35 / 36
番外編
聖女が世界を救う〜現代⑤〜
しおりを挟む
クリスティアはキョトンとした顔をしたかと思うと、くすくすと楽しそうに笑い始める。
「最初に会った時からどこかよそよそしいと思っていたけど、原因がわかったわ」
ルカ様は眉間に皺を寄せながら、コーヒーを口に運ぶ。
クリスティアはやれやれと首を横に振りながら、話を続けた。
「私の意思ではないのよ。ここの世界では、ヒロインは一人だけって暗黙のルールみたいなものがあるらしいわ。私の目的は、あなたたちを見つけ出すことだったから、必然的にこの漫画を多くの人に読んでもらって認知してもらう必要があったの。そんなに怒らないでよ。物語自体は変えられないけど、マルスティアについては後書きでしっかり書き記していくわ」
そしてマルスティアの方に視線を移し、申し訳なさそうに続けた。
「ごめんなさい、マルスティア。どうしようもなくて、設定を変えたの」
「そんな、謝らないで。あなたのおかげでこうしてまたこの世界でも出会えたんだもの。感謝してるわ」
その後も、あの頃に戻ったかのような内装のカフェで、お互いの近況報告をしていく。じんわりと心が満たされていくようだった。
抱えていた違和感。
時折出てくる、記憶と感覚。
この世界ではあり得ない経験。
それら全てを、共有する相手がいる。
同じ記憶を持って、立場は違えど今こうして集まることができた。
そのことが、クリスティアは何よりも嬉しかった。
生まれてからずっと、この日を待ち望んでいた。こんなにも満たされるのはいつ以来だろうか。
…ルカ皇太子との婚約が解消され、彼との婚約が認められた時だろうか。
お互いの世界に入り込んでいる二人を眺めながら、クリスティアは幸せを噛み締めていた。
***
「これからはいつでも会いたい時にこうしてここで会えるのね。すっごく嬉しい!」
「…また来るのか?」
「あら、ここほど会うのに適切な場所はないじゃない」
「それは…まぁ」
「決まりね!そしたら、私次のサイン会の準備があるから、そろそろ失礼するわ」
クリスティアはいそいそと支度を始める。
「今日はここに泊まるんだろう?」
「えぇ。彼が頑張ったご褒美と今日のお祝いにって、とびっきり良い部屋を予約してくれたの」
「…あいつは全く」
「ふふっ。相変わらず、兄弟でも全然違うんだから。そしたら、マルスティア。また会いましょうね」
そう言うと、クリスティアは颯爽とその場から去っていった。まるで嵐が去ったかのようだ。
彼女と初めて会った時、こんなにも綺麗な人が存在するのかと、目を疑った。
ひどい環境に置かれていたにも関わらず、彼女はとても逞しかった。
綺麗さと逞しさ、そして明るさ。
彼女は人々の心を掴んで離さない。
その様子を近くで見ていて、心底羨ましいと思っていたことをふと思い出す。
「全く…相変わらず嵐のようだ」
ルカはやや疲れたように肩をすくめる。
そして、マルスティアの方へと視線を向けた。
「君は…その…今は付き合っている人はいるのか?」
ルカ皇太子とクリスティアが婚約を破棄したその晩、ルカはマルスティアの元へと向かった。
突然の訪問に驚く彼女に、ルカは言葉を続けた。
「もしいないのであれば…結婚を前提に、私と付き合ってくれないか?」
「最初に会った時からどこかよそよそしいと思っていたけど、原因がわかったわ」
ルカ様は眉間に皺を寄せながら、コーヒーを口に運ぶ。
クリスティアはやれやれと首を横に振りながら、話を続けた。
「私の意思ではないのよ。ここの世界では、ヒロインは一人だけって暗黙のルールみたいなものがあるらしいわ。私の目的は、あなたたちを見つけ出すことだったから、必然的にこの漫画を多くの人に読んでもらって認知してもらう必要があったの。そんなに怒らないでよ。物語自体は変えられないけど、マルスティアについては後書きでしっかり書き記していくわ」
そしてマルスティアの方に視線を移し、申し訳なさそうに続けた。
「ごめんなさい、マルスティア。どうしようもなくて、設定を変えたの」
「そんな、謝らないで。あなたのおかげでこうしてまたこの世界でも出会えたんだもの。感謝してるわ」
その後も、あの頃に戻ったかのような内装のカフェで、お互いの近況報告をしていく。じんわりと心が満たされていくようだった。
抱えていた違和感。
時折出てくる、記憶と感覚。
この世界ではあり得ない経験。
それら全てを、共有する相手がいる。
同じ記憶を持って、立場は違えど今こうして集まることができた。
そのことが、クリスティアは何よりも嬉しかった。
生まれてからずっと、この日を待ち望んでいた。こんなにも満たされるのはいつ以来だろうか。
…ルカ皇太子との婚約が解消され、彼との婚約が認められた時だろうか。
お互いの世界に入り込んでいる二人を眺めながら、クリスティアは幸せを噛み締めていた。
***
「これからはいつでも会いたい時にこうしてここで会えるのね。すっごく嬉しい!」
「…また来るのか?」
「あら、ここほど会うのに適切な場所はないじゃない」
「それは…まぁ」
「決まりね!そしたら、私次のサイン会の準備があるから、そろそろ失礼するわ」
クリスティアはいそいそと支度を始める。
「今日はここに泊まるんだろう?」
「えぇ。彼が頑張ったご褒美と今日のお祝いにって、とびっきり良い部屋を予約してくれたの」
「…あいつは全く」
「ふふっ。相変わらず、兄弟でも全然違うんだから。そしたら、マルスティア。また会いましょうね」
そう言うと、クリスティアは颯爽とその場から去っていった。まるで嵐が去ったかのようだ。
彼女と初めて会った時、こんなにも綺麗な人が存在するのかと、目を疑った。
ひどい環境に置かれていたにも関わらず、彼女はとても逞しかった。
綺麗さと逞しさ、そして明るさ。
彼女は人々の心を掴んで離さない。
その様子を近くで見ていて、心底羨ましいと思っていたことをふと思い出す。
「全く…相変わらず嵐のようだ」
ルカはやや疲れたように肩をすくめる。
そして、マルスティアの方へと視線を向けた。
「君は…その…今は付き合っている人はいるのか?」
ルカ皇太子とクリスティアが婚約を破棄したその晩、ルカはマルスティアの元へと向かった。
突然の訪問に驚く彼女に、ルカは言葉を続けた。
「もしいないのであれば…結婚を前提に、私と付き合ってくれないか?」
293
あなたにおすすめの小説
今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。
公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね
転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ
karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。
しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。
公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
没落領地の転生令嬢ですが、領地を立て直していたら序列一位の騎士に婿入りされました
藤原遊
ファンタジー
魔力不足、財政難、人手不足。
逃げ場のない没落領地を託された転生令嬢は、
“立て直す”以外の選択肢を持たなかった。
領地経営、改革、そして予想外の縁。
没落から始まる再建の先で、彼女が選ぶ未来とは──。
※完結まで予約投稿しました。安心してお読みください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる