貴方に私は相応しくない【完結】

迷い人

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 学園は12歳以上が入学年齢。
 職業を決める目安を4年に定めている。

 特待生の中でも、ジェシカのように進路が決まっている場合、ブラッドのように全てを器用にこなす場合、私のように職業特化を決めるのが早い場合、例え1年生でも4年で与えられる研究室が与えられる。

 別に……生徒の中に混ざる必要はない。

 でもジェシカは別。 商業的な繋がりを作りに来ているから、人間同士の繋がりを大切にする。

 だけど、私は研究室に籠り続ける事が出来る。 だからエドウィンのように私を探してまで追いかけて来る者でもなければ、私の小さな世界の外で何を言っていても気にするような事ではない。 それでも……私の研究室に全く顔を見せなくなったジェシカを考えれば……自分の非専門分野であるからと言って、ジェシカに負けたくなんかない。

 私は、珍しくと言うか、初めてブラッドの研究室の扉を叩いた。

「はいはい」

 襟元を緩めた楽な恰好で出て来た。

「おや……どうしたんですか、珍しいですね」

「勉強を教えて!!」

「構いませんが……男の部屋に1人で来るって事がどういう事か分かってきたのでしょうね?」

 彼等は笑いながら言う。

「今まで散々私の研究室に1人で来ておいて何を言っているんですか!!」

 と言いながら、ずかずか遠慮なく入って行けば、贅沢な私室だった。

「……?」

 私はジッとブラッドを見る。

「定期的に研究成果を提出さえすれば、部屋の使い方には口出しをされませんからね」

「えぇ~~。 因みに1位は何を提出しているんですか?」

「魔法研究ですね。 ですが、今度は獣人の研究をしてみるのも悪くないかもしれません」

 なんて言いながら、人間のままの私を軽々と持ち上げた。

「やめる『にゃん!!』

『女性の身体に気安く触るなんて、紳士の風上にもおけない!!』

 猫の姿に転じれば胸に抱き頭を撫でられ、そしてテーブルの上に下ろされる。

「仕事の手伝いに出向いた先から送っていただいた林檎があるのですが食べますか?」

『剥いてくれたら食べる』

「量が多いから、後で持って帰るといい。 それで、どれを食べる?」

 テーブルの上にリンゴの入った箱が置かれ、私は中に入り込んだ。 甘酸っぱい林檎の匂いに唾液が溢れる。 それでも中から甘そうな物を選び出し手渡した。

『これを剥いて』

「はいはい」

『ジャムにして紅茶に入れるのも良いし、タルトタタンも良いかもです~』

「はいはい、教科書を広げて待っていてください」

『これ、全部貰っていい? 良いならシードルを作る!! 普通のお酒は苦くて飲めないけど、リンゴのお酒なら飲めるかもですし』

「好きなだけ持って行くといいですよ」

 そんな会話がいったん止まれば、私達は……と言うか、私のための数学の勉強会が進められた。

 目標!! ジェシカ以上!!

「むきになってます?」

『なってません?』

「なぜ、疑問?」

『なってますん?』

「すん? そういえば、最近の貴族達の動きはどうですか?」

 そうブラッドが尋ねた理由は、国営として提案した酒造事業に対して、私は、私に敵対した事のない、かつ、領地運営が比較的安定している貴族達に出資案内を国から出してもらった。

 3年後から、出資総額の割合に応じて利益分配が行われ、そして酒も原価提供がなされる事を条件とした。 この事業の責任者の1人に『ニーニャ』と名前が書かれている。 それによって貴族生徒達の7割以上が私に対して好意的な態度をとるようになっており、私を悪魔だと言っている貴族達と反目し、睨み合いを始めていた。

 私は……エドウィンに何かを言う事もなく……彼と、彼の言葉に乗って庶民に生まれたものは汚れている、そしてその最たる私は悪魔であると言っていた者達の立場は、悪くなっていったらしい……。

 らしいと曖昧な事を言うのは、私がソレを見る機会が無いから。

 私は危険に敏感な獣だから。
 私は怠惰を好む獣だから。

 だから、危険に突撃することなく、与えられた穏やかな場で微睡む。

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