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010 僕と“僕”の共存
しおりを挟む人は、……自分が生まれる前を知りたがる。
僕たちに生まれる前も、いなくなった後もあるのだろうか。
否、僕にはそんなものがあるとは思わない。
ねえ、君。そう思わないかい。
それは生まれる前、僕ではない“僕”がこの地球(ほし)で生きていた、ということになるんだ。
僕ではない“僕”とはいったい誰だろう。
僕は“僕”の記憶を持っていない。それなのに“僕”なのだろうか。
そんなことがあるとは思えない。やっぱり……僕は僕でしかないのではないのかな。
生まれる前、その通り僕は生まれていなかった。この世界にはいなかった。そうとしか考えられない。ううん、考えたくない。
僕は僕だもの。この一生が僕だ。僕がいなくなるその後も、……僕は生まれない。
本当のことを、教えてくれないか。誰に訊けばその答えが見つかるのだろう。
人は、……自分が生まれる前を知りたがる。
そうさ。この世は否定すれば真実を固めるすばらしい世界となり、肯定すれば自分の信じるものを失う世界に急変する。
けれどそれは、僕らの思考が縛られないということを意味し、僕が“僕”であったことを僕が認めることで僕の生まれる前は“存在”するということに他ならないのだ、と僕は常々そう思っている……。
※お題010「生まれる前」
僕僕うるさいです……
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