文字の大きさ
大
中
小
375 / 551
五章 ローレル迷宮編
○○百人出来るかな
「あー、気分が悪くなったらすぐに言ってくれ。じゃ、こっちだ」
すでに気分が最悪です。
流石にちょっとどうよと思ってます。
旅行ガイドのような気楽さで僕らの目の前をアズさんが歩いていく。
ここは風船のねじり目の向こう側。
つまり死者の国だ。
淡く赤く光るナニカが大気の中でくゆっている。
違うのか? これは大気自体が色づいている?
果たして吸っていい空気なんだろうか。
直前の言い様を思い出す限り魔力体を展開していれば当面は問題ないようだけど……まあ落ち着かない。
音の絶えた夕闇の黄昏時の中を歩く。そんな感じ。
不思議な事に足音もしない。
足に伝わる感触はスポンジのようで柔らかな砂浜のようで、正確に例えられるものがない。
こっちだと先導して進むアズさんの眼前で景色が色々と変わっている。
時折彼が立ち止まっては再び歩を進めると、踏み出した一歩の景色が周囲の全てになる。
石畳で舗装された道、里山の獣道、砂丘の尾根、湖の水面、密林と呼ぶべき深い森の中、そして見慣れた風な街並み――時には悪趣味にも墓地まで―足元の感触は一切変わらないのに目に見えるモノが移ろっていった。
「幻、ではないな。しかし現実でもない。死の国か……何とも奇妙な場所よな」
巴は今のところは平気そうだ。
念のために強化させた為に再び銀髪モードになっている。
とはいえ安心できる根拠もない。
気にしつつ自分の事も、だな。
口にしている感想は僕とあまり変わらない。
ただ幻を扱うだけに周囲の異常さを幻覚と関連づいたものじゃないかと疑いもしたようだ。
なるほど、幻か。
確かにこの光景、多少似てるな。
僕は過去数回しか経験した事はないけど、巴の能力を体験した時の感覚を思い出す。
あの時の頭の中と今の状況、類似点がある。
これらは幻ではなくても生物の生前の記憶とは何らかの関係があるかもしれない。
「住人、といったら変ですけど死者はいないんですか? それらしい存在すら見かけませんけど」
気になった事を尋ねてみる。
アズさんはここが初めてじゃないようだし、聞いてみる価値はあるだろう。
「……ふむ。いわゆるアンデッドに類するような存在を想像しているのならそういうのはいない」
「……」
スケルトンとかゾンビとか、いわゆる骨とか腐敗した死体という系統の想像は確かにあった。
いないのか。
考えてみればアンデッドは死者が、こっちに来るのを嫌がって向こうに残った姿なのか。
もしくはこっちに連れてくる事が出来なかった情念とか憎悪が生者の世界で悪さを始めたモノ?
……。
仏教では必ずしもそうじゃないけど、神道の場合は死を穢れと扱う事が多い気がする。
というか僕が知る限りでは殆どがそうだ。
とするとだ。
僕の死後の世界観というのは神道的な考え方が近いんだろうか。
「魂という形で周囲を揺蕩うという形が多いそうだ。俺はあまりその手の感知能力はないし感受性も高い方じゃないが、ここじゃあそこかしこに魂が存在するから感知能力の類は死ぬ事が多いらしい」
「へぇ……」
どうも現状に圧倒されて口から出る言葉は少なくなる。
試しに向こうでは生物を探す時に使っていた界を展開してみる。
瞬間、見渡す限りすべての空間に反応が溢れた。
なるほど、使い物にならない。
こっち用に調整しないと……出来るんかなぁ?
「この景色についても魂の遍在? とかいうのが関わっているそうだ。この辺りの詳細に興味があるなら目的地で待っているフツに聞けば教えてくれるが……ルトの世界転移の説明が理解できる位じゃないとさっぱりわからんぞ? ちなみに俺は無理だった」
「それじゃあ僕も無理ですね」
「やはり途中でウトウトして終了か。あの話を最後まで聞いて質疑の時間が何時間も続いたのは……俺が知る限りは一回しかない。別に恥じる事でもないさ。気持ち良い思いもできたんだしな」
かっかとアズさんが笑う。
豪快な笑いがこの場にとんでもなく合っていない。
というか気持ち良い思いとは?
「?」
「ルトは出会った賢人には大抵それを持ち掛けて口頭で冗談めいた条件をつけては真顔でそれを実行してるようだからな。もしかして真君はルトが初めてか?」
「……はい?」
「あの説明であれば儂らも同席して最後まで聞いた。ついでに言えば若は……お休みだったかどうかはともかくとして襲われたりしておらんよ、アズノワール」
「……それはまた何というレアケース。最後まで聞いて未知の言語で議論したのが一人いただけで後は異性なら、ああ時々同性でもだがそのまま襲われて最後までいっていたんだが。真君は話を理解せず、しかも襲われてもいないのか。雰囲気から平成生まれだと思ってたが、しょっとして昭和の生まれか?」
「何故に生まれの話に?」
まったく関係がわからない。
「あれの誘惑を跳ねのけられるというのは余程お堅くないと無理だろう? 昭和初期とか今より硬派な男子が多かったんじゃないかなと。それとも既にこれと決めた女性がいるのかい?」
「……あ」
二人の女の子の顔がふと脳裏に浮かんだ。
……え?
一秒も経たないうちにそこに巴と澪の姿も加わった。
……。
最悪だな、四股思考なのか、自分。駄目だろう。
「ん、しかし日本にそんな女性がいた所でここは異世界。何の抑止力にもならんよな。では……ああ」
「? なんじゃ、アズノワール。騎士とは思えん顔つきじゃが?」
「そういう事か。澪さんではないのだから、巴さんと既にそういう関係でしたか。ああ、だからルトも察して手を出さなかったと」
「……慧眼恐れ入る。うむ、当たらずとも遠からずじゃな。ルトに手を出させなかったのは確かに儂じゃよ」
遠いでしょうよ。
既にそういう関係、じゃないんだから。
後半については巴が話を最後まで聞いていてくれたからだから、自力で拒否できたかどうかは別にして正しいけどさ。
「……姉さん女房か。なるほど……アリだな。しかし真君、澪さんも健気じゃないか。あの女性はきっと君がどうなろうと最後まで一緒にいてくれるタイプだぞ? 幸いここは一夫多妻だもまかり通っている世界なんだし……」
僕がほんの少しの間自分のどこかにあるかもしれないハーレム的思考に自己嫌悪を起こしていると、アズさんと巴の会話が物凄い所まで飛んでいっている。
まったく、二人とも悪ノリが過ぎるよ。
「正妻さえ定まれば意外と早くそうなるやもしれんな。うむ、考えてみればこの手の会話はあまりしてこなんだ。下世話な騎士殿も多少は役に立つではないか」
「おや、正妻は巴さんでは?」
「ん? さて、儂は順番にはあまり拘らんでな」
「しかし、早くに夫婦となればそれだけ子も早く多く残せるでしょう。好きな男の子を産む、これは女性にだけ与えられた特権。俺の知る限りでも日本人の男と竜の女性のハーフはいますし、多くが幸せに過ごしていました」
「……子か。……確かに若の、御子……。ふ、ふふふ……くく……確かに。欲しいな。早く欲しい」
巴の表情が普段まず見ない「にやけ顔」になっている。
だけどこれは女性の特権をそうと認めて喜んでいる顔には見えない。
一番近いのは、孫を待つ祖父母のそれだ。
多分母親通り越してる。
「ごく自然な事です」
うんうんと頷いているアズさん。
いや頷かないで。
巴の中で、僕は、将来的に何人の妻を迎える事になっているんだろう。
?
なんだ?
