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一時の⑪
次の日。
元旦だけど、朝早くから移動する。現在マーファに向かって移動中だからね。現在冬の為、移動する馬車は激減。近距離の移動する馬車には遭遇したけどね。
アルブレンとマーファとの街道にある、大きな町、レクスに到着したのは昼過ぎ。いつもは素通りで、ぶひひん特急ノワールは、町の外周を周ってたから初めて寄る。晃太もアルブレンから預かった荷物があるしね。
レクスはハルスフォン侯爵領、大きな町と言っても、マーファの4分の1程の規模。マーファ直前の最後の町なので、ここで泊まり、買い物したりする旅の人がたくさんいて賑やかなんだって。現在は閑散期だけど。
門番さん達は、かみかみでいつもの注意事項を伝えてくれた。それからギルドまで付き添ってくれた。そのおかげで、ずらずらと歩くうちの従魔ズには、え、何々? みたいな顔されたけど、トラブルにはならなかった。
ギルドで到着報告、晃太がチュアンさんに伴われ搬送品を提出。その間に私は宿を探す。出来れば、大型一軒家タイプが良かったけど、残念だけどなかった。仕方なく、別々の宿を取ることに。コテージ代頂いているのに。母がたっぷりとお惣菜の詰まったお重を渡している。おせち料理代わりね。マアデン君とハジェル君にはお年玉代わりの、バラエティーなお菓子の詰め合わせは朝の時点で渡してある。もう、にっこにこだった。
予定としては、2泊。そう、いよいよ明日はビアンカとルージュが仔達を連れて魔境に籠る。そして、イシスが各エリアボス達に警告のために魔境を回る。心配だけど、こればっかりはビアンカやルージュを信じるしかない。
晃太と合流し、私達は宿に向かった。
宿に到着してルームを開ける。いつものように、正月は新品の肌着を着る。そして、身支度を整えて、神棚に色々あげる。がめ煮、唐揚げ、海老フライ、カキフライ。ポテトサラダ、生春巻き、ローストビーフ(ワイバーンのお肉)、クラーケンとアスパラガスのバター炒め、卵と手羽元の酢煮、卵焼き、刺身盛り合わせ。紅白のかまぼこ等々が彩りを飾る。銀の槌のホールケーキも並ぶ。王道の苺のケーキ。苺とチョコレートケーキ。フルーツのケーキ、ブルーベリーのレアチーズケーキ、モンブランのケーキ、アップルパイ、ロールケーキ。
「神様。明けましておめでとうございます。今年もお見守りください」
と、父が挨拶。
今年もお見守りください。
皆でお祈り。
明けましておめでとう。
見守っているからな。
あ、時空神様やっ。
お正月から時空神様の声が聞けた、ありがたい。
目を開けると、おせち料理やケーキがなくなってた。さ、次や。
手分けして、お年玉のお菓子の詰め合わせをあげる。
「時空神様。魔法の三柱神様や闘神様達へのお年玉です」
ありがとう、ちび達が喜ぶ。
いえいえ、毎年、ブーストでお世話になってますから。お菓子の詰め合わせは無事に無くなってる。良かった、届いたね。
「さ、私達も頂きましょう」
我が家の正月は昼から呑む。
本日はカロリー解禁。
『美味しいのですっ』
『エビだわっ』
がっふん、がっふん、食べてる。
「わふんっ、わふんっ、がぶがぶっ」
「がぶんっ、がぶんっ」
『卵、もっと食べたいっ』
『るり、おにくたべちゃい』
『くりちゅもおにく~』
「くるっ、くるっ、くるっ」
仔達もがっふん、がっふん。
…………………………なんやろ、胸に何かが詰まりそうやけど。
母は何とか笑顔を保っている。
必要な事やけど。
ビアンカとルージュの話では、約3ヶ月は魔境に籠るそうだ。問題の若手のウルフ達も鍛えるそうだけど。その成長具合で、ヤマタノオロチ討伐後のモンスターボックスの掃討率が変わる。
『ねえね、おかわり~』
『ねぇね、たまご~』
『ねーね、おにく~』
