愛した人に婚約破棄されたのでニ度と愛しません

7。

もうすぐ、ファリーダとラルス様の婚約お披露目会だ。

ジュリアッド侯爵家には、招待状が届いていた。

『メリーア・ジュリアッド様

春の気配もようやく整い、心浮き立つ今日この頃、お変わりなくご活躍のこととお喜び申しし上げます。
お元気に過ごされていますか？』

皮肉としか思えない。

『この度、私達、ファリーダ・スティールとラルス・アルハルトは、婚約致しました。』

知ってるわよ、そんなこと。

胸のあたりが、ざわざわとした。
吐き出せそうで吐き出せない、気持ち悪い何かが詰まっているようだ。

『4月17日　午後1 時～午後７時
私達の婚約お披露目会がございます。
私達の晴れ姿をご覧いただければ幸いです。

ご出席・ご欠席
（どちらかに丸をお付けください）』

しょうもない。
晴れ姿、というより、見せしめでしょう？

本当は、ご出席の字を塗り潰してやろうか、なんて思っていたが、あからさまに悔しそうにするのは恥ずかしいので、丁寧にご出席の方に丸を付けた。

最後の最後まで、堂々と、毅然とした態度で応じてみせるのだ。

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～婚約お披露目会　当日～

メリーアは、いつもより清楚な感じで、美しく着飾ったドレスで参加した。

ラルス様とファリーダに挨拶に行った時、ラルス様に「よく平気な顔で来れたものだ。」
と言われた。
ファリーダは、ラルス様の後ろに隠れ、少し顔を出して困ったようにしていた。

演技の上手いこと。

ラルス様も、流石に晴れ舞台で騒ぎは起こそうとしていないみたいだった。
私も、特に行動を起こす気などなかったので、他の方々と同じように過ごしていた。

飲み物を何か飲もうと思っていたときだった。

「まぁ、あれが例の侯爵令嬢？」
「怖いわね。」

「虐めるような奴だから、愛想を尽かされたんだろ。」
「おいw w  聞こえちまうだろー？」

私を蔑む陰口が聞こえてしまった。
「……」
悔しい。
悔しい悔しい。

グッと下唇を、噛みちぎってしまうかと言うほど強く噛むと、後ろで指を指して、ピーピー喚いている彼らへの怒りを、

「……馬鹿みたい。」

と呟くことで抑えた。

腹立たしい。
何も出来ない自分が悔しい。

ホールの中で、孤立して立っている自分が、あの日の自分と重なって、目眩がした。
吐き気がした。

視界が歪み、もう、私の意識は無かった。