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恋する乙女パワー②
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……子どもの頃のエドウィン様、さぞや天使でしょうね。絵姿などがあったら見せてもらいたいところです。マイルズさんなら知っているでしょうか。彼とは仲良くなっておきたいですね。
っと、つい脳内で暴走してしまいそうになります。最後まで真剣にエドウィン様のお話をお聞きしないと。私は軽く頭を振りました。
「だが、ハナ。君の前で仮面を取るのは不思議と怖くなかった」
そう気を引き締め直した時、エドウィン様の口から爆弾が落とされました。
身体にビリビリとした衝撃が走りましたよ、今! だ、だって今、私のことをハナと! 名前で呼んでくださいました!?
しかも、なんだか私が特別だと言ってくれたみたいでときめいてしまいます。私、ちょろいんですからやめてくださいよ、もうっ!
こういう不意打ちは弱いのですよぉ! か、顔が熱いです。パタパタと手で顔を煽ぎながら私はヘラリと笑いました。
「あ、あはは! 私はほら、能天気ですし! エドウィン様にとって恐れるに足りない小娘だからじゃないでしょうかね?」
人を褒めるのは大得意の私ですが、自分が特別扱いされると恥ずかしくて誤魔化してしまいます。だって照れ臭くって。
今回もやはり笑って余計なことまで口走ってしまいました。止まらない、私のお口。
「いや……怖い」
「え?」
どこまでも真剣な顔で真っ直ぐこちらを見つめるエドウィン様にドキッとしてしまいます。
私の前で仮面を取るのは怖くないとおっしゃいましたが……一体、こんなにも完璧な方が私の何を恐れるというのでしょう。
黙って言葉の続きを待っていると、エドウィン様はじわじわと頬を赤く染めながら僅かに視線を逸らします。
「今は……ハナに嫌われるのが、怖いと思っている」
うっ、な、なんでしょうこの破壊力っ! 今、私の胸が最大級にキューンと鳴りましたよ! 胸が苦しいです!
そんな心配、これっぽっちもいらないですよーと大声で叫びたいです。私がエドウィン様を嫌うなんてこと、絶対にあり得ないと断言出来ますもん!
「こ、こういう弱々しい本音が男らしくないんだ! わかっている! 見た目もこんなだし、身長もあまり高くはないし……ああ、そんな愚痴が言いたいわけではないのに。自分が、情けないな……」
けれど、ご本人は大真面目に悩んでおられる様子。しょんぼりと項垂れるそのお姿に、私の心は鷲掴みにされています。どう伝えましょう、この気持ち。
いまだかつてないほど私の中では気持ちが盛り上がっていますが、先ほどの反省もあります。ここは冷静に、一つ一つお伝えしていきましょう。
「いいじゃないですか。かわいくても、情けなくても、身長があまり高くなくても。それがエドウィン様ですし、私は全く気にしないどころかそれすらも素敵だと思っていますよ?」
「し、しかし」
まずは全肯定。これは欠かせません。当然、納得は出来ませんよね。でもわかっていただきたい!
冷静を心掛けていますが、いつヒートアップしてしまうかわかりませんね、これ。スーハー……よし。
「考えてもみてください。エドウィン様は気にしてらっしゃるようですが、その生まれながらにかわいらしく整った奇跡のお顔はもはや神様からのギフトですよ! その上、努力出来る忍耐力もお持ちで、その努力があったからこそ今の強さも賢さも手に入れましたよね。領地経営も順調ですし、正直なところ完璧超人だと思います!」
実際の所、外見を除けば一般的なエドウィン様の評価は完璧超人で間違いないと思います。お会いする前は私もそう思っていましたし、今もそれは変わりません。
だからこそ、私は安心したのです。彼が、私や他の方と同じように、自分自身に悩みを抱えていることを知れて。ちゃんと一人の人間なんだって、当たり前ですけど……それが実感出来るといいますか。
「ちょっとくらいコンプレックスがあった方がバランスがいいです。人間らしいです。私はその方が好きですし、安心出来ますよ?」
はっ、勢い余って「好き」だなんて言ってしまいました。エドウィン様は気付かれたでしょうか……?
