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番外。セディー視点15
しおりを挟むそれから、向こうに着いたネイトとは手紙のやり取りをしている。
返事を貰えたことが嬉しかった。
ネイトとの手紙のやり取りは、お祖父様とおばあ様がさせてくれている。
母の前で、ネイトへ手紙を書くのを見られるのは嫌だし、ネイトからの手紙を読んでいるところも見られたくない。
夜に一人のときに手紙を書いたり読んだりする。
手紙の内容は微笑ましい内容と言ってもいい。
ネイトが向こうの家で、よくしてもらっていることが、楽しく過ごせていることが伺えて、とても安心した。そして、感謝も物凄くしている。
けれど・・・僕には、非常に不満なことがある。
できることなら、向こうの家へ行って、ロイという子に直接文句を言ってやりたいくらいだ。
言わない……というか、言えないし。そんな資格が無いことは、わかっているけど。
僕は、ネイトと一緒に勉強したかった。
ネイトと一緒に外で遊びたかった。
ネイトと一緒にお出掛けだってしたい。
乗馬も一緒にやりたい。
剣もやってみたい。
喧嘩だって・・・
いや、やっぱり喧嘩はしたくないかな?
ネイトに嫌いだなんて言われたら、ものすご~く落ち込む気がする。
あと、多分僕は剣を習っているネイトに勝てなさそうだし。うん。やっぱり喧嘩は無しで。
なんというか、まぁ・・・向こうの家のロイ君が、羨ましくて羨ましくて仕方がないっ!!
あと、ロイ君の妹のスピカちゃんも、ネイトに可愛がられて羨ましい!!
ネイトと一緒に暮らせることが、妬ましい。
まぁ、言えるワケがないけど。本当に、ね・・・
**********
そして、ある日のことだった。
お見舞いに来てくれたおばあ様と対峙する母を見て・・・
僕はふと、気付いてしまった。
母が、おばあ様を見るブラウンの瞳に宿る……隠せていない、嫌悪の感情。その目が、ネイトを見るときの視線とよく似ていることを。
ガツン! と、頭を強く殴られたような衝撃。
・・・本当に、僕のせいなのかもしれない。
母が、ネイトに嫌悪の表情を隠さなくなったのは、あからさまに邪険にするようになったのは――――
僕が、『ネイトの瞳は日に透けるとおばあ様と同じ色になる』と、言った後じゃなかったか?
ネイトが外で遊ぶことを、殊更に母が厭うようになったのは。
ネイトは、小さい頃からおばあ様似で・・・
なんでネイトが、両親に邪険にされるのか?
長いこと疑問だったその答えが氷解した途端、すぅっと心が冷えて行く気がした。
それを、思ったことを、母が席を外した隙に、おばあ様へ聞いてみた。
ネイトへの両親の態度が、僕のせいなのかもしれない、と。
「・・・いいえ、それは違いますよ。セディー。あなたはなにも悪くありません」
おばあ様は深い溜息を吐いて、どこか疲れたように話してくれた。
「メラリアさんがネイトを嫌う一因は、わたしのせいです。彼女とは元々反りが合わなかったのかもしませんが、メラリアさんには随分と嫌われてしまったようです。だから、わたしと似たネイトを目の敵にするようになったんでしょうね。ネイトには可哀想なことをしたと思っています」
「それは、僕が」
「いいえ、それは違います」
僕の言い掛けた言葉を遮るおばあ様。
「メラリアさんが、ネイトを嫌うように仕向けたのは、エドガーです。あの子が、言ったそうです。ネイトが三月にならないくらいに、『ネイサンは母上にそっくりな顔をしている』と。それからだそうです。メラリアさんがネイトの面倒を見なくなったのは。だから、セディー。あなたが気に病むことはありません。本来なら、わたしとメラリアさん個人の問題なのに・・・セディーとネイトには、いつもつらい思いばかりさせてしまってごめんなさいね」
日に透けたときのネイトの瞳と同じ、明るい翠色のペリドットが、悲しそうに僕を見詰めて謝った。
**********
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