月が導く異世界道中

あずみ 圭

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序章 世界の果て放浪編

真、異世界に立つ

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※こちらは「月が導く異世界道中」の書籍化に伴いダイジェスト化した部分になります。
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 僕は、深澄真。
 地元の公立高、中津原高校に通う高校二年。
 部活は弓道部、特技弓道。
 成績はほどほど、運動神経人並み。
 容姿、多分可もなく不可もなく。
 趣味はややオタク、ただし結構広く浅く何でも手を出す。
 不変なのは弓と時代劇。
 ……人生の結構な部分、弓が入ってるな、こう並べてみると。
 でも、一応普通の範疇にいるプロフィールだろうと思う。
 こんな場所にいるのは絶対似合ってない。
 見渡す限りの赤茶けた荒野。
 ここは授業で聞いた砂漠みたいな環境だ。
 昼はとにかく暑くなり、夜は急激に冷え込むって奴。
 もう、ここに来て二日目の夜を迎えてる。
 何も食べてないけど、飢えの方は思っていたよりも来ない。
 異世界では超人みたいな身体能力が出せるとか聞いていたからその影響かもしれない。
 ……あぁ、何で僕はこんな所にいるんだろうなあ。
 答え、神様の悪戯の結果です。
 わかってるよ、わかってるんだよ。
 何度自問自答したかわからない。
 何事もない一日の終わりだった筈のあの日。
 三貴子の一人でもある月読尊に呼ばれて、あのキチガイじみた自称女神に拉致されてここにいる。
 前者は優しい神様って印象で、後者は神様と認めたくない程無茶苦茶な奴って印象だった。
 で後者の女神、いや虫以下の存在のあいつに人どころか動物の気配さえ感じない不毛の荒野に放り出された。
 本当に、訳がわからない。
 こんな身一つに近い状態で丸一日歩いても景色があまり変わらないようなだだっ広い荒野に捨てられる。
 これって、拉致というか殺人に近い気がするな。
 ダメだ、あいつの事を考えているとそれだけで気持ちが滅入る。
 もう辺りは真っ暗だ。
 星明りはあるけど、とても歩けたもんじゃない。
 電気の灯りに慣れた身には、恐さを覚える暗さだから。
 かといって……眠るのも無理だ。
 うとうとはする、というかしてしまうんだけど深く寝入ってしまって危険なナニカが近付いてこないとも限らない。
 僕に見えないから何もいないって訳ではないだろうしなぁ。
 いっそ、言葉さえ通じてくれるのならあの女神がいう通りオークやゴブリンの類とでも遭遇したいと思い始めてもいる。
 ぐっすり寝られる場所、ただそれだけの場所がこれほど大事なものだったなんて思いもしなかった。
 明日。
 明日こそ。
 何か変化がありますように。
 出来るなら、会話なんて出来ますように。
 見た目にはもう拘らないので食べ物になる物も見つけたいです。
 はあ、早く夜が明けないかなあ。
 部屋でネットの動画を見て明かす夜とは比べ物にならない長い夜を恨みながら。
 異世界生活二日目、初日同様何事もなく。
 僕は岩陰で膝を丸めながらひたすら朝を待った。
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