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第三幕*赤く光る狂気と愛を求めた半魔
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完全に我を忘れていた。
か細い声に名前を呼ばれるまで、理性というものを全て手放していた。
触手の持つ本能のままに、エランを犯した。
喉を、後孔を思うままに蹂躙した。
犯して、侵食して―――壊してやろうとさえ思っていた。
だけど、名前を呼ばれて理性を連れ戻された。ほんの少しだけ残っていた理性を、無理やり引き出されたみたいだった。
理性は取り戻したが、裏切られたという怒りが消えたわけではない。
ルチアにはこの怒りを抑える方法がわからなかった。
エランから感じたあの男の臭い。
あの時……食堂を訪れ、エランから漂うその残り香に気づいた瞬間、目の前が真っ赤になった。
そして気が付けば、エランの首を己の触手で締め上げていた。
そのまま殺してしまっても構わないと思った―――それほどまでに、自分以外の臭いを纏った獲物というものは、不快で堪らなかった。
あの時、イロナが止めに入っていなければ、確実に殺してしまっていただろう。
気を失っている間に、あの男との記憶を見ようとしたが、それは失敗に終わった。
エランに抵抗している様子はなかったが、どれだけ深くまで触手を伸ばしても、その記憶を見つけることはできなかった。
あの男が何か術を施しているのかもしれない。
だが、この臭いだけで明らかだ。こんな臭いをつけておいて、無関係とは思えない。
感情のままにエランを殺せなかったことに、更に苛立ちがつのった。
だからこそ、今度は壊れるまで犯しつくしてやろうと考えた。
服をすべて剥ぎ取り、触手で拘束した。
敢えて卑猥な格好をさせたのは、エランの絶望する顔が見たかったからだ。
あの顔が歪むところを見たかったからだ。
ルチアにとってエランは特別な存在だった。
彼に対して自分が抱く感情を何と呼称すべきかまではわからなかったが、間違いなくエランはルチアの感情を揺れ動かす存在だった。
実際、その声に名前を呼ばれるだけで、こうやって動きを止めてしまう自分がいる。
完全に理性を手放していたのに。我を忘れてエランを犯していたはずなのに。
まさか、あんな弱々しい声にすら反応するとは思わなかった。
なぜ直前に喉の触手を抜いてしまったのだろう。自分がしたことなのに、まるでわからない。
完全に脱力したエランを触手の拘束から解放した。
エランに対する怒りは継続していたが、このまま行為を続けられる気は起きなかった。腕に抱いて、エランを天蓋付きの自分のベッドまで運ぶ。
そこにうつ伏せに横たわらせて、自分もその隣に腰を下ろした。
その間もエランは身じろぎ一つしない。随分と弱っているようだった。顔色も悪い。
後ろの孔からは今も血が流れていた。あれだけ無茶な責め方をしたのだからそこが傷ついているのは当然だ。
そこからは血の甘い香りが溢れていた。
甘い香りに誘われるように、ルチアはエランの後孔に顔を寄せた。そしてそのまま、そこに舌を這わせる。
血と触手の粘液で濡れた入り口を何度も念入り舐めたあと、そのまま孔に舌を差し込んだ。
先程まで無理やり抉じ開けられていたそこは、舌など簡単に招き入れてしまう。
痛みを感じたのか、エランがひくりと体を揺れたが、目を覚ましたわけではないようだった。
エランの中で舌を触手に変質させる。
そして、血の味のするエランの内壁を念入りに舐めた。ねっとりと一周舐めては、奥へ奥へと舌を……触手を差し込んでいく。
エランの後孔はルチアのその行為を健気に受け止めた。
何ともいえない、堪らない気持ちがした。
「……ん、ぁ……」
最奥を突くと、甘い声と共にエランが体を揺らす。だがやはり、意識を取り戻した様子はない。その目は閉じたままだ。
体を小さく震わせながら、半開きの唇から吐息のような甘い声を漏らす。
そんなエランの姿はとても煽情的だった。
血の味がなくなるまでそこを舐めたあと、エランの中から舌を抜き去った。
体を起こして一度エランから離れると、自分の体を見下ろした。
―――何か変だ。
最初は些細な違和感だった。
だが、それが少しずつ確実な変化になっていく。
ずくんずくん、と体が疼いていた。エランの血に酔って興奮したのだろうか。
特に下半身が疼いている。
触手が欲に騒めくことはあっても、この体がこんな風になるのは初めてだった。
ルチアの体は人間のものとよく似てはいるが、この体は人間とは違う。ただの器だ。
魔族が魔力から作り出す肉体とも違う。
そんな器が、まるで人間のような反応を示していた。
―――勃っている、のか?
