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セレスタ 帰還編

災い転じて 初めての友達?

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 シャルロッテを送った足で医務室に戻る。
 入るなり師匠のからかうような声に出迎えられた。
「よかったわねぇ、初めてのお友達が出来て」
 からかっているのがわかるのでマリナも平静に返す。
「お友達なんでしょうか?」
 シャルロッテのことはおもしろいと思ってるし好意も持っている。
 今日のように話が出来たらきっと楽しいとは思う。
 大人にばかり囲まれていたせいか好意を抱くことと友人になることが上手く繋がらない。
 たまに見る同年代の子供は悪意に満ちていて近寄りたいと追わなかった。
 大人にもあまり近寄らなかったけれど。
「そう思えばそうなんじゃない?」
「適当ですね…」
「彼女が言っていたとおり自分で悩んで分類すればいいのよ。
 相手をどう思っているのかなんて自分にしかわからないんだから」
「それもそうですね」
 師匠の言うとおり、マリナが友人だと感じたら友人だろう。
 うーん、よくわからないけど…。友人だったら楽しいだろうなと思った。
「そういえば医務室を貸していただいてありがとうございました」
 医務室なら人があまり来ず、誰か来たときにはすぐにわかるような仕掛けがしてある。
 治療するところを見られたくなかったマリナには助かる場所だった。
「いいわよ、この時間なら来客なんてほとんどないもの」
 医務室の利用者が一番多いのは日中だ。
 訓練中に負った怪我や捕り物の最中に得た傷の治療はほぼに昼間に起きている。
 ただ夜に来るのは緊急を要することが多いので、夜の方が気を抜けない。
 昼間は数多い軽傷者の治療に当たり、夜は重症者に備えて待機する。
 合間に自分の趣味の研究や薬草畑の管理、他には出仕している官僚の健康相談などもしている師匠は医務室に拘束されている時間が長い。
 好きでやっているんだろうけれど、食事はちゃんと摂ったほうがいいと自分を棚に上げて思う。
「しかし激しい子だったわね」
 隣室にいた師匠にはマリナたちの会話のほとんどが聞こえていたらしい。
 聞き耳を立てなくても聞こえる距離なのでしかたない。
 他人に聞かれてたと知ったら怒りそうなのでシャルロッテには黙っておくことにする。
「少しあなたに似てたわね」
「そうですか…?」
 シャルロッテの方が素直でおもしろいと思う。
 真っ直ぐで純粋でちょっと直情的で。
 あんなに怒ったり泣いたりする貴族令嬢は珍しい。
(友達、か)
 そんな名前の付く関係なのかはまだわからないけれど…。
 そうなったらうれしいな、と思っている自分がいた。
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