ゲーマーだけど乙女ゲームは未プレイ! ~攻略対象の甘さについていけない?!~

翠月 瑠々奈

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第一章:ラファル・ウェントゥス

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 ベッドから落ちて目が覚めたら冷たいフローリングの上だった。なんてことは良くあった。

 だからこの時も、寒さを感じながら頭を覚醒させた私はまたやっちゃったのか…ぐらいにしか思わなかったの。

 瞳を開けるまではね。

 ぼんやりとした視界に映るのは古びた天井……じゃない。高さが驚くほどある西洋式の建物。探していた天井は遥か遠く、先の方にある。

「…っ!?」

 慌てて飛び起きる。一瞬、美術館かどこかで寝てしまったのかと思ったから。飲み会に行った記憶もお酒を飲んだ記憶も皆無だけど、酔って迷い込んだって可能性もなきにしもあらず、じゃない?

「……んん」

 けどすぐに思い直した。昨今の警備体制をみれば、どこもかしこもセキュリティシステムが強固のはず。一般人が入場券なしで、そうやすやすと入れまい。

 ……じゃあ、ここはどこだろう?

 再び天井を見上げる。改めてよく見てみれば軽く十数メートルは超えているようだ。しかも、大きな窓にはステンドグラスがはめ込まれ一様に月がモチーフとされていた。

 それはまるでヨーロッパ圏にあるお城みたい。近隣にこんな施設はない。

 当然、壁はずっと離れたところにあって家具も見当たらない。手を伸ばせばなんでも取れるゴチャゴチャした私の部屋とは雲泥の差。

 ふと、手元を見る。大理石のような床は冷たく硬い。我が家のフローリングもひんやりとしてるけど、それとはまた違った冷たさだ。深みがあるというかなんというか……って評論家みたいなことまで考える。

 しかも何故か、私の真下には何かが掘られていた。溝の深さは一センチほどもない。ちょっと指を入れて辿ってみたら、ずいぶんと長かった。模様のようにも思える。

「?」

 気になって、その場をどいてみる。上から見ると模様は円を描いていた。二、三メートルはあるだろうか。その大きな円が二重になり、隙間にはびっしりと文字とみたいなものが削られている。

「これはもしや……」

 魔法陣とやらだろうか?

 リアルで見たのは初めてだ。てっきり石灰か何かで書いているものだと思ってた。

 となると、ここは異世界?

 昨夜はたしか会社から真っ直ぐ家に帰って、そのままお風呂に入ったはず。徐々に覚醒していく頭で思い出す。そしてその後ベッドインして、ゲームしたまま寝落ちした。海外に来た覚えも行く暇すらない。

 異世界なんて有り得ない話だけど…今の状況からすると、一番しっくりくる気がする。

 そう思ったら、自然と笑みが浮かんでしまった。

「……ふふっ」

 何を隠そう、私は三度の飯よりゲームが好きなのだ。

 もしこれが本当にゲームの世界なら、それほど幸せなことはない。

 とはいえ、序盤でのゲームオーバーは避けたい。せっかく来たのだから。

 一度状況を整理しようと、腕を組んで考える。

 まず真下にある魔法陣。これを使ったとしたら最近、巷で良く聞く転生とか召喚の類いだろう。私の場合、死んだ記憶がないから召喚かもしれない。

 それに、だいたい異世界に行く時には直前にやってたゲームが関係すると聞いた気がする。

 直前にやっていたゲーム……それは『最期の薊ラスト・アル・カルチュ

 主人公が仲間を募って、世界の脅威に立ち向かうというコッテコテのRPG。

 周りを見渡すと、最初の街にあるお城に似てなくもないような……ないような。

 まあ、内装が変わるなんて良くあること。

 だとしたら私は勇者だ。

 いや、ちょっと待て。

 あのゲームの主人公は男だ。ストーリーや登場人物がそのまま反映されてるなら残念ながら私は当てはまらない。そうなるとパーティーの一人かもしれない。なら賢者が近い? まあ…百歩譲って魔法使いまでなら許す。それ以外は許さん。

 そしたらきっと……と、考えていたところで遠くでカツンカツンと近づいてくる足音が響き始める。

 誰かが来たみたいだ。
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