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第39話 俺達も一緒に ※専属料理人ローワン視点

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 一ヶ月ほど前から、屋敷の雰囲気がガラッと変わった。どう変わったかと言うと、なんとなく居心地が悪くなった。理由は明らかで、ナディーンお嬢様が旅行に行ってしまわれたから。

 彼女が居ないだけで、こんなにも雰囲気が変わるのかと驚いた。部下の料理人達や使用人達も、居心地が悪くなったと話している。皆が、そう感じているようだ。

 お嬢様には、早く屋敷に戻ってきてもらいたいと思った。だが、どうやら旅行先で楽しく過ごされているらしい。しばらく、屋敷に帰る予定もないそうだ。

 知らせを聞いて、屋敷で働いている者達は悲しんだ。彼らは、ナディーンお嬢様のお世話をしたいと思っているようだ。あの頃のように。俺も同じ気持ちだった。

 お嬢様と料理について語り合いたい。

 お嬢様から教わった新しい料理の知識や技術は、今でも懸命に磨いている。だが、そろそろ新たな刺激がほしい。料理人として成長するためには、彼女と料理について議論をすることが必要だと感じていた。

 帰ってこないのなら、俺達からナディーンお嬢様の居る場所へ向かうべきだ。そう考えて、モーリスという人物に相談した。屋敷で用意する料理の食材を仕入れている商会の代表で、顔なじみの商人だ。お嬢様が出発する前、何か困ったことがあったら彼に相談するよう言われていた。

 モーリスは、すぐに対応してくれた。屋敷で働く代わりの人員を用意してくれて、お嬢様が滞在しているデュラレン王国へ向かう馬車まで準備してくれるという。俺の他に希望者が居るなら、ついでに集めておいてくれとお願いされた。

 屋敷を離れてナディーンお嬢様の元へ行きたいという希望者を募ったところ、ほぼ全ての使用人達が志願した。

 希望者の数を把握して、当主に報告しに行く。

「我々、お暇をいただきたく存じます」
「そうか……。お前たちは、ナディーンの元に行くのだな?」
「はい、そのつもりです」

 どうやら、予想していたらしい。聞かれたので、素直に答えて頷いた。すると彼は渋い表情を浮かべる。これは駄目だろうか。そう思ったが。

「わかった。既に代員を手配しているのなら、問題ない。この屋敷を出ていく前に、全て引き継いでいけ。それで、話は以上か?」
「はい、以上です」

 無事に報告を終えて、屋敷を出ていく許可を頂いた。思っていたよりも、あっさり許可して貰えたので安心する。自分の代わりに仕事を引き継ぐ人を既に用意していたから、要望を聞いて頂けたようだ。

 すぐ引き継ぎを行って、屋敷から出発しよう。
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