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06.最強と言われる理由 01
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シアは、ドーラと2人夜の街を歩く。
英知の塔で知った知識と比較すれば、赤ん坊のような街だけれど……。 それでも、ギルモア国内では最も栄えた街である。
ここが私の作り出した街。
そう思うと感慨深く、王様との話し合いによっては見納めになると考えれば、少しだけ切なく感じた。
人獣の中でもギルモアの民は夜を好み、深夜と呼ばれる時間であっても多くの者が街の中を行き来している。
「今日、どうだい?」
街を歩けば、次々とドーラに声がかかる。
ドーラは妹と比較されダメな奴とレッテルを張られたが、人獣の中では、かなり強いし、美人で……男性達の本能をくすぐりムラムラさせてしまうらしい。
ちなみに、視覚情報をカットし、力と獣の濃度で魅力をはかられた場合、私は赤ん坊レベルならしい……。 と、酒の席で言われた事がある。
もしかして、私がランディ様に避けられる理由はソレ?!
そんな事をモンモンと考えている間。 迷子にならないよう私の手を握っているドーラと言えば、誘ってくる幾人もの男性達に色気のあるハスキーな声で、お茶目に誘いを断っていた。
「だめよ、大切な人と一緒なの」
「そんな事を言わずにさぁ~」
これは食事や酒の誘いではなく、繁殖行為のお誘い。
王族に嫁ぐ女性以外は、性的には奔放な部族なのだ。
「私のいい人に勝てるなら、誘いを受けてあげていいわよ」
ドーラは、彼女の肩ほどの背丈しかない私を背後から抱きしめ、相手に見せつけながら満面の笑みを向ける。 大抵の人は「失礼しました」と言って慌てて逃げていった。
賢者の存在意義は文明の発展にあるため、攻撃魔法は得意ではないし、人獣は魔法を唱えるよりも早く動けるはずなのに……。
「なぜ、彼等は逃げていくのかしら? 人獣が賢者を恐れるなんて聞いたことがないわ」
失礼ねとでもいうように言えば、ドーラは歌うように言う。
「牙も無く、爪もない♪
その歩みも遅い賢者は怖るるに足らず♪
だけど、私の愛すべき姫賢者様は怖ろしい♪
大好きな姫様に嫌われたどうしましょう♪
みんなそう思っているのよ?
だから姫様は、この国の誰よりも強いの。
でも、鬱陶しいのは確かね」
そして突然にドーラは私を抱き上げ肩車をする。
視界が高く、見下ろす視界が面白い。
人獣は、背の高いものが多くていつも見降ろされているから、これは少し気分がいいかも。
「なんだか特別になった気分だわ」
「姫様は何時だって私の特別ですよ」
肩車をされているシアを見れば、人獣たちはギョッとした顔をする。 彼等の知るシアは長い金髪が美しい少女だったから。 今は旅から戻ってすぐということもあり、少年のような恰好をしている。 そして、人々が見惚れた美しい金色の髪が短くなっていた。
何があったのだろうか? ヒソヒソと話し合うが、ドーラと笑顔で話をしているシアを見れば「まぁ、いっか」となった。 彼等は余り考える事を得意としない。
「姫様! お帰り!」
一人が声をかければ、堰を切ったように人々は声をかけはじめる。
「もっと、王都に帰ってきなよ」
「姫様の教えてくれた料理に改良を加えてみたんだ」
「ごちそうするから、食べて行ってくれ」
「姫様、新しい服を色々作ったの見てってよ」
ドーラへの声掛けはなくなったが、今度は私が次々に声をかけられる。 鬱陶しくはないが、不思議だと思った。
「髪を切ったのに、私だと分かるのね」
ポツリと言えば、ドーラは笑う。
「私達は鼻もいいのよ」
「食べ物の匂いが沢山するし、3年ぶりよ?」
「ギルモアの民は、誰も姫様を忘れたりなんてしないわ。 長い歴史の中で獣に落ちきってしまった私達を、人に引き上げてくれたのは姫様なんですもの」
「でも、急に生活が変わって……イヤではなかった?」
「野暮なことを聞かなくても、街の人を見ればわかるでしょう? 森の中で鬱蒼と次の戦いを待っていただけの私達が、生活を楽しんでいるんだから。 食事を楽しみ、オシャレを楽しみ、時には音楽だって楽しむのよ。 素敵じゃない? 大好きよ姫様」
踊るように歌うようにドーラが言えば、周囲のものが歌いだす。 食事と酒と音楽、それは彼等と友好を築くためにシアが最初にとった手段だった。
英知の塔で知った知識と比較すれば、赤ん坊のような街だけれど……。 それでも、ギルモア国内では最も栄えた街である。
ここが私の作り出した街。
そう思うと感慨深く、王様との話し合いによっては見納めになると考えれば、少しだけ切なく感じた。
人獣の中でもギルモアの民は夜を好み、深夜と呼ばれる時間であっても多くの者が街の中を行き来している。
「今日、どうだい?」
街を歩けば、次々とドーラに声がかかる。
ドーラは妹と比較されダメな奴とレッテルを張られたが、人獣の中では、かなり強いし、美人で……男性達の本能をくすぐりムラムラさせてしまうらしい。
ちなみに、視覚情報をカットし、力と獣の濃度で魅力をはかられた場合、私は赤ん坊レベルならしい……。 と、酒の席で言われた事がある。
もしかして、私がランディ様に避けられる理由はソレ?!