「あ、はいはい。待ってね」
今日はたくさん食べさせよう。
母はすぐに作業に入り、私も手伝うために椅子から立ち上がった。
次の日。
宿に両親と花、アレスとアリスとシルフィ達を残し、レクスを出た。見送る母がぶるぶる細かく震えていた。きっと我慢してるんやろうね。ばれないように必死や。魔境に行くので、アレスが鼻水君と遭遇したら面倒だからね。仔達の訓練に関しては、アレスは何も言わない。当たり前みたいな感じだ。
『ばあば?』
「「くうーん」」
三人娘がぶるぶる震える母に気がついたようやけど。
『ヒスイ、いらっしゃい』
『ルリ、クリス、来るのです』
呼ばれて、振り返りながら三人娘がやって来る。
門番さん達にご挨拶して、レクスを出る。一応ギルドには、イシス、ビアンカやルージュ、仔達が一時離れる事は伝えてある。ホークさんが訓練の為に魔境に籠る為に離れるのなら、絶対に報告が必要だって。理由としては、保有している戦力が高いからね。カルーラで報告してある。レクスから西方向にある魔の森の奥に籠りますと、報告した。そして、もしかしたら、ウルフが増えるかも、なんて言ってみた。実際にはその若手ウルフ達が、加えて冷蔵庫ダンジョンで訓練の仕上げをするからって。なので、ビアンカとルージュがスカウトしました、私が契約しましたという体裁を取ることに。そして、ビアンカとルージュの育った魔境に、嫁・婿候補として連れていきます、という話にする。これは以前ホークさんから聞いた魔法馬がヒントだ。こちらはあまり交通機関が発達してないから、どうしてもコミュニティが狭い。番となると、血が近しい者になる場合が多い。人もそうだけど、それが繰り返されると魔法馬にもあまりよろしくない。なので、魔法馬の場合、旅の途中の魔法馬にお相手を願われる。ノワールとレディ・ロストークみたいにね。聞かれたら、そんな風に答える予定。
ノワールに馬車を繋げて、近くまで移動する。馬車の中で私達は言葉少なげに過ごす。
森に入り、近くに誰もいないことを確認して、ルームを開ける。
一刻、一刻と時間が来る。
『さあ、行くのです』
『皆、いらっしゃい。魔境で訓練するわよ』
ビアンカとルージュがルームに入るなり仔達を呼ぶ。私は無言で、サブ・ドアを開ける。なんや、何か言ったら噴き出しそうや。
『主ヨ、私ハ各エリアボス二警告シテクル。オシリス、主ヲ守ルノダゾ。ホルス、ビアンカトルージュノ言葉ハ母ノ言葉、ヨク聞キナサイ』
「くうっ」
「くるっ」
イシスはオシリスとホルスとお話。ホルスはビアンカとルージュの訓練に参加する。
ホークさんがノワールを厩舎に誘導してくれているのを感じる。
エリアボスの間に出ると、すぐに鼻水君が飛んで来た。まずは先代エリアボスのイシスにご挨拶し、すぐにビアンカに向かって尻尾バタバタ。だけど、すり寄っていかないのは、例の若手のウルフ達がいるからかな。補佐ウルフ達に、囲まれて、ずらっといる12匹のウルフ。若手なんやろうけど、皆ちゃんと成体、元気より大きい。あら、なんや、今まで見たこと無いウルフがっ。あ、あれはっ。あのフォルムはっ。グレート・ピレニーズみたいなタイプの垂れ耳大型犬っ。そして、もっふもふっ。
『あれはロック系ウルフなのですよ。身体強化特化型を得意とするウルフなのです』
因みにフォレスト系ウルフはなんでもござれのバランス系、アーマー系ウルフはその進化の先で得意分野が変わる。アリスや鼻水君はアーマー系頂点なのでバランス系だけど、どちらかと言うと攻撃特化型。発現系、発動系の攻撃を得意としている。ロック系ウルフは、身体強化の発動系を最も得意としている。
もっふもふやあ。
若手ウルフ達は、ビアンカとルージュを見て、ふふん、みたいやけど……………
ぴきい、とビアンカとルージュの蟀谷(こめかみ)がなる。
『なるほどなのです』
