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17、場所を越えてその時間を共有するという体験

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 ドゥンナ!立ち業フルコンタクト
 パーソナリティ 百瀬 導節(総合格闘家)/玄咲 みなみ
 第19回 更新分 
  FAXご意見判 今週の国勢調査 テーマ『みんなのラジオリスナー歴』より一部抜粋

  玄咲「どうも、王子だよ」
  百瀬「はあーいっ!!王子の専属ミニスカメイド、ピチカートペペロンよ!!今日もスカートペローン!!引き締まった大腿筋ペロローン!!鋼の絶対領域を魅せるのはあなただけなんだからねっ!!ペローンッ!!……ああ、えーっと」
  玄咲「疲れてる(笑)」
  百瀬「疲れてません!!(笑)全然スタミナ切れ起こしてません(笑)炭酸抜いたおコーラとか全然いらないんだからっ!!えーっと…、どこまで読んだ?ああっ!もうっ、そうそう、今週もっ!王子が聞きたい、聞きたかったことをっ、だっ、だっだっだっだっ、どぅプあい発表しちゃうわよおおおーっ!もうっっ、ヨダレ出ちったわよ!」
  玄咲「(笑)ももちゃん、おつゆいっぱい飛んだー」
  百瀨「もう、いいのよそんなことはああぁー!こなくそっっ!!Hey!ディレクター、エコーちょーだーい!(エコー&良い声で)『みんなのラジオリスナー歴』はーい、ありがとうございまーちゅ!チュっ!ディレクターたん、CHU!早速、民どもからのメール読んじゃうわよっ!」
  玄咲「うん(笑)」
  百瀬「王子もっとキャラ作りこみなさいよ!!」
  玄咲「なんで?あたしの精一杯の少年声じゃん」
  百瀬「いつもの地声じゃないのさ!!通常運転じゃないの!!ちょっとアンタ何してんの?」
  玄咲「脚痒い(笑)」
  百瀬「脚掻かない!!机の下で脚掻かない!!」
  玄咲「ちがうの(笑)靴擦れしたとこが」
  百瀬「何?オープニングで言ってたやつ?痒いの?」
  玄咲「痒いっていうか、もう熱持ってる(笑)」
  百瀬「掻き過ぎよ、アンタ!!」
  玄咲「えー?じゃあちょっと姫、姫じゃねえや(笑)メイド(笑)」
  百瀬「えっ?(笑)ワタクシメイドですけども(笑)姫に格上げですか?お輿入れられますか?メトられますか?ワタクシめを」
  玄咲「ごめん、メイド(笑)」
  百瀬「王子、設定!!せっ・て・い!!」
  玄咲「ちょっと先週からだからさー、このコーナー。設定とかまだわかんない(笑)まだ仕上げてきてない」
  百瀬「もー(笑)メール行くわよメール。徐々に慣れてね」
  玄咲「あいよー」
  百瀬「軽っ!(笑)はい、まずは一通目。『僕がラジオを聞き始めたのは中3の受験勉強の時からです』あ、これ ラジオネーム スズキタスタッスくんから。どうもありがとう」
  玄咲「ありがとー、タスタッス」
  百瀬「(笑)『それまでオーディオのラジオチューナーなんて一度もさわったことがなかったのに、受験生らしくラジオでも聴くかなと聴き始めたのが最初です』これね、今回一番多かったのはこのパターンね。アタシもねー、受験生の時かしらね、ラジオ聴き始めたの」
  玄咲「メイド、受験勉強したの?」
  百瀬「えっ!?あっ、うん、そうね。王子いきなり設定ぶっこんでくるわね(笑)」
  玄咲「(笑)」


