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06.
40.理性の枷 01
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時は、媚薬に戸惑う者達が庭園に居た頃まで戻る。
媚薬に犯されたマティルとバウマンの身体はどこまでも熱を帯び、敏感に泡立つ肌に痺れ震えていた。 熱っぽい瞳は涙で濡れ……自らの身体に翻弄され、晴れ渡る青い空をボンヤリと見つめていた。
体の熱を冷ますように風が吹けば、熱い肌を撫で、甘い刺激となり、2人は快楽に震えていた。
知らない。
こんな感覚、私は知らない。
失いかける理性の中、2人は心の中で叫んでいた。
ブラームが、焦点の合わぬマティルの頬に手を伸ばす。 マティルは自ら救いを求めるように、溺れる事を望むかのように、熟れた甘い瞳でマティルはブラームを見つめていた。
媚薬を飲まされた事を知らなければ……ブラームはためらうことなく、マティルの唇に、頬に、首筋に、身体に、熱く情熱的な口づけを行っただろう。
マティルは、甘い声を吐息と共に零し、細かく身体を震わせていた。
「んっ……ぁっ、はぁ……」
ブラームは息を飲んだ。
幼い頃から愛していた。
守る事で独占欲を満たしていた。
自分以外に誰も居ないと思えば、耐える事が出来た。
大公としての王の子としての役割を放棄し、バウマンに嫉妬を向けそうになった事も無い訳でない……バウマンがもっと軽薄で、愚かで、思慮を持ち合わせず、小賢しく、人を……マティルを躊躇なく傷つけるようなら、婚約関係等ためらう事無く破棄させただろう。
実際はどうだ。
バウマンは、マティル以上に保護が必要な人間だった。
「ブラームさまぁ」
甘い声が、可愛らしい唇から漏れ出た。
口づけを誘うように、濡れた唇に視線が奪われた。
だが、次の瞬間には正気……いや、狂気に揺れそうになっていた。
嫉妬……いや、嫉妬を覚えるような価値もない、コレはただの苛立ち。
黒ローブから報告を受けていた。
マティルがどう媚薬を与えられたか。
意識の無い時に奪われた唇、ソレをマティルに責めるのはお門違いだろう。
だが、苛立った。
あぁ、ダメだ……。
マティルに怒っても仕方がない。
救いを求めるような熱のこもった視線が向けられれば、溜息と共に身体の力を抜き、胸元から取り出したハンカチでマティルの唇を拭った。 それが全く意味の無い行為だと分かっていても、何かが変わる訳でもない事を知っていてもだ。
ただの自己満足だとブラームは自嘲する。
ブラームはマティルの頬を撫で、軽い口づけを交わしその唇を舐めた。
「あっ……」
幼い口づけは、幼少期から幾度も繰り返してきた。 だから、マティルはその行為に特別な事を感じた事は無い……今、この瞬間まで……。
マティルは、離される舌を唇を自ら追っていた。
「ブラーム様……」
うっすらと涙を浮かべ、見つめられ……だけどブラームは喜ぶこと等出来るはずなく、怒りの向けどころなく苛立っていた。
「おいで」
手を差し出せば、その手にマティルは手を重ね、預け、ブラームの元に身体ごと倒れ込んでくる。 ブラームは抱きしめ、そして抱き上げ、そっと壊れ物のように頬を寄せ、震える柔らかな身体が熱を感じ取れば……虚しさが胸をしめる。
マティルの体温は熱く、汗ばんでいる。
大丈夫か? とは聞かない。 大丈夫でない事は、快楽の経験の無いマティルよりも理解しているから。
「閣下……」
黒ローブの1人がブラームに向けた目線は、戸惑いと哀れみが浮かんでいた。
「バウマン様が、怯えております……」
マティルを姫抱きのまま立ち上がり、バウマンの方へと視線を向け……顔をしかめた。
バウマンとマティルが飲ませられた薬の報告もブラームは受けている。 報告の内容を語る黒ローブの声にもまた苛立ちが含まれていた。
だけれど、黒ローブはアンベルが語ったままにブラームに伝える。
『彼が飲んだ媚薬は、効果が早いだけでなく、量も多い。 コレから益々、欲情と言う熱が増していくのよ。 どうするつもり、可哀そうに放置してしまうの? 私に任せた方がいいわ。 私に任せるべきよ!!』