他人のものは何度も見たことがあったが、自分のものがそうなっているのを見るのは初めてだった。
ルチアの器は男性体だ。陰茎も元々ついている。
だが、その陰茎がこうして機能したことは今まで一度もなかった。
ルチアの欲は、全て触手に起因していた。食欲も性欲も触手が満たされるだけでよかった。それで満足していた。
なのに、今になって器の方が反応するなんて。
ルチアは自分の陰茎が勃起しているのを、まるで他人事のように眺めていた。
だが、その感覚は他人事ではない。
ずくずくと脈動し、疼く感覚は間違いなく己の感覚だ。
吐き出す息が震えていた。呼吸が上がる。熱が高まる。
無意識にエランの方を見ていた。
先程まで自分が舐めていた後孔から、目が離せない。
―――挿れてみたい。
こうなってしまえば、欲が向かう先は一つしかない。
ルチアは纏っていた衣服を全て脱ぎ去ると、ベッドにうつ伏せに寝転がるエランの体に覆いかぶさった。
か細い声に名前を呼ばれるまで、理性というものを全て手放していた。
触手の持つ本能のままに、エランを犯した。
喉を、後孔を思うままに蹂躙した。
犯して、侵食して―――壊してやろうとさえ思っていた。
だけど、名前を呼ばれて理性を連れ戻された。ほんの少しだけ残っていた理性を、無理やり引き出されたみたいだった。
理性は取り戻したが、裏切られたという怒りが消えたわけではない。
ルチアにはこの怒りを抑える方法がわからなかった。
エランから感じたあの男の臭い。
あの時……食堂を訪れ、エランから漂うその残り香に気づいた瞬間、目の前が真っ赤になった。
そして気が付けば、エランの首を己の触手で締め上げていた。
そのまま殺してしまっても構わないと思った―――それほどまでに、自分以外の臭いを纏った獲物というものは、不快で堪らなかった。
あの時、イロナが止めに入っていなければ、確実に殺してしまっていただろう。
気を失っている間に、あの男との記憶を見ようとしたが、それは失敗に終わった。
エランに抵抗している様子はなかったが、どれだけ深くまで触手を伸ばしても、その記憶を見つけることはできなかった。
あの男が何か術を施しているのかもしれない。
だが、この臭いだけで明らかだ。こんな臭いをつけておいて、無関係とは思えない。
感情のままにエランを殺せなかったことに、更に苛立ちがつのった。
だからこそ、今度は壊れるまで犯しつくしてやろうと考えた。
服をすべて剥ぎ取り、触手で拘束した。
敢えて卑猥な格好をさせたのは、エランの絶望する顔が見たかったからだ。
あの顔が歪むところを見たかったからだ。
ルチアにとってエランは特別な存在だった。
彼に対して自分が抱く感情を何と呼称すべきかまではわからなかったが、間違いなくエランはルチアの感情を揺れ動かす存在だった。
実際、その声に名前を呼ばれるだけで、こうやって動きを止めてしまう自分がいる。
完全に理性を手放していたのに。我を忘れてエランを犯していたはずなのに。
まさか、あんな弱々しい声にすら反応するとは思わなかった。
なぜ直前に喉の触手を抜いてしまったのだろう。自分がしたことなのに、まるでわからない。
完全に脱力したエランを触手の拘束から解放した。
エランに対する怒りは継続していたが、このまま行為を続けられる気は起きなかった。腕に抱いて、エランを天蓋付きの自分のベッドまで運ぶ。
そこにうつ伏せに横たわらせて、自分もその隣に腰を下ろした。
その間もエランは身じろぎ一つしない。随分と弱っているようだった。顔色も悪い。
後ろの孔からは今も血が流れていた。あれだけ無茶な責め方をしたのだからそこが傷ついているのは当然だ。
そこからは血の甘い香りが溢れていた。
甘い香りに誘われるように、ルチアはエランの後孔に顔を寄せた。そしてそのまま、そこに舌を這わせる。
血と触手の粘液で濡れた入り口を何度も念入り舐めたあと、そのまま孔に舌を差し込んだ。
先程まで無理やり抉じ開けられていたそこは、舌など簡単に招き入れてしまう。
痛みを感じたのか、エランがひくりと体を揺れたが、目を覚ましたわけではないようだった。
エランの中で舌を触手に変質させる。
そして、血の味のするエランの内壁を念入りに舐めた。ねっとりと一周舐めては、奥へ奥へと舌を……触手を差し込んでいく。
エランの後孔はルチアのその行為を健気に受け止めた。
何ともいえない、堪らない気持ちがした。
「……ん、ぁ……」
最奥を突くと、甘い声と共にエランが体を揺らす。だがやはり、意識を取り戻した様子はない。その目は閉じたままだ。
体を小さく震わせながら、半開きの唇から吐息のような甘い声を漏らす。
そんなエランの姿はとても煽情的だった。
血の味がなくなるまでそこを舐めたあと、エランの中から舌を抜き去った。
体を起こして一度エランから離れると、自分の体を見下ろした。
―――何か変だ。
最初は些細な違和感だった。
だが、それが少しずつ確実な変化になっていく。
ずくんずくん、と体が疼いていた。エランの血に酔って興奮したのだろうか。
特に下半身が疼いている。
触手が欲に騒めくことはあっても、この体がこんな風になるのは初めてだった。
ルチアの体は人間のものとよく似てはいるが、この体は人間とは違う。ただの器だ。
魔族が魔力から作り出す肉体とも違う。
そんな器が、まるで人間のような反応を示していた。
―――勃っている、のか?
他人のものは何度も見たことがあったが、自分のものがそうなっているのを見るのは初めてだった。
ルチアの器は男性体だ。陰茎も元々ついている。
だが、その陰茎がこうして機能したことは今まで一度もなかった。
ルチアの欲は、全て触手に起因していた。食欲も性欲も触手が満たされるだけでよかった。それで満足していた。
なのに、今になって器の方が反応するなんて。
ルチアは自分の陰茎が勃起しているのを、まるで他人事のように眺めていた。
だが、その感覚は他人事ではない。
ずくずくと脈動し、疼く感覚は間違いなく己の感覚だ。
吐き出す息が震えていた。呼吸が上がる。熱が高まる。
無意識にエランの方を見ていた。
先程まで自分が舐めていた後孔から、目が離せない。
―――挿れてみたい。
こうなってしまえば、欲が向かう先は一つしかない。
ルチアは纏っていた衣服を全て脱ぎ去ると、ベッドにうつ伏せに寝転がるエランの体に覆いかぶさった。
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