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一章
9、執拗に
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翠子さんに何もするつもりはなかった、などと言えば嘘になる。
だが、裸身を恥ずかしがり、夜風に震える彼女を守りたかったのも事実だ。もっとも浴衣を脱がせたのは俺だが。
彼女に羽織らせた浴衣からは、ちょうど柔らかそうな胸が覗き、臍から下腹部、そして固く閉ざそうとする腿が見えている。
そんな姿で甘い声を上げたらどうなるか、分かっているのか。
少し眺めて終わるつもりだったが、もし他の男がこんな翠子さんを目にしたら、誰かの前で翠子さんが切なげに啼いたらと思うと、止めることができなかった。
彼女の腰を支えていなければ、すぐも畳に座り込んでしまう。身を伏して泣き崩れれば相手が諦めると、そんなことを覚えてもらっては困る。
あなたは俺の花嫁になる人。躾けるのならば早い方がいい。
「お願いです。やめてください」
「お願いならば、どこを触れてほしいか。それを言うべきだ」
自分でも冷ややかに聞こえる声だ。翠子さんにはさぞや冷酷に思えるだろう。
現に彼女の表情は強張り、唇を噛みしめている。
「言わないのならば、こちらが選ぶが」
なめらかな肌の感触を確かめながら、俺は手を彼女の胸から下へとたどらせた。
指先で彼女の小さな臍に触れ、さらに指を下ろしていく。
「む……胸に、してください」
さすがに秘められた部分は守りたいのか。翠子さんは声を震わせながらそう言った。
「ふぅん。そうなのか」
「そうって、どういうことですか」
彼女に睨みつけられても怖くはない。怖いのは、せっかく我が家に来たあなたが去ってしまうことだ。
あなたがどこへも行かぬよう、きちんと躾けよう。自分の居場所が俺の傍であることを徹底的に教え込もう。
数学もできないあなたでも、それくらいは覚えられるだろう。
「別に触れるのは、背中でも手でも構わなかったのだが。そうか、翠子さんは胸を触ってほしいのだな」
俺の言葉に、翠子さんの顔がかっと赤くなった。耳も首までも朱に染まっている。
ああ、なんと可愛いのだろう。
俺は彼女と唇を重ねた。
「キ、キスはしてほしいと言っていません」
「意外とちゃんと主張するね。学校ではおとなしいのに。もっと従順なお嬢さんだと思っていたが。安心して。お望み通り、ちゃんと触れてあげるから」
乱暴なほどに深いキスを交わしながら、俺は彼女のやわらかな胸に触れた。舌で口の中を蹂躙し、指は羽毛で撫でるほどの感覚で薄紅色の尖りを撫でる。
「や……ふっ、あぁ……ぁ」
ねっとりと舌を絡ませ、なのに胸はもどかしいほどの快感だろう。
腰を支える俺の手に体をあずけて、翠子さんはじれったそうに悶えている。
どこまでも執拗に。けれど決定的な快楽は与えない。
そう、あなたが望むまでは。
だが、裸身を恥ずかしがり、夜風に震える彼女を守りたかったのも事実だ。もっとも浴衣を脱がせたのは俺だが。
彼女に羽織らせた浴衣からは、ちょうど柔らかそうな胸が覗き、臍から下腹部、そして固く閉ざそうとする腿が見えている。
そんな姿で甘い声を上げたらどうなるか、分かっているのか。
少し眺めて終わるつもりだったが、もし他の男がこんな翠子さんを目にしたら、誰かの前で翠子さんが切なげに啼いたらと思うと、止めることができなかった。
彼女の腰を支えていなければ、すぐも畳に座り込んでしまう。身を伏して泣き崩れれば相手が諦めると、そんなことを覚えてもらっては困る。
あなたは俺の花嫁になる人。躾けるのならば早い方がいい。
「お願いです。やめてください」
「お願いならば、どこを触れてほしいか。それを言うべきだ」
自分でも冷ややかに聞こえる声だ。翠子さんにはさぞや冷酷に思えるだろう。
現に彼女の表情は強張り、唇を噛みしめている。
「言わないのならば、こちらが選ぶが」
なめらかな肌の感触を確かめながら、俺は手を彼女の胸から下へとたどらせた。
指先で彼女の小さな臍に触れ、さらに指を下ろしていく。
「む……胸に、してください」
さすがに秘められた部分は守りたいのか。翠子さんは声を震わせながらそう言った。
「ふぅん。そうなのか」
「そうって、どういうことですか」
彼女に睨みつけられても怖くはない。怖いのは、せっかく我が家に来たあなたが去ってしまうことだ。
あなたがどこへも行かぬよう、きちんと躾けよう。自分の居場所が俺の傍であることを徹底的に教え込もう。
数学もできないあなたでも、それくらいは覚えられるだろう。
「別に触れるのは、背中でも手でも構わなかったのだが。そうか、翠子さんは胸を触ってほしいのだな」
俺の言葉に、翠子さんの顔がかっと赤くなった。耳も首までも朱に染まっている。
ああ、なんと可愛いのだろう。
俺は彼女と唇を重ねた。
「キ、キスはしてほしいと言っていません」
「意外とちゃんと主張するね。学校ではおとなしいのに。もっと従順なお嬢さんだと思っていたが。安心して。お望み通り、ちゃんと触れてあげるから」
乱暴なほどに深いキスを交わしながら、俺は彼女のやわらかな胸に触れた。舌で口の中を蹂躙し、指は羽毛で撫でるほどの感覚で薄紅色の尖りを撫でる。
「や……ふっ、あぁ……ぁ」
ねっとりと舌を絡ませ、なのに胸はもどかしいほどの快感だろう。
腰を支える俺の手に体をあずけて、翠子さんはじれったそうに悶えている。
どこまでも執拗に。けれど決定的な快楽は与えない。
そう、あなたが望むまでは。
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