学生服の悪魔

式波博也

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来訪者

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日比谷が死んだ翌日・・・・・・テレビのニュースは、日比谷が逮捕されたことと、既に殺害されたことで、もちきりだった。
 日向櫂が日比谷を捕まえたことは、伏せられているようだ。
 テレビもそのことは派手に報道しない。
 おそらく報道規制がかけられているのだろう。
 しかし、日比谷が正体不明の男に殺されたことは大きな波紋を呼んでいるようだった・・・・・
 テレビでレポーターがしゃべる。
「ご覧下さい。私は今、一連の事件を起こした容疑者、日比谷連の殺害された、八街警察署に来ています。容疑者が逮捕されたのは、一昨日。殺害される、二十四時間以内のことです」
「今回の事件は大きな波紋を呼んでいます。容疑者は特殊な能力者とのことです」
 レポーターはよくしゃべる。
 異能、ということは伏せられているが、特殊な能力、という報道はされているようだ。
 警察も全ては隠し切れなかったということか。


 日向櫂の家は1LDKのアパートの二階である。
 この家にはテレビが無い。
 櫂が見ているのは、雪ヶ谷探偵事務所の所長室のテレビだった。
 そこでコーヒーを飲みながら、日向櫂は物思いに耽る。 
 日向櫂と雪ヶ谷唯。そうして新人の池上はるか。
 この三人は所長室にあるテレビを見ていた。
 櫂にとって、もう日比谷と戦った時は遠い昔に思える。
 時間は経っていない。しかし歳月は流れたのだ。
 櫂はゆったりとコーヒーを飲む。
 今日は土曜日だ。
 しかし雪ヶ谷探偵事務所にとって今日は休日と言うわけにはいかないのだった。
「大体、情報は分かったわ、櫂。一つ、一つ、説明するわね。まず、日比谷は死んだ。でも死んだ彼には仲間が居た。それが、ロキという異能なの。そうしてこの二人を統べるガロアと言う人物。彼は、19世紀の服飾狂らしいの。これはそれほど重要な情報とはいえないけれど・・・・」
「ああ、ガロアの服に関する趣味は異常だ。そのことは俺も知っている。他には・・・・情報は
無いか?たとえばロキと言った奴に関しては・・・・・・」
「いいえ。無いわ。櫂、あんたが灰原ガロアと何があったかは知らない。あんたはしゃべりたがらないでしょう?。でも・・・・・時間が経ったら教えてもらうわ。情報収集は戦いの基本だしね」
「ああ、いつかは話そう。それと俺が分かっている範囲で言うと、ロキと言う奴は学生服の悪魔だ。このことの意味することは分かっているだろう?奴は俺についていろいろ知れる、その能力の開放を知っていればな・・・・・ガロアがそれを奴に教えていなければいいんだが・・・・・・・」
「学生服の悪魔・・・・それはやっかいだわ・・・・・・」
「あの学生服の悪魔って何でしょうか?異能については私も多少は知っているんですが・・・・」
「そうか、はるか、お前は学生服の悪魔の頃の俺のことを知らないよな。あの服には秘密があるんだ」
「秘密・・・ですか?」
 そう池上はるかは言う。
「ああ、秘密だ・・・・いつか教えてやるよ」
「そうですか・・・・」
「それはいいわ。けれどはるか、何であんたがここに居るの?何か用?」
「はあ、用ではないですけど・・・・・・もう少しで来るはずですが・・・・櫂さんにお客さんです」
「誰だ?依頼か?」
「それが赤井次郎という人物なんですが、櫂さん、ご存知ですか?」
「ああ、よく知っているよ。俺の友達だ」
「櫂さんの友達?それは友達ですよね?恋愛関係とかじゃなくって」
「恋愛関係って・・・・・こいつはノーマルよ。そのくせ、女を作ろうとしないのよね。何が不満なのかしら?」
「唯は大事な仕事のパートナーと思っているよ。次郎の奴は、いい奴なんだ。会えばはるかも分かるよ」
「そうですか。あと十五分ほどになります。九時に、来るとのことでしたから」
「そうか・・・・・・・」
 そう言うと、日向櫂は嬉そうに笑みを見せた・・・・・・・


十五分後、彼はやって来た。
「よう、櫂、久しぶり」
 そう言った人物はノーネクタイにスーツ姿だった。
「ああ、どこか喫茶店にでも行くか?ここでは人の目がある」
「いや、ちょっと寄っただけだ。お前も忙しいと言うしな。また忙しくなくなったら酒でも飲もう」
「ああ、そうしよう」
「それでどんな事件なんだ?」
「報道は見たか?」
「ああ、知っている」
「すべて、報道どおりじゃないが、また異能の者だ。それと一人、魔術師も関わっている」
「!そうか、お前のかつての師か?」
「ああ、そうだ。俺はなんとしても今回の事件を乗り切らなくちゃならないんだ。何しろ俺の過去と関係あるんだからな」
「そうか。それじゃあな。何か手伝うことがあるのならまた言ってくれ。これでも、腕は落ちていないんだ。俺のエモノはお前には気に入らないかもしれないが・・・・・」
「ああ、じゃあな次郎」
「ああ、さらばだ、櫂」
 そう言うと、慌しく、赤井次郎は去った。その眼はまるで櫂を見守っているかのようだった。


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