタインさんには言わないけど。
「色々考えて、最後に思い浮かんだのは、熊に襲われて傷を負ったシュタインさんの姿でした」
「そう、ですか」
ため息つきそうなシュタインさん。視線は地面に落ちたままだ。
「ユイさん」
「はい」
「もし、俺が毎日、貴女に伝えていたら、変わっていました?」
「あ……………」
毎日? 毎日あれ? 毎日あれやられたら、イケメンのシュタインさんに言われたら、誰だって傾かない?
「あ、あ、それは、あっと……………私、そういうの、分からないというか、えっと」
「俺を好きになってくれました?」
こっちを見て聞いてくる。答えにくいっ。毎日、あれをやられたら、音をたてて崩れてるような気がするっ。いまさらだけどっ。
だってさ、ホークさんとの事だってさ、言われなければ自覚するのだって怪しい。いつかは気がついたかもしれないけど。多分、時間がかかっていたかもしれない。
「やっぱり。あいつと何かあったんですね」
「な、な、何かって、何か?」
何かって、ちょっとだけ、ちょっとだけ、だったよ、あれだけだし、あれから何にもないしっ。
…………………………………あら?
あれから、何にもない。
確かに私とホークさんの立ち位置は変わらない。主人と戦闘奴隷のリーダーだ。その距離感を保っているつもり。ホークさん、立場を崩さずにいる。別に私はそれでいいかなって思っている。今の距離感がありがたい、私はね。
あら? これでいいのかな?
「ユイさん。どうしました?」
「いえ、何でもないです?」
「疑問系ですね。そもそもあいつのどこが良かったんですか?」
「そ、それは」
聞かれたのは我ながら恥ずかしい言葉を絞り出す。
初めての対人戦で、フォローしてくれた事。
冒険者として不足している部分を補ってくれた事。
ノワールに乗って、魔境を私という荷物を抱えてくれた事。
色々話した事。
「ふーん」
と、聞いたシュタインさんが、何故か目を細めて聞いている。
「ユイさん、それ、吊り橋効果じゃないですか?」
シュタインさんの一言に、私はフリーズ。
「その対人戦あたり、まさにそうじゃないですか?」
私は返事ができない。
まさにそうやと思えてきた。
最初のきっかけと言われたら、まさにあの対人戦だ。
私は頭の中が混乱を始める。
えっ? まさか、私のこの気持ちって、勘違いなの?
あの安心感とか、嬉しかった事や、おくるみ抱いたイメージとか、全部勘違い? まさかの勘違い?
私の中で、ごちゃごちゃしそうになる。
シュタインさんに吊り橋とか言ってた当人が、自分の気持ちが、土台が崩れそう。
「ユイさん。俺が貴女が好きだと自覚したのは、あの熊の件で、ユイさんが見舞いに来てくれた時でしたけど。その前から意識してましたよ」
「はい?」
改めてのシュタインさんの告白。
「ユイさん、優しいし、飯旨いし、いい匂いするし、その色々」
何、色々って。いま、視線がどこにいってた?
「積み重なって、俺はユイさんが好きなんだって思って」
「そ、そうですか………………」
なんや嬉しか、恥ずかしか。
…………………………………………………………………あ、ちょっと、待って。それは、私にも当てはまらない?