今、妙な寒気が背中を走った。
それに何か……感じた事がない異様な視線を感じる。
誰かの、じゃない。
世界全てから見られているような、そんなのあり得る訳がないのに、でも他に表現しようがない。
「ごたごたが片付いてからと思うて後回しにしてきたが、大きな過ちだったやもしれんな。儂や澪であれば人と人の交わりとは違うのだから何が障害となるかもわからん。一日も早く取り組むべき課題だったというのか……!」
「まだ真君も若いですから。しかも商会は順調なご様子。となれば財力も不安はなく。周囲のサポートも期待できるのであれば、いきなり出産を目指さずともその前段階の練習は既に始めておくべきかと下世話な騎士は愚考いたします、巴姫」
前段階の練習。
ああ、うん。そういう事ですね。
「いや。下世話などと……お主の気遣いに対して儂が不明であった。許せよ、アズノワール。考えを巡らせてみればまさにお主の心配する通りじゃ。ゴルゴンの中にも狙っておる女はいるじゃろうし、儂らへの対抗意識で環も子を望みかねん」
……。
ど、どうやって割り込んで会話の流れを変えよう。
ディープ過ぎてただいま僕の脳内対策班が真っ白になっています。
「日本の知識も真君に聞いてよくご存知のようですから余計な事かもしれませんが、日本という国では例えどれだけ優秀で魅力的な男性、又は女性であっても迎えられる伴侶は一人だけ」
「うむ、存じておる」
「故に真君も最初は二人目以降の妻を拒むかもしれません。ルトの夫となった男は早々に後宮に馴染む、そちらの才覚もあった奴ですが真君はきっと違います」
「ふむふむ」
「だからこそ、最初の妻となる女性が大事です。彼女次第で二人目の妻を持つ事への意識がどうなってしまうことか」
「……た、確かに」
「俺が見たところ、巴さんか澪さんなら間違いないです。きっと幸せな結婚生活が待っています! だったらいつやるのか、そんなもの問われるまでもありません! 違いますか?」
「違わんな!! 今じゃ!!」
いやアズさんが僕らに会ってから、まだ一日も……。
間違いないとか、いつやるの、とか。
どこの営業マンで何を売りつけるつもりですか貴方は。
今じゃ、じゃないわ。
「うんうん、わかってもらえて良かった。俺としては真君にはぜひ充実した、後悔のない異世界ライフを過ごして欲しいですから」
絶対嘘だよね。
今現在全力で僕の平穏を破壊しようとしてる人がアズさんですよ?
「そこでちなみに、なんじゃが。日本人の男というのは妻を何人程度なら抱えられるんじゃ?」
「……こればかりは人によりますね。俺の知人では最大が60人、ですが4人で崩壊したのもいますから」
「むむう。最大で考えても二人ずつ産まなければ100人にさえ届かないとは。で、では年齢的なとこはどうじゃ? 幾つでも子を作る事は可能か?」
「……」
と、巴が壊れたーー!!
いや壊れてたーー!?
喉が、カラカラです。
何人の妻ってとこ吹っ飛ばして100人の子どもですと!?
しかもそれでもご満足でない!?
これ死者の国でする話題ですか?
というかこれ悪ノリだよね?
ドッキリ大成功のパネルどこ!?
「申し訳ありませんが、これもまた個人差なんです。上は82歳でもおめでたを、しかし下は40で以降どれだけ挑んでも子を授かる事はありませんでした……」
「な、なんと!? 最悪を考えれば既に若に残された時間は20年弱という事か!?」
真顔で何をいうんだアズさんは。
82歳で子供を作ったって人は単なる超人だし、40歳で駄目だったって人は多分何か別に事情があったんだろ!?
病気とか怪我、あとは冒険で何かあったとか、もしくはあまりに過酷な性生活で枯れ果てたとか。
最後のは僕は絶対に断固拒否するぞ!?
あと残された時間が、とか凄く不穏!
