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第二章 中二病には罹りません ー中学校ー

第160話 鬼ごっこ同好会、地上波デビュー (5)(side:本条まなみ) 

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いよいよね、第一回逃走王決定戦。
あぁ、この日をどんなに心待ちにしたことか。
最初この話が来たときは私の事を馬鹿にしてるのかと思ったけど、よく話を聞いてみればあの"hiroshi"様が出場するって言うじゃない、もう私の女の部分がキュンキュンよ!?
あの時の交渉は盛り上がったな~。


私、鬼だもん、もちろんお触りOKなのよね?
捕縛時はタックルも有り?それは無しなの。
でも偶然のタッチなら…、その辺は臨機応変で?
良し、この話乗った!
でも何、"hiroshi"様はビックゲストだから番組的に最後まで残したい。まあ、それは分かるわ。楽しみにしていたアイドルがいきなり消えたら興ざめだもの。
なのでラスト三十分までの捕縛スコアの高い人間が"hiroshi"様Getの権利を貰えると。なるほどなるほど、理解したわ。
それでこれが会場の地図ね。この幾つか有るペナルティーエリアってのは?
出場者が入るとその時点で失格、鬼が入ると二十分間の停止ペナルティーと、なるほどね~。怖くなったら逃げ込みなさいって事ね。
えっ、ここって池になってるの?それって大丈夫なの?
承諾書にサイン貰うから大丈夫なんだ、考えたわね。
んで逃げ込まれた分はスコアポイントにはならないんだ。
了解了解、そんなへまはしないわよ。
出場する鬼役は…、これって正気?岸本ゆかりって百メートルの国内記録保持者じゃない。それに安田さんってあのマラソン銀メダリストの?吉野さんってアマチュアレスリング界の女王じゃないの、金メダル量産機、霊長類最強じゃない。
全部オファーが取れてる?
アンタら本気過ぎじゃない?
私?もちろん出るわよ。世界陸上なんて知った事じゃないわよ。
四百メートルの本条、本気見せます。


いよいよ本選開始だけど、めぼしい選手はあらかじめチェックしているのよね。
ゼッケンが赤系統の選手はなるべく残して、緑系統は開始三十分経ってから捕縛、青系統は見つけ次第捕縛と。
こういう忖度ってやっぱりテレビ局ね、赤系統の中には大手芸能事務所の人間ゴロゴロじゃない、闇が深いわ。
緑系統は一般や学生さんの中でもイケメンの部類、青系統はそれ以外ね。
この辺は大人の事情って事で勘弁してね。

メダリスト組は途中追加の鬼なのね、広範囲なるにつれて捕縛スコアが高く設定されてるけど、雑魚狩りの点数も馬鹿に出来ないのよね。
いい勝負になりそう。

”西島選手、アウトです!”
ごめんなさい、西島君。走りは悪くなかったわよ~。ただ私たちのレベルには少し足りなかったかしら?
次の獲物を探しに行かないと。

”これよりオリンピックメダリストが投入されます。出場者の方たち、気合入れて頑張って~!!”
お、もうそんな時間。それじゃ、私もギアを上げて行かないと。
青ゼッケン発見、よくぞここまで生き残った。お姉さんが直々に仕留めてあげよう~♪
くそ、ちょこまかと、それになかなか早い。
でもこの先は直線よ、観念しなさい!
このままじゃ、ペナルティーエリアに逃げ込まれちゃう。
私の捕縛ポイント、逃がすもんか!
あと少しって消えた!?
「よく頑張ったね♪Mon joli petit chaton.(かわいい子猫ちゃん。)」
“トン“
えっ?
”ザブーン”

”鬼側、二十分のペナルティータイムです!”

今のは何だったの?
確かユーロッパの言葉の様な。

私は走り去る青いゼッケンを、只ぼーっと見詰めるのでした。
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