いえ、まぁ気付いていただいて大いに結構なのですが、ちょっと恥ずかしいですね。誤魔化しましょう。
「わ、私なんて良いところを探す方が難しいんですから! 健康で良く笑う、元気だけが取り柄の女です。魔法も全く使えませんし、マナーもなっていないし、頭もすごくいいわけではないし、運動もそこまで得意じゃないです。容姿だって平凡で、王都に住む男爵令嬢なのに田舎娘みたいでしょ? そばかすもいっぱいで、髪なんて癖が強いので下ろしたらいつも爆発してるんですよ?」
なんだか言わなくていいことまでベラベラ喋っている気がします。でも、事実なので。
こうして改めてみると、私って本当に特徴のない女ですね。本当に、取り柄と言えば元気なことくらい。他のことは全て人並みかそれ以下でしかありません。
あ、本当に私、エドウィン様の婚約者としてふさわしくないですね……。天使と雑草くらいの差があります。烏滸がましくもエドウィン様に一目惚れしてしまったのが、とても申し訳なくなってきました。
「そんなことはない!」
一人で勝手に軽く落ち込んでいると、急にエドウィン様が大きな声を出しました。驚いて思わずビクッと飛び上がってしまいましたよ。
「あ、す、すまない。大きな声を出して……その、怖かったか?」
「いえ! 少しビックリしただけです! だ、大丈夫」
たぶん、エドウィン様は出来るだけ人を驚かせたくはないのでしょう。敵に対しては恐れられるのが目的でも、味方や守るべき民に怖がられるのは本意ではないのだと思います。
だって、そうでもなければこんなに申し訳なさそうな顔はしませんよね。かわ……いえ、なんでもありません。かわいい。
「……ハナは、笑顔が魅力的だ。人を引き寄せるし、その明るさに救われる。豊かな髪だって。全てが俺には……眩しく見える」
そんなかわいらしいお顔から一変して、エドウィン様は真剣な表情で私を大真面目に褒めてくださいました。
あまりにも突然のご褒美に息が止まります。今日が私の命日かもしれません。
っと、つい脳内で暴走してしまいそうになります。最後まで真剣にエドウィン様のお話をお聞きしないと。私は軽く頭を振りました。
「だが、ハナ。君の前で仮面を取るのは不思議と怖くなかった」
そう気を引き締め直した時、エドウィン様の口から爆弾が落とされました。
身体にビリビリとした衝撃が走りましたよ、今! だ、だって今、私のことをハナと! 名前で呼んでくださいました!?
しかも、なんだか私が特別だと言ってくれたみたいでときめいてしまいます。私、ちょろいんですからやめてくださいよ、もうっ!
こういう不意打ちは弱いのですよぉ! か、顔が熱いです。パタパタと手で顔を煽ぎながら私はヘラリと笑いました。
「あ、あはは! 私はほら、能天気ですし! エドウィン様にとって恐れるに足りない小娘だからじゃないでしょうかね?」
人を褒めるのは大得意の私ですが、自分が特別扱いされると恥ずかしくて誤魔化してしまいます。だって照れ臭くって。
今回もやはり笑って余計なことまで口走ってしまいました。止まらない、私のお口。
「いや……怖い」
「え?」
どこまでも真剣な顔で真っ直ぐこちらを見つめるエドウィン様にドキッとしてしまいます。
私の前で仮面を取るのは怖くないとおっしゃいましたが……一体、こんなにも完璧な方が私の何を恐れるというのでしょう。
黙って言葉の続きを待っていると、エドウィン様はじわじわと頬を赤く染めながら僅かに視線を逸らします。
「今は……ハナに嫌われるのが、怖いと思っている」
うっ、な、なんでしょうこの破壊力っ! 今、私の胸が最大級にキューンと鳴りましたよ! 胸が苦しいです!
そんな心配、これっぽっちもいらないですよーと大声で叫びたいです。私がエドウィン様を嫌うなんてこと、絶対にあり得ないと断言出来ますもん!
