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変わらないもの⑦
私はゴーグルを装着。
「姉ちゃん、大丈夫な?」
「大丈夫やろ。ホークさんおるし」
ビアンカとルージュも、オシリスに注意を繰り返す。
『オシリス、ユイを乗せるのですからゆっくり飛ぶのですよ』
『ユイはホークとは違うから注意するのよ』
「くうくうっ」
イシスも心配したのか、側で並走、違う並飛行してくれると。
まずはホークさんが騎乗。ノワールと違うのは、チュアンさんの肩を借りなくてすむこと。
私は体勢を低くしてくれたオシリスの鞍に跨がる。そして、す、と立ち上がるオシリス。視線がノワールより低いけど、今だけ。ホークさんがいつもの様に、マントで私ごと包む。はい、餃子の出来上がり。しっかりと、ホークさんの腕が私をホールド。うーん、安心感ー。
晃太やチュアンさん達、ラスチャーニエの皆さんが心配するなか、ゆっくりオシリスが走り出す。やっぱりノワールと違う。なんと言うか、安定感が、上下に揺れる感じが違う。
「ユイさん、飛びますよ」
耳元でホークさんが囁く。
「はい、お願いします」
視界の隅で、イシスも並走してくれている。
バサアッ、と音が響く。
飛ぶっ。
ぐっ、と内臓と頭に圧がかかる。まるで飛行機に乗った時の圧のようやっ。ひーっ、地面が丸見えーっ。
『低ク飛べ、主ガイルノダ』
「くうっ」
オシリスは先ほどより高くは飛ばずにいるようやけど、私にしてみたら立派な高所。ひーっ。ホークさんがしっかりホールドしてくれているからいいけど、私は手すり、これは紐タイプね、握り締める。地面が遠いって結構不安やねっ。やけどあの富士山より高い王冠山を越えるなら、色々クリアしないといけない問題があるはず。
しばらく、オシリスはゆっくり飛行する。
「ユイさん、曲がりますよ」
「はい」
オシリスはホークさんの指示に従い大きく旋回する。う、圧がっ。一瞬かかるが、ふわ、と無くなる。あら、そういえば、全然息が苦しくない。ゆっくりとは言え、スピードがあるのに、しかもこの寒い時期なのに。なんでやろ?
「くうっ、くうっ」
『主ヨ、終ワルカ? ソレトモ、モウ少シ高ク飛ブカ?』
「そうやね、今日はこれで終わってほしいかな」
「くうっ」
オシリス賢いなあ。私の言葉に答えて着陸体勢に入る。
地面がゆっくり近付いてくる。あ、怖かっ、離陸より怖かっ。私の不安をよそに、オシリスは羽の角度を変えながら無事に着陸する。ふー、着陸怖か。
「姉ちゃん、どうな?」
「あ、思ったよりはね。ちょっと怖かけど」
降りますかね。もたもたとしていたら、結局ホークさんが何時ものように抱えてくれた。そう、この降りるのが、もたついてしまう。恥ずかしか。
「ふー」
まったく何にもしてないけど、ふー。
ゴーグル外して、と。
「飛行に関しても問題はなさそうだですね」
「緩みはないかしら?」
イピオスさんとアグノスさんは通訳の晃太とビアンカを交えてお話。
「ユイさん、どうだった?」
エマちゃんが興味津々で聞いてくる。
「うん、高さに慣れんとね」
ホークさんがいるから、私は乗ってるだけだけど。本当にホークさんにはノワールの時と同じようにお世話になりっぱなしや。
もう一度、ホークさんだけを乗せてオシリスが飛行。今度かなり高度があるけど、だ、大丈夫かね? ほら気圧とか、空気とかさ。私が心配なのはそれ。富士山より高い、つまり高所ならば、問題は高山病的なものだ。はらはらと心配していたけど、降りてきたホークさん、けろっとしてる。
「彼は、大丈夫なんでしょうか? あれだけの高所なのに。いくら称号で補助があっても…………」
ケルンさんも同じ心配してくれている。
「ホークさん、吐き気とかないですか?」
軽く降りたホークさんに聞くも、ホークさんはけろっとしたまま。
「はい、何とも。ある程度は覚悟していたんですけど」
ホークさん自身、不思議そう。
「あのユイさん」
そっと私を呼ぶので、私は何だろうと付いていく。
他から見えない位置、オシリスの向こうで、ホークさんが囁くように言ってくる。
「もしかして、時空神様のブーストではないでしょうか?」
「あ」
忘れとった。
確か戦闘には向かないけど、必ず必要になるって。これのことかな。それしか思い付かないや。
「そうかもしれませんね。きっと、時空神様が守ってくれたんですね」
きっとそれやね。お礼ばせんと。何にしようかな? うーむ。
悩んでいるとじっとこちらを見てくるホークさんの視線に気がつく。ドキドキ、どうしたんやろ?