『生意気ね』
ちょっとビアンカさん、ルージュさん、顔、顔。なんば言いようとね君たち。
『言ッタダロウ?』
『そうなのですね』
『よく、分かったわ』
にやあ、と笑うビアンカとルージュ。晃太も引いてる。
『デハ、私ハ行クゾ』
そう言ってイシスはばさあっ、と飛び上がる。ぶわっふ、風圧っ。
『ユイ、行ってくるのです』
『行くわね』
私はこくん、と頷く。
ビアンカとルージュが仔達に軽く言う。
『行くのです』
『行くわよ』
いつものように、散歩に行くように。
疑うこと無く、仔達が続く。お尻、ぷりぷり。
「くうん」
何故か、いつも真っ先に行く元気が、不安そうに私の前に。
「くうーん」
『元気、来るのです』
ビアンカが呼ぶも元気は私を覗き込む。もしかしたら、気がついたのかな。何とか誤魔化さないと。
私は大きく息をつく。
「元気」
「くうん、くうん」
「いってらっしゃい」
「くうーん」
「元気、いってらっしゃい」
「くうん、わふんっ」
元気はいつものように元気に吠えて、ビアンカの元に。
仔達の輪に加わり、いつもの散歩に向かうように、ヒスイが振り返る。
『ねぇねっ、いってきますっ』
ヴッ。
私は鼻の奥が、カッと熱くなる。
息を吸う。できるだけ、いつものように。
「いってらっしゃいっ」
うまく言えたかな。
ビアンカとルージュ達の姿は呆気なく見えなくなる。サブ・ドアからルームに入るなり、私は我慢していた涙がポロ、と出た。3ヶ月だけや、3ヶ月だけ。あんなに小さかった仔達が、あんなに大きくなって、本格的な訓練に行くようになって、当たり前なんけど、なんや、寂しいって言うか、なんと言うか。
晃太も、鼻が赤い。黙って見守ってくれている鷹の目の皆さんも心配そうや。いかん、しっかりせんと。
「必要な事や」
「…………そうやな」
私はぐっ、と目をぬぐった。
さあ、私達も頑張ろう。
「さあ、帰ろう」
マーファに。
元旦だけど、朝早くから移動する。現在マーファに向かって移動中だからね。現在冬の為、移動する馬車は激減。近距離の移動する馬車には遭遇したけどね。
アルブレンとマーファとの街道にある、大きな町、レクスに到着したのは昼過ぎ。いつもは素通りで、ぶひひん特急ノワールは、町の外周を周ってたから初めて寄る。晃太もアルブレンから預かった荷物があるしね。
レクスはハルスフォン侯爵領、大きな町と言っても、マーファの4分の1程の規模。マーファ直前の最後の町なので、ここで泊まり、買い物したりする旅の人がたくさんいて賑やかなんだって。現在は閑散期だけど。
門番さん達は、かみかみでいつもの注意事項を伝えてくれた。それからギルドまで付き添ってくれた。そのおかげで、ずらずらと歩くうちの従魔ズには、え、何々? みたいな顔されたけど、トラブルにはならなかった。
ギルドで到着報告、晃太がチュアンさんに伴われ搬送品を提出。その間に私は宿を探す。出来れば、大型一軒家タイプが良かったけど、残念だけどなかった。仕方なく、別々の宿を取ることに。コテージ代頂いているのに。母がたっぷりとお惣菜の詰まったお重を渡している。おせち料理代わりね。マアデン君とハジェル君にはお年玉代わりの、バラエティーなお菓子の詰め合わせは朝の時点で渡してある。もう、にっこにこだった。
予定としては、2泊。そう、いよいよ明日はビアンカとルージュが仔達を連れて魔境に籠る。そして、イシスが各エリアボス達に警告のために魔境を回る。心配だけど、こればっかりはビアンカやルージュを信じるしかない。
晃太と合流し、私達は宿に向かった。
宿に到着してルームを開ける。いつものように、正月は新品の肌着を着る。そして、身支度を整えて、神棚に色々あげる。がめ煮、唐揚げ、海老フライ、カキフライ。ポテトサラダ、生春巻き、ローストビーフ(ワイバーンのお肉)、クラーケンとアスパラガスのバター炒め、卵と手羽元の酢煮、卵焼き、刺身盛り合わせ。紅白のかまぼこ等々が彩りを飾る。銀の槌のホールケーキも並ぶ。王道の苺のケーキ。苺とチョコレートケーキ。フルーツのケーキ、ブルーベリーのレアチーズケーキ、モンブランのケーキ、アップルパイ、ロールケーキ。
「神様。明けましておめでとうございます。今年もお見守りください」
と、父が挨拶。
今年もお見守りください。
皆でお祈り。
明けましておめでとう。
見守っているからな。
あ、時空神様やっ。
お正月から時空神様の声が聞けた、ありがたい。
目を開けると、おせち料理やケーキがなくなってた。さ、次や。
手分けして、お年玉のお菓子の詰め合わせをあげる。
「時空神様。魔法の三柱神様や闘神様達へのお年玉です」
ありがとう、ちび達が喜ぶ。
いえいえ、毎年、ブーストでお世話になってますから。お菓子の詰め合わせは無事に無くなってる。良かった、届いたね。
「さ、私達も頂きましょう」
我が家の正月は昼から呑む。
本日はカロリー解禁。
『美味しいのですっ』
『エビだわっ』
がっふん、がっふん、食べてる。
「わふんっ、わふんっ、がぶがぶっ」
「がぶんっ、がぶんっ」
『卵、もっと食べたいっ』
『るり、おにくたべちゃい』
『くりちゅもおにく~』
「くるっ、くるっ、くるっ」
仔達もがっふん、がっふん。
…………………………なんやろ、胸に何かが詰まりそうやけど。
母は何とか笑顔を保っている。
必要な事やけど。
ビアンカとルージュの話では、約3ヶ月は魔境に籠るそうだ。問題の若手のウルフ達も鍛えるそうだけど。その成長具合で、ヤマタノオロチ討伐後のモンスターボックスの掃討率が変わる。
『ねえね、おかわり~』
『ねぇね、たまご~』
『ねーね、おにく~』
「あ、はいはい。待ってね」
今日はたくさん食べさせよう。
母はすぐに作業に入り、私も手伝うために椅子から立ち上がった。
次の日。
宿に両親と花、アレスとアリスとシルフィ達を残し、レクスを出た。見送る母がぶるぶる細かく震えていた。きっと我慢してるんやろうね。ばれないように必死や。魔境に行くので、アレスが鼻水君と遭遇したら面倒だからね。仔達の訓練に関しては、アレスは何も言わない。当たり前みたいな感じだ。
『ばあば?』
「「くうーん」」
三人娘がぶるぶる震える母に気がついたようやけど。
『ヒスイ、いらっしゃい』
『ルリ、クリス、来るのです』
呼ばれて、振り返りながら三人娘がやって来る。
門番さん達にご挨拶して、レクスを出る。一応ギルドには、イシス、ビアンカやルージュ、仔達が一時離れる事は伝えてある。ホークさんが訓練の為に魔境に籠る為に離れるのなら、絶対に報告が必要だって。理由としては、保有している戦力が高いからね。カルーラで報告してある。レクスから西方向にある魔の森の奥に籠りますと、報告した。そして、もしかしたら、ウルフが増えるかも、なんて言ってみた。実際にはその若手ウルフ達が、加えて冷蔵庫ダンジョンで訓練の仕上げをするからって。なので、ビアンカとルージュがスカウトしました、私が契約しましたという体裁を取ることに。そして、ビアンカとルージュの育った魔境に、嫁・婿候補として連れていきます、という話にする。これは以前ホークさんから聞いた魔法馬がヒントだ。こちらはあまり交通機関が発達してないから、どうしてもコミュニティが狭い。番となると、血が近しい者になる場合が多い。人もそうだけど、それが繰り返されると魔法馬にもあまりよろしくない。なので、魔法馬の場合、旅の途中の魔法馬にお相手を願われる。ノワールとレディ・ロストークみたいにね。聞かれたら、そんな風に答える予定。
ノワールに馬車を繋げて、近くまで移動する。馬車の中で私達は言葉少なげに過ごす。
森に入り、近くに誰もいないことを確認して、ルームを開ける。
