もふもふ大好き家族が聖女召喚に巻き込まれる~時空神様からの気まぐれギフト・スキル『ルーム』で家族と愛犬守ります~

鐘ケ江 しのぶ

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連載

閑話 金の虎のヒーラー

 フリンダは体力がなかった。そして、食が細かった。
 一緒に行動してわかった事だ。何故、冒険者としては貴重なヒーラーなのに、ソロなのか。長く歩けなければ、戦闘となると逃げきれるだけの足もない。その為に、以前のパーティーから切られたようだ。
 だが、ファングもガリストもフリンダの調子に合わせた。息を切らせたら労った。ファングは妻を、ガリストは元婚約者を事情があり失っていたため、フリンダを大事にした。
 フリンダはいつも、萎縮して、謝ってばかりだったが、ファングもガリストも気にしなくていいと答えた。
 痩せて、肌があれ、髪質も荒れていたフリンダ。勝手に40近くの歳だと思っていたが、まだ19と聞いた時は、ファングとガリストは思わず二度聞いた。
 一緒に行動し始めて初めて、フリンダは身の上を話した。話さざるを得ない事が起きた。
 ある町に立ち寄り、ファングとフリンダで買い物をしていたら、商人風の男が絡んできた。赤虎の男だった。フリンダの息遣いがおかしくなった。
「結局男に寄生して生きているのか、相変わらず、ダメな女だな」
 侮蔑しきった声に、フリンダが今にも泣き出しそうだ。咄嗟にファングが腕をフリンダの顔の前にかざした。
「うちのヒーラーに言い掛かりは止めてもらおうか」
 大柄のファングに上から威圧的に言われて、け、と悪態をついて去っていった。
 買い物どころではなくなり、ガリストが待つ宿に戻ると、フリンダはとうとう泣き出してしまった。落ち着きを取り戻すまで、ファングとガリストは根気強く待った。
 ポツリポツリと、フリンダは事情を話した。
 もともとフリンダは貴族の娘。ただ、貧しい男爵の三女で、親の決めた相手と結婚。貴族ではよくあること。なのでなんの疑いもしなかった。しかも向こうからの指名だ。控え目で、自己主張しないフリンダは、それが嬉しく成人と共に嫁いだ。
 だが、フリンダを求めた理由は、回復魔法が使える貴族の娘と言う理由だ。
 その嫁いだ相手が、あの商人風の男。アスラ王国で、中堅の商会だったが、これがとんでもないモラハラ男。しかも時折手が出る。常にフリンダをバカにし、嘲る。人手不足で、帳簿の手伝いを強要し、朝から晩まで計算。しかも、モラハラ男の計算ミスを押し付けられ、怒鳴られる。主人には、口答えしないように徹底的に教育され、元来物静かな貴族の娘のフリンダは、黙ったまま耐えた。モラハラ男の両親も似たようなもので、フリンダに肩が痛い、腰が痛いと回復魔法を使わせ、効かないと罵り、穀潰しだと嘲る。
 商会の主家族がそれで通していたため、使用人達も、気の毒そうに見ているだけだった。
 そんな中、フリンダは妊娠し、男児を出産。フリンダは17歳になる前だった。赤虎の男児だ。見ただけで、フリンダそっくりの男児を。フリンダは可愛くて可愛くて仕方なかった。
 跡取りを生んだ。少しは待遇がよくなると淡い期待をしたフリンダだったが、モラハラ男は顔が似ていない事に癪に触った。
 残飯しか与えず、家の奥から出さず、僅かに泣き声でも上げようなら、怒鳴り散らし、フリンダを叩いた。もともと母乳の出が悪かったフリンダは、母乳がでなくなり、必死に乳母を頼むように懇願した。
 モラハラ男は、母乳が出ないフリンダが悪いと罵り、結局。
 男児は2ヶ月ももたなかった。
「よくも跡取りを殺したなっ」
 モラハラ男は自分の事を棚に上げ、フリンダを気がすむまで罵り、叩き、真冬の中、フリンダを放り出した。
 薄いワンピースに、裸足で。
 フリンダはモラハラ男に罵りを受けた事や、放り出された事よりも、我が子を失った事がショックで、道端でぼんやりしていた。
 そこに駆けつけたのは、商会の使用人達だった。
 1人が自分の靴を履かせ、1人が上着を着せ、1人がマフラーを巻き、1人が馬車を呼び、1人が支えて立ち上がらせて、1人が馭者に行き先を告げた。
 そして、僅かにかき集めた金を渡した。
 使用人達はモラハラ男のフリンダの対応に心苦しい思いをしていた。ただ、相手は雇い主。そしてアスラ王国は、雇い主に対して、物申すのは宜しくないという風習がある。古い習慣で、少しずつ意識改革を国が指導していたが、まだ、彼らはそんな習慣にがんじがらめだった。フリンダが放り出された事で、商会と関係がなくなった事で、やっと手を差し出した。遅い、そう言われるだろうが、当時はまだそんな意識が根強く浸透していた時代だった。それでも、放り出されフリンダに手をさしのべるのを拒絶反応を示す者も少なくない、それが当たり前と言う考え方がある時代。
 フリンダは一時教会の保護施設に身を寄せた。実家にも連絡したが、傷物だと、引き取りを拒否された。保護施設の勧めで離れた町の治療院で働き始めた。しばらくして、冒険者パーティーから誘われた。自分を必要とされていると思ったが。結局、体力の無さで切られてしまった。
 そこで出会ったのがファングとガリストだ。
「黙っていてごめんなさい」
 フリンダは泣きながら謝った。散々フリンダは自分を否定され、もともとの物静かな性格が自己肯定が更に低くなっていた。
 あのモラハラ男の商会は、遭遇した町とかなり離れていたから油断していたと。
「謝る必要はないんだぞ」
 わなわな泣くフリンダに、ファングが当たり前の様に言う。
「そうだ。フリンダには世話になっているんだ。気にしなくていいんだぞ」
 ガリストもそう言う。
 フリンダはしばらく泣いた。
 ファングとガリストは考えた、アスラ王国で活動していると、またニアミスしてしまうかもしれない。ファングの生まれた国だが、妻を失った時点で思い入れはない。フリンダも辛いなら、拠点を変えよう。
 西側は獣人に対して辛辣な所があるため、種族差別のないユリアレーナか、離れているが種族関係なく完全実力主義のシーラに移動しようと。
 あまり蓄えもなかったため、冒険者活動し、少し貯蓄して、移動を繰り返し1年かけて、ルーティに到着目前。赤虎の姉弟と遭遇。
 それが、リィマとアルストリアの姉弟だ。
「助けて」
 リィマはファング達に必死にすがり付いた。
 腕には、頭から流血し気絶していた、当時5歳のアルストリアを抱えて。
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