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プロローグ

一度目の人生

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生まれた時から、何もかもが完璧だった。

だからこそ。
いつだって世界は霞みがかっていた。

白と黒で彩られたような、確かに色があるはずの世界。 

自己利益のために擦り寄る自称友人。

いつもいつもいつも。
結局なにも残らない。

そんなことを言うと、誰もが引きつった笑みで、笑い飛ばしながら心の奥で憎々しげに、羨ましそうに、苛立ちを潜めながらこちらを見ている。

全部もっているくせに。
手に入らないものなんてないくせに。



ああそうさ。
わかっている。
俺は恵まれている。

完璧な人生だ。
両親の家柄、その遺伝子のおかげで、生まれた瞬間から将来を約束された、完璧な男。

だからこそ、誰にも分かって貰えない。

頼むから。



俺に期待しないでくれ。



「大丈夫······ですか?」

いつもいつもいつも、結局そばに居てくれるのは。





息ができない。
暑くて、熱い。
苦しくて、辛い。
目の前が霞む。

やっと彩られた気がした世界が、歪む。
でも、視界の隅に、見慣れた手を見つけて。

それに必死で手を伸ばした。

「り······お······」

莉緒。

俺の妻。

ずっと昔から、気が付かないほどそばにいた。
大切な妻。

命の灯火が、消えそうになる。

それでも瞳に、彼女を映し続ける。

「莉緒っ······!」

莉緒、起きてくれ。
莉緒······冗談はやめてくれよ······っ、なあ、莉緒······。

俺に出来ることなら、何でもするよ。
いつも助けてくれた、お前のために。

莉緒、莉緒。
お願いだ······俺より先に死ぬな。

莉緒······莉緒、莉緒······莉緒······。

莉緒······死んでも、必ず見つけ出すから。
輪廻転生なんて信じてないけど、お前となら、きっとどんなところにだって行けるから。

莉緒······必ず、見つけ出すから。

今までありがとう。
これから先も、愛しているよ。





『それなら、別の世界に行く気はない?』

「それで莉緒が見つかるなら」
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