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第26話 女当主としての生活
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例の彼女が馬車の事故で亡くなったという話を聞いた時、特に驚きはしなかった。
ノルイン公爵家の息子に急接近して、もう少しで婚約が成立するかもしれないタイミングでの死。陰謀のようなものを感じたけど、証拠はない。だから、この出来事に関して私は口をつぐんでいる。事実を明らかにすることに意味もないから。
ただ、彼女と親戚関係になる可能性が消えたのはよかった。関わり合いになったら面倒なので、居なくなってくれてホッとしていた。
こうして私の記憶から彼女の存在は消えてなくなり、思い出すこともなくなった。
カナリニッジ侯爵家は安泰だった。当主としての仕事も順調で、パートナーであるウェヌスレッドも非常に協力的で助かっている。
賢くて優秀な彼が望めば、表舞台にも簡単に出てこられる。それだけの能力が十分にあると、常々思っている。けれど、ウェヌスレッドはそうしなかった。あくまでもサポートとして、当主である私を公私ともに裏から支えてくれた。
彼が私のパートナーになってくれて、本当に良かったと思う。
私もウェヌスレッドを尊重して、彼が望む生活を送れるように配慮した。お互いがお互いに配慮し合い、理想的な関係を築けていると思う。
結婚式も無事に終えて、夫婦になった後の仲も非常に良好。私は彼のことを愛し、彼は私を愛してくれた。
そして、私たちは子宝に恵まれた。
出産は、もう少し先のことになる。だけど、少しずつ大きくなっていくお腹を見ているとワクワクすると共に、幸せを感じることができた。
あとは、この子にカナリニッジ侯爵家を継がせれば完璧ね。きっと素晴らしい侯爵になるに違いない。今から楽しみで仕方がない。
「ねぇ、あなた」
「どうした?」
「私、今とても幸せよ」
「ああ、僕もだよ」
「うふふ、嬉しいわ」
夫は優しく微笑んでくれた。そんな彼の姿を見て、素晴らしい未来を想像しながら私も微笑んだ。
そんな、ある日のこと。
「今夜のパーティー、休むことはできないか? その体じゃ大変だろう」
「まだ大丈夫ですよ。もう少ししたら安静にする予定なので、体を動かせる今のうちに参加しておきたいのです。絶対に無理はしないので」
心配そうにしている夫に向かって微笑む。まだまだ外から見ると妊婦とはわかりにくい体型をしているものの、普段とは違う体調に戸惑う日々。しかし、カナリニッジ侯爵家の女当主としての役目を放棄するわけにはいかない。絶対に無理しないように気を遣いながら、女当主として仕事をこなす毎日が続いていた。
今日は出産前の挨拶だけ済ませたら、すぐに帰る予定。そう説明すると、彼は渋々納得してくれた。
「それなら、今夜は僕も一緒に参加するよ」
「え!? 大丈夫なのですか?」
突然の申し出に驚いてしまった。これまでに何度か彼も一緒に参加したこともあるけれど、頻度は多くない。珍しいこと。
「さすがに心配だからね。早めに切り上げる予定なんだろう? それなら大丈夫だ。本当は、君の代わりに僕が動けたらいいんだけど。普段から君に頼りっぱなしだし、何もできていないからね」
そう言って、申し訳なさそうに眉を下げた彼。だけど、サポートで支えてくれているので頼りにしている。私は、首を横に振った。
「そんなことありません! あなたには、いつも助けてもらっています」
「ありがとう。君のその言葉に救われるよ」
そんな会話をして、今夜のパーティーは夫婦で参加することになった。
ノルイン公爵家の息子に急接近して、もう少しで婚約が成立するかもしれないタイミングでの死。陰謀のようなものを感じたけど、証拠はない。だから、この出来事に関して私は口をつぐんでいる。事実を明らかにすることに意味もないから。
ただ、彼女と親戚関係になる可能性が消えたのはよかった。関わり合いになったら面倒なので、居なくなってくれてホッとしていた。
こうして私の記憶から彼女の存在は消えてなくなり、思い出すこともなくなった。
カナリニッジ侯爵家は安泰だった。当主としての仕事も順調で、パートナーであるウェヌスレッドも非常に協力的で助かっている。
賢くて優秀な彼が望めば、表舞台にも簡単に出てこられる。それだけの能力が十分にあると、常々思っている。けれど、ウェヌスレッドはそうしなかった。あくまでもサポートとして、当主である私を公私ともに裏から支えてくれた。
彼が私のパートナーになってくれて、本当に良かったと思う。
私もウェヌスレッドを尊重して、彼が望む生活を送れるように配慮した。お互いがお互いに配慮し合い、理想的な関係を築けていると思う。
結婚式も無事に終えて、夫婦になった後の仲も非常に良好。私は彼のことを愛し、彼は私を愛してくれた。
そして、私たちは子宝に恵まれた。
出産は、もう少し先のことになる。だけど、少しずつ大きくなっていくお腹を見ているとワクワクすると共に、幸せを感じることができた。
あとは、この子にカナリニッジ侯爵家を継がせれば完璧ね。きっと素晴らしい侯爵になるに違いない。今から楽しみで仕方がない。
「ねぇ、あなた」
「どうした?」
「私、今とても幸せよ」
「ああ、僕もだよ」
「うふふ、嬉しいわ」
夫は優しく微笑んでくれた。そんな彼の姿を見て、素晴らしい未来を想像しながら私も微笑んだ。
そんな、ある日のこと。
「今夜のパーティー、休むことはできないか? その体じゃ大変だろう」
「まだ大丈夫ですよ。もう少ししたら安静にする予定なので、体を動かせる今のうちに参加しておきたいのです。絶対に無理はしないので」
心配そうにしている夫に向かって微笑む。まだまだ外から見ると妊婦とはわかりにくい体型をしているものの、普段とは違う体調に戸惑う日々。しかし、カナリニッジ侯爵家の女当主としての役目を放棄するわけにはいかない。絶対に無理しないように気を遣いながら、女当主として仕事をこなす毎日が続いていた。
今日は出産前の挨拶だけ済ませたら、すぐに帰る予定。そう説明すると、彼は渋々納得してくれた。
「それなら、今夜は僕も一緒に参加するよ」
「え!? 大丈夫なのですか?」
突然の申し出に驚いてしまった。これまでに何度か彼も一緒に参加したこともあるけれど、頻度は多くない。珍しいこと。
「さすがに心配だからね。早めに切り上げる予定なんだろう? それなら大丈夫だ。本当は、君の代わりに僕が動けたらいいんだけど。普段から君に頼りっぱなしだし、何もできていないからね」
そう言って、申し訳なさそうに眉を下げた彼。だけど、サポートで支えてくれているので頼りにしている。私は、首を横に振った。
「そんなことありません! あなたには、いつも助けてもらっています」
「ありがとう。君のその言葉に救われるよ」
そんな会話をして、今夜のパーティーは夫婦で参加することになった。
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