あら? 私の中、ゴロゴロゴロゴロと気持ちがおかしくなる。崩れそうだったのに、ゆっくり順序立てて考える。今の関係が心地い。他から見たら、ぬるま湯のような関係が。前にも後ろにも進んでない関係が。
「ユイさん」
「あ、はい」
悶々としていた私は、シュタインさんがじっとこちらを見ながら聞いてくる。
「もしかして、迷ってます?」
「迷って……………ちょっと、混乱しただけで…………………」
事実を突かれて、崩れそうだったけど。
今の関係が心地いいし、何よりあの時頭に浮かんだイメージや、何より換えがたい安心感。それが、私にとって重要やし。
そうや、それで、今はいいかも。
そう思えて良かったかもしれない。
………………………ホークさんにしたら、不満やないかな? あら? いいのかな? あら? もしかしたら、私がぐずぐずしている間に、ホークさんが心変わりしたら? だって、私は自分に自信ないんやもん。
コロコロ考えが変わる。
シュタインさんは少し考えてから、口を開く。
「なら、まだ、俺にもチャンスあります?」
「なんでそうなるんですか?」
「だって、揺らいでいるでしょう? 俺だって、たった一回フラれたくらいで諦めたくない」
うっ、シュタインさんの灰色の目が、なにやら力強い。
「あいつとどこまでいってます? まだ、身体を許してないでしょう?」
ぐふうっ。シュ、シュタインさんっ、ダイレクト過ぎっ。
私の顔に、やっぱり、みたいなシュタインさん。
「もしあいつに迫られたとして、ユイさん、受け入れます?」
ぐふうっ。こ、こ、心の準備不足がぁ。
「いやっ、待って、そのホークさんはそんなことはっ」
はあっ、とため息つくシュタインさん。
「ユイさん、あのですね。男はですね、誰だって最後はそれを望みますよ」
ごふうっ。そ、そうなんだろうけどっ。
貴女を抱き締めたい
あ、あの時のあの言葉が、そんな風に受け取ってしまう。
「まあ嫌がるユイさんに迫るような事はしないでしょうけど」
ほーっ。
そ、そうだよね、ホークさん、そんなことしないっ。
そうだよっ、そうだよーっ。
「時間かかりそうですね」
ぐふうっ。
「だったら、そうなるまでに、俺が貴女を口説けばいい」
「あのっ、シュタインさんっ」
「ユイさんが、揺らいでいるのが分かって良かった」
立ち上がるシュタインさん。そして、私の前に片膝をつく。見上げるような体勢。
「俺は貴女が好きです」
「ですからっ、私は気持ちには応えられないっ」
おそらく、私の目は渦を巻くような混乱を示していたはず。
「変わるもんですよ、人の気持ちは」
なんやねん、その悟りみたいな言い方は?
「だから、ユイさんの気持ちが俺に傾くまでいい続けます。俺はユイさんが好きです、好きです、好きです」
む、胸に刺さる。シュタインさんの顔がみれない。
「で、ですから」
「応えられない? ユイさんはあいつと主人と戦闘奴隷のままで? おそらくユイさんは節度は守っているでしょうけど。それが、永遠に続くって思ってます?」
「で、でも。私の中にはホークさんがいて、それで」
「追い出すつもりはないですよ。ゆっくり、俺が貴女の心に入っていけばいい。ユイさん、好きです、貴女が」
私は鯉のようにパクパクし始める。
「だから、一回フラれたくらいでユイさんを諦めたくない。俺には『称号』もなにもないですが、貴女が好きです」
真剣に続けるシュタインさん。心臓がチクチクする。
「それでユイさんが俺をそれでも受け付けないって言うまでは、諦めないです」
だから。
「俺はユイさんが好きです」
私の手を取り、ちゅ、とする。
鬘だったら、再び吹っ飛ぶ衝撃。あわあわ。
「あ、あ、あ、あ、あの、シュタインさんっ、あ、明日早かしっ、わ、私、ねらんといかんからっ」
月が綺麗だからって見上げただけだったのにっ。
お休みなさいっ。
と、かみながら告げて、私は自室に走って逃げた。
一晩中、悶々としながら。
だけど、すぐに私と向き合う。
「ユイさん」
「はい」
「俺は、貴女に」
シュタインさんの灰色の目が、切なげに揺れている。
「貴女に、好意以上の、いや、違う」
マーファと同じ台詞が出てきそうになるが、途中で止まる。
「貴女が好きです、ユイさん」
直球できた言葉は、シュタインさんの切なげな目と共に私を貫く。
不覚にもドキッとする。イケメンのシュタインさんの言葉の威力が凄か。凄かけど、はっきりと自覚する。変に言い訳がましくしてはならないと。
「俺は、貴女が好きです」
「あ、ありがとうございます」
咄嗟に出た私の言葉に、シュタインさんの顔が、ふわっと歓喜に色が浮かぶ。
「お気持ちは、本当に嬉しいんですが。私には、シュタインさんの気持ちには答えられません。申し訳ありません」
私の心には、ホークさんがいる。
シュタインさんの表情に、さーっ、と色がなくなる。
私は、頭を下げる。
「…………………あの、戦闘奴隷のリーダーですか?」
ドキイィィッ
何でっ? え、嘘やろ? 両親や晃太にもばれてないのにっ。ちゃんと隠しているつもりなのにっ。
私は動揺してしまう。
「な、なんで……………」
「やっぱり」
ふぅー、と息を吐き出すシュタインさん。
「戦闘奴隷、ホークでしたっけ。あいつが称号があるって言った時」
あ、あの時。ホークさんに『天馬騎士(ペガサスナイト)』の称号があるって分かった時。
「手を、握って、見つめ合ってましたよね」
「あ、はい。はい?」
私が半端に出した手を、ホークさんが包んでくれた。見つめあって言われても、ほんのちょっとよ。確かに、あの時、いろんな人にみられていたかも知れないけど、本当にちょっとよ。
「あいつの目が、ユイさんに対してどう思っているか、直感したんです。ユイさんも受け入れていたように思えて」
だけど、と続けるシュタインさん。
「どうしても、俺は諦めたくなかった。勘違いかもしれないかもって思いたかった。だから、知りたかった」
ため息を吐くシュタインさん。
「やっぱり、俺は相手にされなかったですね」
自嘲するようなシュタインさん。
「あの、シュタインさん、そうやないんですよっ」
そんな姿に私は慌ててしまう。なんや、さっきまで言い訳しないっていう気持ちが逃げていく。
「座りませんか?」
そんな慌てる私に、シュタインさんはベンチを指差す。ホークさんとあの日話したベンチ。中庭にはベンチはこれしかないけど。
「あ、はい」
私はおずおずと座る。なんやろ、ドキドキする。なんか変な汗が出てきた。
なんだか、憑き物でも落ちたようなシュタインさん。
「聞いてもいいですか?」
「はい、何でしょう」
私は緊張して答える。何を聞かれるんやろ?
