【完結】にゃん!てステキなおんがえし!

ユリーカ

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033: アリスの騎士②

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 というわけで。

 リオンはアリスから王子との関係を聞き出せていない。だがどう転んでもアリスだけは守り切る決意だ。リオンはグッと拳に力を込めた。
 アリスへの恩返しの魔法は未だに解けていない。だがその分魔力はみなぎっている。これなら滅多なことでは負けることはないだろう。一時切れそうなほど細くなった魔力の繋がりも今は復活しお互いが太く繋がっているとわかる。

 アリスは馬車に乗ったあたりで楽しそうな笑顔を浮かべていた。鼻歌が聞こえて来そうなほどに。王子に会うのが楽しみなのか?とリオンの機嫌がむッと悪くなったのだが。

「ねえりおん君、レオナード様の御用が終わったら公園を散策しない?あの公園に素敵な温室があるの」
「温室?」
「うん、りおん君と‥一緒に行きたいなって」

 頬を染め目を伏せておねだりされ、リオンの拗ねた気分が天に昇る程に高揚する。

 え?それってデート?両想いになれて初めての人形でのデートだよね?!ありすが誘ってくれた?!

「うん!行く!楽しみだね!」
「よかった!私も楽しみだよ」
『殿下‥チョロすぎませんか?』
『黙れ』

 頭上から降ってくるギードの念話は秒でシャットアウトした。そうとなればちゃっちゃと第二王子をシバいてアリスと公園デートだ!とリオンは鼻息を荒くしたのだが。

 この時点ではリオンはこの後の展開を予想だにしていなかった。

 


「ちょっと早く着いちゃったみたい」

 待ち合わせの公園には午前の早い時間で人も少ない。公園の日時計の花壇前のベンチに二人で腰掛ける。この時点でリオンはすでにアリスと公園デート気分である。木の上で待機する灰ブチ猫に命を出した。

『もう王子来なくてよくね?ギード、ちょっと王子を追い返して』
『いえ、別の方がいらっしゃいました』
『ん?』

 それはアリスも気がついたようだ。ベンチから立ち上がり手を振っている。

「まあダリア様!ごきげんよう!来てくださると思っていました!」
「ごきげんようじゃありませんわ!」

 ダリア?誰だ?

 アリスの目の前にはいかにも貴族令嬢然とした美しい女性が仁王立ちに立っていた。金髪の縦ロール、やや釣り目、キツい口調で気の強そうに見える。そして表情は鬼の形相である。

「アリス・カラバ‥‥あなたという人は何度言えば!」
「お久しぶりですダリア様!お会いできて本当に嬉しいです!夏季休暇はつつがなくお過ごしですか?」

 満面の笑顔のアリスに反してダリアと呼ばれた女性はつんと顔を背けてみせる。

「え?ええ、まあまあね。私は別にあなたに会いたかったわけじゃ‥って世間話をしにきたわけじゃなくてよ!!」
「まあ、私に何か御用ですか?殿下のスケジュールを確認して会いに来てくださったんですね。私に会うという態で殿下に会いにいらしたんですもんね」
「会いッ?!ち!違うんだから!私は!別に殿下のこともあなたのことも気にしてないわよ!それよりも!殿下と二人きりで会うのはやめなさいと言ったでしょ?!あなた!世間からどうみられているか知っているの?」

 その言葉でリオンはぴんときた。

 アリスと行動を共にすると必ず付き纏う視線。理由はわからないがあれは変わった格好の自分ではなくアリスに向けられたものだと再確認した。そしてこのダリアという令嬢の身元もわかった。

 ああ、彼女がイジメっ子?第二王子の婚約者か。

 だがどうも聞いていた話と違う。ダリアの口調こそキツいがアリスを気遣っているような内容に聞こえる。アリスも笑顔のままだったが少し困ったような顔をする。

「えっと、お手紙をいただきまして。寂しがっているので会いたいと。二人きりではありませんし」
「あんなのほっときなさい!おかけであなたは王子の恋人と誤解されてるわよ!ややこしいったら」
「えー?そんなわけないですよ。殿下にはダリア様がいらっしゃるのに」
「あなた!あんだけ周りを気にしてるのにどうしてそこだけヌルいのよ!おかげで私があなたをイジメてる悪役令嬢扱いじゃない!」

 ん?誤解なのか?確かにこの令嬢はアリスをイジメているという感じではないが。リオンは展開の早さについていけない。その言葉に反応してアリスが元気よく手をあげる。

「もちろんです!ダリア様はとってもお優しい方ですもの!」
「や!優しくはないわ!あなたのことなんて気にしてないんだから!そちらの男性はなんなのよ?!この間連れていた婚約者ではないわね。そんなんだからまた噂が!」
「あ、えっと。りおん君は違って。紹介しますね」
「結構よ!とにかく!もう金輪際殿下とは会わないよう」
「やあ、ダリア。君も来ていたのかい?」

 その声にダリアがヒャッと飛び上がった。ダリアの背後に品の良い青年が立っていた。平民の服を着ているが仕立てがいい。いかにも貴族令息が化けたといった格好だ。手に何か毛むくじゃらなものを抱えている。

「レレレレレオナード殿下!」

 ん?こいつが例の第二王子?なんだか思っていたのと違う?それに手に持っているあれは‥

 王子が嬉しそうに微笑むも言葉は恨みがましげだ。

「あーあ、私が誘ってもちっとも出てきてくれないのにアリスがいるところではよく会うよね。気のせいかな」
「ぐぐぐ偶然です!ちょっとアリスを見かけたから声をかけただけですわ」
「あ、そうなんだ。相変わらず君はアリスに優しいな」
「そそそそそんなことはございませんッ!!」

 顔を真っ赤にしながらもダリアがそっぽを剥いて全否定する。第二王子がアリスを呼び捨てにしたあたりでリオンがぴくりと反応したがここで名を呼ぶなとも言いにくい。後でケジメをつけてやる、とぐっと堪えた。

「そうなんです!ダリア様はお優しくて美しくて可愛らしくて!ちょっと素直じゃないとこも猫っぽくてステキ!私の憧れです!」
「さすがアリス!ダリアのいいところをよくわかっているね!」

 デレデレのアリスにメロメロの青年が応じている。それに顔を赤くした令嬢が絶句していた。リオンは更に混乱していた。猫情報が全く合っていない。だがそれよりもリオンの視線はある一点に集中していた。
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