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スキル没収のお知らせ

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「それはねぇ?」

 動揺するエマに、からかうように語り掛けるミリア。背後から忍び寄り、仕込み扇から出した暗器をエマの首筋に突きつける。
 そのナイフにしては細く平たい変わった形だ。一見すると太めの針のようで、切ると言うより刺すのに向いている。
 研ぎ澄まされた鋭利な銀色の刃が、麗らかな日差し反射して輝きを放っている

「貴女ならそうするんじゃないかって……私たちも全力で歓迎の準備を整えていたからよ」

 引き継ぐようにマリアベルがパチリと扇を閉じると、呼応するようにエマの足元が光り出す。
 古代文字の書かれた黒い帯のようなものが床から現れ、エマに飛んでいった。
 口を塞いで声を封じ、手足に巻き付いて抵抗を封じ、それはやがて全身にもぐるぐると巻き付いていく。あっという間に拘束されたエマは床に転がった。
 謀られたと気付いたエマは顔を真っ赤にし、口を塞がれても抗議している。声にならない呻き声と、不満にのたうつ体で表現していた。

「ああ、そうそう。これも忘れちゃだめよね」

 近づいたマリアベルが小瓶を取り出し、シュッと霧吹きのようにエマに振りかけた。
 顔に思い切り浴びたエマは、怒りに血走った目があっという間にとろんとして脱力する。
 即効性の睡眠薬(噴霧型)である。
 マリアベルやミリアは口元に扇を添えたまま、いつもと変わらぬ優雅な笑みだ。

(……扇に解毒薬とか仕込んでそう)

 よく見れば周りに貴婦人たち全員、似たり寄ったりポーズだ。扇やハンカチを口元の近くに持っている。
 シンは被っているヴェール事態に多数の防護機能があるから、無効化で来ている。
 万が一に睡眠薬がエマ以外にかかっても、対策済みだ。
 見事なチームプレーにやることがなかったシンは、安堵の溜息と共に椅子に座り込んだ。
 こちら側に被害らしい被害はない。

『シンさーん! シンさーん! 神託です~! エマのスキルを没収するのでちょ~っと近づいてもらえませんか?』

 安心したのも束の間、頭の中に幼い声が響き渡る。
 主神フォルミアルカである。

(フォルミアルカ様!? スキル没収って……うん、超物騒だしやれるものはやってほしいな)

 エマは今、気絶している。この後、今までの罪状を確認するためにも牢屋に入れられるだろう。
 接触できるのは今だけだ。
 シンは軽く手を挙げ、念のため周囲に説明を入れる。

「神託が入りました。フォルミアルカ様が、エマのスキルを没収してくださるそうです」

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