  百瀬「えー、続きましてラジオネーム マグカップケーキちゃん。
 『私のラジオ歴は小学三年生からです。塾の帰りが遅いため、家から遠い子は塾がバスで送ってくれるシステムだったのですが、そのバスの中でラジオデビューしました』
これなんかこの子がパーソナリティーとしてデビューしたみたいよね、バスの中で(笑)Hey!よい子のみんなぁー」
  玄咲「(笑)」
  百瀬「塾で疲れたお耳を癒す、今日のお相手はぁー、ディージェーイ、mug cup ケイクス!!」
  玄咲「メイドのDJのイメージってどこなの?(笑)FMでもないよねそれ」
  百瀬「王子、メイドってやめて!名前で呼んで!ちゃんと!」
  玄咲「(笑)名前なんだっけ。DJピーチパイ?」
  百瀬「ピーチじゃないわよ!!あとDJでもないわよっ!!ピチカート、……ナントカよっ!!」
  玄咲「自分も覚えて無いじゃん(笑)」
  百瀬「徐々に慣れてって!!みんなもアタシもっ!!……え?なに?あー、メール続き(笑)
『塾長がラジオをつけていて、これなんて番組?と聞いたら、なんかアニソンのランキング番組でした』」
  玄咲「なんかアニソンのランキング番組(笑)」
  百瀬「『塾長は子供達に聴かせるためにそれにしていたそうですが、いつも前の方の席に座る私以外誰も聴いてませんでした』
あらもう、おさみしいー。哀愁漂うわ塾長。塾長が運転すんの?塾のバスって」
  玄咲「わかんない(笑)これって何の番組?アニソンランキング番組?番組名書いてないの?」
  百瀬「書いてない。なんかアニソンランキング番組(笑)たぶんでもこれ、アニソンのランキング番組だからたぶん…、あー、でもこれアタシが聴いてたやつかしら。マグカップケーキちゃんどこにお住まい?書いてないのかしら?」
  玄咲「でも誰も聴いてなかったと(笑)マグカップちゃん以外」
  百瀬「私は聴いてたわよ!!たぶんでも大丈夫!!アタシが!!アタシの生霊がバスにヒュー乗って聴いてたから一緒に!!マグカップちゃんと!!」
  玄咲「怖いよ(笑)バスにヒューって」
  百瀬「ヒューって(笑)」
  玄咲「乗せてー!ドンドンドン!って(笑)」
  百瀬「乗れてない!!幼き日の生霊のアタシ乗れてない!!乗せてあげて!!」


  零児がラジオを聴き始めたのは、小学四年生の夏休みだ。
  家族で海にキャンプに行った時。
  帰りの車の中で、母親と、当初の予定では作るはずのなかった妹は後部座席ですっかり眠っていた。
  零児と父親が聴いていたのは、地方のFMラジオだった。
  自分だけは寝ないよう、零児は必死に起きていた。
  家族のために運転する父を残し、自分まで寝るわけにはいかないと幼い頃の零児は思っていた。

  頼みの綱はラジオだった。
  CDなどの音楽をかけると、どうしても眠くなる。父親の趣味の、零児が知らない世代の曲などは特に。
  だから、だらだらと喋るラジオDJのトークがありがたかった。


  「最近のFMは喋り過ぎだなあ」

  DJが、流暢だけれど日本人には聴きとりづらい英語でオシャレな洋楽ナンバーを紹介したあと、父親が言った。

  「昔は音楽のFM、喋りのAMって言ってな」

  曲が流れている間、父親は一方的に話していた。零児は適当な相槌を打って父親の話を聞いていた。
  喋ってくれていた方が間が持つ。
  すでに思春期に差し掛かった零児は、父親と二人で話すことなど特になかった。

  
  active Night cycle
  パーソナリティ DJ RUMICO/サイクーくん (中の人 番組構成作家 熊川大助)
 8/5 放送分
  今週のメールテーマ《嗚呼!夏休みの宿題の思い出》より抜粋

  RUMICO「えー、今週のテーマは《夏休みの宿題の思い出》です。まあねえ、夏休みなんて私にはもう遠い昔の話ですけども(笑)、宿題ってなると年代とか地域によって違うのかしら。サイクーくんは実家どこだっけ」
  サイクーくん「ホッカイドウ」※ 放送中、熊川さんは声を加工して登場しています
 RUMICO「北海道だと、なんかその土地ならではの宿題とかなかったの?」
  サイクーくん「トクニネェ、…ナカッタネェ」
  RUMICO「(笑)話広がらないっ!えー、あっ!早速メール来てますねー。伊東市のルーミックキューブさん いつもありがとー。
 『私の夏休みの宿題の思い出といえば、やはりギリギリまでやっていない宿題を一家総出で手伝ったことです。小学校時代は長女の私から始まり、妹、弟。私の分は親が手伝ってくれましたが、下の子たちのは私が手伝いました。字を小学校低学年の二人合わせて似せて書くのに苦労しました』
という、ねー。先週も言いましたけど、なんで宿題って早めにやればいいのにはやれないんですかね。私もあとの方になってやって、始業式の日に忘れましたー、って言って。ホントはやってないって言う(笑)で、中学ぐらいになると、始業式に授業やらないじゃない?だから次の日とかね、もっと後とかにやるから提出までタイムラグがあるから、そこ利用して宿題が出てる科目の、最初の授業の日に間に合うように出して。で、高校になるともうずーっと、9月中ぐらいまで忘れましたーって言って、2学期中逃げ切るっていう(笑)先生そろそろ忘れてるかなーって」
  サイクーくん「カンゼンハンザイ(笑)」
  RUMICO「おいっ!人聞き悪いなあー(笑)」


