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第四章:全国との戦い

第52話:組み合わせ抽選

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 綾乃の住む、杉並区内の某マンション。
 テーブルにおいたノートパソコンを眺めるのは綾乃と、そして親友である花澤麗美である。
 理由は一つ。本日いよいよ行われる、全国大会の組み合わせ抽選会のオンライン中継を見るためだ。
 団体戦の1回戦目は32試合。ベスト16に進出できるのは1回戦のトータル1位と2位なので、参加128校のウチ64校が1回戦で消える事になる。

「これよ、これ! これが見たくて昨夜から寝付けなかったのよ!」

 綾乃は鼻息も荒く、パソコンの画面を麗美に見せる。
 そこにはトーナメント表が表示されており、西東京地区代表である立川南高校の名が読み上げられた。
 Aブロックに入ったのである。

「ハナちゃん! いよいよウチだよ!」

 興奮気味の綾乃に、麗美はしれっと答えた。

「珍しいね。綾乃がそこまで興奮するなんて」

「そりゃあね。だって全国の猛者どもを蹴散らして、ハナちゃんに決勝で勝ってこの学校で天下を……あいたっ」

 興奮してお喋りが過ぎる綾乃に、麗美はデコピンを放った。

「あんまり調子に乗らないの。前もそれで負けてるでしょ」

 痛いところを突かれた綾乃は、額をさすりつつ口を尖らせた。

「……いいじゃん別にぃ~……私だってそろそろ18歳なんだから……」

「はいはい……あっと、ウチだ」

 麗美の学校である、久我崎高校の名が読み上げられる。
 やはり少々緊張しているのか、麗美も綾乃の入れてくれた紅茶を一気に飲み干した。
 久我崎はBブロックだ。トーナメント表を目で追う綾乃。

「このままいくと………ああっ! ハナちゃんと当たるのは準決勝かぁ~………」

「あらあらカワイソウ。ま、3位決定戦頑張ってね」

 まるで決勝に行くのは自分達だと言わんばかりの麗美の態度。しかし綾乃も負けてない。

「それはこっちのセリフだよ。ベスト4に来る前に脱落、なんてならないようにね?強い高校、全部Bブロック隣の山に集中してるじゃん」

 麗美がフッと、余裕のある笑みを浮かべた。その笑みは、どこか悪役っぽい。

「勝ち上がればどっちにしろ強いとことあたるでしょ。私たちの心配する必要は……あら、この学校って……」

 画面に表示された学校名に、麗美は驚きの声を上げた。綾乃も目を丸くしている。

「どこ?」

 しかし麗美が指差したのはトーナメント表ではなく、トーナメント表の前に表示される全国出場高校の戦績一覧である。それを見た瞬間、綾乃は思わず声を挙げた。

「うっそぉ! えっ? うそでしょ? なんで!?」

「……バケモノぶりに磨きがかかっているわね」

 麗美は、その学校名を口にする。

陵南渕りょうなんぶち……!また来たのね………」

 昨年の団体戦で、久我崎を破った神奈川県東地区代表・陵南渕高校である。
 その時も準優勝と素晴らしい戦績を誇っていたが、部員数が50人を越える事からも分かる通り、とても公立高校とは思えない大型チームだ。
 しかも全国出場校としては珍しく男女とも部員が半々づつ。高校選手権が開催されてから通常は

 ・男子部員が圧倒的に多い
 ・女子部員が圧倒的に多い

 のどちらかである。
 これは参加する大半が私立高校で、男子校か女子高な事も関係しているためだ。

「陵南渕高校………ウチと同じで、今年は優勝候補の一つに名前が挙がってるね」

 麗美の言葉に綾乃も頷く。しかしそこでふと、一つの疑問が浮かびあがる。

「……でもさ? 前回、ハナちゃんも戦った事あるじゃない」

「そうね……確かに手強いけど……」

 前回戦った時の事を、麗美は思い出しているようだった。
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