「ど、どうしました?」
「いえ、最近、ユイさんに避けられていた気がしたので」
ドキイッ。
た、多分それ、あれだよあれ。まともにホークさんを直視出来なかったのが、そう思われたのかな? 私の中で、色々ごちゃごちゃして、情けないと言うか、みっともなくて、まともにホークさんと向き合えなかった。
「え、えっと、すみません、そんなつもりはなかったんですけど」
ごちゃごちゃと言い訳。なんてみっともない。だけど、それがいけなかったのか、ホークさんの眉が少し下がる。
「何か、俺は失礼な事をしましたか? それなら」
「いやいやいや違うんですよ。私の問題ですからっ、ホークさんには感謝しているんですから」
これは本当。だって、魔境に行くのだって、ホークさんいなかったら年単位かかったはずやし。今回のオシリスの騎乗問題だって、ホークさんいなかったら惨状よ。オシリスの体に私を簀巻きの様にして飛ぶかと思うと、絶対意識飛ぶ。
それに。
「ホークさんに具材みたいに包まれてるとですね、凄く安心するんです。本当に頼りにしているんですから」
どんなにノワールがスピード出しても、きっとどんなにオシリスが高く飛んでも、きっと大丈夫。だって、ホークさんいるからね。そんな絶対的な信頼が、私にはある。
「具材って」
「それだけ委ねてるって意味で、あっ」
しまったっ。
これ言っちゃいけないやつっ。思わず出てしまい口を押さえたが、ホークさんは、あちゃー、みたいに片手で顔を覆う。
「今のノーカンでっ」
慌てる私に、ホークさんはため息をつく。
「はぁ、分かっていますよ」
ホークさんはちょっとあきれたような顔だ。
「ユイさん」
「あ、はい」
改まるホークさんは、私の耳元に口を寄せる。ドキドキッ。
「他の男の前では絶対に言ってはダメですよ」
「はい、肝に命じます」
ドキドキ。近くないかな? ちょっと、ちょっと近くないかな? ドキドキ、ドキドキ。
「ユイさん」
「はい」
ま、まだあるのかな? ドキドキ。
「あのシュタインと言う男には、絶対に言ってはダメですよ」
ドキイッ。
「なんで……………」
あの月をみた日の事は、誰も知らない筈なのにっ。
「俺はユイさんを見てますから、分かりますよ。俺だって男だし、あいつのユイさんを見る目を見たら分かります」
隠し事できんやつや。
ホークさんは囁く様に続ける。
「ユイさん。俺はセーブしていますが、あいつがそうとは限りませんからね」
「ハイ、気ヲツケマス」
ドキドキ、近いって近いって。
名残惜しそうに離れる瞬間、ホークさんの息が耳元にかかり、ドキドキ。
やっとホークさんが離れてほっとしていると、その後ろでビアンカとルージュが覗いていたので、ひーっ、と、肝が冷える。ホークさんも一瞬で顔色が悪くなる。
『ユイが嫌がらないか見ていたのです』
『そうね。そうなったら、軽く噛もうと思って』
「やめて、大惨事や」
心配してくれるのは嬉しかけど、やめて、ビアンカとルージュの甘噛み、花の比やないやろうから。
「姉ちゃん、大丈夫な?」
「大丈夫やろ。ホークさんおるし」
ビアンカとルージュも、オシリスに注意を繰り返す。
『オシリス、ユイを乗せるのですからゆっくり飛ぶのですよ』
『ユイはホークとは違うから注意するのよ』
「くうくうっ」
イシスも心配したのか、側で並走、違う並飛行してくれると。
まずはホークさんが騎乗。ノワールと違うのは、チュアンさんの肩を借りなくてすむこと。
私は体勢を低くしてくれたオシリスの鞍に跨がる。そして、す、と立ち上がるオシリス。視線がノワールより低いけど、今だけ。ホークさんがいつもの様に、マントで私ごと包む。はい、餃子の出来上がり。しっかりと、ホークさんの腕が私をホールド。うーん、安心感ー。