「マーファでは迷惑でしたか?」
あ、あの時?
「迷惑って、そんなことはなかですよ。そりゃ驚きましたけど」
手の甲に、ちゅ、だもん。鬘だったら吹っ飛ぶ衝撃だったし。
「嬉しかったですよ。あんな風に言われたのは生まれて初めてで、舞い上がるようでしたけど」
1人になって考えて、考え付いたのは吊り橋効果だった。
そして、私は女としての自信がないことを思い出した。それはシュタインさんには言わないけど。
「色々考えて、最後に思い浮かんだのは、熊に襲われて傷を負ったシュタインさんの姿でした」
「そう、ですか」
ため息つきそうなシュタインさん。視線は地面に落ちたままだ。
「ユイさん」
「はい」
「もし、俺が毎日、貴女に伝えていたら、変わっていました?」
「あ……………」
毎日? 毎日あれ? 毎日あれやられたら、イケメンのシュタインさんに言われたら、誰だって傾かない?
「あ、あ、それは、あっと……………私、そういうの、分からないというか、えっと」
「俺を好きになってくれました?」
こっちを見て聞いてくる。答えにくいっ。毎日、あれをやられたら、音をたてて崩れてるような気がするっ。いまさらだけどっ。
だってさ、ホークさんとの事だってさ、言われなければ自覚するのだって怪しい。いつかは気がついたかもしれないけど。多分、時間がかかっていたかもしれない。
「やっぱり。あいつと何かあったんですね」
「な、な、何かって、何か?」
何かって、ちょっとだけ、ちょっとだけ、だったよ、あれだけだし、あれから何にもないしっ。
…………………………………あら?
あれから、何にもない。
確かに私とホークさんの立ち位置は変わらない。主人と戦闘奴隷のリーダーだ。その距離感を保っているつもり。ホークさん、立場を崩さずにいる。別に私はそれでいいかなって思っている。今の距離感がありがたい、私はね。
あら? これでいいのかな?
「ユイさん。どうしました?」
「いえ、何でもないです?」
「疑問系ですね。そもそもあいつのどこが良かったんですか?」
「そ、それは」
聞かれたのは我ながら恥ずかしい言葉を絞り出す。
初めての対人戦で、フォローしてくれた事。
冒険者として不足している部分を補ってくれた事。
ノワールに乗って、魔境を私という荷物を抱えてくれた事。
色々話した事。
「ふーん」
と、聞いたシュタインさんが、何故か目を細めて聞いている。
「ユイさん、それ、吊り橋効果じゃないですか?」
シュタインさんの一言に、私はフリーズ。
「その対人戦あたり、まさにそうじゃないですか?」
私は返事ができない。
まさにそうやと思えてきた。
最初のきっかけと言われたら、まさにあの対人戦だ。
私は頭の中が混乱を始める。
えっ? まさか、私のこの気持ちって、勘違いなの?
あの安心感とか、嬉しかった事や、おくるみ抱いたイメージとか、全部勘違い? まさかの勘違い?
私の中で、ごちゃごちゃしそうになる。
シュタインさんに吊り橋とか言ってた当人が、自分の気持ちが、土台が崩れそう。
「ユイさん。俺が貴女が好きだと自覚したのは、あの熊の件で、ユイさんが見舞いに来てくれた時でしたけど。その前から意識してましたよ」
「はい?」
改めてのシュタインさんの告白。
「ユイさん、優しいし、飯旨いし、いい匂いするし、その色々」
何、色々って。いま、視線がどこにいってた?
