妹に婚約者を取られるなんてよくある話

龍の御寮さん

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護衛 2

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 ノエルは目の前の言葉を何も発さない男を見た。
 髪の毛がぼさぼさで、前髪が長くて目元はよくわからない。ただ見える口元は優しそうな雰囲気をたたえて、悪い感じはない。
 ただもう少し身だしなみを整えたらいいのにとはちょっと思う。


「彼がどうのこうのではなく……今回の依頼は」取り下げます、と続けようとした。
「初めまして、ノエル殿。今、ラクロワへ抜ける道は危険なんです。女性の護衛ではよほど戦闘になれていないとあなたを守ることが出来ない」
 するとそれまで黙っていた男が柔らかい調子でノエルの言葉を遮った。
「そうなんですか?」
「ええ、唯一実力のあるその彼女が無理な以上、他の女性の護衛はあきらめた方がいいと思います。未熟な女性護衛だと私がその女性まで守る事となり、かえってあなたを守り切れないかもしれないので私だけの方が安心です」
 そう男が言い切り、ギルド長も頷く。
「そうなんです、以前はそんなことなかったんですがここのところ盗賊が頻回に出没するようで。荷がある上に女性連れだとなおさら襲われるとも聞きます。だから彼に依頼をしてもらえませんか? ノエル様には色々世話になっておりますし、最良の人物をお付けしたい」

 そこまで言われれば仕方がない。
 ギルド長との付き合いは長く、信用をしている。彼がそういうのであれば大丈夫なのだろう。
「ギルド長……ありがとうございます。我儘なことを言いました、是非よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします。私の名はアランと言います」
「アラン様、改めてよろしくお願いします」
「敬称などいりませんよ。アランで結構です。敬語もいりません」
「では僕もノエル……いえ、エルと呼んでください。それからギルド長、僕が旅に出た後に誰から問い合わせがあっても護衛を頼んでいた事や行先は誰にも言わないで欲しい」
 ギルド長は少し眉をあげる。
「ノエル様が事業を整理しているという噂は聞いていましたが……もしかして国を出るつもりですか?」
「ええ。もう戻らないと思います」
「そいつは……ずいぶんと寂しくなります。まさかそんな事だとは……商売をしにいくとばかり思っていましたよ。それはご家族にも内緒なのですか?」
「一番内緒にしたい相手です。お願いします」
「わかりました。ノエル様には恩がありますから、誰にも漏らしません」
 ノエルが取り扱う事業の中で医薬関係の物があったが、ギルドに薬草などを安く卸していたのだ。
「アランも、旅が終わっても口外しないと約束してくれる?」
「もちろんです、お約束します」
「アラン、これから旅の相棒なのだから僕にも敬語はいらないから。よろしくね」
 そう言って二人は握手を交わした。

 そして、ギルドを後にするときノエルは一通の手紙をギルド長へ預けた。
 明日、自分が旅立ってから届けて欲しいとトマス宛の手紙を託したのだった。

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