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*ご覧に前になる前にー。
高波、海内部表現がありますので、無理な方はおきをつけください*
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「セイネ?」
光が収まるとセイネの二本の足はなくなり代わりに赤い尾鰭があった。月の光で鱗が輝いている。
その光景に誰もが魅入り言葉をなくしていた。
「リュート様・・・」
本来の姿を取り戻したセイネが自分の声でリュート殿下の名前を呼ぶ。
見つめ合う2人の世界を突然の雷が邪魔した。
「なぜ?」
先ほどまで雲一つなく天気が良かったのだから驚いても無理ない。ロイド殿下はソレイユ様を抱きしめてこちらを見てきた。
「強い力を使ったからその反動・・・つかまって!!」
説明するより早く高波が襲ってくる。
甲板をも超える波が私たちを襲ってきた。
悲鳴を上げる間もなく私たちは海に飲み込まれた。
月の光が入らない暗い海は懐かしいものだった。ずっとこの海に抱かれて生きてきたことを実感する。
今まで見てきた白昼夢を思い出し、私の意識をはっきりさせた。
本来の自分を自覚すると息を大きく吸った。海水が自分の肺を満たしていくのがわかり安心する。
冷静になって見回すと私のすぐ下でアルフがこちらに向かって泳いでいる姿がみえた。
必死で手を伸ばすアルフに私は手を伸ばした。手が触れた瞬間、彼は握り返してくれる。
それだけのことが嬉しく感じるのはどうしてか。
そんな想いを隠し、私は上へと向かって泳ぎ出した。
海の上は波が荒かった。風は強く雨が激しく横殴りに打ちつけてくる。
船の甲板においてあった荷物も一緒に波に飲まれたのか海面に浮かび、壊れた板も浮いていた。アルフをそこへと導く。
「フィー、大丈夫か?」
「はい・・・。セイネシア!?」
アルフの安全を確保した後、その向こうを見るとセイネシアがリュートと一緒にいた。
「フィー」
「セイネシア。これにリュートを」
急な波に体力を削られたのか疲れた様子のリュートを板に捕まらせる。
「ソレイユとロイドがまだね。行ってくるわ」
「待って、それは私が」
海に潜ろうとした私の手をセイネシアは取り押し留めた。
そんな彼女に役目を与える。
「セイネシアにはやってもらいたいことがあるわ」
「・・・なんですか?」
なぜか私の目を見て彼女は震えた。まるで怖いものを見たように。
「この嵐は人魚の力による副作用なの。鎮めることができるのはあなたたちだけ」
「私たち?」
「『今見ぬ美しき世界』を歌って。あの歌は人魚の高音と泡沫人の低音で一つの歌になるように作ったの。歌えばわかるから」
「待って!どういうこと?わからないわ」
抽象的だったとは思う。でも、今は説明する余裕はなかった。
セイネシアが首を振り叫ぶ。そんな彼女の手を外したのはアルフだった。
私のいいたいことを理解してくれていると彼の瞳を見て思った。
「フィー。ここは私に任せて行ってくれ。ロイド殿下を頼む」
彼にこの場を任せて海に潜る。
暗い海をくまなく探し始めた。
ルナ様はどうしているのかと気にはなったが、彼女も元は人魚なのだから生きているという確信があった。
だからこそ、ただの人間であるロイドとソレイユが心配だった。
目を細め潜り続けると抱き合いながら漂っている、ソレイユとロイドの姿があった。
ぐっと海を蹴り、両手でかき分ける。
ゆらゆらとしている二人に近づくと呪いを唱えた。
これで、海の上に出るまで息は大丈夫だろう。
二人を抱えるようにして泳ぎ出そうとしたとき、黒い影が前にでてきた。
ルナの姿だった。ドレスが水の抵抗で揺れ動く。
「ソレイユを返して」
じっと見つめる彼女に私は言葉を発した。
「いいえ。海の上に行くわ。泡沫人は海の中では生きてはいけないのよ」
「ソレイユは・・・」
「人間よ。この子はあなたの姉妹じゃないわ」
「嘘よ・・・」
「嘘じゃない。その理由が知りたいなら海の上で話してあげる」
「・・・・・・」
「行くわよ」
怖い顔をし無言のままのルナに声をかけ二人を抱えなおすと、私は海の上にむかって泳ぎ出した。
