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「では、セルビア嬢の代わりにわたしが勝負を受けましょう。宜しいでしょうか? 部長」
「え? ネイサン様?」

 驚いた顔でわたしを見詰めるケイトさんに、

「ハッ、お前みたいになよなよした奴が俺と勝負するってのか? セルビアの代わりに?」

 完璧、わたしを舐めたような口調の先輩。

 ・・・なよなよ? 誰がなよなよしてるかっ!? 剣とか腕っ節ならわたしの方が絶対手前ぇより強いぞこの野郎がっ!? と思った瞬間、わたしを抑えるようにぐっと肩を掴む握力が増した。

「ハウウェル」

 低い声が呼ぶ。

「大丈夫だから放せ」

 全く、そう心配そうな顔をしなくても、別に殴り掛かったりしないっての。ここは人前だってことくらい判ってるし。人気の無い場所なら、しっかりと話を付けて・・・・・いたと思うけど……

「・・・ええ、わたしが相手をさせて頂きます」

 ここまで言われたのだ。この野郎には存分に吠え面を掻かせてやらないと気が済まない。

「セルビア部長が相手をするまでもないと思いますので」

 内心をおくびにも出さないようにっこりと笑顔を作ると、

「はあ? 俺がセルビアよりも劣るって言うのかっ!」

 ムッとした顔をする彼。

「さあ? あなたの乗馬の腕はかく、部長としての資質や人望はセルビア嬢の方がまさっているのではありませんか?」

 さっきからこの野郎は、大会がどうのと自慢しているけど。ぶっちゃけ、乗馬クラブにあまり顔を出さない人の実力なんて知らない。でも、この短時間でも判る。ケイトさんの方が確実に、この野郎よりも部長に向いている。

「縁故採用の奴がよく吠えることだな! それなら、俺が勝ったらお前は副部長を辞めろ!」

 まぁ、『縁故でない』と胸を張っては言い切れないよね。わたし、前の部長から直接頼まれたワケじゃないし。

「わかりました」
「ネイサン様!」
「大丈夫ですよ、部長。では、わたしが勝ったらどうするのですか?」
「はあ? 乗馬大会で何度も表彰されている俺にお前が勝つつもりか? まあ、大会にも出られない程の腕だろうからな。ハンデとして、お前に勝負内容を決めさせてやるよ。なんだったら、二時間くらいトラックを走るだけってのでもいいぜ? お前みたいにひょろい奴が、何時間も馬に乗れるワケもないしな」

 この野郎、言わせておけばっ……

「わたしに勝負内容を決めさせて頂けるんですか? ありがとうございます。そうですねぇ……先輩の仰る通り、わたしもあまり体力のある方ではないですからね。では、十二時間・・・・耐久レースなんか如何でしょうか?」
「ハッ、できもしないクセに大きく出たもんだ。いいだろう。せいぜい無様な姿を晒さないよう祈っておくことだな」
「では、勝負の日時と詳しいルールは馬場の使用許可を得てからお知らせします」
「忘れないうちに、ちゃんと決めておけよ。ま、別に逃げたりクラブを辞めてもいいがな」

 と、先輩と勝負することを決めた。

「ネイサン様、宜しいのですか? あのようなことを公言してしまって……」

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