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19、アナログは好きだけど、とにかくとにかく時間が無い
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「いやはや柿内氏、怒らせてしまったよ」
「誰を」
「零児ちゃん、零児くん?零児ちゃんか」
零児にこっぴどく振られた日の夜。響季はケータイで柿内君に形ばかりの経過報告をした。
手には帰宅時、自宅ポストから回収してきた封筒があった。下の方にラジオ局のロゴが入っている。
メールが読まれたラジオ番組から送られてきたノベルティグッズだった。
「友達になってって言って、無理だからって言われて、じゃあ付き合ってって言ったらふざけんなって」
「どういう流れにもっていきたいんだよ、お前は」
「もおーっ。女の子が女の子口説くってどうやればいいの?」
「知らないよ」
「女の子と付き合ったりとかはないんだっけ、カッキーは今まで」
「ああ、なんかめんどくさそうでな、別れたりとか。もうお互い結婚を前提に、ぐらいの気持ちでならいいけど」
「昔の大和撫子みたい」
へははと笑いながら響季はケータイを肩と頬で挟んで、封筒を開ける。
中身は番組特製ステッカーだった。
番組名を凝ったロゴで書いた、それなりにきちんとしたデザインだったが、すぐに興味を失いトランク行きとなる。
「昔の人はそうだったんじゃないか?お見合い結婚で、最初の人が最後の人みたいな」
古風な柿内君の意見に、響季がへはっ、と笑うが、すぐにため息をつく。
「どうしたらいいの?突き放したらいいの?」
「話し合うことだな。女同士なら話し合えるはずだ、たぶん」
「早々に聞く耳持たないんだけど、向こうが」
「好きなものとかないのか?零児君の。甘いものとか、ミュージシャンとか、アイドルとか」
響季をこっぴどく振ってから二週間後。
夏休みだからといって特にすることがない零児は、再び献結ルームへ向かった。
対応した受付職員さんはカードを受け取ると、名前を見るなりはっと零児の顔を見上げる。
そして近くの引き出しから何かを取りだし、クリップで止められていたメモを外す。
緊張した面持ちで、まるで自分が書いたもののように、どうぞ、と零児は職員さんに封筒を渡された。
今度はアメコミ風イラストが描かれた、妙にガチャガチャした封筒。
以前はシンプルなクラフト素材の封筒だった。
「送り主は」
「わかってますから」
職員さんの言葉を制し、ため息まじりに零児が受け取る。
ふと思い立って受け取った封筒を縦に持つと、引き裂くように力を込める振りをする。
「ああっ!」
「冗談ですよ、カード」
「あっ、はい。ええと、受理しました。準備できたら呼びますのでそちらで」
からかった職員さんに軽く頭を下げ、零児は受付近くのソファに座る。今日は珍しく利用者が多く、献結前の手続きに手間取っているらしい。
ちらと見えたメモには、《零児君じゃなくて零児ちゃん!女の子です!目が大きくて可愛い子!》と書かれ、ご丁寧にも似顔絵まで描いてあった。
黒のペンで描かれた、黒髪セミロングでアーモンドアイの、なかなか可愛らしい女の子の絵。
それを見て零児は無意識のうちに、大きな目をすうっ、と細めた。
渡された封筒の裏を見て、一応差出人の名前を見る。
差出人は、片瀨 響季(好きな偉人の言葉は『赤い軍手をちょいとかぶればウソニワトリの出来上がり』 ニーチェ)と書かれていた。
不意打ちを食らい、笑いが零児の喉の奥に込み上げる。
手紙をどうしようか考えたが、封筒の厚みからするとまた長そうだ。
受付からはハラハラした様子で職員さんが見ていた。
「ちゃんと読みますから」
多少うんざりしながらも、零児が声をかける。
書いた本人は断ってもいいし、破いてもいいと言っていたが。
単純にどんな内容なのだろうという思いがあった。
手紙という馴染みのない、とんとご無沙汰なツール。アナログな文化。
ただそれに、零児は興味があった。
マキシマム・フローズン情報局
パーソナリティ 森口 茜(鹿谷 凍子役)/ゲスト 古池 千華(白佐木 明歩役)
第6回 放送分 エンディング部分~今週の始末書のコーナーより抜粋
(野球中継延長による休止のため、ネット配信分より抜粋)
