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第5章 遂に始動!

20話 アプリコット①

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 ケンジが肥料を作った半年前に戻る。

 ケンジに人員派遣の事を断られアプリコットは重い足を引きずりギルドに帰るのだった。すると先にギルドに帰っていってしまった部下が二人がアプリコットの姿をみて駆け寄ってきたのだった。

「あなたたち何故先に帰ってしまうのですか?」

「あの・・・すいませんでした・・・それよりどうなりましたか?」

「ええ・・・想像している通り失敗に終わりました・・・」

「アプリコット様!わたし達これからどうなるのですか?」

 と、そこに新しく就任したギルドマスターが現れるのだった。

「アプリコット、どうだった?」

「ここではなんなんですから奥の部屋で説明いたします・・・」

「「アプリコット様・・・」」

「あなた達は業務に戻っていいから行きなさい。」

「「は、はい・・・」」

 そういって、ギルドマスターとアプリコットは奥の部屋に行ってしまったのだった。

「で、どうだったのだ?」

「は、はい・・・簡潔に言うとケンジ様への人員派遣には失敗におわりました・・・」

「な・・・なぜだ?ケンジ殿達は人員に困っていたはずじゃ・・・」

「それが、もう自分達で人員を確保しており今12人体制で製作をしており、次の発売日には万単位の便器が売り出されると言う事です。」

「なっ・・・そんな早く即戦力で働ける人員を確保したというのか?」

「そのようです・・・」

「で、君はそれを聞き何もせずに帰って来たのか?」

「いえ・・・そんなことはしていませんが今ギルドで確保している人員の派遣をお願いしたのですが、それも断られ・・・」

「お前は何をやっているのだ!この製品の人員はケンジ殿の所じゃないと・・・」

「はい・・・わかっていますが・・・ケンジ様はギルドからの人員はいらないと、頑なに言われてどうしようもなかったのです・・・」

「その派遣人員は安くても構わないと言ったのか?」

「そのことなのですが。」

「なにかあったのか?」

「ギルドの思惑というか筋書きが全部ケンジ様に情報が筒抜けになっていて、報酬を新種の魔石で払ってもらう事もばれていて・・・」

「な、なんだと・・・ではギルドの誰かが内通者だというのか?」

「いえ・・・それは無いかと思います・・・この計画は本当に上部の少数の幹部しか知らない事ですし・・・」

「だが、情報が全部筒抜けになっているのだろ?」

「それが、ケンジ様はギルドが自分の商品を目を付けた時、つまり公衆便所を先に作ってほしいと言った時からこうゆう情況になるのを予想し今回の事もギルドの行動は子供より分かりやすいとまで・・・」

 それを聞いたギルドマスターは何も言えなくて固まってしまうのである。

「それじゃあ、お前が率先して進めていたこのプロジェクトはどうするつもりなんだ?もうギルドの予算をだいぶん注ぎ込んでいるんだぞ?何か次の計画を立てないと・・・今期の売り上げが・・・」

「そのことでケンジ様から伝言が・・・」

「ケンジ殿から伝言?いったい何をいわれたのだ?」

 アプリコットは暗く沈みなかなかケンジからの伝言を言えずにいたのだった。





「アプリコット?何を黙っている。黙っていたらわからないじゃないか。」

 アプリコットはようやく重い口をあけしゃべりだすのだった。

「ケンジ様はこの新種の魔石を神鋼魔石を呼ばれていてこの魔石はギルドには手の余るものだ・・・」

「ああ・・・ギルドだけじゃない誰も採掘できなかったからケンジ殿に協力を仰ごうとしたのだからな。」

「はい・・・誰も掘れなかった原因はこの神鋼魔石は超級ダンジョンからしか採掘出来ない物だと教えてもらいました。」

「な、なにぃ!超級だと!」

「そうです・・・生産者が超級はおろか中級でさえ潜ることができないのにギルドが他の生産者に依頼を出し採掘してもらおうとしたら生産者を死なせるだけだから絶対にやめろと・・・」

