婚約者の愛は重たい

聖 りんご

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ラッシュの卒業式

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今日は三年生の卒業式です。
忘れがちですが、お兄様は卒業してしまいます。
卒業後は公爵家の跡取りとして本腰を入れて頑張る事になっているのでお兄様とは中々ゆっくり会えなくなってしまいます。

この日のためにジョシュアに協力してもらいプレゼントを用意しました。
式が終わり、卒業生が出てくると私はお兄様を探した。
少し遠くでお兄様を見つけると、お兄様は女性陣に囲まれていた。

「次期公爵で三年間Sクラスの容姿端麗なエリートがモテない理由がありませんね。」

「分かってはいたけど……。」

私は少し待ってみた。
しかし、全然人が減らないので諦めて強引に割って入ってお花とプレゼントを渡した。

「ジゼル、ありがとう。もう一緒に学園に通えないなんて寂しいね。」

「登下校は別で、お昼も別でしたからお兄様とはあまり…」

「寂しいね!!」

「はい…………。」

半泣きのお兄様に二回も言われたら頷かなくてはいけませんよね。

「この後はパーティーが開かれるからまた家でゆっくり話そう。私はそろそろ逃亡しなければ本隊がくるから。」

そう言ってお兄様は逃げていきました。
本隊って何の事だろうと思っていると魔術の本を持ったお姉様方が数十人一糸乱れぬ動きでやってきました。
私が呆然としてみていると、一番戦闘にいた方が私に近づいてきます。

「ラッシュ様の妹君、ジゼル様にございますね。」

「はい。ジゼル・リンバースと申します。以後お見知り置き下さい。」

「ご挨拶いただきありがとうございます。
私はバーン公爵家のライラと申します。いつも妹がお世話になっております。」

まさかのリリアン様のお姉様のご登場です。
リリアン様とは印象の違うフワフワの髪と笑顔のライラ様は言われなければリリアン様のお姉様とは気づけませんでした。

「こちらこそ、リリアン様には仲良くしていただいて有難く存じます。」

「また、ゆっくりお話を聞かせてくださいね。
ところで、兄君のラッシュ様が何処に行かれたのかご存知ありませんか?」

「申し訳ございません。先程まではこちらに居ましたが……」

「そうですか。ありがとうございます。ではまた。」

ライラ様は優雅に去って行きました。
あの眼は獲物を捕食する肉食獣のそれと変わらないものにみえました。
姉妹とはやはり何処似てるようです。
行き場所が分からないのに去って行った方向がお兄様と一緒なところもまた姉妹ですね。

「ジョシュアはこの後のパーティーに出席するの?」

「私はジゼルのクラス以外に関わりはないので出ません。なので、ジゼルお気に入りのカフェに一緒に行きませんか?新作のケーキが出ているようです。」

「今すぐ行きましょう。」

私は任務を達成できたのでカフェに急いだ。
目的のカフェは人気店の為、大変混んでいる事が多いので、校門の辺りでライラ様に捕まったお兄様は見なかった事にしてカフェに行きました。

ケーキが私を待ってます。

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