森口「はーい、エンディングでーす」
古池「はーい」
森口「えー、告知があればどうぞ」
古池「なんか巻いてる?(笑)」
森口「(笑)時間ないって!時間ないんだって!(小声)」
古池「はいっ(笑)じゃあえーと、現在放送中のアニメ『地球儀探偵』にマフィール役で出てます。あと『ガラムとマサラ』っていうアニメにキーマカレー役で出てます」
森口「キーマカレー役(笑)」
古池「はいっ!あっ!すっげかわいいんだよ?キーマちゃん(笑)あとそれからえーとまだ言えないんですが、冬ぐらいになんか、ゲームが出ます。ゲームに出ます!あとはホームページとか見てください!あっ、あとマキシマムフローズンにも白佐木 明歩役で出てます!よろしくおねがいしまーす!」
森口「はーい。すごい、駆け足でありがとう(笑)いっぱい出てるねー」
古池「はいっ!稼いでます」
森永「(笑)えー、番組ではメールを募集しています。メールは番組公式サイトのメールフォームから」
古池「採用、」
森口「採用された方には、うるさいっ(笑)」
古池「読むの手伝ってあげようかと(笑)」
森口「出来るから!ひとりで!(笑)あっ、あと以前言ってたおハガキくれた方専用のノベルティも現在検討中なんで、ハガキもぜひ!」
古池「えー?すごーい!」
森口「ハガキを応援していきます!この番組はハガキ系リスナーを応援していきます!!」
古池「謎の気合い(笑)」
森口「えー(笑)それではまた次回の放送まで」
森口・古池「ばいばーい」
森口「この番組は、ISOTONIC JENERATIONの提供でお送りしました」
森口「今週の、始末書ぉぉぉ~」
古池「(笑)おどろおどろしいんだね。タイトルコール」
森口「(笑)ラジオネーム ひだりて赤軍手くん
『番組中に落ちてきたブラ紐を通算67回も直したことを反省してください』
すいません(笑)サイズが合わないの付けてきちゃってホンっトすいません。朝バタバタしてたんで(笑)」
古池「緩いってこと?」
森口「もしくは洗濯した時にストラップが伸びた(笑)」
古池「ああー、ちゃんとネットに入れなかったから(笑)」
森口「千華ちゃん手洗いする?」
古池「高いのは…」
森口「安いのはガーッて?(笑)」
古池「(笑)洗濯機で脱水ガーッて」
「誰を」
「零児ちゃん、零児くん?零児ちゃんか」
零児にこっぴどく振られた日の夜。響季はケータイで柿内君に形ばかりの経過報告をした。
手には帰宅時、自宅ポストから回収してきた封筒があった。下の方にラジオ局のロゴが入っている。
メールが読まれたラジオ番組から送られてきたノベルティグッズだった。
「友達になってって言って、無理だからって言われて、じゃあ付き合ってって言ったらふざけんなって」
「どういう流れにもっていきたいんだよ、お前は」
「もおーっ。女の子が女の子口説くってどうやればいいの?」
「知らないよ」
「女の子と付き合ったりとかはないんだっけ、カッキーは今まで」
「ああ、なんかめんどくさそうでな、別れたりとか。もうお互い結婚を前提に、ぐらいの気持ちでならいいけど」
「昔の大和撫子みたい」
へははと笑いながら響季はケータイを肩と頬で挟んで、封筒を開ける。
中身は番組特製ステッカーだった。
番組名を凝ったロゴで書いた、それなりにきちんとしたデザインだったが、すぐに興味を失いトランク行きとなる。
「昔の人はそうだったんじゃないか?お見合い結婚で、最初の人が最後の人みたいな」
古風な柿内君の意見に、響季がへはっ、と笑うが、すぐにため息をつく。
「どうしたらいいの?突き放したらいいの?」
「話し合うことだな。女同士なら話し合えるはずだ、たぶん」
「早々に聞く耳持たないんだけど、向こうが」
「好きなものとかないのか?零児君の。甘いものとか、ミュージシャンとか、アイドルとか」
響季をこっぴどく振ってから二週間後。
夏休みだからといって特にすることがない零児は、再び献結ルームへ向かった。
対応した受付職員さんはカードを受け取ると、名前を見るなりはっと零児の顔を見上げる。
そして近くの引き出しから何かを取りだし、クリップで止められていたメモを外す。
緊張した面持ちで、まるで自分が書いたもののように、どうぞ、と零児は職員さんに封筒を渡された。
今度はアメコミ風イラストが描かれた、妙にガチャガチャした封筒。