一刻、一刻と時間が来る。
『さあ、行くのです』
『皆、いらっしゃい。魔境で訓練するわよ』
ビアンカとルージュがルームに入るなり仔達を呼ぶ。私は無言で、サブ・ドアを開ける。なんや、何か言ったら噴き出しそうや。
『主ヨ、私ハ各エリアボス二警告シテクル。オシリス、主ヲ守ルノダゾ。ホルス、ビアンカトルージュノ言葉ハ母ノ言葉、ヨク聞キナサイ』
「くうっ」
「くるっ」
イシスはオシリスとホルスとお話。ホルスはビアンカとルージュの訓練に参加する。
ホークさんがノワールを厩舎に誘導してくれているのを感じる。
エリアボスの間に出ると、すぐに鼻水君が飛んで来た。まずは先代エリアボスのイシスにご挨拶し、すぐにビアンカに向かって尻尾バタバタ。だけど、すり寄っていかないのは、例の若手のウルフ達がいるからかな。補佐ウルフ達に、囲まれて、ずらっといる12匹のウルフ。若手なんやろうけど、皆ちゃんと成体、元気より大きい。あら、なんや、今まで見たこと無いウルフがっ。あ、あれはっ。あのフォルムはっ。グレート・ピレニーズみたいなタイプの垂れ耳大型犬っ。そして、もっふもふっ。
『あれはロック系ウルフなのですよ。身体強化特化型を得意とするウルフなのです』
因みにフォレスト系ウルフはなんでもござれのバランス系、アーマー系ウルフはその進化の先で得意分野が変わる。アリスや鼻水君はアーマー系頂点なのでバランス系だけど、どちらかと言うと攻撃特化型。発現系、発動系の攻撃を得意としている。ロック系ウルフは、身体強化の発動系を最も得意としている。
もっふもふやあ。
若手ウルフ達は、ビアンカとルージュを見て、ふふん、みたいやけど……………
ぴきい、とビアンカとルージュの蟀谷(こめかみ)がなる。
『なるほどなのです』
『生意気ね』
ちょっとビアンカさん、ルージュさん、顔、顔。なんば言いようとね君たち。
『言ッタダロウ?』
『そうなのですね』
『よく、分かったわ』
にやあ、と笑うビアンカとルージュ。晃太も引いてる。
『デハ、私ハ行クゾ』
そう言ってイシスはばさあっ、と飛び上がる。ぶわっふ、風圧っ。
『ユイ、行ってくるのです』
『行くわね』
私はこくん、と頷く。
ビアンカとルージュが仔達に軽く言う。
『行くのです』
『行くわよ』
いつものように、散歩に行くように。
疑うこと無く、仔達が続く。お尻、ぷりぷり。
「くうん」
何故か、いつも真っ先に行く元気が、不安そうに私の前に。
「くうーん」
『元気、来るのです』
ビアンカが呼ぶも元気は私を覗き込む。もしかしたら、気がついたのかな。何とか誤魔化さないと。
私は大きく息をつく。
「元気」
「くうん、くうん」
「いってらっしゃい」
「くうーん」
「元気、いってらっしゃい」
「くうん、わふんっ」
元気はいつものように元気に吠えて、ビアンカの元に。
仔達の輪に加わり、いつもの散歩に向かうように、ヒスイが振り返る。
『ねぇねっ、いってきますっ』
ヴッ。
私は鼻の奥が、カッと熱くなる。
息を吸う。できるだけ、いつものように。
「いってらっしゃいっ」
うまく言えたかな。
ビアンカとルージュ達の姿は呆気なく見えなくなる。サブ・ドアからルームに入るなり、私は我慢していた涙がポロ、と出た。3ヶ月だけや、3ヶ月だけ。あんなに小さかった仔達が、あんなに大きくなって、本格的な訓練に行くようになって、当たり前なんけど、なんや、寂しいって言うか、なんと言うか。
晃太も、鼻が赤い。黙って見守ってくれている鷹の目の皆さんも心配そうや。いかん、しっかりせんと。
「必要な事や」
「…………そうやな」
私はぐっ、と目をぬぐった。
さあ、私達も頑張ろう。
「さあ、帰ろう」
マーファに。
感想 854
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