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第二章 魔王様、小学校六年生をお過ごしになる

61 魔王様は小学6年の最後の夏休みを遊び倒したい⑤

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宿題もスムーズに終わりを――迎えられなかったのは一人いるが、さしたる問題ではないので放置していると、流石に涙目で勇者に叩かれた。
そこまでアキラを意識しているのなら初恋が実る事を兄としては祈ろうとは思うが、なんだかんだと勇者もアキラ同様に純粋培養液育ちなのかもしれない。

寺では、恋愛や性教育といった物に関してかなり厳しい所がある。
各場所にもよるのだろうが、我が家の場合、我が先に将来の妻となる聖女を見つけて大恋愛した為、ぬるい方だろう。
だが、勇者は将来どこかに嫁ぐ身。
それならば、出来るだけ幸せになれる相手をと思うのは、何処の家庭でも同じである。

これでアキラが性格が捻くれて、束縛が余りにも強すぎて、嫉妬魔人で、更にDVでも噛まそうものなら、魔王の力を持って勇者を守る為に戦ったことだろう。
幸いアキラは心の底から勇者を大事にしている為、とても安全だ。
例えお付き合いに進展しても、無理強いな事は絶対にやるまい。
寧ろ勇者の方がモヤモヤして自分で突っ込んでいくタイプだと思う。
女性陣が台所に消えていったところで、我はアキラをじっと見つめた。


「ん? どうした祐一郎」
「いえ、貴方が私の義理の弟になればよいなと」
「何言ってんだよ、将来の事は解らないさ!」
「あくまで理想ですよ」


魔法使いはそう言う我らの言葉を聞きつつ、視点の合わない目で「へぇ~……」とこちらを見つめてきたが、魔法使いと勇者が結婚するのであれば、心労が絶えず我が倒される事となるだろう。


「祐一郎、ボクは?」
「貴方、束縛凄いじゃないですか」
「愛ゆえの束縛だよ」
「愛ゆえに多少の自由は必要です」
「浮気されたらどうするのさ!」
「貴方にそれだけの魅力が無いのですか?」


論破である。
自分に自信があれば酷い束縛は必要などない。
魔法使いは「確かに魅力はあると思うけどさぁ……」と不満げだったが、アキラは苦笑いしつつ「確かに恵は束縛強そうだなぁ」と口にしていた。
勇者が健やかなる女性に成長する為には、束縛よりも自由が良い。
こうして、男同士の会話をしていると女性陣が帰ってきた為、裏庭に出て早速夏野菜のオヤツタイムだ。
用意するのは大きめの鍋と塩少々、それを外で沸騰させもぎ立てのトウモロコシを処理して茹でる。
その間に採れたて新鮮トマトとキュウリを味わってもらい、湯掻いているトウモロコシの隣で同じようにコンクリート二つと網で即席のコンロを作り、火をつける。
網に火が通れば、トウモロコシを網の上に置いて焼きつつ、醤油もハケで縫って出来上がりだ。


「ナニコレ甘い!」
「トウモロコシってこんなに甘かったっけ?」
「採れたてのトウモロコシはとても甘いんですよ。美味しいでしょう?」
「最高だな!!」
「本当にな!!」


アキラと勇者も満足そうに食べている。
随分昔に、裏庭で焚火に栗を投げ入れた勇者を思い出すと、随分と成長したものだと感慨深いものがあるな。


「もう割れ目を入れていない栗を入れてはなりませんよ」
「まだ言うか」
「何度でも言います」
「酷い兄だ」
「優しい兄です」


そんなやり取りを皆が笑いながら見つめており、少し不貞腐れた勇者の頭をアキラが撫でていた。
やはり、義弟にはアキラが一番では???
見ていて納得の安心感は貴重だ。
まぁ、まだまだ互いに子供。将来どうなるかは分からないのだから静かに見守ろう。

美味しい焼きトウモロコシを食べた後は、メインイベントのスイカ割りだ。
巨大スイカを頂いたので、割ってみんなで食べよう企画をしてみたが……手短な棒が見当たらなかった為、自室に戻り棒は我の持っている木刀で良かろう。


「棒を持ってまいりました」
「木刀で叩くの?」
「ええ、切れ味は良いと思います。何せ私の手作りの木刀ですので」
「「「「凶器」」」」
「趣味の一環ですよ」


ビュンッと振ればいい音が鳴る愛用の木刀だ。
今回のスイカ割りの主メンバーは、僧侶、魔法使い、アキラだ。


「誰からやります?」
「手は切れませんわよね……?」
「多分大丈夫かと」
「わたくし、遠慮しますわ。男性陣頑張ってくださいませ」


おっと、ここで僧侶が脱落した。
魔法使いを見ると顔が引き攣っている……体調が悪いのやもしれない、食べ過ぎか?
アキラは目を輝かせている。
となると――必然的にアキラがスイカ割り担当に抜擢だろう。


「アキラ、やりますか?」
「やろう……ここは超えなきゃならない男の意地がある!」


こうして、アキラは我から木刀を受け取ると、何度かビュンビュン振って「よし!」と気合を入れた。
しかし――。


「もっと広い所でやろう!」
「ええ、わたくし達に当たっては大変ですわ!」
「家の柱も怖いね」
「「「「離れよう!!」」」」


オル・ディール面子全員一致での言葉だった為、ブルーシートとスイカを移動させ離れた場所でのスイカ割りとなった。
目隠しのタオルを縛り、木刀を手に右に左にとはやし立てるオル・ディール面子。
さて、どうなるか……一撃で決め切れるか、アキラッ!!


「今です! 解き放ちなさい!」
「ハァァァアアアアア!!!」


真っ直ぐ振り下ろした先には―――!



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