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その声がいつも魂の叫びでありますように
4、貴女の体温が不足しています
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その後も響季は録画した番組をどんどん消していったが、
「……寒い」
ベッドに仰向けに寝転んだまま、零児がそう呟いた。
開いた本を胸元に置き、視線だけを響季に向けて。
「え!?あっ、エアコン付ける?」
ごめん、気付かなかったと響季がリモコンをとるが、
「いい。暑い」
零児がそれを拒否する。
それを聴き、エアコン嫌いかと響季は考える。
親友も、柿内君もそうだからなんとなくわかるが、ならばどうしようかと考えていると、零児は寝転がっていた布団の中にモソモソ入り込み、暖を取り始めた。
客人の振る舞いに、まあそれなら暖かいしいいかと響季が思っていると、
「ちょっ、何してん!何してん!」
つい関西弁でツッこんでしまった。
入った布団の中でモソモソしていた零児が、ずるりと制服スカートを出してきたからだ。
当然さっきまで自分で穿いていたものだ。
「しわになるから」
「あ…、そうね」
「ハンガーかけといて」
「…はい」
壁にあるスカート用ハンガーを指差し、掛けといてと零児が指示する。指示された方も言われるまま従うが、
「響季も」
「えっ!?」
やたらこき使う客人が、布団に入ったままちょいちょい手招きしてきた。
「あ、の」
「寒いから」
突然の添い寝のお誘いに響季が戸惑っていると、誘ってきた方は湯タンポ代わりに入れと言ってきた。体温が欲しいと。
同性同士とはいえ向こうは下半身が下着姿だ。
いや、スカートを脱いだのはしわになるからで、それを意識するのはおかしい。
そうだ、同性同士なら一緒のお布団に入るぐらい大したことではない。
そもそも添い寝ではなく寒くて暖を取るためなのだ。
変に意識しないよう、そう自分に言い聞かせ、
「…すんずれいします」
失礼しますと手刀を切り、響季が自分の布団に入ろうとする。だが、
「スカート」
お前も穿いているものを脱げと零児は言ってきた。しわになるからと。
「ええっ!?ああー…、まあ…、そうですね」
自分もデスカ?と狼狽えるが、明日も学校に穿いていくスカートがしわになるというもっともな意見に、響季は言われるままホックに手をかける。
しかし布団の中の主はじっとこちらを見たままだ。
この視線の中で脱げということか。
同性で友達なので何も問題ない。
問題ないのだが。
響季はどうにもファスナーが下ろせない。
それを見て零児は仕方ないとため息をつくと、小さなおててでアーモンドアイをぺたと覆ってくれた。
響季が、あ、可愛い、と思っていると、
「さん、にい、いち」
「早い早いっ!」
突如始まったカウントに、反射的にスカートのホックを外す。同時に早すぎるカウントに異を唱える。
目を覆ったままむうと唇を尖らせると、零児はじゅう、きゅう、とさっきよりかはだいぶゆっくり、たっぷり目にカウントを取り始めた。
焦りながらも響季はスカートを脱ぎ、ハンガーは塞がっているので椅子の背に適当に掛けて布団の中にしゅるりと滑り込む。
「終わりましたっ」
響季がそう言うと、零児は手を外し、布団の中で隣にある生足に足を乗せてきた。
「ふひっ」
自分の足が冷たい分、乗せられてきた暖かな足に響季が変な声をあげるが、
「よし」
きちんとスカートを脱いだのを確認すると、零児は壁側に寝返りを打ち、読書を再開した。
「え…」
その対応に、響季はおあずけを食らったネコのようにぽかんとする。
アタイのハートに火を付けといてその態度は何よニャンと。
しばらくは目の前の艶やかな黒髪と、その向こうにある細かい字を見ていたが、結局は諦めて反対側に寝返りを打ち、響季もリモコンでレコーダーの残量を増やす作業を再開した。
「……寒い」
ベッドに仰向けに寝転んだまま、零児がそう呟いた。
開いた本を胸元に置き、視線だけを響季に向けて。
「え!?あっ、エアコン付ける?」
ごめん、気付かなかったと響季がリモコンをとるが、
「いい。暑い」
零児がそれを拒否する。
それを聴き、エアコン嫌いかと響季は考える。
親友も、柿内君もそうだからなんとなくわかるが、ならばどうしようかと考えていると、零児は寝転がっていた布団の中にモソモソ入り込み、暖を取り始めた。
客人の振る舞いに、まあそれなら暖かいしいいかと響季が思っていると、
「ちょっ、何してん!何してん!」
つい関西弁でツッこんでしまった。
入った布団の中でモソモソしていた零児が、ずるりと制服スカートを出してきたからだ。
当然さっきまで自分で穿いていたものだ。
「しわになるから」
「あ…、そうね」
「ハンガーかけといて」
「…はい」
壁にあるスカート用ハンガーを指差し、掛けといてと零児が指示する。指示された方も言われるまま従うが、
「響季も」
「えっ!?」
やたらこき使う客人が、布団に入ったままちょいちょい手招きしてきた。
「あ、の」
「寒いから」
突然の添い寝のお誘いに響季が戸惑っていると、誘ってきた方は湯タンポ代わりに入れと言ってきた。体温が欲しいと。
同性同士とはいえ向こうは下半身が下着姿だ。
いや、スカートを脱いだのはしわになるからで、それを意識するのはおかしい。
そうだ、同性同士なら一緒のお布団に入るぐらい大したことではない。
そもそも添い寝ではなく寒くて暖を取るためなのだ。
変に意識しないよう、そう自分に言い聞かせ、
「…すんずれいします」
失礼しますと手刀を切り、響季が自分の布団に入ろうとする。だが、
「スカート」
お前も穿いているものを脱げと零児は言ってきた。しわになるからと。
「ええっ!?ああー…、まあ…、そうですね」
自分もデスカ?と狼狽えるが、明日も学校に穿いていくスカートがしわになるというもっともな意見に、響季は言われるままホックに手をかける。
しかし布団の中の主はじっとこちらを見たままだ。
この視線の中で脱げということか。
同性で友達なので何も問題ない。
問題ないのだが。
響季はどうにもファスナーが下ろせない。
それを見て零児は仕方ないとため息をつくと、小さなおててでアーモンドアイをぺたと覆ってくれた。
響季が、あ、可愛い、と思っていると、
「さん、にい、いち」
「早い早いっ!」
突如始まったカウントに、反射的にスカートのホックを外す。同時に早すぎるカウントに異を唱える。
目を覆ったままむうと唇を尖らせると、零児はじゅう、きゅう、とさっきよりかはだいぶゆっくり、たっぷり目にカウントを取り始めた。
焦りながらも響季はスカートを脱ぎ、ハンガーは塞がっているので椅子の背に適当に掛けて布団の中にしゅるりと滑り込む。
「終わりましたっ」
響季がそう言うと、零児は手を外し、布団の中で隣にある生足に足を乗せてきた。
「ふひっ」
自分の足が冷たい分、乗せられてきた暖かな足に響季が変な声をあげるが、
「よし」
きちんとスカートを脱いだのを確認すると、零児は壁側に寝返りを打ち、読書を再開した。
「え…」
その対応に、響季はおあずけを食らったネコのようにぽかんとする。
アタイのハートに火を付けといてその態度は何よニャンと。
しばらくは目の前の艶やかな黒髪と、その向こうにある細かい字を見ていたが、結局は諦めて反対側に寝返りを打ち、響季もリモコンでレコーダーの残量を増やす作業を再開した。
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