以前はシンプルなクラフト素材の封筒だった。
「送り主は」
「わかってますから」
職員さんの言葉を制し、ため息まじりに零児が受け取る。
ふと思い立って受け取った封筒を縦に持つと、引き裂くように力を込める振りをする。
「ああっ!」
「冗談ですよ、カード」
「あっ、はい。ええと、受理しました。準備できたら呼びますのでそちらで」
からかった職員さんに軽く頭を下げ、零児は受付近くのソファに座る。今日は珍しく利用者が多く、献結前の手続きに手間取っているらしい。
ちらと見えたメモには、《零児君じゃなくて零児ちゃん!女の子です!目が大きくて可愛い子!》と書かれ、ご丁寧にも似顔絵まで描いてあった。
黒のペンで描かれた、黒髪セミロングでアーモンドアイの、なかなか可愛らしい女の子の絵。
それを見て零児は無意識のうちに、大きな目をすうっ、と細めた。
渡された封筒の裏を見て、一応差出人の名前を見る。
差出人は、片瀨 響季(好きな偉人の言葉は『赤い軍手をちょいとかぶればウソニワトリの出来上がり』 ニーチェ)と書かれていた。
不意打ちを食らい、笑いが零児の喉の奥に込み上げる。
手紙をどうしようか考えたが、封筒の厚みからするとまた長そうだ。
受付からはハラハラした様子で職員さんが見ていた。
「ちゃんと読みますから」
多少うんざりしながらも、零児が声をかける。
書いた本人は断ってもいいし、破いてもいいと言っていたが。
単純にどんな内容なのだろうという思いがあった。
手紙という馴染みのない、とんとご無沙汰なツール。アナログな文化。
ただそれに、零児は興味があった。
マキシマム・フローズン情報局
パーソナリティ 森口 茜(鹿谷 凍子役)/ゲスト 古池 千華(白佐木 明歩役)
第6回 放送分 エンディング部分~今週の始末書のコーナーより抜粋
(野球中継延長による休止のため、ネット配信分より抜粋)
森口「はーい、エンディングでーす」
古池「はーい」
森口「えー、告知があればどうぞ」
古池「なんか巻いてる?(笑)」
森口「(笑)時間ないって!時間ないんだって!(小声)」
古池「はいっ(笑)じゃあえーと、現在放送中のアニメ『地球儀探偵』にマフィール役で出てます。あと『ガラムとマサラ』っていうアニメにキーマカレー役で出てます」
森口「キーマカレー役(笑)」
古池「はいっ!あっ!すっげかわいいんだよ?キーマちゃん(笑)あとそれからえーとまだ言えないんですが、冬ぐらいになんか、ゲームが出ます。ゲームに出ます!あとはホームページとか見てください!あっ、あとマキシマムフローズンにも白佐木 明歩役で出てます!よろしくおねがいしまーす!」
森口「はーい。すごい、駆け足でありがとう(笑)いっぱい出てるねー」
古池「はいっ!稼いでます」
森永「(笑)えー、番組ではメールを募集しています。メールは番組公式サイトのメールフォームから」
古池「採用、」
森口「採用された方には、うるさいっ(笑)」
古池「読むの手伝ってあげようかと(笑)」
森口「出来るから!ひとりで!(笑)あっ、あと以前言ってたおハガキくれた方専用のノベルティも現在検討中なんで、ハガキもぜひ!」
古池「えー?すごーい!」
森口「ハガキを応援していきます!この番組はハガキ系リスナーを応援していきます!!」
古池「謎の気合い(笑)」
森口「えー(笑)それではまた次回の放送まで」
森口・古池「ばいばーい」
森口「この番組は、ISOTONIC JENERATIONの提供でお送りしました」
森口「今週の、始末書ぉぉぉ~」
古池「(笑)おどろおどろしいんだね。タイトルコール」
森口「(笑)ラジオネーム ひだりて赤軍手くん
『番組中に落ちてきたブラ紐を通算67回も直したことを反省してください』
すいません(笑)サイズが合わないの付けてきちゃってホンっトすいません。朝バタバタしてたんで(笑)」
古池「緩いってこと?」
森口「もしくは洗濯した時にストラップが伸びた(笑)」
古池「ああー、ちゃんとネットに入れなかったから(笑)」
森口「千華ちゃん手洗いする?」
古池「高いのは…」
森口「安いのはガーッて?(笑)」
古池「(笑)洗濯機で脱水ガーッて」
応援ありがとうございます!
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