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リヒャルト 二年生 ナターリエ 一年生
学園生活の始まり ②
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「去年もいたのですか?」
「伯爵令嬢がね。いろんな高位貴族令息にまとわりついていたけど、ダンスパーティーで殿下に婚約をねだって、国王陛下の耳に入り父の伯爵まで勧告が行ったのに、夏の休暇明けもまとわりついて、とうとう救護院に入れられたんだ。国王陛下は男女間に厳しいから逆鱗に触れたのでしょうね。」
フィリップがローレンツに説明する。
「それは似てますね。もうすぐダンスパーティーですが、同じ事が起きないといいのですがね。」
「そういえば、フィリップ様は婚約者は?」
「いませんよ。」
「ここで婚約者がいるのはギュンターだけか。」
ナターリエがその日の最後の授業が終わって寮に帰ると、ラウンジでエラとヒルデが待っていた。話を聞いて欲しいと言う。二人を連れて、自室の応接に二人を招いた。お茶を出したアンナを下がらせて
「何かあった?」
「三人の令嬢からヘス男爵令嬢の振る舞いについて苦情が来てるの。」
「どんな?」
「三人の令嬢の婚約者は三人とも伯爵令息なんだけど、男爵令嬢から話しかけてるそうなの。しかも愛称で。伯爵令息達もそれを許して、男爵令嬢を取り巻いて過ごすようになって、婚約者を蔑ろにしているんですって。親の耳に入って破談になる前になんとかしたいけど、役員に間に立って欲しいと。」
ナタリーとヒルデの顔色が良くなくてエラがすまなそうにする。
「それにしても恋愛の間に入るのは役員の仕事じゃないのでは?」
ナタリーがなんとかそう言うと、ヒルデも頷く。
「そうなのよね。一度男爵令嬢と話してみる?」
「気は進まないけど、役員の勤めなら仕方ないわね。」
次の日役員からの手紙を握りしめて、ヘス男爵令嬢のカミラがやってきた。
「どうぞお入りになって。」
「あ!あなた悪役令嬢!」
いきなりナターリエを指差して叫ぶ。
「ちょっと、ヘス男爵令嬢 公爵令嬢のナターリエに向かって無礼よ。だいたい悪役令嬢って何?」
エラが怒りを見せてカミラににじり寄る。
「だって公爵令嬢なんでしょう?公爵令嬢は悪役令嬢のはず。王子の婚約者でしょう?」
ナターリエは目を大きく見開き
「違います。婚約者などいません。」
と言い切る。
「この世界おかしくない?登場人物はいるのに関係性が全然違う。公爵令嬢と王子は婚約者。侯爵令嬢のあなたは公爵令息のフィリップと婚約者 もう一人の侯爵令嬢のあなたは侯爵令息のギュンターと婚約者のはずよ。婚約してないから悪役令嬢出てこなくて、いじめてくれなくて高位貴族が攻略できなくて、伯爵令息で我慢しているんだから!」
ヒルデとエラを一人一人指差してカミラが言う。エラが真っ赤になって
「失礼ね。あなた!ギュンターは妹のリリーの婚約者よ!」
と叫ぶ。ナターリエが冷静になって
「我慢してると言うことは、伯爵令息達と恋愛してるわけじゃない?」
「まあ、そうよ。高位貴族が引っかからないからしょうがなく。」
「あなたねぇ。そのせいで伯爵令息が婚約破棄になって家の関係であなたが退学になるかもよ。」
「なんで?私はヒロインよ。」
「そう言えば救護院に入れられた伯爵令嬢もそんなこと言ってたわ。」
エラが去年の伯爵令嬢の経緯を説明してやると、カミラがヘナヘナと座り込む。
「ここは乙女ゲームの世界じゃないの?」
「あなたが惑わしてる三人は三人とも政略婚約だから、あなたが理由で婚約破棄になったらあなたも退学よ。」
「すぐ別れます。」
カミラは夢から醒めたような顔をして挨拶もせずにラウンジから出て行く。