晃太やチュアンさん達、ラスチャーニエの皆さんが心配するなか、ゆっくりオシリスが走り出す。やっぱりノワールと違う。なんと言うか、安定感が、上下に揺れる感じが違う。
「ユイさん、飛びますよ」
耳元でホークさんが囁く。
「はい、お願いします」
視界の隅で、イシスも並走してくれている。
バサアッ、と音が響く。
飛ぶっ。
ぐっ、と内臓と頭に圧がかかる。まるで飛行機に乗った時の圧のようやっ。ひーっ、地面が丸見えーっ。
『低ク飛べ、主ガイルノダ』
「くうっ」
オシリスは先ほどより高くは飛ばずにいるようやけど、私にしてみたら立派な高所。ひーっ。ホークさんがしっかりホールドしてくれているからいいけど、私は手すり、これは紐タイプね、握り締める。地面が遠いって結構不安やねっ。やけどあの富士山より高い王冠山を越えるなら、色々クリアしないといけない問題があるはず。
しばらく、オシリスはゆっくり飛行する。
「ユイさん、曲がりますよ」
「はい」
オシリスはホークさんの指示に従い大きく旋回する。う、圧がっ。一瞬かかるが、ふわ、と無くなる。あら、そういえば、全然息が苦しくない。ゆっくりとは言え、スピードがあるのに、しかもこの寒い時期なのに。なんでやろ?
「くうっ、くうっ」
『主ヨ、終ワルカ? ソレトモ、モウ少シ高ク飛ブカ?』
「そうやね、今日はこれで終わってほしいかな」
「くうっ」
オシリス賢いなあ。私の言葉に答えて着陸体勢に入る。
地面がゆっくり近付いてくる。あ、怖かっ、離陸より怖かっ。私の不安をよそに、オシリスは羽の角度を変えながら無事に着陸する。ふー、着陸怖か。
「姉ちゃん、どうな?」
「あ、思ったよりはね。ちょっと怖かけど」
降りますかね。もたもたとしていたら、結局ホークさんが何時ものように抱えてくれた。そう、この降りるのが、もたついてしまう。恥ずかしか。
「ふー」
まったく何にもしてないけど、ふー。
ゴーグル外して、と。
「飛行に関しても問題はなさそうだですね」
「緩みはないかしら?」
イピオスさんとアグノスさんは通訳の晃太とビアンカを交えてお話。
「ユイさん、どうだった?」
エマちゃんが興味津々で聞いてくる。
「うん、高さに慣れんとね」
ホークさんがいるから、私は乗ってるだけだけど。本当にホークさんにはノワールの時と同じようにお世話になりっぱなしや。
もう一度、ホークさんだけを乗せてオシリスが飛行。今度かなり高度があるけど、だ、大丈夫かね? ほら気圧とか、空気とかさ。私が心配なのはそれ。富士山より高い、つまり高所ならば、問題は高山病的なものだ。はらはらと心配していたけど、降りてきたホークさん、けろっとしてる。
「彼は、大丈夫なんでしょうか? あれだけの高所なのに。いくら称号で補助があっても…………」
ケルンさんも同じ心配してくれている。
「ホークさん、吐き気とかないですか?」
軽く降りたホークさんに聞くも、ホークさんはけろっとしたまま。
「はい、何とも。ある程度は覚悟していたんですけど」
ホークさん自身、不思議そう。
「あのユイさん」
そっと私を呼ぶので、私は何だろうと付いていく。
他から見えない位置、オシリスの向こうで、ホークさんが囁くように言ってくる。
「もしかして、時空神様のブーストではないでしょうか?」
「あ」
忘れとった。
確か戦闘には向かないけど、必ず必要になるって。これのことかな。それしか思い付かないや。
「そうかもしれませんね。きっと、時空神様が守ってくれたんですね」
きっとそれやね。お礼ばせんと。何にしようかな? うーむ。
悩んでいるとじっとこちらを見てくるホークさんの視線に気がつく。ドキドキ、どうしたんやろ?
