298 / 303
連載
スキル没収のお知らせ
しおりを挟む「それはねぇ?」
動揺するエマに、からかうように語り掛けるミリア。背後から忍び寄り、仕込み扇から出した暗器をエマの首筋に突きつける。
そのナイフにしては細く平たい変わった形だ。一見すると太めの針のようで、切ると言うより刺すのに向いている。
研ぎ澄まされた鋭利な銀色の刃が、麗らかな日差し反射して輝きを放っている
「貴女ならそうするんじゃないかって……私たちも全力で歓迎の準備を整えていたからよ」
引き継ぐようにマリアベルがパチリと扇を閉じると、呼応するようにエマの足元が光り出す。
古代文字の書かれた黒い帯のようなものが床から現れ、エマに飛んでいった。
口を塞いで声を封じ、手足に巻き付いて抵抗を封じ、それはやがて全身にもぐるぐると巻き付いていく。あっという間に拘束されたエマは床に転がった。
謀られたと気付いたエマは顔を真っ赤にし、口を塞がれても抗議している。声にならない呻き声と、不満にのたうつ体で表現していた。
「ああ、そうそう。これも忘れちゃだめよね」
近づいたマリアベルが小瓶を取り出し、シュッと霧吹きのようにエマに振りかけた。
顔に思い切り浴びたエマは、怒りに血走った目があっという間にとろんとして脱力する。
即効性の睡眠薬(噴霧型)である。
マリアベルやミリアは口元に扇を添えたまま、いつもと変わらぬ優雅な笑みだ。
(……扇に解毒薬とか仕込んでそう)
よく見れば周りに貴婦人たち全員、似たり寄ったりポーズだ。扇やハンカチを口元の近くに持っている。
シンは被っているヴェール事態に多数の防護機能があるから、無効化で来ている。
万が一に睡眠薬がエマ以外にかかっても、対策済みだ。
見事なチームプレーにやることがなかったシンは、安堵の溜息と共に椅子に座り込んだ。
こちら側に被害らしい被害はない。
『シンさーん! シンさーん! 神託です~! エマのスキルを没収するのでちょ~っと近づいてもらえませんか?』
安心したのも束の間、頭の中に幼い声が響き渡る。
主神フォルミアルカである。
(フォルミアルカ様!? スキル没収って……うん、超物騒だしやれるものはやってほしいな)
エマは今、気絶している。この後、今までの罪状を確認するためにも牢屋に入れられるだろう。
接触できるのは今だけだ。
シンは軽く手を挙げ、念のため周囲に説明を入れる。
「神託が入りました。フォルミアルカ様が、エマのスキルを没収してくださるそうです」
応援ありがとうございます!
9,668
お気に入りに追加
30,027
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。