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第2章
No.186
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時刻はお昼少し前。
その時間帯の王都は、人々の営みで賑わっていた。
「いらっしゃい、いらっしゃい!」
「今日のオススメはチーコだよ!」
「今朝、オーディナ領で取れたばかりの新鮮な魚だよ!」
大通りでは、出店の店主達が明るい声で客を呼び込む。
「あっ、あのアクセサリー可愛い!」
「あら?チーコの実、すごく美味しそう」
「うわっ!この魚、ピッチポじゃないか!」
街行く住民達は、思い思いに気に入った店を覗く。そんな賑わいを見せる王都でも、一つ裏通りに入ると雰囲気はガラリと変わる。
表通りと比べて、裏通りは建物の影であまり陽が当たらず薄暗い。その場所に居る者達も、何処と無く近寄り難い者達が多い。その為、住民達は余程の事がない限り近付かない。そんな裏通りから表通りを見つめる3人の黒いローブの男達。
「………呑気なものですね。自分達が襲われるなんて微塵も思ってもいない顔をしている」
「しょうがないですよ。この国の連中は、平和ボケした奴ばかりですからね」
そう言いながら、街行く住民に冷たい視線を送る二人の男に、リーダー格の男がそんな二人に声をかける。
「我々と、この国の者達とはは生まれた時から何もかもが違う。だから、何を言っても無駄だ。………それより、我々は仕事をするだけだ」
そう言って、男は明るく笑い合う住人達を感情のこもらない冷たい目で見る。
「相手は、『血濡れの火竜』だ。油断は出来ない。しかも、ターゲットは奴の番だ。ターゲットは、以前も誘拐されたと聞く。その為、身辺の警備は厳重だろう」
「それでは、どうするんですか?唯でさえ、相手からの催促が煩いのに。これ以上、時間がかかったら面倒な事になりますよ」
部下の一人が、リーダー格の男に問う。それに対して、男は口角を上げる。
「ーーだから、目の前の者達を使う。奴は、ちょっとした事では番いの側を決して離れないだろう。ならば、番から離れるしかない状況を作ればいい」
「ですが、どうやって…?」
その言葉に、部下の二人を見る。
「もしも、王都中で複数の爆発があったらどうなると思う?住民達はパニックになり、大混乱が起こるだろう。ーーそうすれば、奴も動かざる得ない」
そう、奴が番の側から離れないのであれば、騎士団長として動かざる得ない状況を作ればいいだけだ。
「奴が居なければ、後はどうとでもなる。………行くぞ」
そう言って、表通りに背を向けて歩き出した男の後を部下の二人も付いて行ったのだった。
その時間帯の王都は、人々の営みで賑わっていた。
「いらっしゃい、いらっしゃい!」
「今日のオススメはチーコだよ!」
「今朝、オーディナ領で取れたばかりの新鮮な魚だよ!」
大通りでは、出店の店主達が明るい声で客を呼び込む。
「あっ、あのアクセサリー可愛い!」
「あら?チーコの実、すごく美味しそう」
「うわっ!この魚、ピッチポじゃないか!」
街行く住民達は、思い思いに気に入った店を覗く。そんな賑わいを見せる王都でも、一つ裏通りに入ると雰囲気はガラリと変わる。
表通りと比べて、裏通りは建物の影であまり陽が当たらず薄暗い。その場所に居る者達も、何処と無く近寄り難い者達が多い。その為、住民達は余程の事がない限り近付かない。そんな裏通りから表通りを見つめる3人の黒いローブの男達。
「………呑気なものですね。自分達が襲われるなんて微塵も思ってもいない顔をしている」
「しょうがないですよ。この国の連中は、平和ボケした奴ばかりですからね」
そう言いながら、街行く住民に冷たい視線を送る二人の男に、リーダー格の男がそんな二人に声をかける。
「我々と、この国の者達とはは生まれた時から何もかもが違う。だから、何を言っても無駄だ。………それより、我々は仕事をするだけだ」
そう言って、男は明るく笑い合う住人達を感情のこもらない冷たい目で見る。
「相手は、『血濡れの火竜』だ。油断は出来ない。しかも、ターゲットは奴の番だ。ターゲットは、以前も誘拐されたと聞く。その為、身辺の警備は厳重だろう」
「それでは、どうするんですか?唯でさえ、相手からの催促が煩いのに。これ以上、時間がかかったら面倒な事になりますよ」
部下の一人が、リーダー格の男に問う。それに対して、男は口角を上げる。
「ーーだから、目の前の者達を使う。奴は、ちょっとした事では番いの側を決して離れないだろう。ならば、番から離れるしかない状況を作ればいい」
「ですが、どうやって…?」
その言葉に、部下の二人を見る。
「もしも、王都中で複数の爆発があったらどうなると思う?住民達はパニックになり、大混乱が起こるだろう。ーーそうすれば、奴も動かざる得ない」
そう、奴が番の側から離れないのであれば、騎士団長として動かざる得ない状況を作ればいいだけだ。
「奴が居なければ、後はどうとでもなる。………行くぞ」
そう言って、表通りに背を向けて歩き出した男の後を部下の二人も付いて行ったのだった。
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