「あ――」
これ以上は僕の未来を本当に書き換えかねない気がして僕が口を開きかけた時。
“アズノワール。何をふざけているのですか。客人の案内をしてくれていたのかと思えばここで命の話など声高に。魂達が落ち着きをなくしてざわめいているではありませんか”
頭の中に響く声がした。
アズさんに向けられた言葉だったけど僕にも確かに聞こえた。
巴にも聞こえていたはず、だ、けど……。
「子作り、迂闊じゃった、子作りじゃ……」
多分彼女にも聞こえていたでしょう、うん。
救いの声の主は予想がつく。
一人しかいないから。
「フツ。久しぶりだな。あと俺はまったくふざけていない」
アズさんの言葉が僕の予想が正解である事を肯定してくれる。
青白い人魂、何となしに僕が想像していた魂らしき形のモノが無数に出現して集まっては融合して一つの形を成していく。
これは竜だけど、東洋型の蛇竜。
凄く新鮮だな。
浮遊し胴体から出た身体の割には小さめの腕、手には玉が握られている。
頭部の輪郭がはっきりとしてきた。
角が凄い。
カリブーみたく、えらく豪勢な角が枝分かれし、部分的に幅広になりながら伸びていた。
「これが、ルトの対になる存在……フツ」
“今や死と魂の管理人でしかありませんがね。はじめまして深澄真。稀人よ”
心地いい声が頭の中に染み込んでくる。
見上げる先にはフツ。
全身を銀鱗に覆われた姿で具現していた。
けれどそれで固定されている訳じゃなかった。
フツは青白いエクトプラズムで出来た竜の姿になったり、それよりも更に薄い、後方が透けて見える風になったり。
具現体とエクトプラズム状と半透明とが混在した状態になったり。
あまり姿を留めておけないんだろうか。
ただ僕に挨拶をした時に見た。全身を銀の鱗で覆われたフツの完全な具現体は、これ以上ない程に神秘的だった。
「……」
巴の目は見開かれている。
一目瞭然、驚きによるものだ。
この存在感はマガイモノに出せるものでもない。
つまり少なくとも上位竜に匹敵するだけの竜が存在する事はもう確かな事なのだ。
この世界の多くを知っていた筈の己の記憶に存在しないお仲間の登場。
少しは真剣モードになってさっきのお話を洗い流してくれると僕としては非常に安心するんですが。
感想 3,666
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
月が導く異世界道中extra
あずみ 圭 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
こちらは月が導く異世界道中番外編になります。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
「お姉様の刺繍は素人ね」と笑った義妹の婚礼衣装——裏地を見た女官十二人が、一斉に針を置いた
歩人(あゆと)「お姉様の刺繍は、素人の手習いに見えますわね」――王太子妃となる異母妹アデリーナは、王宮女官たちの前で姉ローゼを笑った。翌週の婚礼の朝。式典装の最終確認のため、十二人の女官が衣装の裏地を検めた瞬間――一人、また一人と、針を置いた。裏地に縫い込まれていたのは、女官たちが十二年間ずっと探していた一筆の銀糸。即位式の絹外套、二人の王女の婚礼ドレス、亡き王太后の弔意の喪服。王家儀礼衣装のすべての裏地に、同じ手で、同じ糸で、同じ銀の花が縫い込まれていた。「アデリーナ様、これは――あなた様の手では、ございません」縫い手は、ずっと一人だった。それを十二年間、誰の名でも呼べなかっただけのこと。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさんパーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
真の皇帝は俺です ~面倒だから幼なじみに帝位を任せていたら、婚約者に捨てられました。正体を明かしたら全員後悔してももう遅い~
由香皇帝の仕事が面倒だったレインは、信頼する幼なじみアレクシスに表向きの皇帝を任せ、自身は陰から帝国を支えていた。
だがある日、婚約者エミリアは「権力も将来性もない」と彼を見限り婚約破棄を宣言する。
しかし彼女は知らなかった。
帝国を動かしていた真の支配者が誰なのかを。
これは全てを持ちながら隠していた男と、見るべきものを見失った者たちの後悔の物語。