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「! な、なんだ……」
「……ぁあ、そうだったな? なにも、卒業したハウウェルのおにーさんを頼るまでもなかったよな? そう、ここには上位クラスの野郎がいた。そうだよ。最初からリールのノートを見せてもらえばよかったんだ……」

 ぼそぼそと低い呟きが落ち、

「というワケで、ノートを見せてくれ」

 これまでの取り乱しようから一転、にっこりと胡散臭さ全開の笑顔をリールへ向ける。

「……な、なんだその胡散臭い笑顔は」
「失礼な。どこが胡散臭いんだ? これは、顧客の警戒を解く営業スマイルだぞ?」
「……むしろ、益々警戒するぞ」

 胡散臭い笑顔でにじり寄るテッドに、険しい顔をするリール。

「ね、ちょっと疑問なんだけど、テッドってそんな慌てるくらい成績良くないの?」
「あ? ぁ~、一応普通くらいだと思うが? 多分」
「? 普通くらいの成績なら、そんな必死になって慌てる必要ないと思うんだけど? レザンなんか、ギリギリ普通クラスの点数だって言ってたし」
「うむ。俺は下位クラスに落ちても、留年や退学にさえならなければ特に構わんからな!」
「……そこは構えよ」

 胸を張るレザンに、ぼそりとしたツッコミ。

「や~、それは、あれだ。下位クラスに落ちたくねーっつうか・・・下位クラスに落ちるんだったら、別の学校でも構わないだろって親父に言われるからな。ほらここ、学費高めじゃん」
「……成る程」
「ふむ」

 そういう事情があるなら、あの取り乱しようもちょっとはわかるかな?
 テッドは下位クラスに落ちると、保護者に転校を仄めかされる、というワケか。

 この学園、学力が高めで卒業すると箔が付くって評判だし。男女交際に対してかなりお堅い校風も、保護者達にはかなり好評。
 まぁ、それなりの学費も取るらしいけど。

 そういうことなら・・・

「一応、勉強を教えてもらえる当てが、なくもないけど……」
「マジかっ!?」
「一応ね、一応。向こうの都合もあるんだから、確実じゃないよ?」
「それでもいい! 頼む!」

 ということで、勉強を見てくださいとわたしがお願いしたのは――――

「ああ、はい。大丈夫ですよ」

 お馴染みのライアンさんです。

「よろしくお願いしますっ!?」

 と、張り切るテッド共々、全員まとめて面倒を見てもらうことになりました。

 相変わらず、面倒見がいいですね。

「いや、お前勉強必要無くね? リール」
「……上位クラスの先輩に教わることのできる機会を逃す筈ないだろうが。俺も平民だぞ?」
「・・・気分転換に、ちょっと素振りでも」
「はい、レザン君。この列の問題を全て解くまでは駄目ですよ。ほら、座ってください」
「はい……」
「……ハウウェル、そこ間違ってる。そこはこうだ」
「あ、ありがと」
「いいですか? ここは、こういう風に考えるとわかり易いですよ?」
「ふむ。成る程」
「ライアン先輩、ここ教えてくださーい」
「はい。これは、こうですね」

 そんな感じで、テスト前日までお勉強しました。

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