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第1話 今日は餃子をいただきます 前編
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榊山(さかきやま)を越えて冷たい風が吹き付ける1月半ば。
大学2年の後期日程も順調に進み、何となく暇を持て余してきた私こと高木由良(たかぎゆら)は、今日も注文の商品を抱えてその店に向かっていた。
目的地は、うちの店のお得意様。鳴夜(なるや)市のとある商店街に、その大衆食堂はある。
時刻は午後5時。夕日が沈み夜が街を覆う中、皮のブーツ、ジーンズに白のセーター、ベージュのアウターを着込んでいるが、手先や足先は冷たい。肌の色素が薄いせいなのか、耳たぶや鼻、ほおが赤くなるとやたら目立つのがちょっと恥ずかしい。配達中はいつも髪を適当に束ねて邪魔にならないようにしているが、とっくに肩より下まで伸びたので、そろそろカットしてもらおうか。
20本の瓶ビールが入ったケースはなかなかの重量がある。通りを1本越えて路地を左に入るだけの近距離ではあるが、台車に乗せてガチャガチャと音を立てながら進んでいくと、大衆食堂かがみの看板が見えた。
「ふわっ、お出汁の良いにおいがする」
きっとお吸い物だろう。お店に近づくごとにそのにおいは強くなり、食欲がどんどんと高まっていく。ああ、おなか鳴りそう。
入口には回らずに勝手口へ。台車を止めてノックすると、小さく返事が聞こえた。
「まいど、高木酒店でーす」
そう声を掛けてから、私は勝手口のドアノブに手をかけた。店主は私の配達の時間に合わせて鍵を開けておいてくれるのだ。
扉を開ければ、いつもそこには長身の優男が立っている。
「いらっしゃい由良さん」
鼓膜にふわりと響く、低く暖かい声。店主の各務覚(かがみさとる)さんが出迎えてくれた。
社会人にしては少し長めの黒髪。薄手のトレーナーにスラックス、黒いエプロンといういつもの出立ちだ。
「由良さん、いつもありがとう。重かったでしょう?」
「これくらい良い運動ですよ」
「でもこんなに寒い中では…」
「動いたおかげで暑くなってます。そんなに心配されなくても大丈夫ですって!」
「ふふ、そうですか」
そう言って微笑む覚さんの後ろで沸々と音を立てている鍋の中身が気になり、私は調理場を覗き込んだ。
「お吸い物ですか?」
「今日はまだ決めかねているんですよ。鰹で出汁を取ってみたものの、中身はどうしようかなあと」
「もうこれだけでおいしそうですよ。でもやっぱりお味噌汁を期待しちゃいます」
「そうですね、今日はシンプルに大根と豆腐にしましょうか」
この大衆食堂かがみの店主である覚さんは、この厨房で毎日おいしい料理を作っている。
先代が亡くなってから覚さんがお店を引き継いだそうで、覚さんは先代の残したお品書き帳なるものを大切に使っている。
とは言っても半分以上はメモ書きのようなもの。一度見せてもらったことがあるが、中には「焼肉 ただ焼く うまい」といった、ただの思いつきか感想をメモしただけであろう記述も多数。おまけに筆ペンで書かれたのだろう、なかなかの達筆具合でよく読めないところもあった。
店内はカウンターに数席、奥に4人掛けテーブルが1つあるだけで、食堂というより居酒屋や小料理屋といったイメージだ。
木造の建物は一体いつ建てられたのだろうか、しっかりと年季の入った壁や床、カウンター。これまた古びた黒い壁掛け時計。部屋の隅のテーブルには、覚さんや先代店主が、常連だった人たちと一緒に笑っている写真がいくつか飾られている。
いつ来てもキレイに掃除されていて、暖色の照明が店内の温もりを照らしていた。
「さて、汁物はこれでいいとして…」