高波、海内部表現がありますので、無理な方はおきをつけください*
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「セイネ?」
光が収まるとセイネの二本の足はなくなり代わりに赤い尾鰭があった。月の光で鱗が輝いている。
その光景に誰もが魅入り言葉をなくしていた。
「リュート様・・・」
本来の姿を取り戻したセイネが自分の声でリュート殿下の名前を呼ぶ。
見つめ合う2人の世界を突然の雷が邪魔した。
「なぜ?」
先ほどまで雲一つなく天気が良かったのだから驚いても無理ない。ロイド殿下はソレイユ様を抱きしめてこちらを見てきた。
「強い力を使ったからその反動・・・つかまって!!」
説明するより早く高波が襲ってくる。
甲板をも超える波が私たちを襲ってきた。
悲鳴を上げる間もなく私たちは海に飲み込まれた。
月の光が入らない暗い海は懐かしいものだった。ずっとこの海に抱かれて生きてきたことを実感する。
今まで見てきた白昼夢を思い出し、私の意識をはっきりさせた。
本来の自分を自覚すると息を大きく吸った。海水が自分の肺を満たしていくのがわかり安心する。
冷静になって見回すと私のすぐ下でアルフがこちらに向かって泳いでいる姿がみえた。
必死で手を伸ばすアルフに私は手を伸ばした。手が触れた瞬間、彼は握り返してくれる。
それだけのことが嬉しく感じるのはどうしてか。
そんな想いを隠し、私は上へと向かって泳ぎ出した。
海の上は波が荒かった。風は強く雨が激しく横殴りに打ちつけてくる。
船の甲板においてあった荷物も一緒に波に飲まれたのか海面に浮かび、壊れた板も浮いていた。アルフをそこへと導く。
「フィー、大丈夫か?」
「はい・・・。セイネシア!?」
アルフの安全を確保した後、その向こうを見るとセイネシアがリュートと一緒にいた。
「フィー」
「セイネシア。これにリュートを」
急な波に体力を削られたのか疲れた様子のリュートを板に捕まらせる。
「ソレイユとロイドがまだね。行ってくるわ」
「待って、それは私が」
海に潜ろうとした私の手をセイネシアは取り押し留めた。
そんな彼女に役目を与える。
「セイネシアにはやってもらいたいことがあるわ」
「・・・なんですか?」
なぜか私の目を見て彼女は震えた。まるで怖いものを見たように。
「この嵐は人魚の力による副作用なの。鎮めることができるのはあなたたちだけ」
「私たち?」
「『今見ぬ美しき世界』を歌って。あの歌は人魚の高音と泡沫人の低音で一つの歌になるように作ったの。歌えばわかるから」
「待って!どういうこと?わからないわ」
抽象的だったとは思う。でも、今は説明する余裕はなかった。
セイネシアが首を振り叫ぶ。そんな彼女の手を外したのはアルフだった。
私のいいたいことを理解してくれていると彼の瞳を見て思った。
「フィー。ここは私に任せて行ってくれ。ロイド殿下を頼む」
彼にこの場を任せて海に潜る。
暗い海をくまなく探し始めた。
ルナ様はどうしているのかと気にはなったが、彼女も元は人魚なのだから生きているという確信があった。
だからこそ、ただの人間であるロイドとソレイユが心配だった。
目を細め潜り続けると抱き合いながら漂っている、ソレイユとロイドの姿があった。
ぐっと海を蹴り、両手でかき分ける。
ゆらゆらとしている二人に近づくと呪いを唱えた。
これで、海の上に出るまで息は大丈夫だろう。
二人を抱えるようにして泳ぎ出そうとしたとき、黒い影が前にでてきた。
ルナの姿だった。ドレスが水の抵抗で揺れ動く。
「ソレイユを返して」
じっと見つめる彼女に私は言葉を発した。
「いいえ。海の上に行くわ。泡沫人は海の中では生きてはいけないのよ」
「ソレイユは・・・」
「人間よ。この子はあなたの姉妹じゃないわ」
「嘘よ・・・」
「嘘じゃない。その理由が知りたいなら海の上で話してあげる」
「・・・・・・」
「行くわよ」
怖い顔をし無言のままのルナに声をかけ二人を抱えなおすと、私は海の上にむかって泳ぎ出した。
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