「そしたらケンジ殿はこの魔石を超級に行って採掘しているってことなのか?」

「はい・・・」

「そんなバカな話があるのか?冒険者でさえ上級の50階層が精一杯な事なのに生産者が超級だと・・・」

「それがケンジ様は一年ほど前に上級を攻略してそれからは超級を起点に活動をしていたそうです。」

「上級を攻略だと・・・そんな話聞いたことないぞ!」

「ケンジ様は目立つのが嫌な性格をしていらっしゃるので攻略したことを報告していなかったらしいです・・・」

「そんなバカな・・・報告したらギルドから相当いい名誉や役職が・・・いや・・・国から表彰されるようなことだぞ。」

「ケンジ様にそれを言ったらそんなめんどくさいものいらないと一蹴されてしまいました・・・」

 ギルドマスターはケンジと言う人物が何を考えているのか本当にわからなくなってしまったのだった。

「それで話が脱線してしまったのですが、ケンジ様が言うにはこの神鋼魔石は自分にしか扱えないものだからギルドはこの製品から手を引けという事だそうです。」

「なっ・・・それではギルドの計画している。」

「はい・・・ケンジ様はギルドが計画しているこの便器を他の町で売る計画もわかっていて、俺の功績を横取りするなと・・・」

「なんだと・・・」

「ケンジ様から最後に忠告された言葉は今手を引いたらギルドの損失は取り戻せるからあきらめろ!と言うことです。」




「そんな事を・・・で、お前はそれを聞いてどうおもったのだ。」

「今、手を引くとこれまでの損失が・・・そしてギルド職員に人員派遣の為便器を作る為に習得したスキルが無駄になるかと・・・」

 ギルドマスターは目をつむり考え込むのである。




「あの・・・ギルドマスター・・・」

「ワシの考えを言ってもいいか?」

「はい・・・」

「お前の話を聞く限りケンジ殿はギルドに不信感を持ってしまっているように思え、これ以上の協力を求めたとしても埒が明かないように思えるがどうだ?」

「はい・・・ですが!ケンジ様はギルドの態度次第・・・つまり対等の立場で考えてくれれば協力を考えてもいいと・・・ですがこれまでの事があるのでギルドが下手に出て時間を掛ければもしかしたら・・・」

「お前はギルドが下の立場になれと言うのか?生産者達があってギルドは運営できていると思えと?」

「そのようなことは言っていません!ただ、便器のノウハウを手に入れ、ギルドで生産可能になれば、そんなギルドのプライドより多くの利権が手に入るかと・・・」

「確かにお前の言う事はわかるがそれはいつの事になるのだ?それまでずっとギルドは生産者の言いなりになれというのか?」

「そこはできるだけ早い段階で信用を得て・・・」

「それまでに他の生産者から苦情が出た場合はどうするのだ?ケンジ殿だけ色々な事を贔屓をして自分らには何もないのかと?少なくともケンジ殿より上のランクの者は納得いかないと思うぞ。それにワシもそんなことはあり得ない事でそんな判例をつくったらギルド自体なりたたなくなるとおもう。」

「それでは・・・」

「ああ!ギルドは常にギルドがあって生産者や冒険者は生活が出来るスタンスを保たなければならないと思わせるのが一番いいのだ!」

「でしたら!」

「お前はもういい!お前のプロジェクトは失敗に終わりギルドはこの件から手を引くことにする!」

「そんな・・・待ってください!わたしのプロジェクトはまだ失敗していません!お願いします!もう一度・・・もう一度だけチャンスを!」

「くどい!アプリコットお前の事は中央に報告するからそれまで通常の受付業務を命じる!」

「そ、そんな・・・」





 こうしてケンジの言った事が現実になりギルドマスターは今回の件を全てアプリコットに責任をかぶせてしまったのだった。
 そして今回のギルドの損失額2億ドゴンになったという。アプリコットはその借金を全て被ることになったらしく返済期限は1か月という無茶なものであった。

 アプリコットは中央で働いていた経歴のあるエリート職員だけあって貯金は1億5千万はありその全てを借金にあてたのである。この貯金は、ギルド職員を定年退職した時に買う家の値段と老後の生活の為、必死で貯めたお金であり、そのお金は全てふきとんでしまったのだった。
 あと1か月で5千万ドゴンだがとてもじゃないが用意できる金額ではなかったのである。

 そしてアプリコットは人生を諦め、借金奴隷になるしかなかったのである。アプリコットは返済期限ぎりぎりまで受付嬢として働くしかなかったのだ。




 アプリコットが奴隷として売られる2日前にギルドにケンジがシスティナ、マードック、ユエティーとウランの4人をを引き連れて現れるのだった。

 そこには暗く沈んだアプリコットが受付のカウンターに座っていたがその雰囲気を察してか職員はもちろんの事生産者も近寄ろうとしていなかった。とてもじゃないが声を掛けられる雰囲気ではないのである。

「アプリコットさん・・・ちょっといいですか?」

 ケンジがアプリコットに声をかけるのを見て周りにいた人たちがヒソヒソと腫物を触る様に内緒話のようにしたのだった。

「あれって1年前までギルドで働いていたやつじゃないか?」
「ああ・・・そうだウランって受付嬢と副ギルドマスターだった女だよ・・・」
「今更ギルドに何しに来たんだ?」
「どちらにしてもあいつらに係わったらアプリコットのようになるから近寄らないほうがいい・・・」




「あ・・・ケンジ様・・・おひさしぶりです・・・何か用ですか?」

「あのですね・・・良い話かどうかわからないが話があります。今良いですか?」

「わたしの事はもう放って置いて下さい・・・あと二日もすればもうあなたの前には姿は現しません・・・」

 するとユエティーが話し始めるのだった。

「あのアプリコットさん・・・こう言っては何なんですがご主人様のいう事を聞いた方がいいかと・・・後悔することになりますよ。」

「こら!ユエティーそんな脅し文句みたいに言うな!」

「アプリコットさんいいかな?」

「もうわたしのことは放って置いて!」

「そうか・・・わかったよ。あと二日、心変わりしたら話だけでも聞きに来てくれ!いつでも対応するから。」

 ケンジ達はそれ以上何も言わず帰っていくのだった。

「ご主人様!このまま帰ってよろしいのですか?」

「ああ、かまわないよ。俺もギルドから呼び出しがあっても放って置いたからな、自分の気が向いたら行動起こすだろ。」

「ですが・・・」

「ユエティー!俺が気が向かなきゃ動かないのに他人が同じことしたら怒るのは違うと思うぞ。それに多分大丈夫だ。」

 ケンジはそう言ってみんなを連れて家に帰るのだった


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