覚さんは背の高い大きな冷蔵庫からキャベツとネギ、挽肉を取り出した。
「何作るんですか?」
「今日は餃子をお出ししようと思いまして」
「わあ、食べたい!」
「豚の挽肉が安く買えたんです。キャベツもたくさんあるし…でも、せっかくなら味噌汁に合うような和食にするべきだったかな」
「餃子定食ってことで大丈夫ですよ覚さん! 私、食べたいです!」
「構いませんが、由良さん、お店の方は?」
「叔父さんに「今日もかがみで食べてくるんだろ」って言われて出てきてるので大丈夫です!」
覚さんに向かってビシッと右親指を立てる私。
「はは、そうですか。じゃあ、他のお客さんが来る前に作ってしまいましょう」
こうして私は配達を理由にかがみにお邪魔しては、覚さんの手料理をいただくことが多い。
初めは叔父もお客さんに迷惑だろ!と言っていたが、覚さんの優しい説得もあって今ではすっかり受け入れてもらっている。
覚さんは包丁を取り出して早速キャベツを千切りにして、続いてみじん切りにしていった。包丁がまな板を叩いてトントントンと続く音のリズムが心地よい。
続いてネギをさっと水洗いして、こちらもみじん切り。
「餃子の皮は…と、まだ冷蔵庫に入れっぱなしでした」
グイッと冷蔵庫の扉を開ける覚さんの背中越しに、さまざまな食材がぎっしりと詰まっているのが見えた。「先代は立派な料理人でしたけど、私は家庭料理しか作れなくて」とは覚さんの言葉だが、それでも私は彼の作る料理が好きだ。
「さてさて、餃子の皮は…あったあった。スーパーの定番品で申し訳ないんですが。餃子は皮から作る人もいらっしゃいますよね。由良さんは作ったことはありますか? 私はまだそこまで挑戦したことがなくて」
「私もやったことないです。今度試してみようかなあ。ネットで検索するとレシピ出てきますもんね」
私は早速スマホを取り出して調べてみる。薄力粉に強力粉、塩…。興味が湧いたのでブックマークしておこう。
「この皮のパッケージに書いてあるレシピだと、醤油とお酒にゴマ油、それから砂糖を入れるように書いてあります。普段は醤油とお酒を入れているだけですが、せっかくですし、このレシピ通りに作ってみますね」
「はーい」
覚さんはもう1本ネギを取り出し、手早くみじん切りにしたあと、足元の棚から調味料を取り出した。
餃子は中華料理屋さんやラーメン屋さん、ファミレスも合わせれば数多くのお店で食べることができる料理だ。ご当地グルメに入っていたりもする一方で、家ではお母さんが作ってくれることもあったし、よく考えるといろんな餃子を食べてきた気がする。でも、その味や中身が一致したことは、よく考えるとあまりなかったような…?
「覚さん、今日の餃子の中身ってキャベツ、ねぎ、豚肉だけですか?」
「はい」
「ニンニクやニラは入れないんですか?」
「ええ、においを気にする方もいますから。今日はこの食材だけで作ろうと思います」
「わかりました! 餃子って、バリエーションがいろいろありますよね」
「そうですね。私もキャベツの代わりに白菜を入れたり、鶏挽肉で作ることもありますし」
「エビとか、シイタケとか、どこかでトマト餃子っていうのを見たことがあるかも。そう考えると、餃子ってなんでもありですね」
「ふふ、たしかに皮で包むことができたなら餃子と名乗ってもいいのかもしれません」
「たしかにー。そもそも、あの皮が餃子の本体なのかな…」
「ああ、なるほど。納得です」
私の味覚における餃子の定番は果たしてどんな中身だったのだろう。きっとお母さんが作ってくれた味をいちばん覚えているんだろうな。
ボールに野菜と挽肉が投入され、ぐいぐいと具がこねられていく。
「しっかり混ぜた方がおいしくなる気がするんですよねぇ」
覚さんは粘り気が出てくるまで混ぜ、一つずつ丁寧に包んでいく。その手際の良さに見惚れていると、大皿にずらりと餃子が並んだ。