「こ、こういう弱々しい本音が男らしくないんだ! わかっている! 見た目もこんなだし、身長もあまり高くはないし……ああ、そんな愚痴が言いたいわけではないのに。自分が、情けないな……」
けれど、ご本人は大真面目に悩んでおられる様子。しょんぼりと項垂れるそのお姿に、私の心は鷲掴みにされています。どう伝えましょう、この気持ち。
いまだかつてないほど私の中では気持ちが盛り上がっていますが、先ほどの反省もあります。ここは冷静に、一つ一つお伝えしていきましょう。
「いいじゃないですか。かわいくても、情けなくても、身長があまり高くなくても。それがエドウィン様ですし、私は全く気にしないどころかそれすらも素敵だと思っていますよ?」
「し、しかし」
まずは全肯定。これは欠かせません。当然、納得は出来ませんよね。でもわかっていただきたい!
冷静を心掛けていますが、いつヒートアップしてしまうかわかりませんね、これ。スーハー……よし。
「考えてもみてください。エドウィン様は気にしてらっしゃるようですが、その生まれながらにかわいらしく整った奇跡のお顔はもはや神様からのギフトですよ! その上、努力出来る忍耐力もお持ちで、その努力があったからこそ今の強さも賢さも手に入れましたよね。領地経営も順調ですし、正直なところ完璧超人だと思います!」
実際の所、外見を除けば一般的なエドウィン様の評価は完璧超人で間違いないと思います。お会いする前は私もそう思っていましたし、今もそれは変わりません。
だからこそ、私は安心したのです。彼が、私や他の方と同じように、自分自身に悩みを抱えていることを知れて。ちゃんと一人の人間なんだって、当たり前ですけど……それが実感出来るといいますか。
「ちょっとくらいコンプレックスがあった方がバランスがいいです。人間らしいです。私はその方が好きですし、安心出来ますよ?」
はっ、勢い余って「好き」だなんて言ってしまいました。エドウィン様は気付かれたでしょうか……?
いえ、まぁ気付いていただいて大いに結構なのですが、ちょっと恥ずかしいですね。誤魔化しましょう。
「わ、私なんて良いところを探す方が難しいんですから! 健康で良く笑う、元気だけが取り柄の女です。魔法も全く使えませんし、マナーもなっていないし、頭もすごくいいわけではないし、運動もそこまで得意じゃないです。容姿だって平凡で、王都に住む男爵令嬢なのに田舎娘みたいでしょ? そばかすもいっぱいで、髪なんて癖が強いので下ろしたらいつも爆発してるんですよ?」
なんだか言わなくていいことまでベラベラ喋っている気がします。でも、事実なので。
こうして改めてみると、私って本当に特徴のない女ですね。本当に、取り柄と言えば元気なことくらい。他のことは全て人並みかそれ以下でしかありません。
あ、本当に私、エドウィン様の婚約者としてふさわしくないですね……。天使と雑草くらいの差があります。烏滸がましくもエドウィン様に一目惚れしてしまったのが、とても申し訳なくなってきました。
「そんなことはない!」
一人で勝手に軽く落ち込んでいると、急にエドウィン様が大きな声を出しました。驚いて思わずビクッと飛び上がってしまいましたよ。
「あ、す、すまない。大きな声を出して……その、怖かったか?」
「いえ! 少しビックリしただけです! だ、大丈夫」
たぶん、エドウィン様は出来るだけ人を驚かせたくはないのでしょう。敵に対しては恐れられるのが目的でも、味方や守るべき民に怖がられるのは本意ではないのだと思います。
だって、そうでもなければこんなに申し訳なさそうな顔はしませんよね。かわ……いえ、なんでもありません。かわいい。
「……ハナは、笑顔が魅力的だ。人を引き寄せるし、その明るさに救われる。豊かな髪だって。全てが俺には……眩しく見える」
そんなかわいらしいお顔から一変して、エドウィン様は真剣な表情で私を大真面目に褒めてくださいました。
あまりにも突然のご褒美に息が止まります。今日が私の命日かもしれません。
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