「ど、どうしました?」
「いえ、最近、ユイさんに避けられていた気がしたので」
ドキイッ。
た、多分それ、あれだよあれ。まともにホークさんを直視出来なかったのが、そう思われたのかな? 私の中で、色々ごちゃごちゃして、情けないと言うか、みっともなくて、まともにホークさんと向き合えなかった。
「え、えっと、すみません、そんなつもりはなかったんですけど」
ごちゃごちゃと言い訳。なんてみっともない。だけど、それがいけなかったのか、ホークさんの眉が少し下がる。
「何か、俺は失礼な事をしましたか? それなら」
「いやいやいや違うんですよ。私の問題ですからっ、ホークさんには感謝しているんですから」
これは本当。だって、魔境に行くのだって、ホークさんいなかったら年単位かかったはずやし。今回のオシリスの騎乗問題だって、ホークさんいなかったら惨状よ。オシリスの体に私を簀巻きの様にして飛ぶかと思うと、絶対意識飛ぶ。
それに。
「ホークさんに具材みたいに包まれてるとですね、凄く安心するんです。本当に頼りにしているんですから」
どんなにノワールがスピード出しても、きっとどんなにオシリスが高く飛んでも、きっと大丈夫。だって、ホークさんいるからね。そんな絶対的な信頼が、私にはある。
「具材って」
「それだけ委ねてるって意味で、あっ」
しまったっ。
これ言っちゃいけないやつっ。思わず出てしまい口を押さえたが、ホークさんは、あちゃー、みたいに片手で顔を覆う。
「今のノーカンでっ」
慌てる私に、ホークさんはため息をつく。
「はぁ、分かっていますよ」
ホークさんはちょっとあきれたような顔だ。
「ユイさん」
「あ、はい」
改まるホークさんは、私の耳元に口を寄せる。ドキドキッ。
「他の男の前では絶対に言ってはダメですよ」
「はい、肝に命じます」
ドキドキ。近くないかな? ちょっと、ちょっと近くないかな? ドキドキ、ドキドキ。
「ユイさん」
「はい」
ま、まだあるのかな? ドキドキ。
「あのシュタインと言う男には、絶対に言ってはダメですよ」
ドキイッ。
「なんで……………」
あの月をみた日の事は、誰も知らない筈なのにっ。
「俺はユイさんを見てますから、分かりますよ。俺だって男だし、あいつのユイさんを見る目を見たら分かります」
隠し事できんやつや。
ホークさんは囁く様に続ける。
「ユイさん。俺はセーブしていますが、あいつがそうとは限りませんからね」
「ハイ、気ヲツケマス」
ドキドキ、近いって近いって。
名残惜しそうに離れる瞬間、ホークさんの息が耳元にかかり、ドキドキ。
やっとホークさんが離れてほっとしていると、その後ろでビアンカとルージュが覗いていたので、ひーっ、と、肝が冷える。ホークさんも一瞬で顔色が悪くなる。
『ユイが嫌がらないか見ていたのです』
『そうね。そうなったら、軽く噛もうと思って』
「やめて、大惨事や」
心配してくれるのは嬉しかけど、やめて、ビアンカとルージュの甘噛み、花の比やないやろうから。
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