「焼いてないのに、もう、おいしそうです覚さん…!」
「ふふ、ありがとうございます」
大学2年の後期日程も順調に進み、何となく暇を持て余してきた私こと高木由良(たかぎゆら)は、今日も注文の商品を抱えてその店に向かっていた。
目的地は、うちの店のお得意様。鳴夜(なるや)市のとある商店街に、その大衆食堂はある。
時刻は午後5時。夕日が沈み夜が街を覆う中、皮のブーツ、ジーンズに白のセーター、ベージュのアウターを着込んでいるが、手先や足先は冷たい。肌の色素が薄いせいなのか、耳たぶや鼻、ほおが赤くなるとやたら目立つのがちょっと恥ずかしい。配達中はいつも髪を適当に束ねて邪魔にならないようにしているが、とっくに肩より下まで伸びたので、そろそろカットしてもらおうか。
20本の瓶ビールが入ったケースはなかなかの重量がある。通りを1本越えて路地を左に入るだけの近距離ではあるが、台車に乗せてガチャガチャと音を立てながら進んでいくと、大衆食堂かがみの看板が見えた。
「ふわっ、お出汁の良いにおいがする」
きっとお吸い物だろう。お店に近づくごとにそのにおいは強くなり、食欲がどんどんと高まっていく。ああ、おなか鳴りそう。
入口には回らずに勝手口へ。台車を止めてノックすると、小さく返事が聞こえた。
「まいど、高木酒店でーす」
そう声を掛けてから、私は勝手口のドアノブに手をかけた。店主は私の配達の時間に合わせて鍵を開けておいてくれるのだ。
扉を開ければ、いつもそこには長身の優男が立っている。
「いらっしゃい由良さん」
鼓膜にふわりと響く、低く暖かい声。店主の各務覚(かがみさとる)さんが出迎えてくれた。
社会人にしては少し長めの黒髪。薄手のトレーナーにスラックス、黒いエプロンといういつもの出立ちだ。
「由良さん、いつもありがとう。重かったでしょう?」
「これくらい良い運動ですよ」
「でもこんなに寒い中では…」
「動いたおかげで暑くなってます。そんなに心配されなくても大丈夫ですって!」
「ふふ、そうですか」
そう言って微笑む覚さんの後ろで沸々と音を立てている鍋の中身が気になり、私は調理場を覗き込んだ。
「お吸い物ですか?」
「今日はまだ決めかねているんですよ。鰹で出汁を取ってみたものの、中身はどうしようかなあと」
「もうこれだけでおいしそうですよ。でもやっぱりお味噌汁を期待しちゃいます」
「そうですね、今日はシンプルに大根と豆腐にしましょうか」
この大衆食堂かがみの店主である覚さんは、この厨房で毎日おいしい料理を作っている。
先代が亡くなってから覚さんがお店を引き継いだそうで、覚さんは先代の残したお品書き帳なるものを大切に使っている。
とは言っても半分以上はメモ書きのようなもの。一度見せてもらったことがあるが、中には「焼肉 ただ焼く うまい」といった、ただの思いつきか感想をメモしただけであろう記述も多数。おまけに筆ペンで書かれたのだろう、なかなかの達筆具合でよく読めないところもあった。
店内はカウンターに数席、奥に4人掛けテーブルが1つあるだけで、食堂というより居酒屋や小料理屋といったイメージだ。
木造の建物は一体いつ建てられたのだろうか、しっかりと年季の入った壁や床、カウンター。これまた古びた黒い壁掛け時計。部屋の隅のテーブルには、覚さんや先代店主が、常連だった人たちと一緒に笑っている写真がいくつか飾られている。
いつ来てもキレイに掃除されていて、暖色の照明が店内の温もりを照らしていた。
「さて、汁物はこれでいいとして…」
覚さんは背の高い大きな冷蔵庫からキャベツとネギ、挽肉を取り出した。
「何作るんですか?」
「今日は餃子をお出ししようと思いまして」
「わあ、食べたい!」
「豚の挽肉が安く買えたんです。キャベツもたくさんあるし…でも、せっかくなら味噌汁に合うような和食にするべきだったかな」
