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16.いざ、勝負!

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 と、ここで、リングの反対側からアンダーソンがやってきた。
 こちらも、声を響かせる魔法をかけてもらっている。
「ああ、王女、エレオノーラ王女! ご無事でよかった。わたくしは、王女がいなくなってから一ヶ月、毎日心配で、砂を噛むような食事を味わっておりました」
 そのわりには、そのでっぷりとしたお腹は変わりないけど……。
 アンダーソンはよよよ、とハンカチを出して、目元をぬぐう。
「王女、愛は、結婚してからも育めます。大切なのは、お互いを知ること。そうではありませんか?」
 いや、もうすでに知ってますよー。
 あんたがわたしだろうが、フローリアだろうがおかまいなしに、王家に取り入ろうとしているのはね!
「だから、わたくしはあえてこの試練を受けましょう! 王女に、わたくしの愛を分かってもらうために!」
 こちらも、わーっと歓声が上がった。
 むふんとアンダーソンが鼻をふくらます。
 と、その時だった。

☆☆☆

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 さわがしい声の歌が、会場に響き渡った。
 な、なんぞこれ⁉ 
 ばっと声のした方向を見ると、そこには管理人のみんながいた。
「エートちゃん、がんばって~!」
「おれたちがついてるからな!」
 わいわいと、そんな声が聞こえてくる。
 みんな……! ありがとう!
 その中に、ヴァンとマオもいた。
「エート、夜になったら、わかってるよな⁉」
 ヴァンが叫ぶ。
 うん、日没と同時に、ヴァンを召喚だね。
「エート、自分の力を信じろ」
 マオの静かな声は、不思議と喧騒の中でもよく聞こえた。
 マオとみんなで立てた計画。それは「結婚の試練をし、それに勝利する」ということ。
 あとは、わたしがその試練に打ち勝つだけ!
「それでは、ただ今より、結婚の試練を行います! この結果は王、および竜倒公爵の名において、いかなることがあっても、くつがえることはございません!」
 審判の宣言に、会場の盛り上がりが最高潮に達した。
 アンダーソンの側には、三人の男の人。
 見かけからして、戦士、魔法使い、法力使いの三人だね。
 アンダーソン以外に四人まで仲間を出していいってことだけど、三人にしたんだ。
 それだけ仲間に自信をもってるってことかな?
 気になるのは、アンダーソンのすぐそばに置かれた、大きな鉄の箱。
 鉄の箱には、何かを封印しているような、魔法陣が描かれている。
 なんだか、嫌な感じ……。
 だめだめ! 最初から不安になって、どうするんだ!
 わたしは呪文を詠唱して、モンスターたちを呼び出した。
「エート、わしにまかせておけ。大船に乗った気持ちでおれ」
 サラマンダーのムドー。王様気質だけど、ちょっぴり小心者で、でもその炎は何でも焼き尽くす、頼もしい力。
「エートの嬢ちゃん、わしは、負ける気なんぞないわい」
 ノームのエルノック。おじいちゃんみたいで、ひょうひょうとした性格だけど、ものすごい力持ち。地面から石壁を出したり、とがった岩を出したりと、応用が利く能力の持ち主。
「エートちゃん、あんなやつら、やっつけちゃいましょう!」
 マーメイドのキヨコ。ちょっと常識がずれてるけど、優しくて、お姉さんみたい。水の矢と、防御膜という攻守両方を兼ね備えた、頼もしい存在。
 みんなといるなら、大丈夫! 絶対に勝とう!
 こうして、わたしの結婚をかけた勝負が始まった。
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