「これで解決なのかな?」
エラが首を傾げている。ヒルデとナタリーはお互い見合ってため息をついた。
「伯爵令嬢がね。いろんな高位貴族令息にまとわりついていたけど、ダンスパーティーで殿下に婚約をねだって、国王陛下の耳に入り父の伯爵まで勧告が行ったのに、夏の休暇明けもまとわりついて、とうとう救護院に入れられたんだ。国王陛下は男女間に厳しいから逆鱗に触れたのでしょうね。」
フィリップがローレンツに説明する。
「それは似てますね。もうすぐダンスパーティーですが、同じ事が起きないといいのですがね。」
「そういえば、フィリップ様は婚約者は?」
「いませんよ。」
「ここで婚約者がいるのはギュンターだけか。」
ナターリエがその日の最後の授業が終わって寮に帰ると、ラウンジでエラとヒルデが待っていた。話を聞いて欲しいと言う。二人を連れて、自室の応接に二人を招いた。お茶を出したアンナを下がらせて
「何かあった?」
「三人の令嬢からヘス男爵令嬢の振る舞いについて苦情が来てるの。」
「どんな?」
「三人の令嬢の婚約者は三人とも伯爵令息なんだけど、男爵令嬢から話しかけてるそうなの。しかも愛称で。伯爵令息達もそれを許して、男爵令嬢を取り巻いて過ごすようになって、婚約者を蔑ろにしているんですって。親の耳に入って破談になる前になんとかしたいけど、役員に間に立って欲しいと。」
ナタリーとヒルデの顔色が良くなくてエラがすまなそうにする。
「それにしても恋愛の間に入るのは役員の仕事じゃないのでは?」
ナタリーがなんとかそう言うと、ヒルデも頷く。
「そうなのよね。一度男爵令嬢と話してみる?」
「気は進まないけど、役員の勤めなら仕方ないわね。」
次の日役員からの手紙を握りしめて、ヘス男爵令嬢のカミラがやってきた。
「どうぞお入りになって。」
「あ!あなた悪役令嬢!」
いきなりナターリエを指差して叫ぶ。
「ちょっと、ヘス男爵令嬢 公爵令嬢のナターリエに向かって無礼よ。だいたい悪役令嬢って何?」
エラが怒りを見せてカミラににじり寄る。
「だって公爵令嬢なんでしょう?公爵令嬢は悪役令嬢のはず。王子の婚約者でしょう?」
ナターリエは目を大きく見開き
「違います。婚約者などいません。」
と言い切る。
「この世界おかしくない?登場人物はいるのに関係性が全然違う。公爵令嬢と王子は婚約者。侯爵令嬢のあなたは公爵令息のフィリップと婚約者 もう一人の侯爵令嬢のあなたは侯爵令息のギュンターと婚約者のはずよ。婚約してないから悪役令嬢出てこなくて、いじめてくれなくて高位貴族が攻略できなくて、伯爵令息で我慢しているんだから!」
ヒルデとエラを一人一人指差してカミラが言う。エラが真っ赤になって
「失礼ね。あなた!ギュンターは妹のリリーの婚約者よ!」
と叫ぶ。ナターリエが冷静になって
「我慢してると言うことは、伯爵令息達と恋愛してるわけじゃない?」
「まあ、そうよ。高位貴族が引っかからないからしょうがなく。」
「あなたねぇ。そのせいで伯爵令息が婚約破棄になって家の関係であなたが退学になるかもよ。」
「なんで?私はヒロインよ。」
「そう言えば救護院に入れられた伯爵令嬢もそんなこと言ってたわ。」
エラが去年の伯爵令嬢の経緯を説明してやると、カミラがヘナヘナと座り込む。
「ここは乙女ゲームの世界じゃないの?」
「あなたが惑わしてる三人は三人とも政略婚約だから、あなたが理由で婚約破棄になったらあなたも退学よ。」
「すぐ別れます。」
カミラは夢から醒めたような顔をして挨拶もせずにラウンジから出て行く。
「これで解決なのかな?」
エラが首を傾げている。ヒルデとナタリーはお互い見合ってため息をついた。
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