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番外 二人の家 2
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両親が引き取った子供の名前は『響』と書き『リズ』と読ませる難読さだった。
響=音?→→リズム?
このような連想でふられたのだろうか。正解はわからない。
一発で読めないのは将来的に面倒だろうと、四人で相談の上『ひびき』と呼ぶ事にして、届や書類のフリガナにもそのように記入する事に決めた。
赤ん坊は自分の呼び名を認識したのか、よく反応して笑ってくれるようになった。
今までされていなかった健診に連れていき、滞っていたワクチン接種もさせて一安心といった所。
赤ちゃんというのは髪が薄いものだと思い込んでいたが、響の場合は細いふわふわが逆立って伸びていた。
生んだ母親はそれをブサイクと言っていたらしいけれど、何度手で撫でつけても立ち上がってくるのはとても可愛い。
そんな愛らしい子だから、黒崎の両親は張りきっていた。特に詩音が。
子育てグッズを追加で購入し、改めて育児書を読んだ。しかしバテるのもその分早かった。
三郎は通勤だが、詩音は在宅勤務に切り替えた分、かかる負担が大きかったのもある。
犬の太郎とは空間をわけ事故が起こらないようにした分、太郎のケアまで必要になってしまった。
赤ん坊は昼夜問わずに泣く。太郎もストレスを溜める。そんな中で寝不足のまま慣れない子の世話。
家事はハウスキーパーに外注して育児に専念するし、二人で何とかなると思っていたのに、何ともならなかった。
ちょっとした喧嘩も増えて、家庭内の空気はどんより重くなった。
思えば二人はこんな小さな子供の世話は初めてだった。
祐也を引き取った時、彼は小学生。自分で自分の世話もできたし、気持ちは言葉にして伝えてくれた。赤ん坊の世話とは比較にならないほど楽だった。
このままでは潰れてしまうと慌ててベビーシッターも依頼したのだが、自然と祐也と理人の出番は増え、週末は泊まり込んでフォローするようになった。
子育ての手が増えた事で、響はのびのび、すくすくと育った。
太郎は抜け毛が減り、詩音の目の下の隈もなくなった。
頼りになる息子二人に甘えた三郎と詩音は、気晴らしと言って週末二人と一匹で遊びに出掛ける事が増えた。
そうなると、祐也、理人、響の三人で過ごす時間が増える。
まん丸な顔をした響は理人が抱くとピタリと泣き止む。眠い時ほど理人の胸の中で泣きシャツをがっちり掴んで離さない。
ぷにぷにのほっぺ、小さな指先にある粒のような爪。
こんなに尊い存在があるのかと泣きそうになる。
どうしてこの子が疎まれなきゃいけないのか。
理人の気持ちは、響を自分達の子供として迎える方へ傾いていった。
この子を二人で育てたい。
理人の言葉に祐也の行動は早く、ずっと理人の決心を待っていたかのように見えた。
響を迎える決心がついたと三郎と詩音に伝えて、本格的に響を迎える準備をした。
その準備の一つが二人の結婚だった。
最近になって制度が整った同性婚だったが理人は慎重だった。
今さら慌てる事もないと言う理人の気持ちを裕也は尊重し、籍を入れる話は保留のままでここまできていたのだ。
だから響の登場は理人を動かす良いきっかけになった。
「改めて。理人、俺と結婚してくれますか?」
「もちろんです。返事が遅くなってごめんなさい。僕と結婚してください」
こうして理人は黒崎理人になった。
響=音?→→リズム?
このような連想でふられたのだろうか。正解はわからない。
一発で読めないのは将来的に面倒だろうと、四人で相談の上『ひびき』と呼ぶ事にして、届や書類のフリガナにもそのように記入する事に決めた。
赤ん坊は自分の呼び名を認識したのか、よく反応して笑ってくれるようになった。
今までされていなかった健診に連れていき、滞っていたワクチン接種もさせて一安心といった所。
赤ちゃんというのは髪が薄いものだと思い込んでいたが、響の場合は細いふわふわが逆立って伸びていた。
生んだ母親はそれをブサイクと言っていたらしいけれど、何度手で撫でつけても立ち上がってくるのはとても可愛い。
そんな愛らしい子だから、黒崎の両親は張りきっていた。特に詩音が。
子育てグッズを追加で購入し、改めて育児書を読んだ。しかしバテるのもその分早かった。
三郎は通勤だが、詩音は在宅勤務に切り替えた分、かかる負担が大きかったのもある。
犬の太郎とは空間をわけ事故が起こらないようにした分、太郎のケアまで必要になってしまった。
赤ん坊は昼夜問わずに泣く。太郎もストレスを溜める。そんな中で寝不足のまま慣れない子の世話。
家事はハウスキーパーに外注して育児に専念するし、二人で何とかなると思っていたのに、何ともならなかった。
ちょっとした喧嘩も増えて、家庭内の空気はどんより重くなった。
思えば二人はこんな小さな子供の世話は初めてだった。
祐也を引き取った時、彼は小学生。自分で自分の世話もできたし、気持ちは言葉にして伝えてくれた。赤ん坊の世話とは比較にならないほど楽だった。
このままでは潰れてしまうと慌ててベビーシッターも依頼したのだが、自然と祐也と理人の出番は増え、週末は泊まり込んでフォローするようになった。
子育ての手が増えた事で、響はのびのび、すくすくと育った。
太郎は抜け毛が減り、詩音の目の下の隈もなくなった。
頼りになる息子二人に甘えた三郎と詩音は、気晴らしと言って週末二人と一匹で遊びに出掛ける事が増えた。
そうなると、祐也、理人、響の三人で過ごす時間が増える。
まん丸な顔をした響は理人が抱くとピタリと泣き止む。眠い時ほど理人の胸の中で泣きシャツをがっちり掴んで離さない。
ぷにぷにのほっぺ、小さな指先にある粒のような爪。
こんなに尊い存在があるのかと泣きそうになる。
どうしてこの子が疎まれなきゃいけないのか。
理人の気持ちは、響を自分達の子供として迎える方へ傾いていった。
この子を二人で育てたい。
理人の言葉に祐也の行動は早く、ずっと理人の決心を待っていたかのように見えた。
響を迎える決心がついたと三郎と詩音に伝えて、本格的に響を迎える準備をした。
その準備の一つが二人の結婚だった。
最近になって制度が整った同性婚だったが理人は慎重だった。
今さら慌てる事もないと言う理人の気持ちを裕也は尊重し、籍を入れる話は保留のままでここまできていたのだ。
だから響の登場は理人を動かす良いきっかけになった。
「改めて。理人、俺と結婚してくれますか?」
「もちろんです。返事が遅くなってごめんなさい。僕と結婚してください」
こうして理人は黒崎理人になった。
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