「餃子定食ってことで大丈夫ですよ覚さん! 私、食べたいです!」
「構いませんが、由良さん、お店の方は?」
「叔父さんに「今日もかがみで食べてくるんだろ」って言われて出てきてるので大丈夫です!」
覚さんに向かってビシッと右親指を立てる私。
「はは、そうですか。じゃあ、他のお客さんが来る前に作ってしまいましょう」
こうして私は配達を理由にかがみにお邪魔しては、覚さんの手料理をいただくことが多い。
初めは叔父もお客さんに迷惑だろ!と言っていたが、覚さんの優しい説得もあって今ではすっかり受け入れてもらっている。
覚さんは包丁を取り出して早速キャベツを千切りにして、続いてみじん切りにしていった。包丁がまな板を叩いてトントントンと続く音のリズムが心地よい。
続いてネギをさっと水洗いして、こちらもみじん切り。
「餃子の皮は…と、まだ冷蔵庫に入れっぱなしでした」
グイッと冷蔵庫の扉を開ける覚さんの背中越しに、さまざまな食材がぎっしりと詰まっているのが見えた。「先代は立派な料理人でしたけど、私は家庭料理しか作れなくて」とは覚さんの言葉だが、それでも私は彼の作る料理が好きだ。
「さてさて、餃子の皮は…あったあった。スーパーの定番品で申し訳ないんですが。餃子は皮から作る人もいらっしゃいますよね。由良さんは作ったことはありますか? 私はまだそこまで挑戦したことがなくて」
「私もやったことないです。今度試してみようかなあ。ネットで検索するとレシピ出てきますもんね」
私は早速スマホを取り出して調べてみる。薄力粉に強力粉、塩…。興味が湧いたのでブックマークしておこう。
「この皮のパッケージに書いてあるレシピだと、醤油とお酒にゴマ油、それから砂糖を入れるように書いてあります。普段は醤油とお酒を入れているだけですが、せっかくですし、このレシピ通りに作ってみますね」
「はーい」
覚さんはもう1本ネギを取り出し、手早くみじん切りにしたあと、足元の棚から調味料を取り出した。
餃子は中華料理屋さんやラーメン屋さん、ファミレスも合わせれば数多くのお店で食べることができる料理だ。ご当地グルメに入っていたりもする一方で、家ではお母さんが作ってくれることもあったし、よく考えるといろんな餃子を食べてきた気がする。でも、その味や中身が一致したことは、よく考えるとあまりなかったような…?
「覚さん、今日の餃子の中身ってキャベツ、ねぎ、豚肉だけですか?」
「はい」
「ニンニクやニラは入れないんですか?」
「ええ、においを気にする方もいますから。今日はこの食材だけで作ろうと思います」
「わかりました! 餃子って、バリエーションがいろいろありますよね」
「そうですね。私もキャベツの代わりに白菜を入れたり、鶏挽肉で作ることもありますし」
「エビとか、シイタケとか、どこかでトマト餃子っていうのを見たことがあるかも。そう考えると、餃子ってなんでもありですね」
「ふふ、たしかに皮で包むことができたなら餃子と名乗ってもいいのかもしれません」
「たしかにー。そもそも、あの皮が餃子の本体なのかな…」
「ああ、なるほど。納得です」
私の味覚における餃子の定番は果たしてどんな中身だったのだろう。きっとお母さんが作ってくれた味をいちばん覚えているんだろうな。
ボールに野菜と挽肉が投入され、ぐいぐいと具がこねられていく。
「しっかり混ぜた方がおいしくなる気がするんですよねぇ」
覚さんは粘り気が出てくるまで混ぜ、一つずつ丁寧に包んでいく。その手際の良さに見惚れていると、大皿にずらりと餃子が並んだ。
「焼いてないのに、もう、おいしそうです覚さん…!」
「ふふ、ありがとうございます」
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