そうアンベルは嬉しそうに叫んでいたそうだ。
「連れて戻る」
迷う事無くブラームは言った。
媚薬に犯されたマティルとバウマンの身体はどこまでも熱を帯び、敏感に泡立つ肌に痺れ震えていた。 熱っぽい瞳は涙で濡れ……自らの身体に翻弄され、晴れ渡る青い空をボンヤリと見つめていた。
体の熱を冷ますように風が吹けば、熱い肌を撫で、甘い刺激となり、2人は快楽に震えていた。
知らない。
こんな感覚、私は知らない。
失いかける理性の中、2人は心の中で叫んでいた。
ブラームが、焦点の合わぬマティルの頬に手を伸ばす。 マティルは自ら救いを求めるように、溺れる事を望むかのように、熟れた甘い瞳でマティルはブラームを見つめていた。
媚薬を飲まされた事を知らなければ……ブラームはためらうことなく、マティルの唇に、頬に、首筋に、身体に、熱く情熱的な口づけを行っただろう。
マティルは、甘い声を吐息と共に零し、細かく身体を震わせていた。
「んっ……ぁっ、はぁ……」
ブラームは息を飲んだ。
幼い頃から愛していた。
守る事で独占欲を満たしていた。
自分以外に誰も居ないと思えば、耐える事が出来た。
大公としての王の子としての役割を放棄し、バウマンに嫉妬を向けそうになった事も無い訳でない……バウマンがもっと軽薄で、愚かで、思慮を持ち合わせず、小賢しく、人を……マティルを躊躇なく傷つけるようなら、婚約関係等ためらう事無く破棄させただろう。
実際はどうだ。
バウマンは、マティル以上に保護が必要な人間だった。
「ブラームさまぁ」
甘い声が、可愛らしい唇から漏れ出た。
口づけを誘うように、濡れた唇に視線が奪われた。
だが、次の瞬間には正気……いや、狂気に揺れそうになっていた。
嫉妬……いや、嫉妬を覚えるような価値もない、コレはただの苛立ち。
黒ローブから報告を受けていた。
マティルがどう媚薬を与えられたか。
意識の無い時に奪われた唇、ソレをマティルに責めるのはお門違いだろう。
だが、苛立った。
あぁ、ダメだ……。
マティルに怒っても仕方がない。
救いを求めるような熱のこもった視線が向けられれば、溜息と共に身体の力を抜き、胸元から取り出したハンカチでマティルの唇を拭った。 それが全く意味の無い行為だと分かっていても、何かが変わる訳でもない事を知っていてもだ。
ただの自己満足だとブラームは自嘲する。
ブラームはマティルの頬を撫で、軽い口づけを交わしその唇を舐めた。
「あっ……」
幼い口づけは、幼少期から幾度も繰り返してきた。 だから、マティルはその行為に特別な事を感じた事は無い……今、この瞬間まで……。
マティルは、離される舌を唇を自ら追っていた。
「ブラーム様……」
うっすらと涙を浮かべ、見つめられ……だけどブラームは喜ぶこと等出来るはずなく、怒りの向けどころなく苛立っていた。
「おいで」
手を差し出せば、その手にマティルは手を重ね、預け、ブラームの元に身体ごと倒れ込んでくる。 ブラームは抱きしめ、そして抱き上げ、そっと壊れ物のように頬を寄せ、震える柔らかな身体が熱を感じ取れば……虚しさが胸をしめる。
マティルの体温は熱く、汗ばんでいる。
大丈夫か? とは聞かない。 大丈夫でない事は、快楽の経験の無いマティルよりも理解しているから。
「閣下……」
黒ローブの1人がブラームに向けた目線は、戸惑いと哀れみが浮かんでいた。
「バウマン様が、怯えております……」
マティルを姫抱きのまま立ち上がり、バウマンの方へと視線を向け……顔をしかめた。
バウマンとマティルが飲ませられた薬の報告もブラームは受けている。 報告の内容を語る黒ローブの声にもまた苛立ちが含まれていた。
だけれど、黒ローブはアンベルが語ったままにブラームに伝える。
『彼が飲んだ媚薬は、効果が早いだけでなく、量も多い。 コレから益々、欲情と言う熱が増していくのよ。 どうするつもり、可哀そうに放置してしまうの? 私に任せた方がいいわ。 私に任せるべきよ!!』
そうアンベルは嬉しそうに叫んでいたそうだ。
「連れて戻る」
迷う事無くブラームは言った。
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