そんな事をモンモンと考えている間。 迷子にならないよう私の手を握っているドーラと言えば、誘ってくる幾人もの男性達に色気のあるハスキーな声で、お茶目に誘いを断っていた。
「だめよ、大切な人と一緒なの」
「そんな事を言わずにさぁ~」
これは食事や酒の誘いではなく、繁殖行為のお誘い。
王族に嫁ぐ女性以外は、性的には奔放な部族なのだ。
「私のいい人に勝てるなら、誘いを受けてあげていいわよ」
ドーラは、彼女の肩ほどの背丈しかない私を背後から抱きしめ、相手に見せつけながら満面の笑みを向ける。 大抵の人は「失礼しました」と言って慌てて逃げていった。
賢者の存在意義は文明の発展にあるため、攻撃魔法は得意ではないし、人獣は魔法を唱えるよりも早く動けるはずなのに……。
「なぜ、彼等は逃げていくのかしら? 人獣が賢者を恐れるなんて聞いたことがないわ」
失礼ねとでもいうように言えば、ドーラは歌うように言う。
「牙も無く、爪もない♪
その歩みも遅い賢者は怖るるに足らず♪
だけど、私の愛すべき姫賢者様は怖ろしい♪
大好きな姫様に嫌われたどうしましょう♪
みんなそう思っているのよ?
だから姫様は、この国の誰よりも強いの。
でも、鬱陶しいのは確かね」
そして突然にドーラは私を抱き上げ肩車をする。
視界が高く、見下ろす視界が面白い。
人獣は、背の高いものが多くていつも見降ろされているから、これは少し気分がいいかも。
「なんだか特別になった気分だわ」
「姫様は何時だって私の特別ですよ」
肩車をされているシアを見れば、人獣たちはギョッとした顔をする。 彼等の知るシアは長い金髪が美しい少女だったから。 今は旅から戻ってすぐということもあり、少年のような恰好をしている。 そして、人々が見惚れた美しい金色の髪が短くなっていた。
何があったのだろうか? ヒソヒソと話し合うが、ドーラと笑顔で話をしているシアを見れば「まぁ、いっか」となった。 彼等は余り考える事を得意としない。
「姫様! お帰り!」
一人が声をかければ、堰を切ったように人々は声をかけはじめる。
「もっと、王都に帰ってきなよ」
「姫様の教えてくれた料理に改良を加えてみたんだ」
「ごちそうするから、食べて行ってくれ」
「姫様、新しい服を色々作ったの見てってよ」
ドーラへの声掛けはなくなったが、今度は私が次々に声をかけられる。 鬱陶しくはないが、不思議だと思った。
「髪を切ったのに、私だと分かるのね」
ポツリと言えば、ドーラは笑う。
「私達は鼻もいいのよ」
「食べ物の匂いが沢山するし、3年ぶりよ?」
「ギルモアの民は、誰も姫様を忘れたりなんてしないわ。 長い歴史の中で獣に落ちきってしまった私達を、人に引き上げてくれたのは姫様なんですもの」
「でも、急に生活が変わって……イヤではなかった?」
「野暮なことを聞かなくても、街の人を見ればわかるでしょう? 森の中で鬱蒼と次の戦いを待っていただけの私達が、生活を楽しんでいるんだから。 食事を楽しみ、オシャレを楽しみ、時には音楽だって楽しむのよ。 素敵じゃない? 大好きよ姫様」
踊るように歌うようにドーラが言えば、周囲のものが歌いだす。 食事と酒と音楽、それは彼等と友好を築くためにシアが最初にとった手段だった。
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