『重荷を降ろして差し上げます 〜“騎士気取り”の婚約者は、病弱な親友のもとへどうぞ〜』

『重荷を降ろして差し上げます

〜“騎士気取り”の婚約者は、病弱な親友のもとへどうぞ〜』

静かな朝、
名もなき終わりが
指先に触れた。

あなたは言った、
「守るべき者がいる」と。
その言葉は美しく、
どこまでも正しく響いたけれど、

その影で、
私は何度も置き去りにされた。

気づけば私は、
守られることも、選ばれることもないまま、
ただ“理解ある誰か”を
演じていたのです。

ねえ、ヴィンセント。

あなたが背負っていたものは
本当に“誰か”だったのでしょうか。

それとも——
優しい自分でありたいという、
あなた自身の幻想?

あなたは騎士を名乗り、
彼女は弱さを纏い、
私は静かに席を外される。

それがいつからか、
当たり前の構図になっていた。

けれど、もう終わりです。

怒りはありません。
悲しみも、もう十分。

ただひとつ、
はっきりと分かったのです。

あなたが背負っているのは
誇りではなく、
私が与えていた場所だということ。

だから——

その重荷、
降ろして差し上げます。

あなたはどうぞ、
望んだ通りに。

その手を取り、
そのそばに在り、
その役を演じ続けてください。

私は、ここで降ります。

誰かに選ばれるためではなく、
誰かを支えるためでもなく、

ただ、
自分の足で歩くために。

軽やかに。
何も背負わず。

振り返ることなく。

光は、もう
こちらにありますから。

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