  今の零児から言わせればそれはレベルの低い番組だった。パーソナリティのトークも、リスナーが送ってくるメールの質も。
  よく耳にする話、よく聴くあるあるネタだった。
  FMとやらだからか。夕飯の片付けを終えた暇な主婦が暇つぶしに聴き、暇つぶしにメールを送っているような番組。
  当時の零児も多少うんざりしながら、聴いていた。
  自分なら、もっと面白いメールが書ける。睡魔と闘いながら、そんな考えが頭にあった。
  そして粗方メールが読まれると、呼び込みがかかった。


  RUMICO「はーい、メールまだジャンっジャン募集しています。えー、ケータイでのメールは番組ケータイサイトから。そして今日メールを読まれた中で一番面白かった人には、ズワイ蟹二キロをプレゼント!おー、太っ腹ー(笑)」


  蟹なんて欲しくもなんともない。しかし零児は、この程度なら自分が貰えるのではないかと思った。
  このレベルの中での一番面白いなら、自分が一番面白いのではないかという自信が。
  ケータイを取り出し、零児はパーソナリティーが言っていた番組サイトとやらへ飛ぶ。
  メールはこちらから、という項目をクリックすると、投稿フォームが現れた。

  「酔うぞー」

  父親の言葉を聞き流し、しかしきちんと耳に入れ、零児はその場で文章を考えながら素早くメールを打った。
  文章を書くのは得意だった。
  国語の授業で作文が出た時、零児はいつもクラスで一番に書き上げた。
  テーマを提示された瞬間から頭の中で構成を錬り、大体の文章量を考え、原稿用紙を埋めていく。
  シャーペンが止まっていることを先生に注意されると、すでに書き上がった原稿用紙をこれみよがしに見せた。
  その時の優越感といったらなかった。
  それも適当に書いたものではない、きちんとした、子供らしく伸び伸びした文章なんて上っ面な評価を付けられない、クールで、クレバーで、多少のブラックを含み、ユーモアとウィットに富んだ文章だった。
  書いた作文で賞を獲ったこともあった。
  型にハマった優等生的な、無難なものに贈られる大賞ではなく、エッジの効いた、本当に面白いものに贈られるという審査員特別賞をもらった。
  その時の優越感といったら―。

  絶対の自信をもって零児がメールを書き上げると、その後のラジオネームという入力欄に引っ掛かった。
  ラジオネーム。放送を聴いていると、どうやらラジオにメールを送る人が使うペンネームのようなものらしい。
  ラジオネーム、ラジオネーム、ラジオネーム。
  何かないか、適当なものでいい。
  しかしあまりセンスのないものは許せない。
  零児は目の前にあった、父親が噛んでいたボトル入りガムを手に取った。
  意味もなく原材料の項目を見る。
  人工甘味料の名前が羅列してあり、細かい字を読んだことで気分が悪くなっただけだった。
  仕方なく、零児はひらめき、思いつきを頼りにラジオネームを入力する。
  本名、住所、性別、メールアドレス、電話番号、年齢は満10歳なので十代を、職業は学生を選ぶ。
  必要事項をすべて入力、選択し、零児はメールを送信した。
  自信はあった。しかし不安もあった。
  零児は車に酔った身体をシートに横たえる。
  このまま眠ってしまうかと思ったが、耳だけは起きていた。
  そして交通情報と、洋楽のサーフナンバーがかかり、時報をまたいだ30分後。


 
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