「積み重なって、俺はユイさんが好きなんだって思って」
「そ、そうですか………………」
なんや嬉しか、恥ずかしか。
…………………………………………………………………あ、ちょっと、待って。それは、私にも当てはまらない?
あら? 私の中、ゴロゴロゴロゴロと気持ちがおかしくなる。崩れそうだったのに、ゆっくり順序立てて考える。今の関係が心地い。他から見たら、ぬるま湯のような関係が。前にも後ろにも進んでない関係が。
「ユイさん」
「あ、はい」
悶々としていた私は、シュタインさんがじっとこちらを見ながら聞いてくる。
「もしかして、迷ってます?」
「迷って……………ちょっと、混乱しただけで…………………」
事実を突かれて、崩れそうだったけど。
今の関係が心地いいし、何よりあの時頭に浮かんだイメージや、何より換えがたい安心感。それが、私にとって重要やし。
そうや、それで、今はいいかも。
そう思えて良かったかもしれない。
………………………ホークさんにしたら、不満やないかな? あら? いいのかな? あら? もしかしたら、私がぐずぐずしている間に、ホークさんが心変わりしたら? だって、私は自分に自信ないんやもん。
コロコロ考えが変わる。
シュタインさんは少し考えてから、口を開く。
「なら、まだ、俺にもチャンスあります?」
「なんでそうなるんですか?」
「だって、揺らいでいるでしょう? 俺だって、たった一回フラれたくらいで諦めたくない」
うっ、シュタインさんの灰色の目が、なにやら力強い。
「あいつとどこまでいってます? まだ、身体を許してないでしょう?」
ぐふうっ。シュ、シュタインさんっ、ダイレクト過ぎっ。
私の顔に、やっぱり、みたいなシュタインさん。
「もしあいつに迫られたとして、ユイさん、受け入れます?」
ぐふうっ。こ、こ、心の準備不足がぁ。
「いやっ、待って、そのホークさんはそんなことはっ」
はあっ、とため息つくシュタインさん。
「ユイさん、あのですね。男はですね、誰だって最後はそれを望みますよ」
ごふうっ。そ、そうなんだろうけどっ。
貴女を抱き締めたい
あ、あの時のあの言葉が、そんな風に受け取ってしまう。
「まあ嫌がるユイさんに迫るような事はしないでしょうけど」
ほーっ。
そ、そうだよね、ホークさん、そんなことしないっ。
そうだよっ、そうだよーっ。
「時間かかりそうですね」
ぐふうっ。
「だったら、そうなるまでに、俺が貴女を口説けばいい」
「あのっ、シュタインさんっ」
「ユイさんが、揺らいでいるのが分かって良かった」
立ち上がるシュタインさん。そして、私の前に片膝をつく。見上げるような体勢。
「俺は貴女が好きです」
「ですからっ、私は気持ちには応えられないっ」
おそらく、私の目は渦を巻くような混乱を示していたはず。
「変わるもんですよ、人の気持ちは」
なんやねん、その悟りみたいな言い方は?
「だから、ユイさんの気持ちが俺に傾くまでいい続けます。俺はユイさんが好きです、好きです、好きです」
む、胸に刺さる。シュタインさんの顔がみれない。
「で、ですから」
「応えられない? ユイさんはあいつと主人と戦闘奴隷のままで? おそらくユイさんは節度は守っているでしょうけど。それが、永遠に続くって思ってます?」
「で、でも。私の中にはホークさんがいて、それで」
「追い出すつもりはないですよ。ゆっくり、俺が貴女の心に入っていけばいい。ユイさん、好きです、貴女が」
私は鯉のようにパクパクし始める。
「だから、一回フラれたくらいでユイさんを諦めたくない。俺には『称号』もなにもないですが、貴女が好きです」
真剣に続けるシュタインさん。心臓がチクチクする。
「それでユイさんが俺をそれでも受け付けないって言うまでは、諦めないです」
だから。
「俺はユイさんが好きです」
私の手を取り、ちゅ、とする。
鬘だったら、再び吹っ飛ぶ衝撃。あわあわ。
「あ、あ、あ、あ、あの、シュタインさんっ、あ、明日早かしっ、わ、私、ねらんといかんからっ」
月が綺麗だからって見上げただけだったのにっ。
お休みなさいっ。
と、かみながら告げて、私は自室に走って逃げた。
一晩中、悶々としながら。
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