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監視開始の即終了
しおりを挟む学生会室を出て、本日最初の講義がある教室に向かいます。
移動中、ちらほら私の事を見ていられる方が多く居るようですが、これは噂によるものなのでしょうか。
まあ、見られたところでなにかある訳でもありませんし、気にするだけ損という物でしょう。
そして本日の講義も恙なく終了しました。
グレイに関しては今日の講義で1度も姿を確認することは出来ませんでした。同じ講義をいくつか選択していたと記憶しているのですが、出席はしていなかったようです。
これが実家に帰って何かをしているというのなら問題はないのですが、もし女性との逢引でしたら、問題にはなるでしょうね。
婚約を破棄する話は進んでいますが、まだ正式にしている訳ではありませんし、グレイ側が私に問題があると婚約破棄の理由を押し付けたいのでしたら、弱みと言うかグレイ自身が立てた計画の破綻に繋がるようなものです。
グレイからしてみれば、あちらの当主が同意を示している段階で婚約は破棄されたと判断しているのでしょう。
しかし、正式な手続きを踏んで纏めた婚約であれば正式な手続きを踏まなければ破棄することは出来ません。そして、私とグレイの婚約は正式な手続きを踏んでいるのです。どんなに早く手続きが進んでいたとしてもまだ婚約は破棄されていないはずです。
そもそも、私のお父さまが同意していないため手続きは進んでいないのですけどね。
講義が終わった後もやることはあるため、講義で使用した資料は邪魔になります。そのため一旦学生寮へ戻ることにしたのですが……
「コルト。貴方は私たちの監視をしていたのよね?」
「そうですね」
「ならどうしてここに?」
学生寮の自室へ戻ると、部屋の前でコルトが待っていました。本来なら私たちから見えない場所で監視をしているはずなのにここに居るのはどうしてかしら。
「現段階で確認したい部分が終了してしまったので、私の仕事が終了した件をお嬢様に伝えようと思いまして」
「それは有り難いのだけど……監視を始めたのって今日の朝からよね?」
「そうですね」
「監視ってこんなに早く終わる予定だったのかしら」
「いえ、長ければ半月ほどの期間を予定していました」
そうよね。普通、監視するのであれば最低でも数日は必要だし、長ければそのくらいは掛かるわよね。
「それなのにもう終わったの?」
「はい。そうなります」
「そう」
何時まで監視が続いているか、まだ続いているのか、それを知らないまま過ごすよりは今どうなっているのかを知っている方が精神的に楽ではあるのよね。まさか、こんなにも早く終わるとは思っていなかったので驚きましたけど。
監視の仕事が終わったのならグレイの報告についての真偽の確認が終わったということのはず。なら、今日グレイの姿を見なかったのは堂々と逢引をしていたのかもしれないわ。もしかして、あちらの親がグレイの提案通り婚約を破棄することに同意した時点で、私たちの婚約は破棄されたものと思い込んでいるのかしら。
「では、私はこれにて屋敷へ戻ります」
「ええ、気を付けて帰りなさい」
「はい。それでは」
コルトはそう言うと軽い足取りで学生寮から出て行った。
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